2008年4月19日土曜日

破壊者待望論

経済雑誌の新聞広告から日本で再び信長がブームになる前兆を発見した。でもなぜ今また信長なのだ。知る限り、彼がブームの時日本は沈滞ムードにある事が多い。今の日本は再びこの天才にあやからなければならないほど追い込まれしまったのだろうか。

そんな日の午後、米国ワシントンにはローマ教皇が降り立った。そして空港ではブッシュ大統領が出向えた。米国人でも殆ど気づいていないが、米国の大統領が外国の要人を空港に出迎える事は異例である。国賓待遇の要人はタラップに赤い絨毯で十分。米国ではそれ以上の待遇はない。寧ろ、覇権国家米国の大統領が誰かを出迎えるなどという事は本来あってはならない事の一つかもしれない。従ってブッシュは大統領として行ったのではなく、敬虔なカトリック信者の一人として法王に臣下の意をささげたともとれる・・。

ところで参考までにデータを紹介すると、米国の宗教割合はプロテスタント51.3% カソリック23.9% モルモン教1.7% 他キリスト宗派1.6% ユダヤ教1.7% 仏教0.7% イスラム0.6% 他宗教全般2.5%。また宗教を否定はしないが明確な意識を持たない人が12.1%、そしていかなる宗教も信じない人が4%である。

大統領選に関しての統計では、有権者の7割が大統領は何らかの宗教(キリスト教)の信者であるべきで、無宗教信者は大統領になる資格がないと考えている事が判明している。では信長とローマ法王はどう関連するのか・・。(数値はCIA調べ)

その前にこちらで話題のドラマ「TUDER」に触れたい。これは英国チューダー王朝を代表するヘンリー八世の物語である。先に結論をいうと、個人的歴史観ではヘンリー八世と信長は非常に似ており、この両雄以降の両国は歴史的大発展を迎えたと考えている。そこで簡単にヘンリー八世を紹介する。

彼は数ヶ国語に堪能でスポーツ万能。また趣味も広範囲で、基本的には優れた資質の持ち主だったらしい。しかし英雄色を好むではないが、急死した兄から引き継いだ強国スペインの王女との政略結婚が行きづまると、まず王女の侍女に手を出した。そしてカソリックで禁止されている離婚を画策し、侍女が懐妊すると彼女を新女王に据える。それがアン王女である。

しかしそのアンに飽きると今度は彼女の侍女に手を出し、次々に新しい女王を据えていった。そして彼が特異だったのはその残虐性。アンを始め妻にした6人女王の内3人を断頭台に送り、また友人でもあったあの「ユートピア」の作者、トマスモアも自分の宗教改革に同意しないとみると断頭台に送ってしまった。

残虐な点も信長にそっくりだが、彼のその異常な性格は、それまで中世ヨーロッパの一国過ぎなかった英国に画期的な大変革をもたらした。それはローマンカトリック支配からの独立である。「TUDER」でも当時のヨーロッパで最大の権威は教皇クレメンス7世であり、ヘンリー八世を始めとするスペインやフランス国王はそれぞれ国王でありながらローマ法王の配下にある姿で描かれる。そしてたとえその背景が好色からの離婚だったとはいえ、その状態をヨーロッパで最初に破壊したのがヘンリー八世である。

そして彼は自分を正当化する為に新宗教として英国国教会を立ち上げる。またそれに反対した盟友のトマスモアの頸を切り、最後はその大変革の実務を仕切ったクロムウェルまでも死に追いやる代償を払う。だがこれで英国はローマによる支配から脱却。その結果反カソリック勢力が英国に流入した事で、後に米国誕生にも影響する清教徒の誕生や、何よりもユダヤ人などの活用で金融面の発展につながった。

それが植民地で先行したスペイン ポルトガルに決定的な差をつけた要因となったとみる歴史観がドラマでも展開されている。

国家支配において宗教の関与を完全に否定した信長が描いたビジョンが、秀吉、家康に引き継がれたように、ヘンリーとアンの遺児エリザベス一世は、英国史上最も著名な女王として無敵艦隊(スペイン)を打ち破り、英国を覇権国家へと押し上げていった。

