2009年6月19日金曜日

美味しいトマト

今年は日本の梅雨を思い出すシカゴの6月だ。そんな中NYでの全米オープンも雨のスタートとなった。そしてやはりこの天候のせいだろうか、今年はトマトの生育が悪い。もしかしたらまたあの失敗もしたかもしれない。「あの失敗」とは子育てにも通じるリスク。それは発芽した時に喜びすぎて栄養過多な土に早く移してしまう事である。

シカゴの6月の気候を利用してトマト栽培を始めて10年になる。そこで発見したのは苗が10センチ程度になるまでは痩せた土地で育てたほうがよいという事。そして根が本来持っている自分で成長するDNAを覚醒させて肥沃な土壌に移すとトマトは正しく栄養を吸収しておいしくなる。だが難しいのは毎年変わる土地の質と天候で調整が必要となる点である。早い段階で栄養が多すぎると根が甘やかされて伸びない。根が伸びないと当然葉も腐る。

ところで昨日はあのエディーバウアー(ユニクロを高級にした存在)が破産を申請した。気がつくと、サーキットシティー(コジマ電気の様な存在)やシックスフラッグ(富士急ハイランドのような遊園地)など、これまで身近にあったブランドが次々に姿を消していく。ただ逆に売り上げを伸ばしている会社もある。その一つが消費から自給自足へ繋がる商品だ。

昨日はホームデポが「マイクログロ」という商品の売り上げが例年の2倍のペースで伸びていると発表した。マイクログロとは日本で盛んに広告を出している「HB105」の米国版、強力な植物栄養剤である。そういえば以前タンポポを野菜として食べる人が増えている話をしたが、どうやら自家菜園もブームになっている様子。

これまで無駄に消費し、無駄にガスを出していた米国人のライフスタイルも、こんなところから変わっていくのかもしれない。


2009年6月18日木曜日

悪魔のような男

本日オバマ政権は米国の歴史上とてつもない重要な変革を発表した。変革とはズバリFEDの位置づけである。ただ発表された内容はあくまでも政府案。議会の承認を経なければならないものあり、金融市場がこの変革案に反応する事は無いだろう。

そして変革だが、簡単に言うとFEDに金融市場を管理する上で必要な殆どの権限、即ちこれまでの金利調節と紙幣発行の権限に加え、市場参加者である金融機関を取締る役割まで持たせる内容となっている。この内容では米国が市場経済の看板を下げない限り実質政府より強権を持つといっても過言ではない。ただ議会にはそもそもFEDのここまでのオペレーションを良しとしない向きもある中、これ以上の権限をFEDに与える事には反対の意見が民主党からも出ている。

確かに今回の事態はFEDの怠慢が原因との意見が政権の外では聞かれる。従ってそのFEDに権限を集中させる事は政権として道義的なリスクがある。そんな中議会きっての「役者」であり、議会の金融委員会の中心人物バーニーフランクは「FEDにはどちらかというと新しい任務である取締強化を期待しており、これまでの通貨幣管理(流通量の裁量)に関しては役を緩める余地もある・・」などと、よく考えると大変な発言だが、彼のキャラクターだと今のところ意味不明で済む発言をしていた。

ところで、ここでこれまでFEDを攻撃してきた米国の保守派の立場をもう一度整理しておく。そもそも米国の保守派は米国建国の精神を今も大事にしている。その精神とは政治はジョージ3世からそして経済は当時欧州を支配していた金融カルテルから独立する事であった。当時本国英国に中央銀行は存在したが、「中央銀行」とは現代の表現であって紙幣発行を独占するBANK OF ENGLANDが元々は私企業であるがゆえに結果的に特定金融のカルテルに優位な状況を作り出していると建国の父は考えたのである。

そして米国は世界の頂点を極めるまで成長した。だがその達成において紆余曲折はあったものの中央銀行は必要としなかった。ここがポイント。彼等はこの事実から中央銀行が米国にとって絶対に必要な機関として考えてはいないのである。しかしあのロンポールでさえも現代の米国人が西部劇に出てくるコインを持ち歩いて生活する様は想定していない。保守派でさえも中央銀行の存在意義は認めている。だが保守派が主張する中央銀行は特定の人々を利さず、あくまでも国家の為に存在する「真の国家機関」であるとの条件付きなのだ。

