2010年4月24日土曜日

愚かな番犬

この国は広い。だが実はその真の意味を多くの日本人はまだ理解していない。その話の前に今日は渦中のSEC(証券取引監視委員会)でニュースがあった。マードフ事件を見逃した事に激怒したあのアイオアのグラッシー上院議員 (WSへのハラキリで有名) の指示で行われたSECの内部調査の結果、2008年からの2年間に31人に及ぶSECのスタッフが、勤務時間中に国家から支給されたパソコンでポルノサイトを覘いていた事が判明したのだ。それもちょっとだけならまだしも、中には一日に8時間以上費やした者、また態々フラッシュドライブを使い、閲覧禁止の防御を潜り抜けた者が数人いた。

あの金融危機の最中にSECの連中はいったい何をしていたのか。米国では本来SECの様な捜査権を持つ監視機関を畏敬の念を込めてWATCH DOG(番犬)と呼ぶ。だがこの番犬はWATCHしていた対象が金融の犯罪者ではなく「別のモノ」だった。笑い話の様な顛末。年収2500万円クラスの当事者は既に辞任したというが、ただ、だからといってこの話が詐欺疑惑を巡って現在SECと対峙するGS(ゴールドマンサックス)を助ける事にはならない。恐らくグラッシー議員からすればGSもSECも同じだろう。彼らはNYを舞台にした金融村の人々。その中で今はSECとGSのどちらかを味方する話がでると相場はそれに一喜一憂する。だがこの現象は広い米国を舞台にした地殻変動とは無関係だ。

では話題の金融改革法案を巡る攻防は何を背景にしているか。それは冒頭の「この国は広い」というテーマに直結する。たとえばリンカーン上院議員が提唱したデリバテイブ規制だ。彼女はアーカンソーの代表。そして農業政策委員会のトップだ。申し訳ないが彼女やアイオアのグラッシー議員にデリバテイブが解るとは思えない。だがそのデリバテイブを全部取引所で行うという当事者には非現実的なこの話が上院議員から出てくる。それが広い米国の本質だ。そしてこの広い米国について、その専門家を気取る輩がワシントンとニューヨークの人脈だけで商売が出来た時代は終わった。なぜなら何度も言うが、上院は各州二人である。この上院の構図はこの国の民主主義の未開の部分をこれから世界にさらけ出すだろう。

そして金融村の弁護者であるNY州のシューマー上院議員がおとなしいのは、今彼が「多勢に無勢」である事を現わしている。その中でワシントンのFED(中央銀行)の政治も動いている。そのFEDは予定より早く買い支えた住宅証券の市場への再売却を計画しているという。ソレに反してきたダッドレー ニューヨーク FED総裁と、強硬に証券売却と1%までの短期金利の利上げを主張するカンザスシテイーFED総裁のホー二ング。ついにホーにングがダッドレーを土俵際に押しこんだ証拠だ。だが最後カギを握るのはバーナンケ議長。彼は中西部のカーボーイではない。彼にはキリスト教と米国の魂の原理原則の下で死ぬ覚悟は絶対ないだろう・・。

2010年4月21日水曜日

上を向いて歩こう

先週から今週にかけてのエコノミスト誌は、継続して米国の体質改善を提言している。その中で30年前、トヨタを訪れたGM関係者は、GMの真似で成長したと思っていたトヨタが、実は自分達が出来ない事まで達成していた事実に驚愕した話を例に、先進国全体にとって今のアジアの成長は、単にコストの優位性だけでなく、30年前のトヨタの可能性があるとの記述があった。トヨタを例にとる一方、日本そのものは成長のうねりから離れた処にある事を微妙に表現した解説だった。

確かに今の日本は地球儀上で目立つ存在ではない。だがその地球を見下ろす位置を確保できたらどうだ。日本は地球儀上の競争から少し目を離し、上を向いて歩く時が来たと考える。そんな中でちょうどそのテーマを日本人宇宙飛行士が地球に帰還する昨日、NHKの「クローズアップ現代」が取り上げていた。

そもそも日本人がライバルのロシアと米国の両方のシャトルで宇宙に行った事実は重要だ。背景に日本の技術力がある事はまちがいないだろうが、この影響力を国際政治の舞台では発揮できないのが歯がゆい。だが見方を変えれば、だから安心してロシアも日本人を受け入れたのかもしれない。そして番組では気になる事が言及された。米国の宇宙開発が今回のシャトルで事実上中断するのを受け、日本の宇宙開発の現場ではそれをチャンスと考える若手と、米国という目標を失い困惑する人とで意見の相違があるという。ならば躊躇している時ではない。米国の背中を観るのは止め、日本は宇宙を見る時が来た。

