http://www.brookings.edu/blogs/ben-bernanke/posts/2015/06/22-jack-lew-ten-dollar-bill#.VYgmtpjIUio.twitter
バーナンキは政治的背景を示唆している。意図は、彼やイエレンに象徴される救済的なハト派リベラル政策が今後のトレンドなら、本来もっと重要な20ドル札のアンドリュー・ジャクソンを交代させるべき。それをアメリカの金融経済の歴史で最も重要な10ドル札のハミルトンにしてしまったオバマ政権の決断を非難している。
バーナンキは怒っているが、この矛盾が彼がリーマンショック後に行ったQE(QE2から)の評価と、二極化する米国政治、ソレを取り巻く世界を代弁していると思う。
そもそもお札の顔は、国民の価値観を微妙に支配する上で極めて重要な政策だ。特にアメリカでは20ドル札は日常生活で基本。発行額では1ドル札(ジョージ・ワシントン)、100ドル札(ベンジャミン・フランクリン)に次いでいる。
日本人でさえ誰もが知っているワシントンとフランクリン。彼らと同等にジャクソンがなぜ重要な20ドル札の顔になったか。その背景はここでは過去何度も紹介している。
一方で重要な建国の父の一人のハミルトン。彼を擁護するなら、そもそも人間社会と経済はなぜもっと早く中央銀行にQEをやらせなかったのか。ソレを考えるべきだ。
社会が困窮したら、中央銀行にマネーをジャブジャブにさせる。ロケットサイエンスでもなんでもない単純なことを、もっと早くやっていれば、沖縄がボロボロにされた第二次世界大戦はなかったという考えさえある。(この議論では、単純なハイパーインフレ論は本質ではない)
でもアダムスミスが国富論を書いた頃、英国は南海泡沫ショックから立ち上がり、中央銀行を中心にした新しい金融のあり方を模索しながら栄光のビクトリアン覇権へ向かって進んでいる最中。この時代は帝国主義によって領土を拡大、貿易で国益を拡大していくのは当たり前だった。
その後、経済学は西欧の知識人によって議論され進捗した?とされるが、今経済で政治家が利用している学者は、この時代の先人を学んだ人たちが中心。
先人はマネーが金銀など、そもそもの量に限界があるトレジャーから、ゴールドを担保とした紙幣に移った時代、どこまでの紙幣の量がモノやサービスの価値としてふさわしいのかをずっとテーマにしていた。
アメリカでは建国当事ハミルトンが擁護した中央銀行がジャクソンによって潰された。でもアメリカはマネーが乏しかったので、良く働き、良く蓄え、そしてそれを投資に回す・・というM.ウエーバーが羨むような国になった。(もちろん人権的に酷いことも多かったが)
そして1914年にFEDが復活すると、すぐにバブルなったが、(第一次世界大戦後の金余り)ただそのバブルが崩壊しても、FEDはQEをやらなかった。ルーズベルトも金本位を完全に捨てることはせず、(一時的停止)ケインジアン政策を断行した。
でもその効果は限定的で、結局アメリカ経済が復活したのはアーセナルデモクラシー。(戦争経済をなぜデモクラシーと呼ぶのか。勝者が決める歴史の矛盾)だから今の時代になって、第二次大戦を回避できなかった一因として、当事のFEDをバーナンキは批判する。(これが今のFED内のハト派の共通する認識)
そして今、リーマンショックから立ち直った世界はバーナンキを英雄とする。でももし1930年のFEDがQEをやっていたら、個人的にはその後資本主義が我々の時代まで続いたかに疑問を感じている。
大量のマネーで社会が覆われ、皆がハッピーになれば、人が人を殺すインセンテイブは減退する。(今一部の宗教でクレージーな連中がいるが、そもそも支えているのは貧困と格差)一方で平和になって経済がグローバル化するなら、そこでは消費力がパワー。とくに貧困層が中間層に成長する際の消費力は莫大だ。
個人的には、もしバーナンキが批判する1930年のFEDが大恐慌でQEをやっていれば、戦争はなかったかもしれないが、このプロセスがもっと早く始まったのではないかと想像している。そんな時代に生まれなかったことに感謝しているが、リーマンショック後、その実験が今再び始まった。
一方で今のアメリカは、人類史上前例のない圧倒的軍事力を持っている。しかし平和な状態では使う機会がない。
それでいいというリベラルなオバマ政権では、平和時のグローバル経済の磁力は、やがて中国やインドへ移行するのを仮定し準備をしてきた。だからこそそもそもは共和党が展開したTPPに、民主党政権でありながら、再選が決った2012年から本腰を入れた。
アメリカは東西冷戦の舞台の大西洋で、NATOという軸をもち覇権を維持した。なら今はアジアでTPPという新しい軸を打ち立てることがこの政権の最大の使命。しかし平和的消費中心経済では、いずれ、どの道、米国の相対的救心力は衰える。
でもインフレもなくバーナンキやイエレンが評価されている間は、享受者の多くは今の実態を客観的に分析することはない。そこで資本主義の年齢を、GDPと株価の時価総額で考えてみた。
植民地を失った英国はロンドンを開放し(ビッグバン)、今もそれなりに繁栄ををしている。その英国の株価時価総額は、ずいぶん前からGDPよりも圧倒的に高い水準にある。
アメリカは建国以来、ずっと株の時価総額はGDPより低かった。それが現代になり、一時的に時価総額がGDPを上回ったのが2000年と2008年。ただこのときはFEDの繰り出すマネーの量はGDPの6%という暗黙の原則が守られていた。(ニクソン後のルール)
