2008年9月27日土曜日

<今日の視点>糖尿病の死体に群がる輩

共和党保守派を語る前に、ポールソン財務長官の一連の歴史的処置で著名な市場参加者がどのように関わったを触れておく。まずPIMCOファンドのBグロス氏は先のGSE救済法案の必要性をCNBCにて主張。呼応するかのように翌日財務省は救済案を発表してGSE債は急騰した。NY TIMESによれば、PIMCOがこの処置で得た値上がり益は発表当日のGSE債だけで1.7Bに達したとの事(NYTIMES)・・。

またバフェット氏は政府が救済案を出す事を前提にGSへの大型投資を発表。翌日の上院公聴会ではバーナンケを含めた救済案を推進する政府関係者が「あのバフェット氏でさえ救済案を前提に投資をしている・・」と法案推進の材料にバフェットの投資行動を用いた。ただよく考えるとこの論理は中立のはず政府とバフェットが互いに握り合って公的資金の出し手としての納税者を後から市場に参加させている事になる。そしてビルグロスはポールソン案が実行される場合において、PIMCOと自分自身が無給のアドバイザーとして政府に協力する事を申し出た。(NYTIMESは実現の可能性に否定的である)

そしてポールソンはGSEと今回の法案に外部のモルガンスタンレーにその原案設立に関与をさせたが(CNBCゲスパリーノ氏 )要するに、共和党保守派が法案に反対する背景には、Bグロスやバフェットといった著名な投資家の投資行動と、ブッシュ政権の政策とのINTEREST CONFLICT(利益競合)への怒りがあるである。よって今回彼らが唐突に持ち出した代替案は著名な大学の学者が考えた物がベースにあるという。

ところで、どの案が出たとしても個人的に米国は未だ問題の本質を理解していないと感じる。本質は簡単、糖尿病である。そして糖尿病は難病である。遺伝を除けば代表例は飽食が正常な神経機能をマヒさせ、結果今度は必要な栄養が末端にいかなくなるという飽食が原因の飢餓。難病の理由はそのジレンマである。

そしてこの栄養を資金の流動性に置き換えれば今の金融市場の状況がもっとも解り易い。そもそもは中央銀行による過剰な流動性(栄養)が原因でバブルが起き、逆流(神経系の不調)が始まると一気に資金が流動しなくなる。(適切な栄養が細胞に到達せず尿にとして出る))結果、中央銀行は緊急処置を連発(インシュリン投与)。ただし根本的な解決にはならない・・。

いずれにしても、この難病になると食事制限とインシュリンで時間を稼ぐ。ただ一番大事な事は、米国自身が体質を変えるための苦痛を受け入れる事。しかし選挙を前にして誰も国民に苦痛を我慢しろとは言わない。よってこの米国ではこの難病が治る可能性は低い。そして「死」という敗北を迎える時、全てを失うのは弱者である。

なぜなら国家が敗北して仕組みが変わる時が最大のチャンスである事を少数の勝ち組の強者は知っているからだ。共産主義が敗北した直後のソ連にオルガリッチが生まれた様に市場原理が敗北した米国にも触手が伸びるはず。その意味ではこの米国の敗北はビルグロスやバフェット、またソロスにもチャンスである。ただ政府案にロングのバフェットに対して、ソロスはショートで臨む様子がコメントからは窺われるのが興味深い・・

2008年9月24日水曜日

<今日の視点>米国の懺悔。誰が懺悔すべきか

財務省が提示した救済法案の議会審議において、何人かの上院議員は国民の税金から700Bを投資する前提に、この事態を引き起こした責任と、救済法案の実務責任の所在を明確にする必要を強調している。その前に、普通の米国人で今の財務長官が誰であるかを答えられるのは米国全体ではせいぜい6~7割だと考えている。その中でポールソン財務長官がGSという証券会社の会長だった事を認知している国民は全体の4割程度ではないか。まずこの程度の構造の中で公聴会が進んでいる事を認識しなければならない。

そして議員はこの救済案によって救済される金融機関が懺悔も無しに救済を超えて再び大きな利益を得てしまう事のリスクを感じている。特にこの救済案の提案がGS出身のポールソンから出された事にどうしても懐疑的にならざるをえない様子である。

