2012年12月28日金曜日

解析ニッポン 哲学と戦略の両立 クラブインベストライフから抜粋



ハーバード大学には行ったことがないのですが、そこでは日本にもファンが多いマイケル・サンデル教授が哲学を教える構内で、リバタリン経済学者としてジェフリー・マイロン教授は麻薬合法化の経済効果を教えています。

この多様性がハーバード大学の凄さの一面と想像します。言い換えると、ここではフィロソフィー(哲学)と、ストラテジー(戦略)が、学問として明確に分かれているということだと思います。

人間社会の歴史を振り返ると、哲学をおろそかにすればかならず報いがくる。しかし豊かさへの欲望などの動機がストラテジーを生み(資本主義のメカニズム)、結果的に進化、発展にもつながってきました。

米国は2006年から、過去80年周期で繰り返したサイクルの第4コーナーに入ったという意見があります。過去の第4コーナーでは、独立戦争 南北戦争 第二次世界大戦と動乱が起きました。そしてその危機を乗り越えて新しい周期に入りました。

日本も近代の大変革を維新と敗戦とするなら、起点になった黒船来航と満州事変の開きは約80年です。そして現在は敗戦から70年の大台が見えてきています。やはり日本も大変な時期を迎えたと思います。

自分で達成した明治維新と、米国の力の前に変革を受け入れた敗戦ではその後の運命が違いました。ところが敗戦後の日本は不幸ではなかった。奇跡といわれた経済成長を成し遂げ概ね幸福だった。この事実は今の日本人の感覚を支配しています。しかしそこでは戦後の世界の潮流が日本に有利に働いたことを考慮する必要があります。これまでの日米関係は其の潮流が基盤でした。

本来は其の潮流の変化の可能性を踏まえ、国策の議論がなされなければならないのですが、総選挙に臨む政治家の主張は、現象にとらわれ、世界の潮流に対するストラテジーの吟味の甘さが目立ちます。何かにはストラテジーとフィロソフィーの混同も見受けられます。

これではしたたかな外国勢に囲まれた今の日本の危機の本質を国民に理解させることは無理でしょう。ただ歴史の力は巨大です。たとえ本質を理解しても、何かが変わるかどうかは判りません。それでもイメージを促し、準備をしておくことは重要です。そこで最後の寄稿となる今回は、中世以降、フィロソフィーを重視した中国と、ストラテジーを積み重ねた結果、変化した英米の比較をしてみたいと思います。


<ヘンリー8世が英国を変えた> 

まず国王がローマ法王の傘下にあった頃の欧州の冴えない均衡を打ち破ったのは、16世紀に英国に登場したヘンリー8世だったと考えます。彼の登場によって英国は単独でストラテジー国家へ変貌し、一方で欧州は現在につながるウエストファリア条約へ次第に傾いていきました。

そもそも均衡を崩したヘンリー8世の動機は不純でした。愛人ができてカソリックで認められないスペイン王女との離婚をするため、国王は英国をローマ教皇の傘下から独立させるという行動に出ます。

これはスペインやフランスなど、当時欧州では英国より格上の国からみれば暴挙でした。怒ったローマ教皇はヘンリー8世を懲らしめるため、国王を破門、フランス国王に英国を攻撃するように命じます。しかしヘンリー8世は動じず、さっさと英国国教会を独立させてしまいました。

一旦カトリックの強大な縛りが緩むと、いろんなものが動き出します。まずフランスやドイツで生まれた新しい宗教が、新しい学問といっしょに英国に入ってきました。そしてそれまでのタリー(木片)を使った国王によるマネーの管理も、民間のゴールドスミスなどに主役が移っていきました。

この過程で信用創造という現在の金融のコンセプトが生まれます。加えて戦争には膨大なマネーが必要です。国王による国家統治の威厳を利用する形で、民間のマネー支配者が中央銀行のシステムを構築していきました。これが今の形態の世界最初の中央銀行、バンクオブイングランドです。

このように、ヘンリー8世は浮気という欲望を正当化するためにいろんなストラテジーを考えました。これで均衡が崩れたのです。ただ反対する人もいました。有名なのは「ユートピア」を書いたトマス・モアです。国王は友人でもあった彼を、有能な官吏だったトマス・クロムウェルの進言で殺してしまいます。(参考:1966年アカデミー賞受賞作"わが命尽きるとも"