歴史は時にこうした狂人たちが運命的役割を担ってきた。英国がヘンリー八世を自慢するなら、沈滞ムードが再び漂い始めた日本では信長の破壊力に再び寄りすがるのも仕方がない。そしてこの米国ではブッシュ大統領がこの二人とは全く逆に、覇権国家の首長が宗教の権威に自分の頭を垂れている。やはり彼は破壊者ではなかったのだ。イラクを破壊してしまった彼は軍産複合体に担がれただけだ。そして今彼は疲れた。疲れた彼はべネデイクト教皇にすがりたいのだろう。真に米国の凋落を語りにふさわしい光景だった・・。

2008年4月16日水曜日

救われるべき民

先日のブッシュ声明は、イラクを去るどころか、必要ならイランも同時に相手にする様な過激な内容を含んでいた。彼に残された時間はない。従って事実上この声明はマケイン候補への応援演説の意味合いが強い。それはなぜか。

本日一部のMEDIAがこのブッシュの意を汲んでばかばかしい統計を発表した。どんな統計かというと、仮にオバマとヒラリーがタッグを組み、そしてマケインがライス長官を副大統領候補に指名して本選を戦ったらどうなるかという仮想のPOLLである。

ばかばかしい。理想論とは別に、民主党ではこの予備選の後でオバマとヒラリーが仲良く正副大統領候補として本戦に臨むなど想定していない。またマケインが女性副大統領候補を選ぶとしたら、それはヒューレットパッカーを辞めたフィオリーナ女史と専門家はみている。

にもかかわらず、本人や民主党の意向に関係なくMEDIAがこんな統計を取ったのは、イラクに加え将来のイランとの衝突の可能性を触れておく事でに危機感を煽り、国防に強いマケイン(/ライス)を援護する側面がある事は言うまでもない。

そして、本当に発表が正しいかどうか疑わしいが、POLL(統計)の結果ではマケイン/ライズはオバマ/ヒラリーを49-/43でリードしているとの事である。この仮想の話が本当に実現してしまうほど米国民がバカなら、最早米国民は地球上で、救われるべき民ではない。だが問題はその米国に、本来救われるべき他の国が付き合ってしまう可能性である・・。

まず西側の誰もが米国には恩義を感じている。また現時点では、日本は無論の事、欧州もバルカンや対ロシアとの関係上で米国を完全に見限る事はできない。またOILの富を牛耳る中東の王族は、米国が最も恐れるのはOILという最も強力な流通商品ドル決済の意義の希薄化である事を知っている。

一方でイラン革命が自らに起こる事を一番恐れるスンニ王族は、対シーア派や対イスラエル問題で米国が進んで自国の民衆のエネルギーの捌け口に身を投じる事と引き換えに、時に脅しながらもドルの生命線維持に協力するといった曖昧な関係を続けている。しかし、今回は米国の綻びを助けるために、世界中がとんでもないインフレを我慢しなければならないかもしれない事態となった。

そしてブッシュ論理の延長では、そんなインフレが嫌になったら米国は自分が痛みを我慢する代わりに、本来米国やドルに代わって成長すべき国の成長を止めにかかる事が肯定される。それでもダメなら今度は地球から人間の数を間引きする・・。仮に地球の人口が半分になればインフレどころか温暖化もすべて解決するではないか・・。

世界と人類の恒久平和を真面目に考え、地球環境を守るために必死に努力する人や国民がいる中でそんな悪魔の様な所行を地球上で考えてる人がいるはずがない・・。そう考える人は本来救われるべき人である。しかし予想以上に近い将来救われるべき人が救われず、そして救われてはいけない人が救われる。私はそんなシナリオを恐れる一人である・・。

2008年4月14日月曜日

メジャーリーグは米国の縮図

一時は神様として陶酔したグリーンスパンに対し最近の米国は冷たい。この様な単細胞的反応を見ると、よくない事とは思いつつもつい米国人を小バカにしてしまうのが私の悪い癖だ。ところで、そんな親愛なる米国庶民の日常会話を紹介しよう。この会話は先日ゴルフレンジの会計の順番待ちをしている時に偶然耳に入ってきたものである。そこでは典型的なカブスファンの男性数人が私の前でに会計の順番を待っていた。そして彼等はTVでカブスの試合中継を見ながら、ちょうど福留の打席でこんな話をしていた。A「福留はいいね」B「ああ。彼は間違いなく新人王をとるよ」。A「そういえばイチローもマツイもいいが、なぜ平均的に日本人選手みんないいんだろうか?」B「確かにそうだ。彼らはみんなDISCIPLINE(訓練、制御) されている・・」。