確かにCNBCのゲスパリーノ氏によれば、前回のGSE法案とこの法案には財務省内の職員というより、ポールソンが指名した外部のモルガンスタンレーのTASK-FORCE(特別チーム)が深くかかわっているという。その噂も議員に多少は影響しているかもしれない。ただ結論からすると議員に勝ち目はない。なぜなら同じ論理上ではまず懺悔しなければならないのは上院議員だからである。

そもそもポールソンは望んで財務長官になってはいない。ブッシュに請われてなったまでだ。その際にポールソンはGSが上場してから有していたGS株の売却益900M(1000億円)の内600Mを寄付している。

そして上院議員が懺悔しなければならない理由は、上院がその義務を果たさなかった事である。まず下院にはなく、上院にある権限(責任)は国家公務員の承認権だ。ブッシュがWSからではなく、それもGS出身のポールソンではなく、清廉潔白でクリーンな印象の財務長官を選んでいればこの審議も簡単だったかもしれない。ただ暗黙にポールソンの出身が問題になるなら、彼の就任を問題視しなかった上院は当時の自身の機能停止を認めるべきだろう。そして全員が過去の失敗を水に流しこの危機に対峙する覚悟があるなら、WSの懺悔を要求する前に議会が国民に懺悔するのが先だ。

ところで、今日の審議ではポールソン財務長官の隣にいたバーナンケFED議長が非常に面白かった。 彼は終始苦渋の表情だったポールソンの隣でどこか他人事の様な表情でいつもの淡々とした学者の様な解説をしていた。面白かったと表現したのはバーナンケの表情が退任した福田前首相に類似していたからだ。

実はこの二人には共通点がある。それは自分に役が回ってきた時点であふれ出した難問はその大半が前任者以前の時代に起因している事だ。そしてある程度その困難が自分に降りかかる事を覚悟して大役を引き受けた点だ。その意味では今の事態の責任を一方的に押し付けらるのはアンフェアーかもしれない。特に民間の証券会社の会長として1000億も貰ったポールソンと同じ土俵で批判されるのは大学の学者だったバーナンケには納得がいかないはず。

いずれにしても、人はこの様な状況に追い込まれた時、直面する困難を他人事のような表現をする事で自分の宿命をごまかすのかもしれない。福田前首相とバーナンケはどこか似ていた・・。

2008年9月23日火曜日

<今日の視点>米国のパラリンピック

先週、株の安値は混乱の乱高下の中では生まれず、寧ろ規制が強化された後の静かなマーケットで付けるだろうと予想した。ところでFED(中央銀行)の発表を額面通り受け取れば、本日は長いWSの歴史が終わった日である。FEDが本気で規制を強化するなら、ゴールドマンとモルガンスタンレーが銀行になるという事は両者を支えた優秀な人材は恐らくはプライベートエクイテイーなどに流れ、残った会社にはこれまでの利益水準を稼げる人はいなくなるという事に等しい。

それはポールソン財務長官の救済案についても同様だ。民主党の重鎮とマケインは政府が税金で不良債権を買い取るにあたって対象となる金融機関のトップの給料に上限を設けるべきという点を頑固に主張している。マケインは選挙対策もあり40万ドルという具体的な数字を出している。ただこれまで40M(億)を取っていたCEOが40万ドル(4千万円)ではプログラムへのインセンテイブ(参加意欲)が薄れるとポールソンは反対している・・。

いずれにしても、米国は暫くは「見えざる手」を失う事になるだろう。そんな中での注目はロシアと中国。そして別の意味で日本が評価されてもいい。理由は北京オリンピックとその後に続いたパラリンピックを見れば一目瞭然だ。まずパラリンピック競技を米国は殆ど報道しなかった。オリンピックであれ程マイケルフェルプス一辺倒だっただったNBCは、いくら金にならないとはいえ、MEDIAとしての品格が疑われる様な温度差である。そしてきちんと報道していたNHKでは、前回との対比で閑散とした4年前のアテネのオリンピックスタジアムが映し出されていた。そもそも米国がパラリンピックの報道に興味がないのは判る。ただ日頃は人権や人道を叫んでも、それぞれが勝手に動きだしたユーロ圏の求心力のなさの本質がこんなところでも覗えた・・。

その点中国は違った。オリンピックに続きパラリンピックにも満杯の観客が入っていた。それが政府主導の結果かどうかはわからない。ただその求心力と日本の報道の姿勢はそれぞれの観点で次の時代への光明を感じた。また旧ソ連の流れをくむロシア圏の国々は、競技の結果に対して覚悟を決めていた。禁止薬品に対しても他の先進国の躊躇とは対照的なしつこさだ。彼らにはモラルという言葉は通じない、ただそれはそれで限界で戦っている証拠だろう・・。