ところでシャトルが最初に飛んだのは81年だ。当時米国はインフレと不況に苦しんでいた。そしてボルカーFRB議長によるインフレ退治の強硬手段が行われた(短期金利が20%になった)。そんな中シャトルは飛んだ。ただその後の豊かな時代にも同じシャトルが飛び続けた。番組に出演した「毛利さん」によれば、それだけシャトルは優れた乗りモノだったらしい。だが優秀な人々が何事も先へ先へと準備する事で発展した米国の歴史で、シャトルに代わる次の乗りモノがこれだけ長い間開発されなかったのは異例である。あくまでも結果論だが、この国の歴史でこんな怠慢の事例は他に知らない。まあ理由は様々だろう。だが金融に関わる人なら誰でも知っている話がある。それは、ソ連との間で磋琢磨射した米国の宇宙開発は、シャトルと冷戦勝利でソ連を突き放した後予算が削られ、人材が金融に流れた事だ。

結果モーゲージ債などの新商品が生まれ、米国は更に豊かになった。ここまでは良かった。だがもしかしたら歴史家はここを米国の転換点とするかもしれない。今は現存するシャトルは老朽化が進み、一回の飛行で100億円のメンテナンス費用がかかる以上は安全上も引退が避けられない。そこでまだ余裕があった2004年、ブッシュ政権は新しいロケットを使った新計画を立てた。だがそれはオバマ政権の予算では完全に実行不可能となった。新しいロケットがいつできるか、その見通しが立たない中、シャトルは今年引退する。

そういえば数年前、米国の未来についての懸念材料として、バフェットとビルゲイツが優秀な科学者が給料の高い金融に行ってしまう実態を挙げていた。実はGSの一件で起訴された担当者の上司は元々はロケット工学者である(NYTIMES)。優秀な科学者が金融商品の開発で米国に貢献したのは事実。だが皮肉な事にその金融商品が原因で混乱に陥ると、国はその防衛で予算を使い果たした。結果、米国は地球を見下ろす宇宙開発という近未来の主戦場での戦略を中断するという建国以来の危機に見舞われている。

先日オバマ大統領は「2025年には火星に行く」とぶち上げた。だがその表情は有名なケネデイーのスピーチと比べても覇気がなかった。「毛利さん」によれば、シャトルの引退で米国の宇宙開発は寸断されるという。そしてこれからはロシアの時代。地球儀ではアジア勢や南米の勢いに押さ気味のロシアだが、これから地球を抑えられる位置で優位に立たつのはロシアという事だ。この事態と比べればGSの命運などはどうでもいい話。だがそんな危機感もなく、ギャンブル経済の行くへに一喜一憂する今の米国人の姿はあのアポロ13号のラベル船長にはどう映るのだろうか・・。



2010年4月15日木曜日

偉大な記念日

株が下がらない・・。今日は、これまで怖がっていた一般投資家までが、ついに買いに出たとの話がある。ただウォール街がいくらはしゃいでも、米国はまだデッドキャッツバウンス(死んだ猫が上から落ちた反動:相場で戻りが本物でない場合を指す)の域を出ていないと私が考えるのはご承知の通り。だがその理由は米国が日本のパターンを追うという単純な理論からではない。

そしてこの国では最早笑われるだけのこの悲観論に、賛成はしなくとも異を唱えない人がいるとすれば。それは米国政府。なぜなら、政府のサポート無しに今の米国の姿はありえない事を一番知っているのはその政府だからだ。

だが政府の体力にも限界がある。だからオバマ政権は日本や中国の外国勢を上手に巻き込み、国内では救済で一番潤った人に増税という方法で負担をさせようとする。ただウォール街を中心とした金持ち層はその負担から逃げている。彼らは共和党のTEA PARTY(新独立運動:米国を取り戻せとの掛け声の元、オバマ政権に反発している社会運動)をサポートしているのだ。

そもそもTEA PARTYの主義主張は、大きな政府を望まず、増税は一番の敵。だが一方で彼等の原理には本来救済という言葉もなかった。なぜなら救済には必ず不公平が生じるからだ。だが救済は既に行われた。つまり、金融機関はピンチでは民主党の救済主義を煽り、復活すると今度は共和党の原理原則で負担から逃れようとしているという事だ。

