2010年8月31日火曜日

マニフェスト ディスティニー (Manifest Destiny)

民主党の代表選挙が決まった本日、米国では7年に及んだイラク戦争が公式に終わった。一見無関係に思えるこの二つの出来事は、実は「マニフェスト」という言葉で結ばれている。

まず、日本で「マニフィスト」の言葉が流行り出したのは、確か政権を獲得する前の民主党が、選挙公約をこの言葉で現わした事が切欠だったと記憶している。だが米国では「マニフィスト」という言葉は単体ではあまり使われない。むしろ、「マニフィストディステイニー」と言う観念的な言葉の一部として、歴史上で使われる事が多い。では、マニフィストディスティニー(Manifest Destiny)とは何だ。

この言葉は1898年の米西戦争に遡る。言うまでもなく米西戦争は長らくモンロー主義を敷いていた米国が、欧州の列強に並んで植民地支配へ出て行った最初の戦争である。当時モンロー主義という言葉を米国民が意識していたとは思えないが、南北戦争の疲弊から回復し、またインデイアンとの争いも一段落したこの国では、明らかに次の戦いを求めていたはず。そこにスペインによる植民地への圧政。特にキューバは隣だ。米国は戦争の大義を得た。その時使われたのが、「マニフィストディスティニー」という概念である。

つまりこの言葉は米国人が好きな「正義遂行の公約」である。そしてこの米西戦争の英雄はセオドアルーズベルト。彼の大統領としての有名な言葉が「もし正義と平和の間で選択を迫られたら、私は迷わず正義を選ぶ。」だ。素晴らしくかっこいい。だが一方で「正義とは権力者の利権」と言うプラトンの言葉もある。そして、セオドアルーズベルトを尊敬したとされるブッシュが始めた戦争がイラク戦争だった・・。

このマニフェストという伝統の言葉を流行語として日本に導入した民主党。この浮かれた関係が、戦争など遠い昔の平和ボケ国家日本と、イラク戦争が終わってもアフガンで出口が見えない米国の関係を見事に代弁する。まあこれも所詮は米国を冷静に見れない日本の宿命。だがその日本人に、世界が米国をどう見るかと、日本が米国をどうみるかにおいて、歴史的また客観的な違いを一つ言いたい。その違いは日本人は意識した事がないはずだ。

そもそも米国が超大国である事は世界中が平等に知っている。だが日本がユニークなのは、日本人は戦争で米国に負けたと思っている事。事実その通りである。だが言い換えると、中国やソ連に負けたと感じている日本人は少ない。

一方同じ敗戦国のドイツはどうだ。ドイツも有名なノルマンデイー上陸作戦や、英国から出撃した米軍機による空爆で米国によって決定的敗北を喫したではないか。確かに。だが歴史的事実からしても、ドイツが負けた相手は米国ではない。ヒトラーはスターリンのソ連に勝てなかったのだ。双方で日本の戦死者の5倍、1500万人が死んだ人類史上最も悲惨な独ソ戦争でナチスドイツは疲弊し、やがて敗北した。

一方日本は米国に原爆まで落とされ、元寇から日露戦争まで日本人を支配した神の国信仰を打ち砕かれた。そして戦後は逆に米国によってここまでの経済大国にしてもらった。つまり米国は日本にとって神の様な存在だ。その米国を日本人は客観的に見る事はできない。一方世界では米国に戦争で直接負けたと考える国は意外に少ないのだ。

この違いは大きい。そしてこの違いは今は日本人の米国債信仰となって新しい現象を起こしている・・。







日曜討論

今こちらではグレンべックという変な男が注目だ。そもそも彼はFOXチャンネルでその狂人的発言で名を売り、今は一介のエンターテイナーから、共和党のシンボルとしてブームになっている。一部の共和党員がオバマをイスラム狂信者の様に考えるのは彼の影響である。その彼が、マーチンルーサーキングの「私には夢がある」のスピーチの記念日の一昨日、ワシントンで反政府デモを企画した。そしてそこには何と10万人の人が集まった。

日本人の第三者的立場でこれまでのグレンべックの言動を考えると、彼は保守の原理原則を訴えているというより白人至上主義である事は明白。その彼がキング牧師を語り、そこに白人中心の共和党原理者と人種差別者が入り混じって「米国を取り戻す」デモ。一方ニューオーリンズではカテリーナの被害から5年のイベント。その特集では、そこには黒人層が抱える退廃的な甘えが漂っていた。

そんな中ハーバードの教授のWSJへの寄稿記事が話題。彼の主張は、仮にオバマ政権が失業保険の延長を繰り返してこなければ、この国の失業率とっくに改善し、恐らく今は6.8%程度だったという仮説。これは共和党と今は共和党を支えるWS及び大企業を勢いづかせる話だ。それに対し、ニューヨークタイムスでは相変わらずクルグマンがオバマ政権の力不足を指摘。最新のレターでは、オバマ大統領個人の力量不足まで踏み込んでいる。これらの現象は中間選挙を控えた側面とは言え、民主主義と成長力減退というアンバランスが始まったこの国の現実である。

この様に、先進国が衰退する時は同じ道程を踏む可能性が高い。社会の老齢化が進みハードランディングが出来ない。そこで時間稼ぎのソフトランディングを模索する。まずは金融政策だ。だがこれを繰り返すと、実体経済に効果がないまま市場に生みだしてしまったマネーの逆襲を浴びる。そしてマーネーの力は生み出した親にも制御できなる時が必ずやってくる。

いずれにしても、今日の日銀の効果が何日続くかはしらないが、FEDも日銀もまずは行動が遅いと非難され、やっと行動すると一時的には称賛される。ところが、自律成長が終わると金融政策での時間稼ぎは極めて短期的。究極的結論にむけてゆっくりと事は進む。

そういえば日曜の朝、こちらでもNHKの討論番組をやっていた。参加者は現状を理解している。だがどこか違和感。世界がこの過程に入れば、政治家は他国を犠牲にして自国を守るの当然だ。だがそこにいた大塚議員や浅尾議員は平和時のウォール街のエコノミストの様だ。つまり、世界は表面的には平和だが、水面下ではケンカ始まっている現実に対し、戦う姿勢が感じられない。まあ無理もない。戦後の65年の日米関係の中でしか生きていない世代には発想に限界がある。

そもそも今回の円高は日本に原因があるもモノではない。米国発のこの話で日銀にどうこうしろといっても限界がある。米国はこれからもどんどん悪化する。ならば今日本の政治家が考えるべきは、一般向けの各論とは別に米国を超え、世界情勢の中で国益を考える力。それは新しいリスクテイクである。だが残念ながら今の日本の政治家でその覚悟のある人がいるかどうかを知らない。ならばせめてケンカを知っている小沢一郎の方が管総理よりは見たい・・。