ところで嘗ての米国には健全な体に健全な魂が宿っていたはずだ。ただその時代が終わり、皆が金と消費の世界観にどっぷりと漬かってしまった。そして金融もスポーツもステロイドが蔓延、ついに米国は転でしまった。ステロイドの時代の継続が不可能になった今、米国は暫く彷徨うのではないか。なぜなら今の米国は、転んで起き上がってみるとこれまでの成長を支えた欲望への「見えざる手」が意図せずに折れてしまった危険を感じる。この姿が私には米国自身のパラリンピックがこれから始まろうとしている様にも見える・・。

2008年9月19日金曜日

<今日の視点>アンクルサムとは誰だ

アンクルサムとは誰だ。最近はこの疑問がよぎる。通常「アンクルサム」は、米国人が米国自体を擬人的に指す時に使うが、昨日のABC NEWSのインターネット版には「それでは一体誰がアンクルサムをBAILOUT(救済)するのか?」という論文があった。真にその通り。サブプライム危機の表面化以来、昨日時点でFED(中央銀行)は900B(90兆円)を市場に供給した。そして一方財務省は どういう状況にあるかというと、1997年/5.95T(兆ドル) 2002年/6.4T 2003年/7.38T 2004年/8.18T 2006年/8.97T 2007年/9.81Tと、ブッシュ政権は1941年に法制化された国債総発行額の上限額を毎年の様に引き上げてきた。そして下のWEBサイトクリックすると、今時点の発行額がライブで見れる(9.64T)。http://www.concordcoalition.org/learn/debt/national-debt

現行法の上限が9.81Tなので、財務省はこの上限を超える歳出を本来救済策に盛り込む事は出来ない。そこで前回の住宅ローン救済法案を通す前、政府は事前に今年度の上限を10.06Tまで引き上げる事を打診。議会の内諾を得て救済法案をぎりぎりの予算で叩き出した。だからGSE(政府系住宅ローン会社)に200Bをつぎ込んだ後は2010年からはGSEのバランスシートを毎年20%落とすという実現性が疑われる内容でお茶を濁したのである。

そして誰が見てもアナウンス効果を狙っただけとしか思えないGSE救済案に加え、今回は新RTC機構の構築に追われている。この新RTCは前回の模倣ではなく、大恐慌後に発令されたHome Owners Loan Corporation型になるとも言われるが、いずれにしても現在の発行額と、議会が内諾した新上限までの余力は960Bしかない。ここからGSEに200B出て行くとして、残った余力で一体なにが出来るのか。何も出来ない。だから再び上限が上がるはずだ。今は誰も止められない。要するに破産しているのはベアでもリーマンでもGSEでもなく、本当は米国である。

ただそんな米国に対して最大のインチキ会社である格付け機関は米国債の格下げを行わない。そして最大の本質は、米国は「アンクルサム」とは都合が悪くなると自分の事ではなく、別の分身のように扱う事である。借金を背負って破産寸前なのはアンクルサムであって、彼はその状況でも困った自分を助けに来ててくれる。アンクルサムとはそういう存在である。そしてそのアンクルサムを周りの世界は信じてこれまで助けてきた。ただアンクルサムが今回は本当に危ないとして、その彼をBAILOUT(救済)するのは誰になるのだろうか・・。

<右肩下がりの救済>

1年程前、視点で「田舎で暮らそう」を書いた頃、東大生などの日本のエリートの卵たちがゴールドマンサックスやモルガンスタンレーといった外資系証券を目指す現象が重なった。相場のベテランなら誰でもその時が転換点である事は感じたはずだ。そのモルガンスタンレーとゴールドマンの会長は共同でSEC(証券取引監視機構)に違法な空売りのコントロールを願い出た。ただ市場は冷徹。完全に次の次のシナリオまで織り込みつつある。

ところで、政府の救済についての基準で思い出すのはクライスラーである。当事あれほどの大事件となり、その後も近年に至るまで政府による民間企業救済の代名詞だったクライスラーの救済において、政府が注入した優先株はわずか1.2B(1200億円)だった事が本日のNY TIMESで知った(社債は除く)。有名なアイアコッカの活躍や、そして何よりもまだ時代が右肩上がりだった事で政府のこの直接投資は十分なリターンだった事が改めて確認された。