そして彼等は政府がプレーヤーとして市場に介入した事を忘れ、政府の介入などなかった過去の自律回復のパターンと今回の戻り幅を比べ、これだけ戻れば最早二番底の心配は消えた。米国は完全復活した囃したてた。その強気論にうずうずしていた個人投資家がついに乗り出した。それが今日の私の解説である。

確かに市場は強気の彼らに手で動く。よって今市場で逆らっても無意味だ。だが株が強いの実体経済が弱いからという事を忘れてはいけない。実体経済での需要が弱く、あるいは実体経済に貸し付けても儲からないので資金は株に向かう。だから株は上がる。だがこの構図は危機を招いた構図と同じだ。

ならば米国は同じ過ち繰り返さないためにも規制等の改革を急がなければならない。だがソレが全く進まない。なぜなら規制がかかると儲からなくなる金融機関があの手この手で邪魔をするからだ。しかし何かを切欠に同じような危機になると、今度は政府が助ける事はできないだろう。

そいえば先月、バフェットは米国の累進課税について感想を聞かれ、「この国の金持ちは税負担が少なすぎる」と答えた。この質問を用意したCNBCは、期待とは逆の答えが返ってきて意表を突かれた恰好だ。だがそこはバフェット。彼は矛盾を抱えたままでは国家は最後機能しないリスクを知っている。そして私の悲観論の根拠も此処である。

私は反米主義者ではないが、今米国には偽物のエリートが多すぎる。この姿は私が知っている健全で最強の米国からは程遠い。だからこの国の復活はまだ本物ではないと考えるのである。

さて、昨日はその健全だったころの米国でも、最も米国の強さを世界に感じさせた出来事から40周年の記念日だった。たまたま今二人の日本人が宇宙に滞在しているが、その出来事もそこで発生した。そう、出来事とはアポロ13号の事故である。

この逸話を知らない人はトムハンクス主演の映画「アポロ13号」を見るべし。あれは事実。あの状況でも諦めず、限られた時間で米国のエリートは叡智の限りを尽くし、爆発事故で自力航行が不能となったアポロ13号の帰還を成功させた。

映画の出来はともかく、この話に感動しない人は人間ではない。余談だが、トムハンクスが演じたラベル船長に個人的に逢った事がある。彼は引退後、シカゴ郊外でレストランを経営している。私が訪れた90年代は店に出ていた。そして彼が最近になって高校生を前に話したとされる言葉がラジオから流れた。

「米国人の真の強さは、困難に遭遇しても、諦めず逃げない事だ。君達がそれを続けていれば、この国の未来は盤石である・・」。 

私は金融危機の顛末はまだ来ていないと考える。なぜなら、過ちがあれば、報いがあり、そしてそれを償う。顛末とはこの流れが完了してからだ。だが金融危機を起こした主役はこの作業を終える前に姑息な手段で逃げ様としている。私は彼らが嘗てこの国を支えたエリートとは別の生き物と考えている。

そして庶民は401(企業年金)がある程度回復した事で彼らに操られている。いずれにしても中央銀行がこれだけ紙幣を刷り、ルールを変えて何でもすれば株が戻るのは当然。だが、「困難に遭遇しても諦めず逃げない・・」この言葉の真義を米国人が本当に問われるのは実はこれからである。



2010年4月14日水曜日

龍馬がいた国の屈辱

国際法上の「公海」の位置づけはよく知らない。だがこちらの朝5時、日本の夜7時のNHKニュースの後半で報道された、潜水艦を含めた中国艦隊10隻が沖縄と宮古島の間の公海を横切ったという話は寝ぼけ状態の脳を呼び覚ますには十分な内容だった。だがこのNHKの報道もおかしい。なぜならタイの動乱の解説の後、長々と米国滞在中の鳩山総理とオバマ大統領の会見で普天間が話題となった事に時間をさきながら、このニュースはさらりと流したにすぎないからだ。

そもそも普天間基地は何のために存在し、何のために沖縄県民は負担を強いられているのだ。そして地図を見ても一目瞭然。「公海」という意味不明の位置づけながら、日本古来の領土である沖縄と宮古島の海域を外国の艦隊が横切ったのだ。それも中国は態々潜水艦を浮上させ、その存在をアピールする様な航行をしたというではないか。