2010年8月28日土曜日

マネーの新装開店    顧客向けレターから

それにしても終わってみると、あの程度のバーナンケのスピーチをなぜ我々市場関係者はここまで注目したのだろうか。答えは一つ。この国の実体経済がいかに酷くても、またこれだけ米国債が乱発されても、行きの場のない膨大なマネーに関わる市場関係者は、そのマネーを何処かに向けなければならないからだ。

だがその実態は虚業。後から冷静に今日の喧騒を振り返ると、新装したパチンコ店に群がる人混みの様の話だった。どちらの店どの台が儲かるか、皆それに躍起。だがその実態からは米株も米債も本来はボロボロ、とても買える代物ではない。バーナンケのスピーチはマネーを「新装開店」すると述べただけ、本質はそれ以外の何者でもなかった。

そんな中でゴールドマンの顧客向けレターの内容で債券が売られ、債券が売られたのシステムで株が上がったという現象面の事実があった。そして、皮肉にも最近は独歩高だったゴールドマンの株だけが本日は暴落した。

まあ先物の薄さとこの現物の出来高では、この株の戻りが本物とは誰も考えていない。ただこのまま勝手に債券が売られると、途中までは株は今日の様にシステムだけで上がるだろう。だがその後は・・、

金を稼がなければないのは皆一緒。だが敢えてCNBCから目を離す余裕も必要だ。今日はマーケット以外にもこの国の悲惨な現象があちこちにあった。これ等は今の市場の値動きに関係しない。だが本当は無関係なのモノなど何一つない。

いずれにしても、債券が売られ、それで株が下がり始める時は、いよいよ覚悟が必要になる。そしてそれは今のカジノ市場に慣れてしまったプレーヤーの感覚よりも必ず早くやって来る。ソレがマヒした市場原理の中で、現実の社会や経済に対し、あまりも歪に増えすぎたマネーに対する万物の原理、つまり究極の市場原理の答えであろう・・。




2010年8月27日金曜日

世紀のミステリー

不思議だが、日米では同じような事が起こる。日本では100歳を超える高齢者がいったいどうなっているのかが社会問題になっている。

そん中本日米国で話題になったのは、本当に生きていれば104歳の女性の行方である。その女性は、1920年代、ロックフェラーと全米の金持ちNO1を争った鉱山王、ウイリアムクラーク氏の一人娘のヒューガットクラークさんである。

信じられない話だが、代理人によると、現在ニューヨーク市内の私立病院の個室に30年以上り閉じこもったままとされる彼女を実はこの40年間誰も見ていないという。

5番街の部屋数40の超高級マンションの時価は100億円。カリフォルニアの大豪邸も100億円。そしてコネチカットの別荘は28億円。これらの彼女名義の大豪邸は何十年も誰も住んでいない。

そして、住宅以外にも500億の財産があるとされる彼女には血縁者はいない。では資産管理はどうしていたのか。彼女には1970年代から代理人として会計士と自称マネージャーの二人の謎の男性がいた。

その男性の一人が、最近彼女所有のルノーの絵画を売り、直近はコネチカットの豪邸を売りだしたという。そこで警察が動き出した。ソレが本日ニュースになったのだ。そのニュースは以下に添付。

残された彼女の写真も一番新しいモノで1938年のモノらしいが、どこかもの悲しいさが漂う日本の高齢者の話題とはけた違いの米国の過去のスケールを感じる話だ。

いずれにしても、この男性らが何かの犯罪をしているとしたら、彼女の財産はどうなるのか。政府が没収?。まあ庶民には関係ない話だが・・。

http://www.msnbc.msn.com/id/38810137/ns/business-small_business/ns/business-local_business


2010年8月26日木曜日

男の器量、 矢沢栄吉 /千昌夫 /小室哲哉の場合 

週末こちらの日本語テレビで矢沢栄吉を見た。矢沢は糸井重里とのNHKのトーク番組で「最近の日本人は自分のケツを自分で拭けない」と興味深い発言をしていた。さすが矢沢。詐欺で被った30億の借金を自力で返しただけの事はある。

そう言えば以前ここで千昌夫と小室哲哉の違いを触れた。1000億円以上の借金を長銀に残し、その長銀が日本国民の血税で救済され後、にただ同然で米国のハゲタカに転売される経緯を経ても(その後新生銀行へ)、NHKで堂々と「北国の春」を歌う千昌夫。その千昌夫と、僅か60億円程度の負債にビビって詐欺をした小室。どちらが上で、どちらが正しかったのか。その時、判断は日本人に任せるとした。

その話を前提に、将来米国に家を買う夢を持っている日本人に重要なアドバイスをしよう。貴方が矢沢はバカ正直で千が賢いと考えるなら、米国で家を買う場合は次に挙げる州がいいだろう。

(A)アラスカ アリゾナ カリフォルニア コネチカット フロリダ アイダホ ミネソタ ノースキャロライナ ノースダコタ テキサス ユタ (B) モンタナ ネバタ ニューヨーク

(A)と(B)は若干の違いはある。だがこれらの州は全て住宅ローンがノンリコースである。「ノンリコース」だと、一旦ローンさえ組めれば、仮に後でそのローンを払えなくなっても家を捨てればよい。後は給料を差し押さえられる事もなければ、銀行預金を取られる事もないのである。つまり借金の責任は担保の家を超える事はない。

そんな中、本日米国のクレジットカードの平均残高が発表された。個人の平均残高は40万円。これは昨年と比べて10万減っている。米国の一般家庭の借金を研究する専門家によれば、今米国人はクレジットカードの残高を減らす一方で、つまり毎月きちんと返す部分を増やす一方で、その地域の住宅ローンの延滞率は著しく上昇しているという。これは何を意味するか。

専門家によると、この状況は「借金のサバイバルゲーム」の状態だという。サバイバルが意味するモノは借金の返済に優先順位をつける事。言い換えると、サバイバルのために住宅ローンは返さないが来週の食べ物を買うためにカードローンは返すと言う事である。

タイガーウッズの派手な離婚劇が報道される中、全く報道されないこの国の実態はここまで追い込まれている

昨日の今日こちらでは住宅関連の指標が発表された。酷い数値に株は反応した。そしてその数値を説明する大手金融機関の解説はつまらない内容ばかり。だが日本人の知らない真実はもっと別のところにある。そしてこの住宅を救済するために、国が全てのファイナンスを面倒見ろというPIMCOのビルグロス。

彼は自分が抱えるモーゲージ債が上がればよい立場だ。負担は米国の国家。そしてその米国の国家のファイナンスを支えようとしているは日本人である・・。










2010年8月25日水曜日

バブルの母

著名なファンドマネージャーのピータースチーフは、昨日CNBCで面白い発言をした。彼は「全てバブルの根源(mother of bubble)の米国債バブルがはじけた後は、この国は、株と住宅のバブルが小さく思える程の被害になる」といったのである。

