2013年9月21日土曜日

時代劇のケミストリー






ふとみると、先進国では中央銀行のトップは国家元首より重要な存在になっている。そんな中で世の中の行く末を想像するに、江戸時代は重要なヒントを残す。

昔学校で習った江戸時代の三大改革(享保・寛政・天保)。それらに新井白石と田沼意次の政治を加えた5大改革。当時の幕府のマニピュレーション(改鋳)は、今の中央銀行の政策と似ている。


家康から100年、財政が逼迫した幕府は改鋳で資金を捻出した。最初は緩やかなインフレ政策が功を奏し元禄文化が生まれた(元禄・宝永の改鋳)。しかしそのバブルが崩壊すると、新井白石や吉宗は緊縮緊縮へ転換した。通貨の品質も慶長の頃に戻した(正徳・享保の改鋳)。この頃、今の時代劇のヒーローとして活躍したのが大岡越前である。彼はモラルや正論を重視した。あの大岡裁きは今も日本人の心の基本だと思う。


しかし改革の効果は長く続かなかった。幕府はリフレ政策に戻る(1736年の元文の改鋳)。その後で登場したのが田沼意次だ。彼は、同じ頃にイギリスやオランダで発展した資本主義と殆ど同じ重商主義政策で財政を回復させた。しかし副作用の賄賂や天災で失地、松平定信が実験を握る。

定信は正論やモラルを重視した。つまりストリートスマートではなかった。この時代、時代劇ヒーローとして、田沼と松平の治世を知る長谷川平蔵が登場する。彼は悪を正義のために使う方法を知っていた。もちろん鬼平犯科帳は池波正太郎の小説。だが平蔵の実績は十分にあの物語を実感させる。


そして寛政の改革の結果、デフレに戻ってしまうと、11代将軍の家斉は思い切った文政の改鋳を行う。常軌を逸したデバリュエーション政策だった。でも効果はあった。まさにバーナンキかアベノミクス。この後、幕府の通貨インフレ政策は幕府崩壊まで続く・・。


こうして迎えた江戸末期、水野忠邦が試みた天保の改革の効果はなかったが、だが崩壊の少し前、モラルと風紀退廃が混同された化政文化が花開いた。その時のヒーローが遠山の金さん。若い時ヤクザと交わり、実際に刺青をしていたという。長谷川平蔵を更に崩したような金さん(遠山景元)は、実際に鬼平の屋敷後に居を構えたらしい。(WIKI,)


改めて言うが、この3人は皆実在である。またTVで紹介されたヒーロー像は、その時代の江戸幕府の年齢と重なりほぼ史実と重なる。倹約重視、儒教の正論の大岡越前。初期の享保の改革では正解だった。だが中期の田沼と松代を比較すると、マネー経済で田沼が正しかった。この二人の下で悪党と対峙したは鬼平は、幕府から預かった金を相場で増やすという離れ業をする。アベノミクスの前、今の日本に必要なのは、大岡越前ではなく、長谷川平蔵だと訴えたのはそこだ。(参照 11・22・2012黄門さまより鬼平)。そして最後は何か善で何が悪かよくわらない桜吹雪・・。



今の日本では、遠山景元はまだ出てきていないと思う。しかし先を行く?米国には、ソレらしいキャラクターはごろごろしている。ならば今の黒田日銀は、緊縮に戻ることはなかった文政の改鋳に立ち、先を行くアメリカは、リベラル蔓延の化政文化の真っ只中かもしれない。



いずれにしても、待っているのは崩壊と新しい時代の始まりだった。なら未来を悲観することはない。ただ当然ながら、変革では社会は大きなボラティリティーを経験するはずだ。そこをスルーする人としない人。違いはケミストリーを感じる触覚をもっているかどうかではないか。




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