そもそもこのDISCIPLINEという言葉は相場では必須である。特にDAY TRADER(日ばかり)がまずクリアしなければならないのがこの壁である事は言うまでもない。では野球でDISCIPLINEというのはどういう意味か。メジャーリーグは練習量は問わない。よって練習熱心という意味ではない。そこで米国人同僚からの意見を参考にすると、どうやらそのイメージはホームランも打つが大事な場面で大ぶりの三振をするバッターではなく、統制されているがやるべきところではやる・・。要するに有能な組織人が持つ平均以上のスキルといった印象である。だから日本の野球人は、仮に日本で芽が出なくとも、野球組織人(野村監督が優先する考える力を持った選手)として平均以上の技術を持つ選手はイチローや松井クラスでなくともMLB(メジャーリーグ)の方が評価される可能性がある・・。

ところでステロイドで硬直した今のMLBには技能の柔軟性を売りにする選手は少ない。その日も5回まで7-0でリードしながら単純なエラーを切欠に7回には8-8の同点。そのまま延長に入って延長12回に10-8でカブスが勝つとシカゴのファンは優勝したかの様な大喜びだった。これが典型的カブスの試合。だがその試合も3安打と活躍した福留が試合後のインタビューでどこか憮然としていたのは、きめの細かい野球が全くできないカブスは実は中日より弱いと彼は発見したからだろう。要するにMLBとはいっても、今の米国野球はこんなものである。ある意味世界野球で日本が勝ったのはまぐれではなかった。ただあの時その可能性を知っていたのはイチローだけだったのである。実力の割に信じられない高額報酬、確かに市場としてはまだ世界一のだが、能力と適性報酬のバランスが崩壊したた点ではどこかでWSと同じ構造を持つMLBは米国の心とも言われる。皮肉だがホームランか三振という大味のパフォーマンスが優先の野球の試合内容は、柔軟性が劣化して二極化してしまった今の米国社会の弱点もどこかで代弁している。ここで本日のテーマにも帰結するのである・・。

ところで、これまで大衆が単純である事はスマートな少数が全体のかじ取りをするに都合がよかった。それは国家政策も市場からの収益も同じ。結果ピラミッドの様な形状のバランスが米国の強みだった。ただスプレッド(格差)が開きすぎた事で形状全体のバランスが崩れ、最近は企業のトップや政権が全体の舵取りをする事が難しくなっている。単純な国民が派手で単純な野球を好み、誰もが高額な金を払う。単純すぎる性質からのDISCIPLINEの欠落は、時の政権や金融市場の神様、グリーンスパンの想像を超えた事態を引き起こしたという事だろう。

そんな中オリバースートン監督が野球という米国の縮図をこよなく愛するブッシュの伝記映画を撮る。ブッシュは一時球団のオーナーになったが、同じ国技でもフットボールやバスケットボールではなく野球の球団オーナーになる事は白人ボーイズクラブ社会で特別な意味を持つ。例えばMジョーダン率いたブルズは90年代に6度チャンピオンになったがWソックスのオーナーも兼ねる白人資本家オーナーのレインドーフ氏は一度も泣かなかったらしい。しかしWソックスが2005年にワールドシリーズを勝つと、全米屈指の資産家の彼は夢がかなったと大泣きした。ここにブッシュがなぜ野球球団オーナーになりたかったが隠されている。そしてこの映画の脚本を担当するのが80年代のWSの狂乱と腐敗をテーマした話題作、「Wストリート」のスタンリーワイザーである事が非常に興味深い。「プラトーン」と「Wストリート」はともに米国の本質をとらえた秀作だった。期待したい・・。

2008年4月9日水曜日

KILLING FIELD(殺戮平野)

「KILLING FIELD」(殺戮の平野)、この言葉はポルポト政権下のカンボジアの惨劇を扱った映画で有名だ。しかし、今まさにこの言葉のイメージがそのままあてはまるのは実は今のシカゴ市の南部である。この事は日本で全く報道されないし、米国内のNEWSでもシカゴ地区以外ではあまり注目されていない。その理由として景況感がこのところ急激に悪くなったとはいえ、まだ全体の凶悪犯罪の発生率は同じスピードでは悪化していない事が挙げられる。しかし、今年に入ってシカゴの南部では公立学校に通う小中高生がその地区だけで20人も凶弾で死亡した現実は深刻だ。殆どがケンカによる発砲ではなく、不良連中とと全く関係ない子供達が流れ弾に当たったり或いは意味もなく殺されるケースである。