そもそも全てのバブルの根源が米国債にあるという意見は少数派である。大多数は二つの意見に分かれている。まずは債券バブルだけを言う人。この人は、米国が日本のように成長力を失いデフレになってしまうという悲観論を受け入れない。だからその悲観論の証明である債券が今のように買われる状態をバブルと考える。

一方で実体経済がここまで酷いの状態なのに、まだ株価がこの位置にいるのはおかしいと悲観になる人。この様な人はもう成長力は期待できないという見方。その代表は日本の投資家である。

ピータースチーフに代表される少数派は全てがバブルと考えている。その根源は(Mother of bubble)過剰流動性だ。そしてそれが債券市場という避難所で起こった場合、もうその時は「流動性の罠」の状態。つまり金融政策の効果はないと彼は言いたいのである。

実はこの意見が最も悲観的な意見である。なぜならこの状態は、一度死にかけた麻薬中毒患者に、薬を抜く苦しい試練を与えず、更に強烈な麻薬で痛みを取ったその後で起こる現象だからだ。だがそんな意見はウォール街からは聞こえない。なぜなら今のウォール街はカジノ。カジノは流動性を否定しては商売にならない・・。

いずれにしても、その根源をどうするか。FEDの面々も、ニューヨークやワシントンといった都会を離れ、ジャクソンホールの大自然の中で頭を冷やせば多少は冷静になるだろう・・。






2010年8月20日金曜日

新勢力 United States 99rs 

数週間前、全米のあちこちで99rsと呼ばれる人々のデモがあった。99rsとは、失業保険を99週に以上貰っている人々。本来失業保険は24週が原則だが、2008年の金融危機以降、オバマ政権と民主党議会は延長を繰り返してきた。そして終に2010年には99rs という人々が発生したのだ。

以前紹介したように、アメリカンフットボールのサンフランシスコ49rsは、1849年のゴールドラッシュ元年、サンフランシスコの人口が一気に20倍になったことに由来する。その意味で、99rsは米国が社会主義国家になった元年として、これからも記録されるだろう。

さて、8月21日はちょっとしたイベント、個人的には「ミニキューバ危機」だと思っている。キューバ危機の説明はしないが、今回ロシアの貨物はミサイルではなくプルトニューム。そして行き先はキューバではなくイランのBushehrだ。

ロシアは米国の意向に背き、プルトニュームを平和利用するという前提で、イランの原子力開発の大きな一歩に協力する。一方イランを信用していないイスラエルはこれまでも空爆の可能性をちらつかせてきたが、米国が難色を示した事で思いとどまっていた。

だがこのイベントが偶然か否か、米軍のイラク撤退と重なり、またパキスタンの政情不安といい、暗転しているアフガン情勢といい、個人的には急速に国際情勢を注視せざるを得ない状況なった。

いずれにしても8月の後半は世界は不安定になる事が多い。そして本来なら、事が起こった場合は質への逃避で米債が買われるはず。だが宗教問題でオバマ大統領が苦境になる中、米国の世界に対する抑止力の弱体化が露呈される話だとすると、米債、米株、ドル、この国の未来が試されることになるだろう・・。



2010年8月19日木曜日

脅され、騙され、

海外で発生した災害ではまず死者の数でその程度を推測するのが普通だ。だが本日CNNを観てこの尺度が間違っていた事を知った。報道からはパキスタンの水害被害は死者の数は2000人ながら、現在の生存者と国家全体に与える被害は、超大国中国での四川大地震を上回り、国家に致命的打撃を与えたハイチに匹敵する事を知った。世界情勢は注視しているつもりだったが、うかつにも全くこの事実は知らなかった。そしてパキスタンの災害が米国に与える影響は中国やハイチなど比較にならない。理由は言うまでもなくアフガン。ここで消耗戦を展開する米国にとって、パキスタンは最重要国家だ。CNNは被災者に援助が行き届かず、政権に対する不満が蔓延している現状を伝えているが、仮にパキスタンがこれ以上の政情不安になれば、米国のアフガン戦争は事実上アウト。これはオバマ政権にとって非常事態である。

そしてMSNBCではパキスタンの現状の後で今度は中間選挙でのカリフォルニアの「女の戦い」が紹介されていた。上院選で現職の民主党バーバラボクサー女史に挑むカーリーフィオリーナ女史だ。彼女はHPの社長から華麗な転身を目論み、ネガテイブキャンペーンでボクサー女史を攻撃している。そして最新のコマーシャルで「米国がテロの危機に瀕している最中にバーバラは天候の心配をしている・・。(温暖化問題)」とボクサー女史と民主党のアジェンダを徹底攻撃した。だが皮肉にも、直前のパキスタンのニュースは、フィオリーナ女史が完全に間違っている事を証明していた。

温暖化でも氷河期でもどちらでもよい。米国はその天災に苦しむをパキスタンを助ける事が出来なければ自分が対テロで窮地に陥る事になる。その意味でフィオリーナ女史は完全に間違っている。しかし共和党の戦略は常に複合要因を無視し、単純な人々に単純な理論で訴える戦法だ。また今日は復活してきたギイグリッチ氏が日本を持ち出した。なんと彼は現在共和党支持者の中で2012年の大統領候補として支持率で先頭を走っているという。ギングリッチを知らない人の為に言うと、彼はクリントン時代に今のナンシぺローシの立場だった人。そしてあまりにもタカ派で保守的な彼の言動には共和党内でも不満が高まり、ブッシュ時代が始まると彼は下院から退いた。その彼が昨日はモスク容認発言でオバマを罵った上に、「あんなところにモスクを立てるのは、ナチの旗をホロコースト記念館に立てるのと同じだ」と言ってしまった。これにはまた批判が起こり、大統領戦を意識してか否か、ギングリッチは本日比喩の題材を変えた。彼は題材をパールハーバーと日本に変えたのだ。馬鹿にされたわけではないが、彼の発言は、米国(人)は日本(日本人)を完全になめている事が良く判る(そのリアクションにおいて)。

この様に、日本人の立場でクリトン政権発足からオバマ政権の誕生まで、この国の政権の性質を観てきたが、レーガン政権以後の日米関係の本質を振り返ると、冷戦が終わり、日本をそれまでの様な戦力的パートナーとして考える必要がなくなった米国にとっては、日本は「脅すか、騙すか」のどちらかで米国の国益の為に使えばよっかたという事。言うまでもなく「脅した」のは共和党で「騙した」のは民主党。ただ「騙した」といってもそれは駆け引きの意味だ。そして日本は国民の性質上、脅されても逆らわなければ守ってくれるブッシュ政権が実は心地よかったはず。だがクリントンやオバマ政権の複合的なアプローチ、駆け引きの前には全く太刀打ちできない印象だ。ならば次の中間選挙では、敢えて狂人的共和党の躍進を望みたい。その方が早く米国の限界が露呈され、日本人も米国債に対する幻想から早く目覚めるだろう。そして最後に言いたいのは「脅されるのも、騙されるのも」米国の責任ではない事。ソレは日本人自身の責任である・・。