そこで現状を確認すると、FRBはワシントンにいる議長を含めた理事は大統領が任命し議会が承認する手続きをとる。だが実質FOMC以外でそのオペレーションの根幹を握るNYFEDの人事権に議会は介在しない。そしてNYFEDの形態は民間組織のままでその株主にWSの金融機関が名を連ねる事は今は公になった。(NYTIMESが報道)この構図を今回の危機を参考に保守の主張をそのまま解説すると次のようになる。

「そもそもFEDは自らの失態で過剰流動性を創り、その結果経済が崩壊して国民は困窮した。だがその改善策は金融システムを守るという御旗の元、実質はNYFEDが中心となって株主である金融機関を救済しているにすぎない。その手段は過剰なドル札の発行であり、顛末としての通貨価値の変動を金融機関の様にはヘッジできない庶民はドルの下落(インフレ)で苦しむ・・」。保守派はこの主張をグリーンスパン時代から叫んでいるが、実際にこの通りなった事に個人的には正直驚いている・・。

そしてこの「悪行」を大統領の立場で容認、容認どころか本日オバマはバーナンケに対して最大の賛辞を送った。恐らく保守派にとって現政権は「アメリカをアメリカでなくした」悪魔の様な政権に映るだろう。だが私からすればそれはあのブッシュへの反動でもあり、今の状況はブッシュを担いだ保守派の自業自得である。そしてバーニーフランクは相変わらず食えない。共和党を懐柔させる「呟き」をわざと残した。ただ彼もこのままでは済まない事を承知している。もしかしたら米国はFEDに権限を集中させる代わりに先輩である欧州の道程を模索するのではないか。それは、英国は1946年に、そしてフランスは遡って1936年にそれぞれBANK OF ENGLANDとBANQUE DE FRANCEを完全に国営化した事である。

いずれにしてもアメリカ人ではない私からすれば、CITIとGMを国営化しただけではオバマは保守派が呪う「悪魔の様な男」で終わってしまうリスクを感じる。それでは彼をシカゴ時代から見守ってきた立場としては残念だ。だがら是非ともFRBの完全国営化を達成し、保守派に糾弾される後顧の憂いをなくす事を進言したい。


2009年6月17日水曜日

ゲリラ化する情報

日本では立て続けにプロレス関係者が亡くなった。そんな中で日本より先に米国ではTV放送が完全にアナログからデジタルに移行したが、アナログ放送時代に隆盛を誇った日本のプロレスは今後どうなるのだろう。実はそのヒントは北朝鮮で捕まった二人の米国人女性記者の話からも窺える。まず彼女たちはあのゴアも出資したカリフォルニアを拠点とした小さな局のスタッフだ。そしてその媒介はローカルのケーブルやYAHOOなどのネット。いわゆるデジタル網で発信している。

そのような小さな局が発信する情報は、3大ネットワークやCNNなどが発信する大味なニュースよりも現代において実は真実に近いという評価ある。ただ一方で、危険地帯に少数のクルーで乗り込みゲリラ的な活動をするリスクは大きい。今回も彼女達はカメラマンの男性と3人だけで取材をしていたというが、この様な過小資本の団体の行動に対しては不測の事態でも国家からの救済が遅れる事も多い。今回はまさにそのパターンだったらしい。

振り返って日本のプロレスはアナログTV放送の目玉として発足当初はまさに米国の3大ネットワークに匹敵する影響力があった。流石に私の時代では力道山は知らないが、馬場や猪木を介して力道山が敗戦後の日本の国家高揚の役割を十分に果たした事は想像できる。そしてその戦いが真実ではなく演出であるという批判はその目的が達成される過程ではどうでもよかったのかもしれない。

ただ世の中が豊かになり情報が多様化してくると、プロレスの演技性はマニアを除いて支持を失った。結果プロレスはその存在意義を戦いの真実性に求め、組織の細分化と過激性が促進された様に思われる。だが一部を除くとその過小資本団体の経営は苦しく、リポーターがカメラマンを兼務するように団体の社長がメインイベンターとしてリングに上がる事が恒常となった。しかしやはりどこかに無理が溜まるのだろう。何百回、何千回とこなしたはずのバックドロップの受身を46歳の三沢は失敗した。