さて、そんな中で最近日本を激震させたNEWSは、在日米軍脱走兵によるタクシー運転手惨殺事件だろう。実はこの事件は様々な米国内の時事要因を内包していると考えている。そこでここではそれを紹介したい。まず私もわからないが、なぜ米海軍にナイジェリア国籍の米兵がいたかという事。確かに米軍のWEBサイトで確認すると、米国籍(2重国籍は除く)でなくとも米軍に入隊は出来るようだ。しかし実際の戦闘局面では言語上の意思疎通を含め、思想や規律的的問題を内包する多国籍兵と米国人が共闘作戦でもない限り混在するケースはほとんどない。よって、今前線の緊張からもっとも遠い所に位置する日本という場所にいる米軍は、そのレベルがどういうモノであるか、日本人は意識する必要がある。(MAJORITYの優秀な兵隊はなんらかの形でイラクとアフガン戦争に関わっているはず)

ところで米軍と言っても概ね200万人前後と推定される(現役兵は150万)その全体像は正確には開示されていない。ただ徴兵制が廃止されてからも、これまでその規模を維持できたのは二つの要因がある。それは①ベトナム戦争以後は入隊しても第二次イラク戦争までは大規模な戦闘に従軍する可能性が低かった事と、②ブッシュ共和党政権が演出した格差政策である。平たく言えば①は平和だったという事、では②の格差政策とは何だ。

当然「格差政策」などという政策が公式にあるはずがない。これは私の勝手な造語だ。しかしブッシュ共和党政権は暗黙のうちにこの政策を続けた。そして「必要なら100年でもイラクに留まる・・」と発言しオバマとヒラリーに攻撃されているマケインが仮に大統領になればこの政策は維持されるはずだ。ではどうやってこの政策を実行するのか。それには所得格差を維持し、高所得を得るためには高学歴を必要とする仕組みを作る。ただそれだけでは不十分。一番重要な事は学費の高騰を維持する事である。学費高騰を維持する?それでは国益に反するように聞こえる。実はここに共和党と民主党の考え方の違い、またそしてその趨勢は今回のタクシー事件も含め、米国軍傘下の日本の庶民生活にも影響する重要な要素があるのである。

今イラクやアフガンで戦っている米軍の出身地を見ると、大都会で育った若者は非常に少ない。その傾向は白人に顕著で、彼等は圧倒的に地方出身者だ。一方で黒人兵はNY地区ならハーレム以北のブロンクスエリア、そしてシカゴなら前述のサウスサイドの様な場所からの若者が多い。理由は簡単、中流家庭が多いとはいっても大都市を離れた中西部から西では高卒の肩書彼らに十分な仕事はなく、また大都会の荒廃地区の黒人層にも年間5万ドルと言われる大学などは夢の世界。そこに米軍は8年の最低拘束期間の従軍を完了するば、大学の学費補助を含めたキャリア優遇プログラムの甘い話を持ちかける。これが今世界に展開する米軍の基本的な兵員充足システムである。言い換えるならば、このシステム維持のためには「格差社会」が必要となり、底辺からの脱却を目指す若者のエネルギーをそのままイラク戦争に使っているのである。

ただ個人的にこのシステムは時に有効とみる。なぜなら貧しい家庭の優秀な子供には大学もサポート体制を整えている。その意味で本当に頑張る努力家には道は閉ざされていない。しかし民主党が主張するような学費低減が実現してしまうと皆が大学に行けるようになり、軍隊に行く必要がなくなる。イラクやアフガンで死ぬ確率高い今は尚更である。すると今度は大学数の過剰が生まれ、結果的にレベルの低下や経営の危機という弊害が生まれる可能性がある。また民主党の主張の弱点は、彼らは国内の格差を攻撃する一方でイラクを非難しながら時に中国、北朝鮮、セルビア、イランなどには共和党以上に強硬策を主張する。ただこれも格差に対するアレルギーだろうか、イラク戦争の様な特定の一部を利する様な戦略戦争は情緒的に批判しても、民主党は国際戦略上の焦点は非常に広範囲だ。その発想は平和時ならいいが一旦世界全体を巻き込むような劇変が起こると大変だ。なぜなら民主党政権では兵隊がいない?などという皮肉も起こりうるのではないか。