2010年8月17日火曜日

軍事リスクと経済リスク 

週末のNHKの討論番組を興味深く観た。まあ題材は日韓関係という極東のローカルな話、そんな中で米国の専門家の岡本氏とローソンの社長が興味深い発言をしていた。

普段岡本氏は日本と米中の関係を議論する番組では米国よりの偏った発言をする。だがこの番組では日韓の若者に対して、それぞれの立ち位置の違いを上手く表現していた。ただ最後は両国とも米国の属国として仲良くするのが一番・・との本音を暴露していた。

一方ローソンの新浪社長が言った「縄文時代の歴史を学ぶのも重要だが、未来に対しては直近の歴史をもう少しきちんと学ぶ事が重要」との発言には驚いた。その通りだ。実際にビジネスの現場を預かる立場からの重要な提言だろう。

ただそれにしても残念なのは、終戦日になると流行る反戦番組は、日本が自虐的に反省しているモノばかりである事。この番組も然り、中国や韓国に対しての客観的アプローチは始まっているが。日本にとって一番重要な米国の分析は乏しい。

そもそも戦争は一人では出来ない。もう少し米国の視点に立ち、米国にとって日本はどういう存在だったのか、その視点での考察が出来ないものか。なぜならその考察なしに日本人が一番知らない国は、実はいちばん身近に感じている米国だと言う盲点を日本人はいつまでたっても気付かない。

そしてその状況では岡本氏の様に殊更に中国脅威論を囃した立て、日本人から米国を客観的に判断する能力を奪うで仕事を得る輩がはびこる。

岡本氏に聞きたいのは、日本が米国とアリとキリギリスの関係を続ける事で、将来経済的苦境で自殺する日本人の数と、確かに更に台頭するであろう中国に対抗し万が一にも軍事的に死ぬかもしれない日本人の数と今の段階でどちらが多くなるかの判断である。

中国の軍事的影響が高まる事が日本の国家利益に反すると思い込むのは米国の手先どもの誘導でしかない。その錯覚が日本にどんな未来を齎すのか。気付いた時にはもう遅いだろう・・。


さて、因みに下に添付したのは昨日のニューヨークタイムスの記事。そこではフェニックスで住宅ローンを抱える500人を担当する弁護士が、顧客の85%が全く返済する意思がなく、10%が減免を金融機関と相談する段階、何があっても借金を返すという当たり前の事を前提にしている顧客は5%だという実態を紹介している。

そんて本日財務省は、これから住宅市場をどうしたらいいか、専門家を交えて大々的に会議を開いた。そこでは心配された徳政令は出なかったものの、結論は先送りされた。だがこの記事が示す通り、モラルが低下したこの国では住宅の市場原理はとっくに終わっている。先送りされた結論は最後は米国債に置き換えられるだけとして、こんな国の国債を買い続ける事がどれほど日本の国益にとって危険な事か。ソレを日本の金融統治者は理解しているのだろうか・・。


PHOENIX — During the great housing boom, homeowners nationwide borrowed a trillion dollars from banks, using the soaring value of their houses as security. Now the money has been spent and struggling borrowers are unable or unwilling to pay it back.

The delinquency rate on home equity loans is higher than all other types of consumer loans, including auto loans, boat loans, personal loans and even bank cards like Visa and MasterCard, according to the American Bankers Association.
Lenders say they are trying to recover some of that money but their success has been limited, in part because so many borrowers threaten bankruptcy and because the value of the homes, the collateral backing the loans, has often disappeared.
The result is one of the paradoxes of the recession: the more money you borrowed, the less likely you will have to pay up.
“When houses were doubling in value, mom and pop making $80,000 a year were taking out $300,000 home equity loans for new cars and boats,” said Christopher A. Combs, a real estate lawyer here, where the problem is especially pronounced. “Their chances are pretty good of walking away and not having the bank collect.”
Lenders wrote off as uncollectible $11.1 billion in home equity loans and $19.9 billion in home equity lines of credit in 2009, more than they wrote off on primary mortgages, government data shows. So far this year, the trend is the same, with combined write-offs of $7.88 billion in the first quarter.
Even when a lender forces a borrower to settle through legal action, it can rarely extract more than 10 cents on the dollar. “People got 90 cents for free,” Mr. Combs said. “It rewards immorality, to some extent.”
Utah Loan Servicing is a debt collector that buys home equity loans from lenders. Clark Terry, the chief executive, says he does not pay more than $500 for a loan, regardless of how big it is.
“Anything over $15,000 to $20,000 is not collectible,” Mr. Terry said. “Americans seem to believe that anything they can get away with is O.K.”
But the borrowers argue that they are simply rebuilding their ravaged lives. Many also say that the banks were predatory, or at least indiscriminate, in making loans, and nevertheless were bailed out by the federal government. Finally, they point to their trump card: they say will declare bankruptcy if a settlement is not on favorable terms.
“I am not going to be a slave to the bank,” said Shawn Schlegel, a real estate agent who is in default on a $94,873 home equity loan. His lender obtained a court order garnishing his wages, but that was 18 months ago. Mr. Schlegel, 38, has not heard from the lender since. “The case is sitting stagnant,” he said. “Maybe it will just go away.”
Mr. Schlegel’s tale is similar to many others who got caught up in the boom: He came to Arizona in 2003 and quickly accumulated three houses and some land. Each deal financed the next. “I was taught in real estate that you use your leverage to grow. I never dreamed the properties would go from $265,000 to $65,000.”
Apparently neither did one of his lenders, the Desert Schools Federal Credit Union, which gave him a home equity loan secured by, the contract states, the “security interest in your dwelling or other real property.”
Desert Schools, the largest credit union in Arizona, increased its allowance for loan losses of all types by 926 percent in the last two years. It declined to comment.
The amount of bad home equity loan business during the boom is incalculable and in retrospect inexplicable, housing experts say. Most of the debt is still on the books of the lenders, which include Bank of America, Citigroup and JPMorgan Chase.
“No one had ever seen a national real estate bubble,” said Keith Leggett, a senior economist with the American Bankers Association. “We would love to change history so more conservative underwriting practices were put in place.”
The delinquency rate on home equity loans was 4.12 percent in the first quarter, down slightly from the fourth quarter of 2009, when it was the highest in 26 years of such record keeping. Borrowers who default can expect damage to their creditworthiness and in some cases tax consequences.
Nevertheless, Mr. Leggett said, “more than a sliver” of the debt will never be repaid.
Eric Hairston plans to be among this group. During the boom, he bought as an investment a three-apartment property in Hoboken, N.J. At the peak, when the building was worth as much as $1.5 million, he took out a $190,000 home equity loan.
Mr. Hairston, who worked in the technology department of the investment bank Lehman Brothers, invested in a Northern California pizza catering company. When real estate cratered, Mr. Hairston went into default.
The building was sold this spring for $750,000. Only a small slice went to the home equity lender, which reserved the right to come after Mr. Hairston for the rest of what it was owed.
Mr. Hairston, who now works for the pizza company, has not heard again from his lender.
Since the lender made a bad loan, Mr. Hairston argues, a 10 percent settlement would be reasonable. “It’s not the homeowner’s fault that the value of the collateral drops,” he said.
Marc McCain, a Phoenix lawyer, has been retained by about 300 new clients in the last year, many of whom were planning to walk away from properties they could afford but wanted to be rid of — strategic defaulters. On top of their unpaid mortgage obligations, they had home equity loans of $50,000 to $150,000.
Fewer than 5 percent of these clients said they would continue paying their home equity loan no matter what. Ten percent intend to negotiate a short sale on their house, where the holders of the primary mortgage and the home equity loan agree to accept less than what they are owed. In such deals primary mortgage holders get paid first.
The other 85 percent said they would default and worry about the debt only if and when they were forced to, Mr. McCain said.
“People want to have some green pastures in front of them,” said Mr. McCain, who recently negotiated a couple’s $75,000 home equity debt into a $3,500 settlement. “It’s come to the point where morality is no longer an issue.”
Darin Bolton, a software engineer, defaulted on the loans for his house in a Chicago suburb last year because “we felt we were just tossing our money into a hole.” This spring, he moved into a rental a few blocks away.
“I’m kind of banking on there being too many of us for the lenders to pursue,” he said. “There is strength in numbers.”
John Collins Rudolf contributed reporting