仮に日本を独立国家とするならこんな国辱はない。商業船ならともかく、自国領土内を外国の戦艦が横切る事を傍観するとは。そしてこれを米軍が承知していたなら彼らの存在する意義はなんだ。そういえば普天間問題では自称「米国の専門家」を名乗る岡本何某が日曜討論で、米国が普天間から去ったたら尖閣諸島などすぐに中国の支配下にはいると言っていた。ならばこのニュースに対して彼の意見が聞きたい。一体普天間を含めた沖縄の米軍は何をしていたんだと。

逆に米軍が承知していたならば日本はスターリンとヒトラーに弄ばれたポーランドと同じである。そして仮にこのニュースの意味を日本人が判らないなら、最早日本人は独立国家としては終わった国民である。

ところでそのポーランドの国有機事故の詳細がこちらのニュースで紹介された。シカゴにはワルシャワに次ぐ規模のポーランド人が住んでいると言わるが、在シカゴのポーランド人の事故への関心も高いのだろう。その中で専門家は「パイロットの自殺としか思えない・・」との意見を披露した。

キルギスを含め、ロシアはこの事故に本当に絡んでいないのだろうか。そしてそのロシアと中国の首脳とオバマはワシントンで会談する意味合いは何だ。この核会議が米国主催である以上、米国は水面下でイランを材料に何かを企んでいる可能性を感じる。そしてロシアや中国などの大国は米国との直接的な利害関係の中、表面的には米国に協力をする一方で自分勝手な事をしているのではないか。

中国による日本人の死刑執行や今日の軍艦の航行など、今回のワシントンでの会議の本当の目的がどこかで影響している可能性を感じる。それにしても日本をこんな哀れな国にした我々日本人の罪は重い。そしてその国の政治家が坂本龍馬の真似ごとをするのは米国から見ると滑稽である・・。


2010年4月13日火曜日

報いと償いの消失

全米オープンを勝つためには運が、そしてマスターズを勝つためには神のご加護がいる・・。これは昔聞いた言葉だ。だがこれまで「運」と「神のご加護」の違いが判らなかった。しかし今回のマスターズではその違いが理解できた気がする。

勝利を決めた後、乳がんと闘っている夫人を抱きしめるミケルソン。中継は無言でそのシーンを捉えた。そして勝利インタビューで「家族愛」の大切さを強調する彼からは、今回「神」はタイガーに勝たせてはいけないという決断をしていたと感じた。

そしてこれはタイガーにとってもいい結果だったのかもしれない。タイガーは随所に彼らしい神業を見せた。ただその一方で引き続き信じられない精神的なミスも犯していた。この苦しさを乗り越えなければ彼の本当の復活はないだろう。

さて、今回のタイガーも然り、過ちは簡単には消せない。そして万物の原理として、その報いは償いが終わるまで必ず追いかけてくる。時にそれは世代を超える事もあるだろう。その意味で今米国ではベービーブーマーと言われた世代は自分たちの犯した過ちの償いを自分で清算する事が出来ないでいる。それはどういう事か。

ちょうど一か月前、NBCは同局を引退したジャーナリストのトムブロコー氏を迎えてベービーブーマーの特集を組んだ。番組ではその世代を代表としてビルクリントン前大統領からトムハンクスまでが登場、この世代の価値観を語っていた。

そして冒頭名門ミシガン大学を70年代に卒業し、一昨年の金融危機まで優雅な中産階級の生活を堪能した夫妻がインタビューに答えた。「確かに自分達は良い時代が永遠に続くと思っていたかもしれない。でも今となってはそのライフスタイルを変える事は無理。ソレがベービーブーマー世代です・・」と開き直っていた。

その通りだろう。そしてこのベービーブーマーの過ちに対する報いは次の世代に持ち越されようとしている。国家財政は疲弊し、何よりもこの国からモラルが消え去ろうとしている。たまたま彼らの子供と自分の子供が学校で重なる。甘やかされたベービーブーマーのその子供達の消費に対する規律のなさには時に日本人として言葉を失う時がある。

その米国経済について、先週エコノミスト誌は「虹」を表紙にして晴れ間の可能性を示唆した。だがその内容は厳粛だ。記事は確かに危機は和らいだ、だが米国が本当に復活するためにはこれまでの「借金」と「消費」を両輪としたライフスタイルから、「貯蓄」と「輸出」を両輪としたライフスタイルに変える必要があると警告した。そしてこのマクロの根本的な転換がない限り、米国はこの晴れ間の後で再び暴風雨に見舞われるとしている。

