2010年7月7日水曜日

米国の未来像、イリノイ州

今年は財政難から独立記念日の花火をキャンセルする自治体が続出する中、シカゴ市内の大花大会はどうにか開催にこぎ着けた。だがシカゴの喧騒はそのまま。昨晩から今朝にかけてシカゴ市内では11件の発砲事件があり、二人が死んだ。そんな荒廃の市内西地区から30キロ程北に登ったところに私が住むPARK RIDGEはある。30キロと言えばせいぜい車で30分の距離だ。

ヒラリーの生家もあるこの街は平和、イリノイ州は、そんな平和な郊外の街と、全米でも最も危ない地区がそれほど離れていない地帯に隣接している。そして今、そのイリノイの郊外の平和な暮らしを守ってきた警察官や消防士、そして公立学校の教師らが今年に入ってバタバタとクビになっている。そのペースがあまりにも異常だと感じていたが、その原因がはっきりした。ズバリ、ここ数年の間にイリノイは米国の中で最もギリシャに近い存在になっていた。ここでは米国の欧州化の話をしてきたが、実は地元のイリノイが一番酷かったのは不覚だった。

では州の一人当りの財政規模はカリフォルニアやニューヨークよりはるかに小さいイリノイの州財政がここまで悪化した背景はなぜか。イリノイにはニューヨークの派手さやカリフォルニアの寛大さもないはずだ。それは国のほぼ中央に位置し、米国の縮図とも言える政治的バランスの上に発展したイリノイの運命だった。

そもそもイリノイは前述の風景の様に、民主党の基盤である大都市シカゴ市を共和党の地盤である保守的な郊外の街々が取り囲む、全米でもここだけしかない特徴を持っている。その構造はここから情報を発信する私には恵みだった。だがこの構造が今はこの州の弱点である。

具体的に見ると、2004年からの反ブッシュの動きの中、イリノイにもオバマに代表される民主党ブームが起こった。そこに登場したお騒がせ男のブラゴヤビッチ知事。彼は民主党が優位になった議会を背景に財政を悪化させた。特に赤信号が出ていた地方公務員の年金を、緊縮議論なしに金融ブームに乗じての大規模な起債の連発で先延ばししてしまった。

そこに金融の崩壊。結果、工作機械産業などの回復が遅れる中、ここはニューヨークの様に金融の復活で事態が好転する事はなかった。そして根底で影響したのが元々この州は共和党と民主党が拮抗していた事。つまり民主党が財政拡大政策を取り、その民主党に陰りが見えると、増税反対の共和党原理主義が復活してしまった。こうなうると、民主主義の結果が州財政には最悪の結果を招く。そしてコレが米国という国家が中間選挙後に迎えるであろうシナリオでもあるのだ。

そんなイリノイを横目に減税を叫ぶワシントンの共和党。彼等の頭の中には80年代に、財政赤字が急拡大する中敢えて減税に踏み切ったレーガノミックスの成功体験がある。だが今は80年代ではない。結果的に国民に自制を促し金融の膨張を制御していた冷戦構造も終わった。今はその後のクリントン・ブッシュ時代のユーフォリアと金融狂乱時代が崩壊したドサクサの時代である。ドサクサの時代、民主主義は機能しない。

一方で政府と一般庶民が困窮する中、ケインズ政策とFRBの低金利政策で手元の流動性が回復した大企業はその権益の防衛に必死だ。そこで増税を掲げる政府民主党への献金を止め、減税と規制緩和しか言わない共和党に鞍替えである。

みんな気付いていないが、(特に米国を客観的に分析していない日本は注意)、ここまで纏まりを欠く先進国家は実は米国だけではないか。その負担をいつまでも海外勢が黙って引き受けるとは思えない。

そういえば7月2日のニューヨークタイムスには、エリオットウェーブを駆使して市場の動きを予想する米国人スペシャリストが、5年後、米国のダウは1000を割っているだろうとの衝撃的予想を出した。ここでは2年前に可能性としてダウの1600を触れたが、彼の予想はそれさえも超える衝撃。彼によれば米国株式のエリオットウェーブでは300年に一回の大変化が起こっているという・・。




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