そして先にTVの完全デジタル化が完了した米国ではニュース系のMEDIAに劇的な変化が起こっている。まずどの新聞社も経営危機である。最近はWSJでさえ株価に関係なく記事のゲリラ化(すっぱ抜き)が進んでいる。恐らくヘッドライン伝達ではネットに対抗できない中での競争激化の影響だろう。そして情報の氾濫に飽きた受け手は情報に個性と真実を求め始めた。今やネットでまず情報が広まり、ソレを3大ネットワークが後からカバーする事に全く違和感はない。結果MEDIAは益々細分化されるのではないか。

要するに個人的な印象として「デジタル」のインパクトは「情報のゲリラ化」である。三沢の死や北朝鮮に捕まった記者もソレと無関係ではない。そして受けてとしては情報のデジタル化で選択肢が増えるメリットはあるだろう。ただ写真や音楽の世界では究極の美の表現はデジタルでは不可能だと専門家は言う。また昨今の相場の値動きはいたってデジタル的だがその勝者は必ずしもデジタルの専門家ではないようだ。

ところで自分がデジタル人間かアナログ人間か、簡単に判断する方法をサイトで見つけたので紹介する。まず「祈り」をする時に指を組むが、その時にどちらの親指が上に来るか。左手の親指が上に来る人は右脳が鋭敏である可能性が高く、右脳は直感や感覚をのアナログ的な能力を発揮するという。そして右手の親指が上に来る人は左脳、即ち計量分析等のデジタル思考が得意な人との事である。まあ真実により近づくためにはデジタルとアナログの両方のバランスが重要である事は理解できる。だがまず自分の特徴を把握する事はその一歩かもしれない。





2009年6月16日火曜日

国家の寿命と株価

中東の産油国では富を独占する王族支配はそのままに不満分子はテロに向かわせる・・。先進国と王族が裏で妥協した?この構図が続く中、イランは宗教の原理にのっとりイスラム革命を成功させた唯一の国である。その「国家エネルギー」を考慮すると、この選挙結果をそのまま受け入れるだろうか。米国にとってイランの動乱は短期的には時間が稼げるメリットがある。だが個人的には今の米国からはこのイランが持っている国家のエネルギーを感じなくなった。今日はその話をしよう。

まずこのエネルギーとは宗教に関係なく、自分が正しいと思う社会に向けて自分が関わるエネルギーとも言える。独立戦争、フランス革命、明治維新などは其の結集だが、現在の先進国はこれらの動乱を経て今の豊かにたどり着いた。振り返って昨年からの金融危機は今の米国人に米国の何かが間違っていた事を突き付けた。ただ悲鳴の中で政府が取った手段が効いてくると、間違っていた事に対する米国内の自浄への情熱とその探究心が薄れ始めている事が感じられる。

そんな中で今日は総合遊園地チェーンのシックスフラッグの経営破綻のニュースがあった。CNBCに社長が登場し、状況を説明していた。だが全く経営破綻した会社の社長とは思えない饒舌ぶり。血色もよくこれからのハイシーズンが始まる事への期待感を述べていた。この不思議な余裕が今の米国の姿だ。確かに危機は起こった。だが原因とされる金融機関は吸収されるか政府に救われ、自動車もソレに続いた。

その過程でFEDは直接の融資先を銀行から証券、更に事業会社への特例を認めた。そして以前ここで「FEDが街金になった」と揶揄したTALFプログラムに至っては初期の20兆円を大幅に超えて終に100兆円に拡大された。そして今やレンタル自動車大手のHERTSまでもがFEDの直接融資を申請した話がNYTIMESに載っていた。レンタル自動車会社がFEDから直接融資?完全に崩壊した信用創造のモラルがそこにある。

