2010年8月11日水曜日

可哀そうな日本

その昔、イソップ童話のアリとキリギリスの結末が、日本だけが世界標準と違う事を紹介した。今日のFOMCの結果を受けて、ある市場コメントが「Sorry Japan, But this yen spike probably mean you getting crushed tomorrow(可哀そうな日本。この円高で明日から君たちの悲劇が始まる・・)」 との皮肉を言っていた。まあ市場の動きは誰にも予想はつかないとしても、この皮肉はイソップ童話が語る日米関係の本質をついているのは間違いない。

まず今日のFOMCで米国はMONETIZATIONを宣言した。MONETIZATIONとは、米国は自国の借金を中央銀行が増刷したドル紙幣で賄うと言う事。これによって他の要因に変化が無ければドルは益々下落する(ゴールドは買われる)。そしてドルに対して円高が進めば、戦後日本経済が築き上げた米国の最終消費力を企業利益の源泉とするシステムが完全に行き詰まる。

だが、その間に蓄積された国民の預金はこれから更に米国債に還流する。この数カ月、この動きが顕著だったわけだが、この還流は米国にとってまずます必須だ。なぜなら8月に入って日本勢の買いで米国債の金利が低下したにもかかわらず、実は米国債が破綻した場合の保険であるCDSという商品のスプレッドは拡大していた。つまり、日本が米国は日本の様なデフレ国家になるとの一方的思い込みで米国債を買っている一方、世界の別のところで別の人は米国債は逆にいつかデフォルト(債務不履行)する危険性を感じているという事である。

無論その危険性を日本の金融機関が全く感じていないわけではない。だが円高によって被る実態経済と日経平均の下落の被害を軽減するため、金融機関が更に債券ポートフォリオに傾斜するのは必定だ。恐らくは其処に金融機関同士の競争が加わる。他よりも一歩でも利益で先んじるためにはポジションを大きくする・・。実はこれは5年前に米国の金融機関がサブプライム合戦に突入した背景と全く同じである。まあ一般の人にはここまでの話が難しくても、金融危機を招いたサブプライム合戦と同じ心理に追い込まれたゲームの顛末がどうなるかは判るだろう。貧すればいつか鈍するのである。

そして、もう一度イソップ童話のアリとキリギリス終わり方を触れると、日本以外ではアリはキリギリスを助けない。アリにドアを閉められたキリギリスは死ぬ。日本がせっせと米国債を買う一方で、その米国債がデフォルトするかもしれない保険を買っている人にはこの感覚がある。米国人本人は米債の金利上がるのは否定しないが、自国の債券の破綻を前提にするはずはない。だからCDSの買いの主体は恐らく欧州だろう。

いずれにしても、誰もそんなつもりはないが、日本というアリは、米国というバッタを助けるためにこれから自分達の蓄えを差し出すのである。偶然にも、米国の国債残高と日本人の民間の金融資産はほぼ同じ金額である。(1200兆円)ソレを加速するであろう円高を前に、この〝Sorry Japan”(可哀そうな日本) のコメントは、救いようのない無力感を私に残した・・。





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