では今の時代の救済はどうか。個人的にはまず米国自身が右肩上がりとは考えられない。よってAIGが2年で収益を回復するとは全く思えない。その場合は政府発表とは違い、税金に欠損が発生する。そこで「右肩下がり」の中、常識に沿って救済の基準を考えると、クライスラーは車の性能はともかく、物を作り、人を雇い、経済を裾野で支えたのは事実だ。では救済されなかった証券会社のリーマンはどうか。そしてモルガンやゴールドマンはどうなる。金融は世の中を豊かにする為には必要だ。しかし、どこまでが必要な金融でどこからが博打になるのか。米系の大手5証券会社の1年間のボーナスが2兆円だったのは昨年の事。この数字は何を語るだろうか・・。

2008年9月17日水曜日

<今日の視点>米国の一番長い日

少し前にNHKではポツダム宣言受諾を昭和天皇が国民に向けてラジオ放送した8月15日の「終戦記念日」から、実際にポツダム宣言にサインをした9月2日の「敗戦記念日」にかけての日本の混乱を特集していた。今週の米国の姿からはその昔、岡本喜八監督の「日本の一番長い日」を見た時の記憶が蘇る。

今の米国は敗北しているにもかかわらず、それをどう国民に判らせるかをめぐって当事者たちが混乱している。終戦の際の日本も敗北を認めない者や、敗北を知った際の兵隊や国民の動揺がどんな更なる混乱を齎すか判らない恐怖に慄く指導者達がいた。「日本の一番長い日」は最後三船演じる阿南陸相の壮絶な切腹シーンで終わる。今のこの国には切腹する人はいない。よって混乱は収まらないだろう・・。

さて今日はモルスタが材料だという。最早何でもよい。FEAR(恐怖)に混じって「火事場泥棒」がこんなにいるとは今更ながら驚きだ。今人類は増えすぎたMONEYの怖さをまざまざと味わっている。やはりグリーンスパンの責任は重いかもしれない。彼には「あの映画」を見せてやりたい・・。

米国市場と原爆投下。本日の市況から 

傍から見る分には勝負事は面白い。直近、世界情勢の緊張とペイリン効果で共和党は盛り返したが、今回の金融危機は明らかに民主党に追い風となった。そして昨日の二人の大統領候補の声明を聞くと、ここにきて政権がWストリートを救済をしないと言明している理由の一端が明らかだった。まず昨日はCNBCにナンシーペローシ下院議長が登場。そもそも彼女が経済専門のCNBCに出るのは珍しい。

彼女はそこで今回の金融危機を招いた共和党の失政を批判した。一方マケインは今回の危機の原因はWSの非常識な強欲の結果であると反発。そしてオバマはブッシュ政権が金持ちの強欲の実現の為にその他一般が犠牲になり、ここにきてその救済にまた弱者が犠牲になろうとしているとの声明を発表した。個人的にはマケインに同意。ただ今は共和党に分が悪い・・。

政府はGSE(政府系住宅ローン買取会社)を救済した以上、民間の個々の危機には出動しないと発表。その一貫性を強調している。しかしベアとリーマンとは状況が違う(ともに消滅した証券会社)という説明はまやかしだ。ソレはリーマンが亡くなり、その処理に追われている金融関係者が一番知っている。

ただ選挙戦が深まる上で、この後誰が助けてもらえて誰が助けてもらえないないか。その予想は選挙の観点で考えるのが一番いいだろう。個人的には「市場」は保護されない一方で、地銀ではない規模の巨大な商業銀行の場合は預金者保護は優先されるとみる。その場合、話題のはワコービアはどちらに入るのか微妙である。尚、AIGは救済に$400B(40兆円)かかるという。


ところで仮に選挙が悪影響となり、「市場を救わないで預金を救う」という行為がこの後も起こり続けるとしたらどうなるか。元々米国の金持ちはSAVING(普通預金口座)には最低金額を預け、大半は資産運用をしている。そしてSAVINGにしかお金がない庶民と、SAVINGにも金がない大多数の庶民は仮に救われても米国の富における比率は微々たるモノである。だとすると市場を救わず預金を救う行為は自殺行為に等しい。急落しているGSの株価。そして渦中のAIG社の中興の祖で大株主のグリーンバーグ氏個人はこの2週間で6B(6千億円)を失ったというスピードとそのマグニーチュードは当に金融市場に原爆が投下された様なものである・・。