こうしてトマス・モアに代わって国王の寵愛を受けたクロムウェルでしたが、膨大なカトリック教会の財産を没収して国王の財政基盤を確立に多大な貢献をしたにもかかわらず、その大出世を貴族に疎まれ、嵌められて、何度も斧を振り下ろされるというむごい殺され方で断頭台の露に消えました。

この時もクロムウェルを見捨てたヘンリー8世ですが、愛人を新しい王妃にするために要らなくなった王妃を次々に断頭台に送りました。そしてその子供であるメアリとエリザベスは、ヘンリー8世没後、母親の恨みを引き継いだ統治をしました。

メアリーはスペインと関係を修復し、カソリック回帰で新教(主にピューリタン)を弾圧し、その結果、清教徒が米国大陸を目指し、今のアメリカの基礎が生まれました。一方腹違いの妹エリザベスは、メアリーの死後、姉とは逆に多様性を重視しました。目的のために手段を選ばないところは父親からチューダー王朝のDNAを強く引き継いだともいえます。

エリザベスは植民地からの銀で繁栄するスペインの船を襲う海賊を影で支援していました。そして怒りが頂点に達したフェリペ2世が無敵艦隊を英国に向けると、中世的貴族的戦いを想定していた無敵艦隊に対し、エリザベスは海賊戦術用いて圧勝しました(アルマダの海戦)

ここで英国が19世のビクトリア時代に頂点を迎える基礎が固まるわけですが、後に国王を殺して議会制民主政治の指導者になったとされるオリバー・クロムウェルは、ヘンリー8世に仕えて大改革を推進しながら、恨まれ、見捨てられ、無残に斬首されながら、シェークスピアのせい?で未だにあまり好かれていないトマス・クロムウェルの末裔です。 

このようにいち早く議会政治を導入し、産業革命から世界の頂点に立った英国の起点は、その動機は何であれ、フィロソフィーを支配した宗教の縛りを打ち破ったヘンリー8世だったと考えています。


< なぜ米国が英国に取って代わったか >

世界最大手ファンドの一角であるPIMCO社のストラテジスト、トニー・クレセンジ氏は、400年前まで欧州と中国の豊かさは同じだった。しかしその後の資本主義は欧米に富をもたらしたが、15%が富を独占する一方、85%は貧困に追いやられ格差は拡大した。その格差が縮小に向かい始めたのは1950年代以降だといっています。

この分析はすばらしいものです。スペインやポルトガルは、英国よりも早く海を支配して植民地を手に入れました。しかし彼らはカトリック国家の宗主国としてキリスト教を現地に広めることをしましたが、植民地から銀を搾取し、それを本国が散在したら終わってしまいました。

一方で英国は植民地に「経営」を持ち込みました。彼らに物を売りつけ本国の産業を興すと同時に、植民地では消費財と輸出品目に課税したのです。これは植民地に投資をする一方、植民地との格差を利用した経営です。米国も最初はこの英国の敷いた資本主義の中でもがいていました。

しかし建国の父たちが独立を果たすと、勤勉であり、貯蓄をおもじんるカルバン派プロテスタントの米国人たちは、英国よりもダイナミックな資本主義を起こしました。(バチカンから独立した英国国教会は、実はカソリックからそれほど変わっていない)これを欧州からみていたのがマックスウェーバーです。

ただその格差は尋常ではありませんでした。米国の資本主義は南北戦争での鉄道のバンダービルドから、その後のロックフェラーとカーネギーに、JPモルガンが絡む三つ巴の競争を軸に一気に英国を抜き去ったといえます。

どっちが米国一の大金持ちになるか。先行したロックフェラーを猛追するカーネギー。彼らに共通するのは発明ではなく、リスクを恐れず私財を投入してモノポリーを構築するスピードでした。(オイルの大量採掘技術はテキサスでハミル兄弟が生み出し、鉄鋼の大量生産技術は英国にあったもの)そうなると決め手は労使関係です。どちらが安い賃金で労働力をより酷使できるか。この競争に割って入ったのがJPモルガンでした。

英国的金融カルテルを理想とする偉大な父の影で、若い頃のJPモルガンはくすぶっていました。しかし自分もいずれロックフェラーやカーネギーと同格になりたいと考えた彼は、リスク嫌いの父親がM&Aの仲介で満足したのに対し、世の中を変える技術革新への投資が彼らと肩を並べる条件と考えました。そこであのエジソンに巨額投資をします。(現在価値で80ミリオン)

