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共和党を代表するテレビタレントにグレンべックという男がいる。彼は昨年世界が南アのワールドカップに熱狂する様をみて、” みろ、だから俺はサッカーが嫌いなんだ”と平然と言い放った・・。
良くも悪くもこれが今の共和党かもしれない。小世界の米国が大世界の地球を眼下に置かないと気が済まない。だから世界と協調し、新しい米国の姿を模索するオバマ政権は軟弱で許せないのだ。だが今の米国ではこの様な狂人集団はマイノリティーである。特に若者は今の米国に絶対性など感じていない。だからこそ国民が団結する必要もそれなりに判っている。その象徴が米国の女子サッカー代表チームだ。チームの愛称は”ヤンクス”と“スターズアンドストライプス”。言うまでもなくヤンクスの愛称はヤンキースが有名だが こんな愛称がつく背景にはこの代表チームは米国には珍しい「国家的」な存在であり、時に国威高揚の意味が含まれているからである。そして今回のチームの実力は91年と99年にワールドカップを制したチームより上だとされた。ならば圧倒的迫力のワンバック選手に加え、美貌と実力にアバンギャルドが加わったのキーパーソロ選手をナイキがほっておくはずがない。ワールドカップ期間はかっこいいCMが連日流され、このチームが優勝する瞬間に向かってシナリオは造られていった・・。
そして昨日、米国人の友人一家を招いて観賞したゲームのESPNの解説は秀逸だった。始まって20分、米国はゴールポストという12人目のディフェンダーの存在に気づく。ただ震災を背負うナデシコの見えない力には米国は準備していたはずだった。
最早ゲームの解説はしない。ただ米国の立場で言うと、前半で12人目のディフェンダーに気づいたらなぜ得点後に油断したのか。米国はPKを想定しない致命的ミスを犯した。具体的には、金髪をなびかせ前線に有効なボール出し続けたラピノエ選手をワンバック選手が2点目を決めた直後に後退させたこと。彼女の交代で入った選手がPKの3人目として決定決な失敗をした。このコーチの采配はPK戦で頼りなるベテランのチェイニー選手が前半で負傷退場したいた状況からすれば、米国にしては珍しい「想定外の判断ミス」だった・・。
それでも個人的には米国のサッカーチームにナデシコに劣らない好印象をもっている。なぜなら米国のサッカー代表は金まみれの他の米国スポーツにはない真摯さがある。特に人気も実力もある女子代表は、ソレにおごらず、コーチを他国から招き(米国のコーチはスウェーデンの名選手)練習量は世界一とされた。そしてその米国が大舞台で敗れた相手は日本のナデシコだった。
ただいくらナデシコに技と精神力があるとはいえ、普通ならありえない結末。ゲーム後、ESPNの解説者と同じ記憶がよみがえった。それは呆然とする米国選手の顔が、一体に何に負けたのか判らない表情だった80年冬季五輪のソ連のアイスホッケーのナショナルチームの選手と同じだった事だ。解説者はこの日本の勝利はあの時のアメリカに匹敵すると言った。
そもそもミラクルオンアイスと称されるその勝利は、米国近代史において単なるスポーツを超越した出来事としてジャーナリズムの観点からも注目される転換点だ。当時のアメリカは戦後において最悪期。発端はオイルショックとされるが、本質は戦後の繁栄のモーメンタムが失われた事だろう。クライスラーは倒産、街は失業者にあふれ人々はガソリンを求め長い列をつくった。
そして軍事力もソ連に勢いがあり、イラン革命で米国は国力の低下を露呈した。そんな時、米国の若い学生チームが最強と言われたソ連代表に勝った。事前にソ連のアフガン侵攻に抗議して米国はモスクワ五輪のボイコットを表明、ソ連は対抗処置で米国本土での冬季五輪を辞退すると思われた。しかし勢いに乗るブレジネフは、ソ連の強さを世界に示すために敢えて選手団を送り込んだ。その中心が職業軍人で占められたアイスホッケーの代表チーム。米国は直前の遠征でソ連のBチームに敗北、サイボーグの強さのソ連代表は事前試合でNHLプロ選抜を蹴散らした。
30年前、日本でNHKの衛星生放送で観たその試合の興奮は今でも鮮明に覚えている。ゲームは予想通り圧倒的にソ連が優位に進める中、途中から「神の意思」が漂った。そして米国が勝利した瞬間、普段はミラクルの言葉をあまり使わない米国が歓喜した。そしてこのどん底から米国はレーガン時代を経て頂点を極めたのは御承知の通り。一方でソ連は衰退へと向かった。
最後に、ゲーム後からずっと考えている。神はなぜ日本を勝たせのか。もし答えがなぜ大津波が日本を襲ったのかの延長なら、日本はミラクルオンアイス後の米国の軌跡を学ぶべきだろう。一方の米国も自分達がなぜ負けのかを自問自答すべきかもしれない。まあ今日の周りの米国人の雰囲気はグレンべックと大差ない。彼らには 野球 アメフト バスケットボールの米国発祥のスポーツがある。その世界のマネーは金融市場を媒介に今のところ衰える雰囲気はない。だが米国人の大半が大世界の価値観に興味がないというなら、その時はソ連と大差ない運命が待っているのはないだろうか・・。
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