いよいよNFLが始まる。サンフランシスコ49sの名前の由来は、1849年のゴールドラッシュで一年でサンフランシスコの人口が20倍になったことに由来する。同じように、今年はノースダコタのオイル産業が大勢の新規労働者を集めた。しかしまだプロフットボールチームを作るまではいかないようだ。
さて、数ある経済指標の中で、最も重要なものが今日発表さた雇用統計。これで株や債券は大きく変動する。(好調だと金利が上がり、ドル高になる)またオイルや穀物の先物価格も大きく動かす。つまり、実体経済に関わるビジネス全般のコストに非常に影響する。
その中で注目は農業分野以外の新規雇用者数と失業率。米国経済が順調に成長するには平均で毎月18万程度の新規雇用が必要とされるが、オバマ政権になってその実績は遠く及まない。
共和党はこの責任をオバマ政権に押し付け、選挙戦を戦っている。しかし米国の失業率が下がらないのは、オバマ政権の景気対策だけが原因ではない。
そもそも資本主義とは、安い労働力を使って会社が利潤を出す仕組み。第一産業革命で効率のよい生産ラインを得た英国は、世界の工場といわれた。この時おこっていたのが「インクロジャー」であぶりだされた農民の工場労働力への転換。
英国は、エリザベス一世以降、中央集権が進み封建制度が崩れていったが、その過程で貴
族の荘園で代々暮らしていた農奴たちはあぶりだされ都会で暮らすようになった。世界の工場を支えたのは実はこの格差でもあった。
この頃から英国政治も資本家と労働者を代表する二大政党制の色合いが強くなる。そして、独立した米国も二大政党制を引き継いだ。米国では、19世紀末までに、ロックフェラー(オイル)カーネギー(鉄鋼)バンダービュルド(鉄道)ハリマン(鉄道)フォード(車) ベル(通信) エジソン(家電)、デュポン(科学)、JPモルガン(金融)ライト兄弟(航空)などが登場した。
そして南北戦争が終わった1865年ごろから、彼らの産業基盤と共和党は大躍進を遂げる。
この50年間、民主党の大統領はただ一人だけだった(クリーブランド)。
この頃を第二次産業革命と言うようだが、この産業革命後、拡大した貧富の差は縮小する方向に動いた。1912年に民主党のウイルソン大統領が登場すると、戦後を含め、米国は民主党全盛の時代になる。例外は1920年代。この間は、G.W.ブッシュの2000年~2008年に酷似している。
ただ第二次産業革命までは、労働者と資本家は、反目しながらも国益上はバランスが取れていた。たとえばヘンリーフォードのおかげで庶民も車が買えるようになり、組み立てラインの発明で大勢の労働者が必要になった。
その需要はこのシカゴを含め、ミシガン湖の周りの工業地帯(RUSTBELT)に向かい、南部の黒人の大移動を起こす。その過程で生まれたのがジャズやブルース。また車社会になると、アイゼンハワー大統領は米国に高速道路網を作った。この大事業には、戦争が終わった退役軍人が参加した。
アイゼンハワーは結果的に共和党から立候補したが、実際は民主党との間で迷ったとされるほど
民主党的な共和党の大統領だった。ちなみに、リンカーンからの共和党全盛(1863~1912)の反動で、フルランクリンルーズべルトからとニクソンまで民主党の全盛が続いた(1933~1969)では今はどうか。
そもそも不満の何もかもを、リーマンショックからの金融危機と、欧州の衰退のせいにするのは無理がある。そこで、エコノミスト誌が現在の大きな潮流として紹介した第三次産業革命について触れる。
2年前、499ドルで売り出された初代 ipadのコストは実は33ドルだったという。そのうち、組み立て地の中国に落とした経費はわずか8ドル。アップルはこの利潤を itax と揶揄される特殊な手法で米国本社に戻していた。
その仕組みると、アップルの本社はカリフォルニアだが、アップルはグループ全体の資金管理会社をネバタ州に持っている。カリフォルニアは法人税がかかるが、ネバタは法人税がゼロだ。
また、アップルは物流過程で発生する利益をを抑え、知的所有権で利益が出るようにした。その結果、欧州を経由してケイマンの非課税地区に一旦利益を集約し、そこから米国内に戻すことで、最終的に純利益に対して米国に落とす税率を9%まで削減した。(エコノミスト誌)
こうなると、オバマとロムニーの選挙戦の争点でもある法人税は、実際は25%でも35%でもあまり意味はない。
これがアップルの莫大な利益の仕組みだが、itaxをふくめ、同社の米国益の貢献は非常に微妙だ。まず労働者はいらない。続いてせっかく本社があっても、財政に苦しむカリフォルニアへの貢献は少ない。
ならばどうするか。米国がアップルの利益をを国益にするには、つまるところ国民がアップルの株を買って儲けることしかない。市場を見る立場から、これを戦略的にやっているのが米国のすごいところだ。
しかしこれを第三次産業革命というなら、我々もその仕組みを知り、積極的に参加するのか、あるいは、何も知らずにアップルの商品を買っているだけかで大きく変わる。ここでは大きな格差が生まれるだろう。
そんななか、先日、世界最大のファンド’運用会社PIMCO社のトニークレセンジ氏がこんなことを言った。
「 400年前、中国と欧州の庶民の平均収入は同水準だった。 しかし過去200年間、産業革命もあり、欧米では資本主義が発展した。結果、豊かさで欧米は中国を大きく引き離した。だが欧米の中を見ると、人口の15%だけが資本主義のメリットを受け、残りの85%は貧困に追いやられていた。そしてそれが全体の豊かさとして還元されたのは、1950年代に入ってからである・・」
そういわれると、なんとなくそんな気がする。たまたま我々はよい時代に生まれ、よい時代にビジネスをはじめただけなのかもしれない。しかし時代としてはまだ資本主義が生んだ格差の修正期にあり、リーマンショックも、欧州危機も、その過程の出来事として、今後の展開を予想する感覚がビジネスにも必要になる。
そして第三次産業革命の主戦場である知的所有権の現場では先日アップルとサムソンがぶつかった。韓国には失礼ながら、米国ではこれは本質的に「アップル対グーグル」の戦いの前哨戦としか見られていない。
結果は一勝一敗。しかしアップルは「利潤の本質」である特許の裁判において、陪審制度のある米国と、裁判官が判断する(日本型)の違いまで考慮し、告訴状を出す地域を分けてその戦略を練っているといわる(NYTIMES)。このあたり、日本は何年遅れているだろう。
いずれにしても、いい物を作れば勝てるという日本のものづくり精神と、第三次産業革命下といわれる現在のビジネスのしのぎはどうやら別物。日本企業も奮起が期待される・・。
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