2013年10月17日木曜日

共和党の原則はアイザック・ニュートンとジョン・ロックから・・(マネー原理プロから)


ニュートン
ジョンロック

ノーベル経済学賞に、我々にもなじみの深い相場の専門家が選ばれた。(ファーマとシラー博士)世界の潮流といえばそれまでだが、個人的にはノーベル賞は自然科学だけでいいと思う。

にもかかわらず、経済や文学・平和など、敢えて正解の普遍性に欠ける学問にこの賞を送る意味はなんだろう。ルールを変えることで人間が幸福になるなら、その学問は価値があるという考え方だろうか。つまりプログレッシブ・・。

原理派とプログレッシブ派、保守派とリベラル派の対立。今のワシントンはこれを代弁している。社会に必要なのは原理原則。個人の自由を阻害し、余計なことまでする大きな政府はいらないとする共和党やTEA PARTYと、経済学やルールは人の幸福ためにあり、その執行のために政府は必要だいう民主党が対立している。

前者は財政規律どころか中央銀行さえいらないと言い(TEA PARTY)、後者にとっては財政は拡大すべきで中央銀行は神様である。(クルグマンやバーナンキ)

この違いの原点は、英国に中央銀行ができた17世紀末のリコインエイジに遡る。そしてそこで極めて重要な役割を果たすのが、偉業の度合いではノーベルなどぶっ飛ぶあのなアイザック・ニュートンと思想家のジョン・ロックだ。

この頃物理学で既に名声を得ていたニュートンは英国の造幣局長になった。当時の英国は金貨と銀貨の両方を機軸としたバイメタリック制度。しかしコインの金・銀(額面)と、大陸の商品(ブリオン塊)の価格との間でアービトラージが起きた。

英国銀貨より大陸で取引される銀塊の方が値段が高ければ、英国銀貨は解かされ、そぎ落とされて大陸に流出する。一方で大陸よりも高い価格に設定された英国金貨に向けて大陸の金塊は流れこんだ。結果英国の金は増加し銀は減った。

この頃英国の庶民の経済は銀貨で成り立っていた。フランスと戦う兵士に向けての給料も銀貨。その銀貨がなければどうにもならない。ところが当時は人の手で作ったコイン。形が崩れても流通した。だから英国は問題に気づくのが遅れた。

こうして1696年に英国の銀の量は半分にまでなった。当然ながら英国経済は大変なマネー不足に陥った。そこで国王は事態打開のための評議会を開く。その主要メンバーが造幣局長のニュートン、財務大臣ローデス、財務顧問のデイブナント、そして英国を代表する哲学者のジョンロックだった。  

そこで物理学者らしく金銀パリティー制の導入を主張したニュートン。一方ローデスは、財務長官らしくデバルエーションを主張した。これは時代も含めて江戸幕府の改鋳と似ている。(参考 9・21 時代劇のケミストリー)

そんな中、財務顧問のデイブナントは、木片(タリー)制度を進化させた信用創造を主張した。しかしこの考えは宗教的にも哲学的にも受け入れられなかった。結局、国王は哲学者のジョンロックが主張した銀貨再鋳造(リコインエイジ)で新通貨を流通させることを決断した。(銀の含有量を額面まで回復)

ところが、ニュートンの造幣局は新通貨を十分に用意できなかった。英国は必要な流通量の15%のみを用意しただけで、一方で国王は税金の支払いを新通貨で払うように命令を出していた。混乱した預金者は、発足したばかりの英国中央銀行に殺到した。 (この経緯はユーロ通貨の発足で参考にされた)

この結果、支払いが出来なくなくなった英国中央銀行はオランダに救済された。当然ながら、英国経済は以前にもまして大混乱になった。要するに、結果論では、大天才のニュートンとジョンロックは、正解というべき妙案を出せなかった。

この経験と先行した世界初の中央銀行ストックフォルム銀行の崩壊を見て(銅本位制紙幣制度)、英国は新しい金融制度を考え出す。金本位制の確立と中央銀行による国債の引き受け。つまり今の中央銀行の原型。もっと言えば、マネー経済は、物理的整合性や宗教的 哲学的な拘束から、金融はデイブナントが主張した信用創造へ変貌する。

ここを基点にトレジャーだったお金が流動性に換わり、信用(クレジット)の創造者が富を支配するようになる。恐らくここが判らないと今のゴールド市場はわからないと思う。(この本質を語らないアナリストは個人的には無視している)

ただし、どんどん国債を発行し、トレジャーではなくなったマネーをどんどん刷ったなら、英国はそのソブリンを維持するために領土を広げ、戦争に勝ち続けなければならない。限界が来て、第二次世界大戦後、覇権は米国に移った・・。

一方でトマス・ジェファーソンが書いたアメリカの独立宣言書は、ジョンロックの思想(小さな政府)が軸になっている。国家が強くなりすぎると、権力がその中枢に集中するからだ。アメリカが覇権国家になっても、共和党はこの原則は譲らない。(注、ただしレーガンは減税と規制を緩めただけで、政府を小さくしたわけではない。)

そして世界の信用創造の中核を担うFEDは、株主がウォール街のNY連銀と、今はほとんどのメンバーを民主党支配の上院が選んだワシントンのFRBを中心に構成されている。この構成をTEA PARTYは許せない。だからFEDの廃止まで主張する。(ただしロンポールは、中央銀行の有効性を完全否定しているわけではない)

こうみると、今は悪とされる財政と金融の一体化は、本来西洋人が支配する覇権国家の条件だったかもしれない。ただしそれは軍事力が伴わなければならない。皆がそれを目指したら世界は不幸になる。だから金融に規律が必要になったと個人的には考えている。(戦後敗戦日本を縛る財政法4条)

ではトレジャーではなくなったペーパーマネーが氾濫し、財政拡大が続く米国が今後も覇権を維持する条件とは何か。ここでは一見平和的な民主党政権の時にこそ大きな戦争は起き易いとずっと主張してきたが、共和党が悪者の時代その先には何がまっているか。恐らくオバマ政権の間にわかるだろう・・。

( 参考文献 THE GREAT RE-COINAGE OF 1696 )

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