極論では格差を無くすという事はどういう事か。皮肉だが、軍隊においては徴兵という事が起こり得るという事である。リベラルな民主党が政権を取ると徴兵制度が復活し、戦争大好きな共和党政権下では逆に志願兵隊の充足システムは機能する・・?。自分の子供を含め、次の世代はこの皮肉をしっかりと理解する事が肝要だ。そしてそれは自らの自立心の問題も含め、米軍に国防を頼りながら一方でその存在が日増しに厄介になっている今の日本にも言えるのではないか。

2008年4月3日木曜日

JOIN OR DIE(結集せよ、さもなくば死だ。ベンジャミン フランクリン)

春は新しいテレビ番組が始まる。それは米国も同じ。HBOでは看板番組だったソプラノスが終了してしまったが、新しく建国の父の一人、「ジョンアダムス」の伝記が始まった。

そもそも相場をやる以上はTV番組をバカにしてはいけない。なぜなら制作側は世情や流行りに合わせて次のテーマを探す。その道のプロたちが選んだテーマや趣向には、次の潮流を予見するに必要な要素が多分に含まれている。その意味ではブルーンバーグよりも先見性に優れている。

その「ジョンアダムス」だが、番組には米国建国の父が沢山登場する。アダムスは第2代大統領。初第のジョージワシントン、第3代のトマスジェファーソン等、「建国の父」と呼ばれる人達がいかに苦労して米国の独立を勝ち取ったかが興味深く描かれている。中でも最も異彩を放っているのがベンジャミンフランクリンだ。

建国の父といってもワシントンは軍人、そして彼以外は、今のIVリーグに連なる大学を卒業した法律家や学者である。多くは英国から移民した裕福な実業家の子孫でどこかに英国の矜持である「権威」「厳格」「節制」「勤勉」といった基本概念を持っていた。

しかし本国のジョージ3世が植民地の13州に重税を課し、その事が結果的に独立を促したとはいえ、初期の段階では英国への帰属維持を主張する派と独立強行派とで13州の足並みは乱れた。そしてそれを纏め上げていく上で重要な役割を演じたのが主人公のアダムスと、ベンジャミン フランクリンである。

そのベンジャミンフランクリンは独立戦争に先立つ仏/インデイアン連合軍との戦いから、本国英国との戦争において、後世の米国人に多大な影響を与えたといわれるJOIN OR DIEという有名な言葉を残した。また彼は興味深い以下の13の訓戒も残した。

①節制
②沈黙
③規律
④決断
⑤節約
⑥勤勉
⑦誠実
⑧正義
⑨中庸
⑩清潔
⑪平静
⑫純潔
⑬謙譲。

ベンジャミンフランクリンは米国の金融市場関係者が最も愛する100ドル紙幣の顔だ。しかし今の米国とその市場には⑦~⑬の後半の訓戒は存在しない。そんな中、今日はポールソン財務長官は再びバンドエイドでしかない金融市場改革案を発表した。

だがいつまでもこんな表面的な修正案しか出てこないようではこの国は危うい。その意味で、ドラマJOHN ADAMSを沢山の米国人が見て、建国の父達の矜持へ立ち返る事を願うばかりである。

そういえば、日本では、来年から3年に渡り放送予定のスペシャル大河「坂の上の雲」の背景を、NHKは先週わざわざ「NHK特集」として紹介していた。

そもそもNHKがこの名作のTV化を計画したのは5年前。だが脚本を担当していた野沢尚氏が突然自殺。当時NHKの「プロジェクトX」が日本経済の復活に果たした役割に注目していた自分としては、その時に「坂の上の雲」が果たすであろう影響を想定しながら売れっ子の野沢氏の突然の自殺の不自然さを指摘した。

そんな紆余曲折を経ていよいよ撮影が始まった「坂の上の雲」は、不祥事に揺れるNHKとしては異常な力の入れようだ。ロシアの宮殿を借り切ってのロケを含め、何もかもがTV番組としては前例がない試みである。そして、この小説を読んだ人なら誰でも納得するはずだが、映像化されたこの小説が今の日本人に与える影響は恐らく大きい。