そして今の米国をみると、宗教や社会の善悪の話ではなく万物の寿命を感じる。それを象徴したのが今日のNYTIEMS。そこにはグアンタナモ刑務所に収容されていた4人のイスラム兵のその後の話があった。元々彼等はウイグル自治区から流れてアルカイーダの端末に加わった。要するに捕まるまでは貧しさとカラシニコフしかしらない男達だ。オバマ政権はこの刑務所の廃止を断行すると同時に「必要外」の囚人を釈放した。彼らもその中に含まれた。だが釈放されたはずの彼は祖国に戻らずカリブ海に戻ってきた。ただ今度はビザなどの面で米国の援助付きである。そして生まれて初めてカリブ海の豊さを知った彼等は米国に全く恨みを感じないという。なぜなら米国のおかげで自分たちはこんな夢の世界に来れたというのが理由だ。

この様に、人間は一度豊かさを知ると元には戻れないと考えるのが自然だ。そしてその過程で主義主張がぶつかり合い社会の新陳代謝を永続させる事で豊かさは進化した。だが成長を国是とするはずの米国は危機のあまりの痛みに本来は成長の原点であるはずの新陳代謝を放棄した。そして今の金融市場はその矛盾を知りつつも手元に資金がある間はその負債に対して何らかのストリーを創っては偽りの成長金融ゲームをするしかない。だが矛盾は可処分所得が伸びない中での物価高を呼び、病み上がりの体を今度こそ終末へと導く可能性がある。いずれにせよ、10000の大台を最初に切った米国株がまだその大台を回復できないのは、米国の寿命を象徴している。





2009年6月12日金曜日

10年に一冊の本

「BLACK SWAN」という本がある。著者はナシームニコラス氏(Nassim Nicholas)。彼はヘッジファンドを経験しながら他にも市場の本を書いているので知る人は知っているといった存在。そしてこの本はあまりにも訳するのが難しく、その日本語訳は不可能とまで言われた。だがついにその日本語版が今月下旬に日本で出版される。

そのナシームニコラス氏は本日CNBCに登場した。そして今の市場は「全く先を読めなかった」アナリストや学者の予想に相変わらず振り回されていると直言。そして続いて米国の財政赤字の話題において、個人的にはこの政権が発足してから水面下で模索されていたはずの歴史的プロジェクトについて、彼は偶然自分の意見としてその可能性を触れてしまったのである。

そのプロジェクトとは以前ここでもふれた。そもそもその情報は保守系の人々が集まるサイトで彼らが民主党の動向をチェックするために様々な意見が持ち込まれる中から拾ったもの。だが早くにダウの8000を予測、また時代は株から債券市場へ、そしてその国債市場では30年を超える超長期債の発行があるだろうと的確に時代に流れを予測していた。その中に2月のクリントンの訪中では現政権はDEBT EQUITY SWAP(米国債の株への転換)を中国に打診したとの情報があったのだ。

ただこんな話が表ざたになると大変だ。なぜなら現在米国債を保有する投資家がその話を嫌気して先に売りに回る。あるいは米国債の過剰流通が解消され思惑で金利が急低下する。そのどちらになっても市場は大混乱する可能性が高い。だが本日ナシーム氏は持論としてその可能性を示唆。番組の他の出演者は目が点になっていた。

では債券を持って安定的に利息を受け取っていた人が、その債券を株に変えてもいいと考えるのはどんなケースがあるか。まず破産すれば株の価値がゼロになり、債券も元金を回収できる見込みは低い。ではその債務者に成長が期待される場合はどうか。この場合はダウンサイドリスク(元金の回収率)に大きな差がない場合はいっそのこと債券よりも株に変えてその債務者の将来の成長に賭けた方がいい事もある。

そう。米国はこのシナリオを狙っているのだ。だが米国がこれからも成長すると現在の債権者に納得させるのは簡単ではない。いずれにしてもこのウルトラCが実現可能かどうかも含め、現政権が今考えている事は大体チェックが可能である。逆にいえばそれだけ今の米国には選択肢が少ないという事だ。それが社会にどんな変化をもたらすか。ヘッドラインに振り回される相場に疲れたら頭を切りえる意味でも次の世界を想像するのも面白い。その下準備に冒頭の「BLACK SWAN」は役に立つかもしれない・・。