2010年8月14日土曜日

2010年8月13日金曜日

ムーディーズの墓穴

しばらく前にG20と呼ばれる主要20国の経済会議があった。会議はギリシャに端を発したソブリン危機の最中だっただので、そこでの議題は財政の健全化と経済の成長の両立だった。ただ実際は両立など無理、そこで前者を優先する欧州に対し、後者に比重を置く米国の対立が鮮明になった会議だった。そして会議ではもう一つ重要な事が決められた。それは各国の国債に対し、発行額と経済成長のバランスで債務削減の目標額が定められたこと。ただその際に例外の優遇処置を受けた国があった。それは日本と日本の国債だった。

理由は日本の国債残高は900兆円にもなり、GDP対比では先進国で最悪。だがその国債の95%が日本人の預貯金で賄われれいるので対外債務ではないという要因だった。ところが、昨日米国の格付け機関のムーディーズはその日本国債を再び格下げするかもしれないと脅しをかけてきたのである。

ムーディーズが日本の国債を残高の膨張と人口の減少や低成長を理由に最高から数段階格下げしたのはご承知の通りだ。だが同社が最高格付けを乱発したサブプライムを含んだ仕組み債が暴落し、それが2008年の金融危機を引き起こしてからは格付け機関の信頼は失墜していた。

だが、本来なら金融危機の原因の一旦である責任をとり、廃業、あるいは社会から役立たずとして駆逐されてして不思議ではない格付け機関が、ずうずうしくも未だに存続し、時にやれスペインだ、やれポルトガルだのと格下げをちらつかせては株式市場を振り回すのには訳がある。恐らくソレは、彼らが米国債に対して最高の格付けを維持しているからだろう。

米国が主導した市場原理の時代のなごりとは言え、自分に都合がいいところだけを存続させるこのインチキぶりには驚く。そして今回もまた米国の国益のために?、ムーディーズが日本の政治を材料にG20で別格のお墨付きをもらった日本の国債を格下げするというなら、そのバカげた論理には反論材料は豊富。まずは本国米国の彼らの政治だ。

総理大臣が誰であれ、日本人の大半は借金を返済しない事は倫理上悪であると考える事には変化ない。ところが今の米国を見よ。金持ちでさえも住宅に関しての借金は返さない。税金は払いたくない。そして、政治と言えば、そんな国民に対して民主党は徳政令を計画し、共和党はこの期に及んで減税を叫んでいる。こんなデタラメを言っている国はほかにあるだろうか。

そしてその米国の国債の格付けを見直すなどは絶対に言わず、代わりに日本国債に関して勝手格付けをちらつかせる理由は一つしかない。それは未だにこの連中の馬鹿げた格付けをポートフォリオの最低条件にしている愚かな金融機関に米国債を更に買わせたいのだろう。

だがムーディーズは墓穴を掘った。そもそも彼らは自国の政治リスクに関してどうやら無関心だが、それは表面的な計量リスクだけで判断し、サブプライムが含有した本質のリスクに気付かなかった様に、人間の常識やモラルといった無形資産に対しての考慮が今だにない事を今回も露呈したのだ。個人的には米国債が持つそのリスクが日本国債よりも先に市場で揺さぶられると考えれるが、その意見に同調したのが実は中国だ。

中国はムーディーズが日本国債に関して揺さぶりをかけた昨日、逆に米債よりも日本国債の方が安全であるとの公式見解を発表した。中国も大量に米国債を持つ立場として、あからさまに米国債への不安を表現はしなかったが、その意図はムーディーズの勝手格付けに疑問を呈するには十分な効果があるだろう・・。

<参考:11日、日本国債は米債よりも安全という中国の公式見解を伝えたのロイターの記事>

http://www.reuters.com/article/ousivMolt/idUSTRE67A23920100811

2010年8月12日木曜日

日本の指導者へ

http://www.guardian.co.uk/commentisfree/cifamerica/2010/aug/11/paul-krugman-japan-lost-decade?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter

上は本日の英国のガーデイアン誌のコラム。

記事のタイトルは「The economic fallacy of 'zombie' Japan」つまり「日本(日本経済)をゾンビと呼ぶ間違い・・」

米国が自国の日本化を叫ぶとドル安になり、そのドル安で日本が慌てる。慌てた結果、日本は米国債買いに走り、米国を助ける一方で自らは自身の墓穴を掘る・・。

その様を英国人の知識人がどう観察しているか。自分で自分の価値観を守ろうとせず、米国の罠にはまっていく様を日本指導者はどう見ているのだろう・・。

また下は、ウォールストリートの手先ではない、かなりレベルの高い米国人市場アナリストの本日のコラム。タイトルは「米国は日本のようになれたらそれはラッキー意外の何物でもない・・」という寸評。彼は、上のガーデイアンの記事を参考にしているが、昨日の「SORRY JAPAN」を書いた張本人である。

A Japanese-Style Lost Decade? We Should Be So Lucky

This evening's must-read comes from Steven Hill at The Guardian (via @Conrad_Easby)who argues that Japan has gotten a bum rap, and that if the US were to experience a Japan-like lost decade, we'd be lucky.