NHKの意図しているところが、日本人の自信回復である事は言うまでもないが、米国人がジョンアダムをみるべきように、司馬氏が示唆したように、日本人は日露戦争という大成功の体験からわずか40年で太平洋戦争の大失敗へ突き進んでしまった原因の分析も示唆することを期待したい。

2008年3月22日土曜日

終末の始まり

人間が我慢をしなくなった・・。冷戦が終わり「重し」が取れた先進国の人間社会は、一部日本の様な例外を除いて皆が我慢しなくなったといってよい。その意味での米国の転換点を思い起こしてみた。そこで注目したのはTVだ。TV番組は世相や世情を先取りする事で視聴率を稼ぐ。よってここにヒントがあるのではないか。

この10年間米国で最も話題となったのはTV番組はここでも何度も紹介している「ソプラノス」である。CNBCは番組の中の場面を引用し、最終回の場面をクリントン夫妻は自分たちが演じ、そのパロデイーをインターネットで配信する事で選挙戦への弾みを狙った。そして、私自身もこの番組にハマった。この番組の特製スタジアムジャンパーをネットで購入した。40過ぎてそんなものを着ている日本人は恐らく私だけだろう。

しかし一体この番組の何がそこまで面白かったのだろう。振り返ると答えは一つ。主人公のイタリアンマフィアは家庭では普通の親父。娘の成長に目を細めながら出来の悪い息子に悩む。気性の激しい妻はいつもヒステリー。そして仕事はギャング。裏切りに悩み、カウンセリングに通いながら人を殺す。

主人公のキャラクターが、斬新でありながら庶民的なコントラストの妙が人気の秘訣なのは間違いない。しかし人気の理由はそれだけではなかったと考えている。まず一つに人間の劣化。真面目な番組は、人がもっと真面目だった時代に多かった。主人公のトニー ソプラノスは人殺しだ。仲間の裏切りも許さないが、自分にとって都合が悪い相手は誰でも殺す。要するに、家族という個人的、最少単位の社会では彼は我慢をする。
しかし逆に本来我慢をしければならないはずのソーシャルな社会で彼は我慢できないのである。要するに社会に対して甘え、自分の弱さを暴力で表現している。そしてそれが今は共感を呼ぶ時代になったのである。

最初はこの「劣化」はTVや映画の中だけだと考えた。しかし今の米国の現実は違う。一見世界の中の正義を言っている大統領候補者も、実は自己の利益で世界全体の正義を考えているに過ぎない(特にヒラリーとマケインの世代)。そしてWSをみると、高給を食んだ彼らは、自らの失態や失策を反省するよりも助けてもらう事が当然という有様である。故に本来規制当局の役割もあったはずのFED(中央銀行)の責任(グリーンスパン)は大きいが、今さらどうする事も出来ずに右往左往している。

私自身の劣化も含め、結局はここにソプラノスが受け入れられる土壌が出来ていたのである。

ところで、70年代は60年代の好調の後に起こった苦難だった。その意味では繁栄の90年代を振り返る今と同じだ。ただその時の米国人はまだ「耐える事」を知っていた。だからボルカーは短期金利を20%まで引き上げられたのだ。その時代の名作といえるTVが多かった。「大草原の小さな家」。最近DVDを購入した。子供にも見せたいのだが彼らはどうやっても興味を示さない。

モラルを問う力がなくなると、米国は自らのモラルの低下を他に許容させ、大混乱になった後で自身が暴力的な解決策で打開するといった事を考える可能性がある・・。ベアスターンの倒産などどうでもよい。どうみても世界は悪い方向に向かっていると思わざるを得ない・・。

2008年3月6日木曜日

オバマのすべて

選挙戦をカバーするマスコミは、マケイン&ヒラリーとオバマのスピーチを比べ、その内容の細部について同じ議論を繰り返している。だが、実は最大の違いは細部でなく、米国に対するコンセプトである。具体的にはヒラリーとマケインは、米国とそれ以外の利害関係を「自分と相手」という「二人称」のコンセプトで話すのに対し、オバマのスピーチのコンセプトには米国を三人称以上の関係の中でその利害を考えている事がよくわかる。即ち、ヒラリーとマケインにとって米国は、「AMERICA IS UNIVERSE」であるの対して、オバマは「AMERICA IS ONE OF THE MATTER OF UNIVERSE」という違いだ。