エジソンは研究室で直流白熱球を研究していましたが、ロックフェラーのオイルビジネスの根幹であるオイルランプ全盛の時代、JPモルガンの画策するオイルから電気へのエネルギー大転換は、ロックフェラーにとって脅威となりました。しかたなくロックフェラーはガソリンなどの新商品の精製に傾斜していきます。

結果的にこれは自動車の時代を迎え、正しい選択だったことになるのですが、一方JPモルガンの思惑は簡単には実現しませんでした。ライバルのウエススティンハウスが、エジソンの部下だったステラー氏を発掘し、直流ではなく交流電流でエジソンとJPモルガンに挑んできました。

JPモルガンは本業の金融市場を使って対抗しました。あえて株式市場に悪い噂を流し、資本力に劣るウエスティンハウスを兵糧攻めにしたのです。こんなことに巻き込まれた株式市場も大変ですが、最後はステラの交流電流電球がエジソンの直流を駆逐しました。

その後JPモルガンはエジソンをクビにして会社を完全に自分のものにします。それが現在のジェネラルエレクトリックです。このGEとウエスティンハウスの競争は現在のNBCとCBSなど100年間続きました。そして、金融市場を牛耳ることで、カーネギーやロックフェラーとは別の力を得たJPモルガンは異次元に踏み出しました。まず富でロックフェラーを上回ることが悲願だったカーネギーに買収話を持ちかけます。

迷ったカーネギーは、半信半疑で当時としては天文学的数字だった480ミリオンというオファーをします。JPモルガンはO..と一言いって返しました。こうしてできたのがUSスチールです。USスチールは結果的に粗100年に渡り、モノポリー状態を維持しました。

当時の480ミリオンは現在価値で300ビリオンダラーです。(24兆円)。カーネギーはもし480ミリオンではなく、580ミリオンだったらあなたは買ったのかとJPモルガンに問いかけました。JPモルガンはそれには答えず、これで貴方はロックフェラーを抜いて、米国最大の金持ちになったと答えたといわれています。

ところで、この3人が手を組んだのが1896年の大統領選挙でした。格差が広がり、庶民の怒りを背景に民主党のビル・ジェニングス候補は名指しでロックフェラーやカーネギーを非難しました。そこでこの3人が打ち立てたのが共和党のマッキンリー氏でした。当時3人は一人当たり現在価値で30ミリオンを拠出しマッキンリーを勝利に導きました。

おもしろいのは、この頃に共和党にはNY州知事だったセオドア・ルーズベルトが、リベラル層からも支持を集め、大統領への期待があったことです。ただもし彼が大統領になってしまうと、ビッグビジネスに対して反旗を翻す可能性を感じた3人は、彼を副大統領候補にし、操り人形であるマッキンリーを大統領にすることにしたのでした。

ところが、ビッグビジネスの言いなりとなったマッキンリーは、JPモルガンの買収によってよって整理された会社を解雇された労働者によって暗殺されます。そして大統領になったセオドア・ルーズベルトは一気にビッグビジネスの解体に動き出します。3人の画策は裏目に出たのです。

この頃、アメリカの進歩的資本主義が、英国の格差資本主義を超えたと思います。その象徴として登場したのがヘンリーフォードです。

それまでの米国の資本主義は、前述のビッグビジネスの3人に代表される資本家のためのもの。モノポリーが当たり前で、自動車産業も、モノポリーを守るために協会がすべてを仕切っていました。フォードはコストが安く庶民にも手が届きそうな車を開発し、協会に販売許可を願い出たのですが協会は許しませんでした。そこでフォードはレースに出ます。レースに勝って車の性能を紹介すると同時に、協会からの支援が無くても事業を継続する資金を得るためでした。

フォードはレースに勝ちました。そして裁判所はフォードが自分で車を製造販売する権利を認めました。ここから米国は新しい時代に入ります。労働者の権利は劇的に改善され、フォードが始めた週休二日制、8時間労働、最低賃金法がスタンダードになっていきます。そしてミシガン湖の周りには労働者が集まり中間層が生まれていきました。

後に人々はこれを第二次産業革命とし、ヘンリーフォードをその象徴として特別に評価にしました。ただしアメリカの資本主義のメカニズムが本領発揮したのはこの後です。

ギルト時代が終り、ルーズベルトを副大統領にした画策が裏目にでてスタンダードオイルは解体されたのですが、6社に分解された会社でも株主だったロックフェラーの総資産は、フォードの車が売れ、家庭にGEの電気が届き、米国の中間層が豊かさを実感し始めたときに頂点を迎えました。

