2008年6月25日水曜日

格付け機関と監査法人の使命

新しいNHK土曜ドラマ、「監査法人」の一回目を見た。どうやら主役は高度成長期には最大手の一角として日本経済の発展に貢献し、90年代後半にその監査の甘さが災いして後退、社名を変えて再出発を図ったものの、一昨年の大手日系証券子会社の不正会計の一件でも当事者となり、ついには消滅した監査法人である事が窺える・・。

ところでAMBAC(米国大手証券保証会社)は1年前90ドルだった株価が今は2ドルを割っている(本日は1.97ドル)。米国の株価のパターンから言えばこれは倒産価格である。市場なるモノがこれまで米国が主張してきた通りのモノなら、この会社にいまだA格付け云々を議論している事がおかしい。こんな事をやっている限り、国家が銀行を管理していると批判された中国からでさえも、米国の金融市場は「世界で一番いい加減な市場」とままで言われても米国は反論できない・・。

昨日FBIはモーゲージ詐欺の対象として大手企業も調査中である事を明言。その中には格付け会社も対象になっている。そんな中でMOODYS(大手格付け会社)株はまだ35~45ドルの水準だ。同社株はAMBACが90ドルだった昨年7月は60ドル台だった。従って同社は米株の全体平均以上には下がっていない事になる。ただ私にはこの現実が理解できない。

CASHフローではこの価格が妥当なのだろう。しかしならば米国は格付け機関を罰せずに市場の真義を捨てるのだろうか。答えはイエス。MOODYS株の価格に疑問を持たない投資家は市場に真義など求めていない。今や株債券も商品や為替と同じだ。要するに収益チャンスで動けばよい。ただそれでは成長を前提とした資本市場と言う言葉は最早いらない。必要なのは有り余ったマネーがうごめく為のギャンブル場である・・。

日本の金融関係者はこれまで米国市場を教科書として其れを学ぶ事に心血を注いできた。その意味でも米国金融市場の真義復活は我々にも死活問題である。いずれにしてもFBIがどんな処断を下すか興味深い。

2008年6月11日水曜日

ナイキを履いたアベベ

オリンピックでローマの街中を裸足で走ったアベべのマラソン世界記録は2時間15分16秒。それから48年。詳しくは知らないが、今男子マラソンの世界記録は2時間5分前後と記憶する。 50年も時が過ぎると同じスポーツでもその前後で誰が一番かを判断するのは難しい。ただあくまでも主観だがマラソンだけは別だ。

スポーツ医学が発展し、殆どのスポーツが科学で解析されるようになった。記録は極端に伸びた。そこに器具の改良が加わり、近年は薬までが常識である。 仮に今、アベべが科学の粋を集めたマラソンシューズで走ればどうなるか。2時間以内で走るかどうかは別だが、彼が近代史上一番強いマラソン選手である事に疑いを持っているスポーツ専門家は少ない。

それに比べれば、今のスポーツはその記録そのものにどれだけの価値があるのか。スピード社の水着はまるで魔法の水着。五輪は人間の体力技術の限界と同時に「性能」の限界を争う場になった。早速日本はスピード社の水着をそれまでの国内メーカーとの契約を反故にしてまで解禁にするという。一方NHKの報道では、ドイツでは水泳連盟が選手の反発を承知で国内メーカー(アデイダス?)との契約を優先。英国スピード社の水着はドイツ選手に解禁しない方針との事だ。

記録やパフォーマンス優先か、「契約」という約束やルールへのコミットが優先か。そういえば金融市場ではこれまで成長を優先した中央銀行が一斉にインフレ退治へのコミットに回帰しようとする現象が見える。ECB然り、またドイツの水泳連盟然り。この議論に正論はない。あるのは歴史としてのトレンドである・・。