マケインとヒラリーの二人は、右と左の違いだけで、基本的にベービーブーマー以前の世代を代弁している。そしてオバマはそのより新しい世代から尊敬されている。以前も触れたが、米国のベービーブーマーは知る限り近代史で最もラッキーだった世代だ。なぜなら大戦を知らず、ベトナムも大学に行けば回避できた。そして不景気だった70年代も彼らはまだ若かったのでそれほど金に窮せず、そして子育ての時期にはレーガン以降の拡大期に郊外に家を持てば、引退時には2~3億の金融資産を持っている状態が普通の人でも十分可能だったのである。だとすればこの世代に必要なコンセプトはまさに「AMERICA IS UNIVERSE」そしてその中で相手を敵か味方かで選別していけばよかった。要するに指導者は優秀でも末端は単純でよかったのだ。

しかし今、次の大統領がマケイン、ヒラリー世代がら出るのか、或いはオバマにバトンが渡されるのか。衰退の現実の中、その意識がない米国が誰を選ぶかは米国の運命そのものである。そこでここで「オバマの全て」を日本のMEDIAに先駆けて紹介する。以下はMSNBCで特集された彼の人生である。

<オバマ物語>

「バラック」は共にハワイ大学の学生だったケニア出身の父と白人米国人女性の間に生まれた。その後オバマシニアは公費で博士号取得の為ハーバードへ留学。両親は程なく離婚した。結局バラックは父とは2歳で別れ、次に父と再会したのは彼が10歳の時だった。その後父は交通事故で亡くなったので、バラックには父との思い出は少なかった。しかし父の国で「バラック」とは「エレガント」を意味する言葉の通り、父は離れていても手紙で人間として一番大切な「勤勉」と「正義」を教え続け、また母も離婚してもオバマシニアがどれほど尊敬できる人だったかを常に聞かせたという・・。

時は戻り彼が6歳の時に母はインドネシア人実業家と再婚。一家はインドネシアに移住した。そこではバラックは様々な人種に触れ合う。小学校はインターナショナルな雰囲気、そして新しくできた親族には中国系カナダ人もいた。その間も母はオバマに英才教育を施し、朝4時にバラックを起こすと3時間の英語の勉強を徹底させてから仕事に出かけたという。その後バラックが9歳の時に再び両親が離婚、母とバラックは再びハワイへ戻った・・。

ハワイに戻ったバラックは名門私立に入学。当時の彼を知る日系人教師のMR.クスノキはバラックの突出した自己表現の才能に驚いたという。そしてバラックはバスケットボールでも才能を発揮、しかしその頃から彼は「一体自分が何物なのか」と悩み始めた。米国人、黒人、ただそれ以外にも多様なバックグランドど才能をもった彼は、様々な思想や宗教本を読みあさる一方で酒や薬にも手を出したという。そして苦悩はCAのオキシデント大に入ってからも続いた。ただ大学生活の過程で自分の中の一つの才能に気付き始めた。それは周りの人が自分の話を聞いてくれるという事であった・・。

この才能に気づいてから、彼はおぼろげながら自分の進むべき道を感じ始めた。そして2年後にはNYのコロンビア大に転入、そこで政治学を専攻した。この頃までには彼はドラックと決別し、そして卒業と同時にNYのコンサルタント会社でアナリストの職を得た。(このドキュメンタリーでは触れられていないが、個人的にはここで彼は市場原理の有効性を感じたと想像)しかし、彼の中に芽生えた本質とこの仕事は同化せず、ある日は彼は新聞に掲載されたシカゴの地域社会貢献員(COMMUNITY ORGANIZER)の仕事に注目。そしてインタビューでその仕事を得ると、そのまま荷物をま纏めシカゴへ車で旅だった。ただシカゴはバラックにとって初めての土地、そこで彼の人生に何が待っているかは判らなかったが、彼の政治家への第一歩は既に始まっていたのである・・。