Here's the nut:

How, then, should we regard a country that has 5% unemployment, the lowest income inequality, healthcare for all its people and is one of the world's leading exporters? This country also scores high on life expectancy, low on infant mortality, is at the top in numeracy and literacy, and is low on crime, incarceration, homicides, mental illness and drug abuse. It also has a low rate of carbon emissions, doing its part to reduce global warming. In all these categories, this particular country beats both the US and China by a country mile.

The bottom line is that the measure of the economy is not statistics like GDP or how its main stock market has performed over some time, but how the economy actually works for real people who live in it, and in the case of Japan, it's actually quite well.

Ok, but what about the Nikkei? Its many years of misery must mean something, right?

Perhaps, but remember, it's not the sole measure of the Japanese financial economy. The yen is at a 15-year high. Japanese bonds have surged. And we know that Japanese citizens are famously conservative with their investments, which means that this mix of things (weak stock market, strong bond market) has not been particularly bad for their portfolios.

Bottom line: If the coming Japanese decade looks anything like Japan's we'll be all set. The problem is, it won't.




2010年8月11日水曜日

可哀そうな日本

その昔、イソップ童話のアリとキリギリスの結末が、日本だけが世界標準と違う事を紹介した。今日のFOMCの結果を受けて、ある市場コメントが「Sorry Japan, But this yen spike probably mean you getting crushed tomorrow(可哀そうな日本。この円高で明日から君たちの悲劇が始まる・・)」 との皮肉を言っていた。まあ市場の動きは誰にも予想はつかないとしても、この皮肉はイソップ童話が語る日米関係の本質をついているのは間違いない。

まず今日のFOMCで米国はMONETIZATIONを宣言した。MONETIZATIONとは、米国は自国の借金を中央銀行が増刷したドル紙幣で賄うと言う事。これによって他の要因に変化が無ければドルは益々下落する(ゴールドは買われる)。そしてドルに対して円高が進めば、戦後日本経済が築き上げた米国の最終消費力を企業利益の源泉とするシステムが完全に行き詰まる。

だが、その間に蓄積された国民の預金はこれから更に米国債に還流する。この数カ月、この動きが顕著だったわけだが、この還流は米国にとってまずます必須だ。なぜなら8月に入って日本勢の買いで米国債の金利が低下したにもかかわらず、実は米国債が破綻した場合の保険であるCDSという商品のスプレッドは拡大していた。つまり、日本が米国は日本の様なデフレ国家になるとの一方的思い込みで米国債を買っている一方、世界の別のところで別の人は米国債は逆にいつかデフォルト(債務不履行)する危険性を感じているという事である。

無論その危険性を日本の金融機関が全く感じていないわけではない。だが円高によって被る実態経済と日経平均の下落の被害を軽減するため、金融機関が更に債券ポートフォリオに傾斜するのは必定だ。恐らくは其処に金融機関同士の競争が加わる。他よりも一歩でも利益で先んじるためにはポジションを大きくする・・。実はこれは5年前に米国の金融機関がサブプライム合戦に突入した背景と全く同じである。まあ一般の人にはここまでの話が難しくても、金融危機を招いたサブプライム合戦と同じ心理に追い込まれたゲームの顛末がどうなるかは判るだろう。貧すればいつか鈍するのである。

そして、もう一度イソップ童話のアリとキリギリス終わり方を触れると、日本以外ではアリはキリギリスを助けない。アリにドアを閉められたキリギリスは死ぬ。日本がせっせと米国債を買う一方で、その米国債がデフォルトするかもしれない保険を買っている人にはこの感覚がある。米国人本人は米債の金利上がるのは否定しないが、自国の債券の破綻を前提にするはずはない。だからCDSの買いの主体は恐らく欧州だろう。

いずれにしても、誰もそんなつもりはないが、日本というアリは、米国というバッタを助けるためにこれから自分達の蓄えを差し出すのである。偶然にも、米国の国債残高と日本人の民間の金融資産はほぼ同じ金額である。(1200兆円)ソレを加速するであろう円高を前に、この〝Sorry Japan”(可哀そうな日本) のコメントは、救いようのない無力感を私に残した・・。





2010年8月7日土曜日

第三の原爆

http://blogs.reuters.com/james-pethokoukis/2010/08/05/an-august-surprise-from-obama/

1945年8月6日ヒロシマ、8月9日ナガサキ。そして2010年8月17日、米国資本市場に原爆が落ちる・・

添付したロイターの記事は、オバマ政権は、住宅の時価がそのローン残高を下回ってしまった人々の住宅ローンの減免(棒引き?)を計画している可能性を触れたモノだ。そして、記事によると、その可能性があるのは来る8月17日らしい。(財務省特別会議)

まず日本では、マイホームを買った時から多くの人はローン地獄を覚悟する。80年代の土地神話バブルのころを除き、日本人の多くは住宅を転売して利益が出るとは考えていないだろう。ところが、この国は80年代後半から、家を買った時から別の財布を手に入れると言う日本人からは夢のような世界が続いた。そしてその夢の中で米国人は豊かさを謳歌した。

しかしその夢が覚めると、住宅ローンの残高が住宅価格を上回るというデフレの日本では普通の事が米国では耐えられない地獄となった。だから借金の棒引き?このままでは中間選挙で惨敗が免れない政権与党の選挙対策とはいえ、未だにオバマ政権に幻想をいだく日本人にもこの話が実現すれば世の中がどうなるか想像がつくだろう。これは「徳政令」という資本主義に対する原子爆弾である。

そして、この爆弾が本当に落ちれば、被曝するのは今度も日本人だ。なぜなら、そんな事をすれば当然世界から米国債は見放される。その米国債を日本の庶民が預けた預金でせっせと買っているのは日本の金融機関である。

そんな中で仮にドル安が進み、実体経済と日経平均に悪影響が出れば、銀行はヘッジのために更に米国債を買うという市場の見方もある。だがそれは破滅への階段。これまでは長く持っていれば為替も債券の値段も必ず戻ってきたが、ついにその経験がアダとなる時が来た。

考えても見よ。仮にNナシームが言うように米国債市場に黒鳥が表れ、ソレが米株安を呼ぶというソブリンリスクの場合(ギリシャ型)、株/債券/為替/実体経済の複合パンチを一番食らうのは日本だ。