2009年6月10日水曜日

<迷う組織と迷う相場> <一票の格差>

<迷う組織と迷う相場>
昨日はガイトナー財務長官とサマーズNECが多くの点で衝突している事をNYTIMESの記事を参考に紹介した。だがそんな二人が合致しているのは銀行経営への政府介入を限定する事である。二人ともTARP資金を入れた金融機関のサラリーキャップには反対である。この二人は90年代にWSと歩調を合わせて米国の金融市場をここまで育てた主役。従ってパートナーでもあるWSを弾圧する態度はとれない心情的な影響もあるだろう。だがそれに反対する勢力もある。まずは議会がスポンサーになって政府がTARP資金をどう使うかを見張る機関のエリザベスウォーレン女史。彼女はハーバードの教授だが過去にWSと一緒に仕事した事はない。それどころか映画SHICOやDR.FILL等の番組に反体制派から担ぎ出される事が多い人だ。そして今彼女は FEDと財務省が監査したストレステストは緩すぎるとしてストレステストの第二弾を要求した。

このエリザベスウォーレン女史に感覚が近く、銀行に対する政府の対応が甘いという点で近い立場にあるのがCEAのメンバーであるオーストン グールズビー氏。(Austan Goolsbee)彼はオバマの選挙戦を仕切った経済チームのトップとしてシカゴ大学教授からそのまま政権入りをした。そしてボルカーが担当する経済復興委員会のメンバーとしてサマーズ主導の銀行への「非介入」政策を強く批判しているという。結局オバマの経済チームの面々のアカデミックバックグランドは同等だ。だが以前にWSと一緒に仕事をしたかどうかで現在の方針が異なるという事。

いずれにしても株は一旦ここまで戻った。それは良かったとしても、戻る過程での超法規的な手法に外国からの揺さぶりが入り、「米国の売り」のリスクを目の当たりした政権の経済チームの足並みが乱れ始めたのは確かだ。ストレステストの第二弾があるかどうかはまだ未定だが、この様に方針が定まらない間は流石に能天気な株も影響を受けるだろう。そしてオバマは自分がどうしたいのかもう一度態度を決めるべきだ。彼は当初は金融機関に強い態度で臨み、3月にサマーズの意向を汲んで態度を微調整してからは株が戻るのを横目に殆ど金融と経済に関しては発言していない。だがここで株が下がり出すとそうもいかないだろう。政府が市場の最大のプレイヤーである今市場はこの政府の「迷い」を反映した雰囲気になっている。



<一票の格差>
毎回繰り返される北朝鮮への制裁方法めぐる混乱も然り、一票の格差において常任理事国に拒否権が与えられた国連の安全保障会議ほどバカバカしいモノは無い。それに比べ同じ国際機構でもIOC(国際オリンピック委員会)の一票は平等で民主的である。そしてその一票が平等だとすると、115人で構成されるIOCメンバーの出身においてアフリカ諸国が重要な役割を果たす事は間違いない。

それを前提に昨日こちらで報道された2016年の夏季五輪候補地のレース状況からはやはりオバマの影響力は大きいと認めざるを得ない。東京での開催を期待する日本には悪い知らせだが、アトランタ五輪を仕切り、現在もIOCメンバーと親しいとされるユべロス氏が内部情報として最新の状況を紹介していた。非公式ながらそこではシカゴがトップで2番手がマドリッド。東京とリオデジャネイロが同率の3位となっている。

断わっておくが五輪招致はシカゴでさえも一部が盛り上がっているだけ。全米としてのニュースの価値はない。従ってユべロス氏が米国を喜ばせるために嘘を言う必要は全くない。そんな中で以前ここでではシカゴにIOCメンバーが訪れたのが真冬、それも道がデコボコだった時だったので、思わず「シカゴ五輪危うし」とのコメントを書いた。だがよく考えると、シカゴが不利になる厳しい冬を承知でIOCメンバーが態々シカゴを最初に訪れたのは、彼らの間に「シカゴにしたい」という暗黙の雰囲気がやはりあったのかもしれない。だから東京があれだけ準備したにもかかわらず、メンバーの東京の評価が曖昧だったのはそんな背景ではないか。そして現実的にも開催地を決める平等な一票を握るアフリカ諸国にとってもオバマはヒーローだ。仮にオバマが歴訪とイスラム寄りのスピーチで中東諸国まで味方につけ、そのオバマがシカゴ五輪をプッシュすればシカゴの優位性は揺るがない。ユべロス氏の伝えるところはそんな今の雰囲気ではないか。