ここまでの話からも彼は片親だったが貧しい境遇で育った訳ではない事が分かる。その彼にとって当時のシカゴのサウスサイドは想像を絶する世界だった。そして困窮の中で退廃したシカゴの黒人層は、同じ肌の色でも仲間とは言えない彼を拒絶した。しかしそれでも彼の努力は続いた。職のない若者に仕事を斡旋し、学校をやめてしまった子供の勉学への復帰を手伝った。しかしついに彼はある結論に到達する。それは草の根からの改革には限界があるという事だった。そして彼は将来の政治家としての自分を想定しながらハーバードの法科大学院へ進んだ。大学院で学ぶ傍ら彼は長期休暇ではシカゴでの活動を続けた。そして後に妻となるミッシェルと出会う・・。

そしてバラックはハーバードで輝かしい金字塔を打ち立てる。ハーバード法科大学院の最高峰の勲章であるHARVARD LAW REVIEWに、米国の歴史より長い歴史を持つ同大学の歴史上、黒人としては初めて彼が選ばれたのである。そしてこの勲章をもってすれば、そのままハーバードの教授や高等裁判官への道が開け、また民間の会社ならどこでも好きなところを選べたにもかかわらず彼はシカゴにCOMMUNITY ORGANIZERとして戻った。余談だがこの記述に誇張は全くない。なぜならこの話に登場するハーバードの同期生やシカゴのサウスサイドの下院議員は、報酬では比較にならない仕事を選んだ彼の意志を皆が驚嘆している・・。

その後彼はシカゴ大で教鞭をとりながら地道に活動を続け、丁度この頃ミッシェルと結婚、また母の死を経験した。そして遂に機は熟したと判断、彼は96年にイリノイの州議員選挙に挑戦した。しかし彼はそこで地区の民主党代表選考会で今と同じ古い世代からの抵抗を受けた。当初は代表に選んでもらえない苦境に陥ちたが、何とか本選に辿り着くと選挙では圧勝してIL州上院議員院として政治家の第一歩を踏みだした。ただ州議員としてのバラックは異質な存在だった。なぜなら当時から黒人の議員は多くいたが、バラックの様な煌びやか経歴を持った人は殆どいない。彼はローカル議員の抵抗にあった。そこで彼は早々に州から国家レベルへの挑戦を決断する。州議員になって僅か3年目の2001年、彼は現職の上院議員へ挑戦。しかし惨敗したのである・・。

その惨敗直後に9.11のテロがあり、州の議員の仲間にはビンラデインの「オサマ」と「オバマ」の発音が似ている事を笑う者もいた。そんな低次元にさすがのバラックも政治の世界への興味が失せ始めた。だがそこで運命の転機が来る。ブッシュが本来もっと叩かなければならないアフガニスタンからイラクへ舵を切ったのだ。これを見たバラックは街頭でブッシュ政権の画策を糾弾。イラク戦争を阻止する目標に向かって彼の政治へのエネルギーが復活したのである。流れというものは面白い。続いて予定されていなかった現職上院議員の引退に伴い再びバラックに上院議員へのチャンスが来た。

そして、民主党候補を決める予備選挙で二人の白人候補に圧勝すると、初めて「オバマ」という名前がイリノイを超えてワシントンにも聞こえる様になった。そして2004年、今につながるブームの初期には、自身が共和党候補との上院選を戦う身でありながら、大統領選挙を戦っていたケリーの応援として民主党党大会のゲストに呼ばれたのである。(因みにこの時のスピーチはその内容の素晴らしさに多くの若者が感銘を受けたといわれる。実は私の娘が通う高校はヒラリーの母校でありながら、皮肉な事にこのオバマの2004年のスピーチを教材に使っている。)そして2006年の中間選挙ではヒラリーをさしおいて彼に応援演説の依頼が殺到、民主党大逆転の原動力となった・・。
(以上 MSNBCのドキュメンタリーから)


MSNBCはヒラリーのドキュメンタリーも流した。そこでは彼女が史上初めての女性大統領にふさわしい人物である事が証明されている。またマケイン版では、アカデミックな背景はこの二人に劣るものの、彼が空軍パイロットとして2度の九死に一生の危機を乗り越えた凄さは証明されていた。要するに、今米国が大統領選挙で盛り上がっている理由は、史上初の黒人大統領か、女性の大統領が誕生するかという期待感だけが要因でない。これだけの資質を持った人がこの国にはいる事が実は重要なのだ。そしてそれは最後の最後に米国の希望につながるだろう・・。