だから、オーバーバリュエーション(2000年)、オーバーレバレッジ(2008年)は続かなかった。
調整が起こり、時価総額はGDPを再び下回った。その時に掃除を担当したのは前述のジムチャノスなど・・
しかし、2008年後、米国ではバーナンキFEDがQEを断行した。FEDは世界経済のラストリゾートとして、バランスシートを5倍にした。結果マネーはジャブジャブ。そんななかアメリカも株は実態経済活動の結果ではなく、寧ろ牽引となった。
今のアメリカの株の時価総額はGDPをはるかに超え、(140%)、今はさらに上をうかがっている。(格差はもっと拡大する、むかしのバフェットはこの状態を批判した。今は何も言わない・・)
でもそもそもOECDの資料では、英国を除き、株価の時価総額がGDPを超えていたの国はシンガポールやルクセンブルグなどの特殊な地域。(スイスや一部のアセアン諸国も)これらの国は、過去、資本主義経済を牽引する(した)という立場の国ではなかった・・
日本も90年前後、バブル期にGDPと時価総額が逆転したと聞く。(自分で確認していない)でもその後もとに戻ってしまった。そして安倍政権が登場し、今は再び逆転、このまま時価総額がGDPを上回り続けるかというところにある。
もしこの先進国のトレンドが続くなら、株価は欧州に伸びしろを感じる。なぜならDAXはユーロ安でここまで上がっても、ドイツの時価総額はまだまだそのGDPより低い。ただしそもそも労働者を重視する大陸欧州に、CEOと株主の利益が中心のアングロサクソンルールを当てはめるのはどうか。
まあジャブジャブマネーが、バリュエーションで買ってくれるなら大いに結構。このあたりが欧州のしたたかさ・・
そしてこの先にある中国。3ヶ月前、誕生から6年の目の成長スピードとバブル度で、当事のグーグルやフェイスブックを上回り、ミレニアル時代のシンボルとされるUBERが中国に進出した。
(IPO前のUBERへの投資が10ビリオンを超えた驚愕の特集)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/805599ae-16df-11e5-b07f-00144feabdc0.html
6ヶ月前、UBERの世界での利用者は1日あたり100万人だった。そして今、UBERの利用者は「中国だけで」一日あたり100万人を超える・・(UBERがわからないと、今のアメリカは判らない)
今のアメリカは、中国に国債を買って貰っているだけではない。アメリカの個人消費の源の住宅市場は実は中国によっても支えられている・・(添付、アメリカンドリームを支えるのは中国?)
これらのトレンドから、ジャクソンが大好きなタカ派的保守は、リーマンショックではバーナンキに助けて貰いながら、アメリカはFEDを介し、アメリカの世界支配を続ける上で、やってはいけないことをしたと思っているだろう。
レーガン以降あまりにも個人の豊かさを追求したため、アメリカではブーマー世代になって、失敗したモノは一度消え、(復活は否定しない)、新しいモノが次の時代を築くというアダムスミスのころのルールを自分で止めてしまった。(ここが今共和党の矛盾点、これを批判するのはロンポールなどリバタリアン系のみ)
こうなると中国がどんなインチキ資本主義を展開しようが、最早批判する立場にはない。なぜなら自分よりも4倍の人口を持つ中国に、現代の株主キャピタリズムでは、中央銀行がマネーを刷って資産価格を上げ、消費を喚起すれば規模が大きくなる。
バブルがはじけても、もっと巨大マネーをプリントすればいいという実例を示したのは、他ならぬリーマン後のアメリカ自身だからだ。
そして早晩中国のGDPがアメリカを抜き、さらにその時価総額が実体経済GDPの超えるトレンドが許されるなら、世界のマネーはやがて中国へ吸い寄せられるだろう。そうなるとアメリカは中国に勝てない。
米国ではこの展開を望まない人たちが、20ドル札のジャクソンを死守する勢力だと思われる。彼らはどんな手段を使っても、中国のデレイルを画策するはず。その際自分がある程度痛むのは覚悟の上だ。でもアメリカの未来を決めるのはこの勢力ではない。ミレニアルだ。
戦争を経験し、国家のため個が犠牲になることが普通だったグレートジェネレーション。その
戦争の被害があまりにも甚大だったため、嫌戦と個の自由と人権尊重に傾いたブーマー世代。
この世代は人も殺さないが自分も殺さない。そんななかで台頭してきたミレニアル。アメリカの頂点、敵がいない状態で育った彼らは全くもって高所平気症・・。
その昔、マルクスやシュペンターは、逆説的に資本主義が発展し、やがて(資本主義の)自殺への道程を示唆した。アダムスミスから時間が経ち、国富論を読んだ天才たちは、ソレを維持する上では何が必要なのかという警告をだしたと勝手に想像している。
なら中央銀行が繰り出すマネーで、時価総額がどんどんGDPを超えていく今の先進国の姿をみて、彼らが生きていればどう思うだろうか。まあそんなこととは無関係に、中央銀行をあら人神とするバベルはまだまだ高く伸びる雰囲気が漂ってきた。
でももしその先に覇権交代の可能性があるなら、若い人にどんな示唆を残すのか。それが自分が属する「ジェネレーションX」世代の使命だと感じている・・