同感。だがエコノミスト誌の警鐘は無駄だ。なぜならバッタがアリになれないように、米国のベービーブーマーには日本人の様な緊縮生活は無理だ。そして引き継がれた負の遺産はさらに甘やかされた次の世代へと引き継がれる。

一方で今週のビジネスウィーク誌には、「米国は困難を克服、史上最強になって復活した」との記事があるという(未読)。エコノミスト誌が英国の高級紙であるの対し、ビジネスウィークは米国の経済紙。どちらに客観性があるかは言うまでもない。

いずれしても金融危機を乗り切るために、中央銀行のルールを書き換えてドル資金を流し続けたバーナンケ。FRB議長の彼の言葉がすべて物語っている。彼は「大恐慌にしたくなかった・・」と語った。

だが1930年代の大恐慌はその前に浮かれ過ぎた時代があり、恐慌はその報いだったとするならどうだ。そしてその報いと償いの時代が戦後まで続き、その苦労の結果として米国は史上最強の国になったのではなかったのか。

実は私自身が米国ではベービーブーマー世代だ。(米国のベービーブーマーとは1946年から1964年までに生まれた人を指す)。そして自分達の過ちを自分の世代で償う覚悟があるかと問われれば、正直イエスとは言えない。ただマスターズに神がいるように、次の次代の勝者は自分の過ちの償いを自分ではできないそんな覚悟の無い者からは生まれない事は確信している。これからもこの国で暮らすなら、その運命は覚悟している。




2010年4月8日木曜日

日本人の相場感

政府が国税を使ってこれ以上ニューヨークとカリフォルニアだけを救済する事を我々は許さない・・。レスキューボンドど言われる特別復興債を巡り、アイオア出身の共和党上院の重鎮、グラムシー議員が再び噛みついた。彼は2008年の金融危機の際に「ウォール街は腹を切れ」と米国人なら誰でも知っている「ハラキリ」で金融機関を恫喝した人物だ。そして彼の意見は今「TEA PARTY」と言われる新独立運動を支える中西部の共和党支持者の多くに共通する。

一方この種の非難に対抗すべく、政権は救済行為が儲かった事をメディアで誇張。その「表」メディアはウォール街から返還された資金の実現益を大々的に報道し、政府の判断の正当性を強調している。だがその数倍になるAIGやGSE(住宅公庫)に投入された巨額の税金の「含み損」は、一部のメディアを除いては殆ど取り上げられない。

そもそも構造としては返還された資金の実現益は、FEDによる国家ポンジーの賜物である。皮肉にも今CNBCではあのエンロンの特集をやっている。この番組を見ると、エンロンも、かのマードフも、資金を無限に提供する中央銀行がバックにいれば彼等のポンジーも永遠だった。

要は「一人殺せば犯罪。だが10000人殺せば英雄、そして殲滅すれば神」と同じ理屈だ。言い換えると、米国の市場原理とは、失敗者が少数なら容赦なく追いつめたが、失敗者が絶対的多数だと「システム救済」と言い換えて救済したという事だ。だがソレ自身は衰退期を迎えた超大国の使命であるともいえる。

そしてこの政権の有能さを持ってして今はなんとか取り繕っているが、この状況をモラルの低下で国民に不満が蔓延している程度に考えるのは勉強不足である。仮にこの状況が日本に伝わらないなら、それは日本のメディアに自分で考える力がないか、米国の情報をニューヨークとワシントンが発信する一方的な情報で済ましてきた弊害と言わざるを得ない。

ただ自分で相場感を持たず、米国の言われるままにする事が国益に繋がったたなら、それはそれで結果的に正しかった。だがその幸運が終わったならどうする。

今の米国を見ると、成長力が弱まり、企業もTOO BIG TO FAILを受け入れる過程に入ったと言われても仕方がない。ならば日本と同じ非成長平和主義の入り口という形容詞が相応しい。だが米国は政府に救済されながらその利益を還元しない「東」と、甘えた構造の中で個人主義を堪能する「西」。その中間に時に狂信的な原理主義者「中西部」が対立している。