仮に金融機関が米国債投資で大損をすれば、影響は日本の実体経済に及び、最悪の場合税金で金融機関を救済するシナリオさえありえる。その時は日本が戦後の発展で蓄えたお金を米国の為に使い切る事になる。そんな事があっていいのか。まあ日本経済は米国のおかげでここまで来た。だから私が米国人ならソレを当然と考えるだろう。

見方を変えれば爆弾は落ちた方がよい。そして米国に貯えを吸いつくされボロボロになってからそれでやっと本当の意味で戦後が終わる。そして国防、外交、経済を、日本はやっと自分の頭で考えるようになる。そこが日本の本当のスタートラインだろう









2010年8月6日金曜日

ハゲタカの恩返し

「日のいずる国」の中国でまた園児殺しがあった。あの大地震で子供を亡くした親の悲痛な叫びもしかり、一人しかいない子供を殺された親はたまらない。昨日のNBCレポートでは、公式にはまだ政府が施行している一人っ子政策を無視し、子供を複数もうけようとする中国人家庭が出始めたという。

これで予定ではインドに抜かれてしまう人口が再び増加基調になるなら、中国の消費経済はどこまで伸びるか判らない。まさに地球にとっての未知の世界だ。だが一方で国民が政府の政策を無視するという事実。これはこの国の根幹を揺るがす事態の到来が、そう遠くない事を示唆する。

一方「日の沈む国」では国民は真っ二つ。米国では2009年に比べ、株が戻った事で2010年はミリオネイラーの数が19%増加した裏で、中間層から滑り落ちた大多数の国民は、先に救済された小金持ちに怒りながら自身が救済を求めている。

人間のマインドがこうなっては国家のシステムをどういじくっても国の衰退は止まらない。80年代以降の消費ブームの中で、流動性を媒介にして金持ちになった(ミリオネラーまで)の小金持ちは、減税の継続を要求し、全く税金を負担する愛国心を示そうとはしない。

そこで、彼等とは別世界の本物の大金持ち(タイクーン)は、ビルゲイツとバフェットが中心になって大金持ちの仲間に寄付を呼び掛けた。

結果40人が参加、総額は50兆円になるという。2人から直接呼びかけを受けた大金持ちの中で、最初の40人に加わらなかったのはジョージスソロスとオファラウィンフィーの2人だけだったとの情報もある。ただこの二人とて独自のフィランソロフィーには熱心である。

一方で40人の中には意外な面々も。まずあのブーンピケンズ。そしてブラックストーンのピーターソン会長とカーライルのルーベンシュタイン会長の二人のプライベートエクイティーの創業者たちだ。なぜなら彼らの業務は日本で言うあの「ハゲタカ」だったからだ。

NHKのドラマにもなった「ハゲタカ」の強欲の印象とは逆に、ルーベンシュタイン氏は殊勝だ。彼は「私と私の家族はこの国(米国)に対して借りがある。なぜならこの国は私たちにずっと素晴らしい機会を与え続けてくれた・・」と答えている。

さすが大金持ちは小金持ちとは違う。だが問題はこの国は今カネを必要としている事。彼らが死んでからでは遅いのではないか・・。





2010年8月5日木曜日

救世主 (スーパーマン) 現る

「その家」は1950年代から、親子二代に渡り、ある標準的な米国の家庭を見守ってきた。ところが、親が死に、ベービーブーマーの子供が主役になったころから世間の荒波を受けるようになった。そして、無理をして組んだセカンドモーゲージ(住宅の二重抵当)の資金を元手にした事業が失敗。結果、ご多聞にもれず、一家はフォークロジャー(住宅の競売)に追い込まれた。

立ち退きの日が迫り、家族は荷物をまとめ始めた。そして地下倉庫の中で数冊の古い漫画がほこりをかぶっているのが見つかった。どれも古い。年代は1930年代が中心だ。だがこれから家を失う鎮痛には何の役にも立たないと思われた。だがその瞬間、その中の一つに見覚えのあるキャラクターが表紙となっている事に気づいた。スーパーマンだった。

その漫画はアクションコミックNO1という代物で、1937年発行のその号は何とスーパーマンが世にデビューしたまさに初版だったのである。踊り立った家族は早速ネットで漫画のオークションの実勢を探った。そして驚いた事に、デフレだ、不景気だと言われる現代において、米国でも古い漫画はとんでもない高値を呼んでいた。今年に入り2冊のプレミアム漫画がネットオークションで1億円以上で落札されていたのだ。

早速携帯電話で表紙の写真を取り、専門業者にそのままメールをした。すると慌てた様子でその業者から返信があり、やはりとんでもない代物だった事が判明した。実物を観た業者によると、1937年の初版にしては状態が良く、8月27日から9月7日までの間に最低価格2500万円からオークションはスタートするという。そしてネット業者は家族に代わり、銀行にこの家族には近々大金が入る事を保証。一家はフォークロジャーを免れたのである。スーパーマンはまさに救世主だった。(尚、一家は匿名を希望・・)

この話は今日のABCニュースで報道されたモノである。そういえば、最近はミシガンのガラクタ市であのチャップリンの未発表映画のテープがみつかり、またどこかのヤードセールで総額40ドル買った古物の中に、時価200億ともいわれる有名な写真家のネガがあったりした。どうやら宝くじを買うのはもう辞めて、ガラクタ市巡りをした方がよさそうである・・


2010年8月4日水曜日

逆境の男

米国人は困難に直面すると、この国は逆境を克服してここまで発展してきた・・と自画自賛する。確かにその歴史は否定しない。そもそもこの国は移民によって始まった国。移民は、ふつう本国では逆境にあったからこそ移民したはず。だが移民国家というだけならお隣のカナダも同じ。カナダに欧州から移民が入植したのは1600年代初めで米国とほとんど同じだ。だが超大国となったのは米国。理由は、やはりこの国の建国の父が偉大だったということに尽きる。

だが、今金融に関わる米国人は、実は逆境に一番弱い生き物になってしまったのではないか。昨今の金融政策を巡る意見の対立などは、FEDは直ぐに悲鳴を上げる市場をどう導くか。子育てで悩む親と同じジレンマを抱えている。

そんな中で「バフェットの後任は彼しかいない」とバフェットの右腕であるチャーリーマンガー副会長が惚れ込む中国人のLI LU氏は確かに逆境には強そうだ。1976年、貧困地帯の26万人が死んだとされるあの唐山地震を生き残り、南京大学で物理学を専攻中に起こった天安門事件ではリーダー格として抵抗。そして弾圧を逃れるために一旦フランスに渡り、そこから米国コロンビア大学に入学した。そのコロンビアでは4年制(経済学)とMBA。更にロースクールを同時に卒業にするというコロンビア大学の歴史で初めての快挙を成し遂げた。(その後金融へ)

まあ、賢者は歴史に学び、愚者は己の経験に学ぶ・・というビスマルクの言葉ではないが、仮に経験から学んだとしても、この人の経験なら、逆境への抵抗力という意味では折り紙つきだろう・・。