その金額はスタンダードオイルの株を単体で持っていた頃をはるかに超え、660ミリオンに達しました。それは現在価値で415ビリオンダラー(33兆円)です。


< なぜ中国は発展からとりのこされたのか>

では英国や米国がこのような変貌をとげていたころ、中国は一体何をしていたのでしょう。前述のクレセンジ氏の指摘した400年前に戻るなら、中国は漢民族による「明」が終り、満州人による「清」に移行する頃だと思います。この頃までは、たしかに中国の豊かさは欧州と比べて全く引けをとっていなかったと思います。それどころかそれ以前はどう見ても中国は世界で最も先進国でした。

その中国がなぜ遅れをとったかというテーマで欧米人が研究したものに「高水準均衡説」があります。簡単にいうと、中国社会は放伐を繰り返しながら、清の時代には庶民までがある程度の幸福感に浸ってしまい、社会が高水準均衡のわなにはまった状態になったことをさします。

確かに康熙帝から乾隆帝までの3代150年間は、人々が豊かになった証拠として人口が4億人に到達しました。これは当時の欧州全体の人口より多かったといわれます。

それまで何回が他民族の支配を受けた中国では漢民族はすぐに蜂起しました。しかし清朝では近代になり日本や欧米に侵食され、孫文が登場するまで起きませんでした。これは清の治世をほめるべきか、漢民族が衰えたのか、悩ましいところです。

そして別の意見として、儒教という哲学の存在を示唆する人がいます。本来中国には老荘思想の道教と、同時期に孔子が広めた儒教が混在していたはずです。ところが、途中から社会の安定に役立つ儒教の思想が強くなり、道教が持っていた自然科学への探究心が薄れてしまったというのです。

今の日本が注目すべ点は、国家は他国の支配に満足すると、崩壊するまで自分で実験はしないというこの頃の中国人の教えです。バブルが崩壊して20年、今の日本は何事においても実験をしなくなったように感じます。民主党が一度失敗するとすぐ見捨てる。経済も原則を超えた話をすると、日本人は誰も近づかない。(反応したのは外人)結局何もしなくなった。それは追い込まれていない証拠でもありますが、均衡社会の特徴が出ているのではないでしょうか。

ここにヘンリー8世という異常な人物による英国の突然変異や、米国の強欲ギルト社会が織り成した資本主義のダイナミズムとの違いを感じます。

更に、中国は3000年の西欧との貿易の駆け引きで、前半の成功体験から、後半に決定的ミスをした証拠があります。これはこれからTPPに臨む日本にとっても参考になる事例です。

そもそも中国の古代文明は4大文明で孤立期間がもっとも長かったわけですが、交わる必要が無かったともいえます。ミソポタミアで穀物は小麦しかなかった時代、中国では米など様々な穀物が食料になっていました。

武器の発展も、ヒッタイト人がはじめて鉄の武器を作り、後にローマ軍はその武器の使い方を極めたとされます。しかし秦の始皇帝が中国を統一したころの中国は、鋳造技術が発展し、鉄の形を自由自在に変えられました。

秦の武器は圧倒的な飛距離と殺傷力を備えた鉄製のボーガンでした。弓矢など歯が立ちません。もしこの頃にローマと戦っていたららどうなったでしょう。それは300年後、ゲルマン人が西ローマに移動したのは、西域のアジア系遊牧民(フン族)がゲルマン人を襲って彼らが居場所を失ったからだという説が有力です。

恐らくこの頃は中国は欧州よりも武器は進んでいたでしょう。ローマは5賢帝の頃から中国(後漢)に盛んに使者を送りますが、その最大の目的だったシルクの作り方を中国はぜったいに教えませんでした。

この頃の西洋ではシルクは植物、木になっていると考えられていました。シルクロードができ、中国にシルクを買いに着た商人は密かにシルクの木を探していたといわれます。そんな西欧人をみてきっと歴代の中国王朝は高笑いをしたことでしょう。

こうして中国は3000年間貿易のドル箱であるシルクの秘密を守ったのですが、その一方で紙や火薬、羅針盤、印刷といった学問や産業発展の基盤になる最先端の技術を、清朝のころまでには西欧に渡してしまいました。今から振り返ると、どちらを守るべきだったのでしょう。TPPでは日本に同じ過ちを犯してほしくないところです。


