2007年9月27日木曜日

二流国家の心地よさ

朝からCNBCではドル安でカナダから米国に押し寄せる買い物客の特集をしている。既にNYで買い物をする外国人旅行客のパワーは無視できない存在だが、消費シーズンに突入する中、凋落していく米国内の消費者信頼度指数と、外国人の買い物を反映した小売の数字に市場は戸惑うだろう。

さて、世界はフラットになったが、逆に先進国では国内のスプレッドが広がったというのは私の持論。GMの労働争議は「負け組」とは言わないものの、時代に取り残された人々の感情が米国の製造業のおかれている状況を納得する理性を上回っているサンプルである。

そんな中、CBS系NEWSが究極的なレポートをした。世界がフラットなった現象の代表としてインドの台頭が挙げられるが、米国からインドにアウトソースされたビジネスが、最近はインドの労働賃金が上昇し始めた事でインドから更に別の地域にアウトソースされ始めているという。そしてその地域には、メキシコ、中国に並んで米国の一部が入っている。

「米国の一部」が何処かは言及されなかった。しかしこの事は米国内のスプレッドの広がりと、世界のスプレッドの縮小のダイナミズムを実証している。この事実のトレンドの善し悪しは別に、国内のスプレッドの格差が広がる事はその国の中間層の消滅となり通常はその国の政治は不安定になる。またその様な国の通貨は経済要因を除いても本質的には売られるはず。つまり米国はこの様な二流国家になり下がるリスクを抱えながら、目先のドル安効果の利点をおっかけ始めたのである・・。

2007年9月6日木曜日

マルクス復活

ライアン前IL州知事は既に70歳を優に超えているが、80歳を目前にして、哀れにも刑務所に行かなければならない危機だ。彼が知事をして時、私自身はNYに駐在したので、彼の行政に印象はない。では彼がなぜ刑務所行きの危機なのかというと、直接の罪は知事時代に賄賂とみなされた献金数百ドルで旅行をした公務員法違反である。ただそんな石ころのような罪で起訴さてしまった背景には別の要因があった。其れは知事になる前の役職で運転免許証の発行を管理していた時に遡る。その時部下が飲酒運転などで免許停止になったトラックドライバー達から賄賂受け取っていたのだ。そして再発行を受けたそのドライバーの一人が最近少女をひき殺してしまった。そして彼のヒストリーを追及する過程で行政の管理機能の崩壊が暴かれてしまったのである。

当初、かつての部下は逮捕されたものの、既に知事を引退していたライアン氏までは法の手が伸びる様子はなかった。しかし既に始まっていた反共和党、反ブッシュの影響も手伝ったのだろう、徐々にライアン包囲網が固まり、終に昨年たかだか数百ドルの賄賂で起訴されてしまった。そして市民から選ばれた陪審員は彼に有罪を言い渡したのである。

有罪は決まったものの判事の裁量で刑期は1年程度に減刑され、また健康と高齢である事と慈悲を理由にこれまで執行の延期されてきた。だが其の猶予期間延長を巡って再び残酷にも世論が盛り上がっている・・。

4年前、ブッシュ再選が決まった時、彼はリンカーンやマッキンリーの様になるリスクがあると指摘した。その上で仮に8年の任期を全うすれば、其の後は彼の時代の「UNWIND」として、米国の社会主義化のリスクを指摘した。

その時は殆ど読者の反応はなかったが、本日ブッシュがサブプライムへの救済に直接手をつけた内容は、ゲーム社会と市場原理主義の敗者を結局は政府が救いに行くアイデアだった。くしくもこれは数週間前にエコノミスト誌が指摘した「TURN TO LEFT」そのものである。

この現象は生まれたら死ぬに近い自然の摂理の話である。ここまで過激な政策を取ったブッシュだけに、其の崩壊が始まった以上中庸などありえようがない。バフェット氏は「TEEショットで右の林に打ち込めば、次はフェアウェイを狙っても左の林に打ち込んでしまうのが素人である・・」との名言をこの春に残している。彼の言う「素人」と言うのがこの場合は民衆と考えれば、それに便乗するのが民主政治である。更に民衆をこれまでは食べられる側だった草食動物と考えれば、彼等が怒った時に制御不能になってしまうのは名著、「ソロモンの指輪」でも証明されている話である・・。

その原則を信じる私としては、ブッシュが前述の二人の共和党大統領と同じ運命ならなかったのは米国にとって幸だったのか不幸だったのかそれは歴史が後で証明するとしか言い様がない。ただ米国が世界に敷いた今の資本主義のルールを、プーチン率いるロシアと、15世紀以前の姿の世界的盟主復活を目指す中国は、独自に解釈するはず。

彼等は強敵だ。いずれにしても、共和党政権が終わり、民主党政権の時代に世界は悲惨な戦争になる過去のパターンだけは勘弁してもらいたい。其れでは食物ピラミッドが崩壊して無秩序の動物の世界の様ではないか。ではどうしたらよいのか。

個人的にはマルクスの資本論が読み直される時代が近いと予想する。資本論は完読してはいないが、伊藤誠氏著の「資本論を読む」は読んだ。そこでは、マルクスの意図した世界は、帝政が崩壊して共産体勢になったソ連を理想としたものではく、資本主義の成功が最初で、その後その歪が出て、社会主義、共産主義的理想に向かうとあった。

恐らく、株を根幹とする米国では起きないだろうが、他の世界ではマルクスがある程度は見直される可能性は十分あるのではないか・・。