2010年8月3日火曜日

怖いオマケ (顧客レターより)

株は本日の上昇で年初来の伸び率が再びプラス圏に入ってきた。これで株の強気派はまた騒ぐだろう。だが今日のダウ200ポイントの上昇にはある記録がオマケとしてついている。それは、株価指数が2%以上上昇した当日としては、現物株の出来高が史上最低を記録したというオマケである。

この乖離の意味するものは何か。それはずばり8月中に米国の株は戻り高値を更新する事もあり得れば、そこから1週間で今度は5000ドル割れも起こりえるという事である。つまり実体経済と株価指数の遊離はかつてない水準まで到達したと言う事。そしてその背景は、この国に残された景気回復の手段が株だけになったということでもある。

それを象徴したのが週末の討論番組に出演したグリーンスパンだ。そもそも彼は96年の議長時代、まだ6000ドル台にすぎなかったダウ平均の上昇を「根拠なき熱狂」と表現した。ところが、昨日の番組では、今の米国は株を上げる事が一番大切と言いきった。彼の変節は、住宅市場が危機的な状況である今、株価には実体経済の証拠は要らないと断言したに等しい。

そんな中、本日は先週のセントルイス連銀総裁の提言後としては初めてバーナンケ議長が景況感に関してスピーチをした。そして意外にも議長の発言には仲間の警告にこれといって動じた様子は見られなかった。基本はこれまでと同じ主張。ただこの状況でも動かないのは今は寧ろタカ派である。

まあ昨日まで恐怖はデフレだと思ったら、今日の値幅からは1週間で原油先物が100ドルを超え、失業者が溢れる巷ではガソリンの急騰、連鎖するインフレが突然襲うという逆のシナリオの可能性はゼロではない。そうなると株は上がっても実態経済は益々悪化するだろう。

実はここに来て一番タカ派になっているのはバーナンケ本人ではないか。終に彼も自分が金融危機の際にヘリコプターからまき散らした紙幣(流動性)という餌に、最後は「黒鳥」まで飛来するかもしれない事が怖くなったか・・。

ところで、個人的に最後に「黒鳥」に慄いたのはいつだったかを振り返った。なかなかイメージ浮かばない。そして思い出したのは9・11のテロだ。ただ米国が攻撃された事が「黒鳥」だったわけではない。また2機目の飛行機が突っ込んだ瞬間も驚いただけだ。「想定しなかった」のは、ビルの上層で起こった衝撃で、あのビル全部が崩壊した事である。あの瞬間は想定外だった。「黒鳥」とはそう意味だ。

旧約聖書のバベルの塔然り。ここから目先株や債券がどうなろうが恐らくはこの国の本質にとって大した話ではない。今の市場は実体経済から遊離した金融市場参加者の自己都合が反映されているにすぎない。そして世の中がこんなゲームを続けている限り、金融市場という塔にはワールドトレードセンターと同じ運命が待ち受けているだろう。




2010年8月1日日曜日

イエローペリル (黄禍論)   顧客レターから

米国人が生きられない地獄。それはデフレの世界だ(物価がじりじり下がり続ける世界)。そしてそのデフレの象徴が日本。今の米国は、この「日本化の恐怖」があちこちで言われ始めている。そんな中、昨日はついに地区連銀総裁までもレポートで「日本化」を名指しで警告した。レポートにはPERIL(禍)というタイトルがついおり、戦前の「黄禍論」を彷彿させる。

ただ個人的にこの表現にはショック療法に近い意図を感じる。そもそもショック療法とは、内部が分裂し、為政者にとって普段のやり方では統率が難しくなった時に使われる事が多い。ブッシュ政権が始まった2000年.ハイテクバルブが崩壊して不景気が始まった。久しぶりの不景気に米国は混乱した。そしてオバマ政権は金融危機で混乱が頂点になったところで始まった。そして「100年に一度」などという言葉が流行り、政府と中央銀行による救済策はなし崩し的に施行された。

結果的にブッシュ政権が国内の統率を取り戻したのはあの9・11のテロ。そしてそのテロ後の政策で潤った人々や、実は金融危機で焼け太りした金融機関の実態から、その二つの危機はショック療法だったという意見もある。ところが混乱が過ぎ去った今、オバマ政権ではFEDの金融政策にも微妙な意見の食い違いが出てきた。そんな折に地区連銀総裁までも、「PERIL(禍)の到来)と表現したのは、政策を巡り意見が分かれ、次の一手を躊躇するワシントンへの〝ミニ〝ショック療法を意図していると感じたのだ。

まああのパールハーバーも、欧州戦線への参加に嫌戦モードだった米国内を愛国心からの参戦に変えてしまったわけが、ここでも「日本」が再び登場するところは何かの因果か。ただ今回は戦争ではない。米国の敵は、米国が失敗策と決めつける日本政府と日銀がとったバブル崩壊後の経済政策。しかし一日中経済番組で「日本化の恐怖」を連呼されれば、日本人としては奇妙な気分である。本当に日本はそこまで悪だろうか。

ところで、その発言をしたのはセントルイスのバラード総裁だった。彼の言いたい事は、中途半端にダラダラと低金利を続けるのは逆効果、だからやる時は量的緩和を徹底的にやった方がデフレ脱却は早いという趣旨である。「生ぬるさ」を否定するのは中西部気質。だが、彼が正反対の主張の同僚のホー二ング総裁と同じ州に暮らしているのは興味深い。ついでに言うと、ホー二ングが総裁を務めるカンザスシティーとバラードが総裁のセントルイスは共にミズーリ州にある。

ミズーリは米国のど真ん中にある小さな州だが、そもそもそんな小さな州に二つも地区連銀があるのは不思議かもしれない。特にセントルイス連銀が単独で管轄する州はアーカンソーだけである。ただこの州には大統領選挙で重要なジンクスがある。それは大統領選の予備選が接戦の時は、このミズーリを制した候補者が代表になる傾向。つまり時節に敏感な浮動票が多いオハイオが本選挙で重要な様に、地域ごとの価値感が交差するミズーリは連邦国家としての米国の重要な指標なのである。

そしてその地域を代表するバラード総裁がこれまでのタカ派的イメージから立場を変えた意義は大きい。これで、12の地区連銀総裁で、タカ派なのは前述のホー二ングとダラスのフィッシャー、そしてフィラデルフィアのプロッサー総裁だけになった。一方金融街を代表するニューヨークのダッドレー総裁とボストンのローゼングレン総裁が民間の金融機関ベッタリのハト派なのは当然として、残りのFOMCのメンバーは概ねバーナンケに逆らう事はない人達だ。そのバーナンケ本人にこのバラードの直言は決断を迫るモノになるだろうか・・。