この米国をして最新号の雑誌「選択」は「米国は衰退などしていない、相対的になっただけ・・」とのおかしな論文を掲載していた。だがこれはレトリック。「絶対的」から「相対的」になる事を衰退というのだ。仮にこんな論文に代弁されるように、日本の指導者が米国の力を頼りきり今後も世界に対して自分自身の相場観を持たないとしたら日本の悲劇はこれから始まるだろう。

何度も言うが民主主義と平和主義は違う。単一民族で考え方も大差ない日本人は、民主主義=平和主義と勘違いしているかもしれない。だが米国の民主主義が平和的だったのは、大戦から冷戦までこの国には共通の敵がいた事。更にその後のクリントン時代の大繁栄が国内の元々存在する根源的な対立を隠していただけだ。だがその時代が2000年前後に終わり、ブッシュはテロを対抗軸に国民をまとめた。そしてそんな単純な構図に乗る愚か過ぎた米国には救世主のオバマが登場した。しかしそのオバマを悪魔だと考える米国人が存在する。

そしてオバマ自身が限界を知り、理想から現実路線に変化した過程では多くの支持者の失望を誘った。この手負いの米国を助けるのは誰か。日本が助けるのは良い。だが指導者には危機感だけでなく相場感を持ってほしい。それが戦略の本質である。





2010年4月7日水曜日

中国産、中国に帰る。

米国と中国は互いにSTAKE HOLDER(利害が一致している状態)。よって定期的に起こる二カ国の間の摩擦は今のところ共に国内政治を安定させるた為の材料にすぎないとの見方がある。さもありなん。だが第3者が絡んでの利害関係では話はそう簡単ではない。元々中国に覇権主義の歴史はないとはいえ、19世紀から20世紀かけての屈辱を一旦は覇権主義で晴らす事は十分あり得る。その要因としてアフリカへの影響やイラン問題。更にアフガニスタンと今後のロシアの巻き返等の国際情勢を注目したいところだ。だがやはり目先は米中関係が全て。ここが盤石なら他の要因が本当の波因になる可能性は低い。そんな中で昨日懸案の貿易摩擦で両国にとって良いニュースがあった。この話とガイトナーの緩和策は無関係。だがこの「魚」はある意味互いにSTAKE HOLDERである米中関係の象徴でもある。その魚はとはこちらで「アジアンカープ」と呼ばれるものだ。

アジアンカープとは日本ではハクレンと呼ばれる淡水魚である。この話は以前にも台頭するアジア(中国)の象徴として幾度か取り上げた。このハクレンは80年代にミシシッピー沿岸のナマズ養殖業者が天敵のザリガニを駆除する為に中国から持ちんだもの。だが92年のハリケーン「アンドリュー」の水害でミシシッピー川に入り込んでしまった。それから10年でアジアンカープはミシシッピー川の最大勢力になった。そしてこのハクレンのミシガン湖へ流入を水際で防いできたのがイリノイ州である。イリノイ州はシカゴ近郊の河川に電気を流すシステムを築き侵入を止めてきたが、それも効かなくなった昨年、周囲と環境保護団体の反対の中で川の一部を完全に堰き止め、その中に毒を流して殲滅を図った。

この様にこのハクレンの駆除にかかった経費はイリノイだけでこれまでに200億円。そして昨年米国政府はミシガン湖の水産資源が州の重要ビジネスになっているウイスコンシンとミシガン州の意向を受け、ハクレンのミシガン湖への流入防止作戦を国家プロジェクトに格上げしていた。ところが両国の協議の結果、急転直下、この厄介者を中国は米国からの新たな輸入品目として正式に認可したのだ。これはまさに鳥の足と同じ効果である。昨年中国産タイヤに米国が関税を掛けた際、中国は米国産鳥肉の禁輸で応戦した。ところが米国産の鳥の足を求め中国内の消費者が反発、理由は豊かになった中国人は痩せた国産の鳥の足より米国人が食べない丸々と太った米国産ブロイラーの足を好んだのだ。

このハクレンも同じである。イリノイ州や地元の漁師はこのハクレンの使い道を探ったものの、骨が多すぎ米国人の食用にはならずこれまで農業用肥料にしていた。ソレを終に中国が高給食品として輸入品目に加えたのだ。「迷惑な中国産、故郷に帰る・・」である。これを一石二鳥と言わず何というのか。この事業を司るイリノイの公社は早速150人の新規雇用を発表したが、この関係は今の米中関係の象徴でもある。