そしてそのオバマだが、この二日間は偶然彼を「八方美人」や「ナルシスト」と表現した。だがさすがに彼は状況を読み取り微調整をするのが上手い。今日の発言では、「TARPを返してもFORGIVEしない」と久しぶりに彼自身の強い意志を表明した。この辺りの鋭敏な感覚は盤石な共和党組織に担がれていたブッシュ本人や今の日本の首相からは感じないものだ。組織に迷いが見えた時はトップが指針を示す。当然と言えば当然。だが市場の値動きに左右されず、彼がこの姿勢を貫徹できるかを注目したい。


参考http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_members_of_the_International_Olympic_Committee


2009年6月9日火曜日

ナルシストを担ぐ面々

今回の株の反発局面ではアップル株の戻りは著しい。だがその根拠となった膵臓癌で闘病中のスティーブ ジョーブ社長の現場への復帰は、本日の恒例の新製品発表のステージでは確認できなかった。そんな中で株は引け値でSPとNASDAQは僅かながらも連続の陰線を記録。途中の唐突なETFの買いは「ソレ」を避けるためだったと推測しているが、この結果は逆効果のリスクも孕むのではないか。

ところで本日一番の面白い話はNYTIEMSがすっぱ抜いたオバマ経済チームの軋轢だ。そしてその主役はサマーズ。彼はガイトナー財務長官を始め、他の重要メンバーと多くの点で意見の違いを露呈しながらもその剛腕で現在はオバマに日々の経済状況について最も影響力を与える立場になっているという。(NYTIEMSの意訳)

そもそも彼は本来財務長官を希望したが、結局はNEC( National Economic Council)という妙な立場に落ち着いた。この職務はFRB議長への布石としてグリーンスパンやバーナンケが経験したCEA委員長(Council of Economic Advisers)とは違う。だがWESTWING(ホワイトハウス内で大統領に最も近い位置で仕事をする官房長官の管轄下)の立場を利用し、そのトップであるマニュエル主席補佐官を飛び越えてオバマに影響を与え、あわよくばFED議長への異例のスライドを狙っていると記事は伝えている。

そんな彼をボルカーが批判した事が伝わった。だがそもそもボルカーの存在意義が判らない中では今後も押しの強いサマーズが経済チーム主導権を握るのは必定だろう。ただ彼はCITIの給与キャップを外すために上院のクリスドットに働きかけをした一方、そのCITIからコーポレートジェット等の使用なのど特権を貸与された事が判明。また通勤に96年型マツダを使ってカモフラージュしているものの次々に過去の実体が明らかになり、これらの話がいつ彼を失脚させても不思議はない状況であると考える。

いずれにしてもこの先景気が回復しない場合は中間選挙を睨んで政治的な駆け引きが活発となろう。そして共和党は既にそのヒントをつかんだ様子。それはこのところの市場の悪化でオバマが政権を引き継いだ直前よりもモーゲージ金利が上昇してしまった事だ。これだけの金を使い、これだけのドル札を新たに刷っても結局はモーゲージ金利が上昇してしまったとなると、ソレは実体経済に与える影響よりも次の選挙を睨んだ政治模様に与える影響の方が遥かに大きい。そして政局が主役になると、その時点での景気次第ではバーナンケの首など誰も保証できない。

そんな中でオバマ自身は外交を中心にポイントを稼ぐ事で自分自身を美しく見せる事には引き続き成功している。だが既にナルシスト オバマとの揶揄が始まった様に、どこかでオバマも八方美人的な対応を辞めて国民に強い覚悟を示す時が来るだろう。さもないと前述の経済スタッフの軋轢がやがては本格的な内紛になり、「民主党の弱点」が露呈する事も十分あり得る。