 < 日本の課題、フィロソフィーとストラテジーの両立 >

日本の歴史をざっと見ると、1000年間は中国に教わり、明治維新前後の50年は英国から教わり、そして戦後から現在の70年間は米国から教わっています。しかしずっと主張していますが、日本のマスコミは中国を新興国と呼び続けています。これは知性のなさの証明でもあり、日本の戦略の無さの証明でもあります。

中国経済が台頭してから10年。経済の軸を中国に移しながら、実は米国しかみていないのは米国からでもよくわかりました。米国の民主党政権はしっかり中国の変化に対応しているのに、自信をつける中国人に対して隣の日本は何も配慮しない。全くナンセンス。尖閣は起こるべくしておきましたが、別のやり方もあったはずです。

ここからはメデイアの役割はきわめて重要になると思います。現象面の解説だけで終わるのは極めて危険です。読売新聞は他が有料化したWEBを今も無料で行っている点はさすがですが、中国に対する日本人の親近感の減退をことさら強調している。これは危険です。メデイアなら、そうならないように知恵をしぼるべきところです。

言うまでも無く中国と米国にはさまれた日本は重要な位置にあります。有利でもありピンチでもある。もし自分の足で立てば、周りを見て自由な自分の手を使って立ち回れる。しかしもし米国にしがみ付くと手は使えない。ならば周りを見る余裕など生まれないでしょう。

世界で様々な現象が起こる中、一体今は世界史の中でどんな局面なのでしょう。現象と本質は反対語ですが、米国のような多様性の妙を持たず、むしろ均衡の罠に近い今の日本では、こと更指導者が本質を客観的に分析する必要があります。

日本国民の多くは1000年も教わった中国からの儒教的精神をベースに、近代は英米のシステムをただ乗りしたことをあまり意識していません。ですから欧米の経済のシステムが理想と考える一方、そのシステムがどのような経緯で今日があるかには興味はない。ところが、フィロソフィーではここまで影響を受けた中国を新興国と呼んでも違和感を覚えない。

日本がこの特性を維持したいなら、相当のしたたかさが必要です。個人的にはなんとしてもそれを成し遂げるべきとだと思います。そうすれば19世紀が英国、20世紀が米国が言われる中で、21世紀は中国ではなく日本の世紀になるかもしれない。

それは日本が覇権を握るということではなく、米中の間でしっかりと自立し、アジアを要らぬ混乱からも守るという意味です。日本はアジアにかなりの貢献をしていますが、ここからの国家のしたたかさは、ぶれないフィロソフィーと、柔軟なストラテジーの両立。その一歩はその二つを混同しないことだとおもいます。

2012年12月25日火曜日

A Very European Christmas  欧州のクリスマスイブ

http://youtu.be/hvayG8DiUXc

先週のエコノミスト紙の特集は、英国のEU離脱の可能性だった・・。サッチャーの時代にも話題になったが、アジアの孤島の日本からでは解りににくい欧州のしがらみ・・。そんな時、このYOU TUBEはよい教材になるかも。

2012年12月22日土曜日

情けない役所

外務省は21日、2003年のイラク戦争における同省の対応についての検証結果を公表した。当時の政権によるイラク戦争支持について、「おおむね適切」と結論づけた・・・。
                              

                                 読売新聞から

小泉政権時代、イラク戦争への賛同が、当時の日本の国益に適ったと思うなら、'ちゃんと国民にその説明をすればよい。そうすれば、憲法改正に対する国民の見方も変るかもしれない。

それもせず、ただ単にアメリカに逆らえないという情けない現実を取り繕うだけの情けない役人の集まり・・ これで頭がいいと思うっているなら、もう少し恥を知ったほうがいい。

2012年12月21日金曜日

<倫理と知識の順番> 真マネー原理プロから


資本主義のフェアウエイ

アベマリアトレード・・こちらではアベノミクスをクリスマスの時期にちなんでアベ マリアと読んでいる・・

2012-12-21 00:22:11 -

今年の暗い顔

TIMES誌もせっかく「今年の顔」選ぶなら、もう少し明るいオバマにしたらどうだったのか。一部の市場関係者は、来年をクリントンが再選を決めた1996年とダブらせているのがわかる。

2012-12-20 01:14:15 -

年末相場の特徴

結局アップルが下がるなかでRIMが買われる。GOOGLEが止まる中でFACEBOOKが買われる・・

2012-12-19 23:31:57 -

今日のフィスカルクリフINTRADE

添付のチャート、これに連動するsp指数は予想不可能・・尚、それ以下はこちらの企業向けコメント「CIAの本当の名前の抜粋」(ご参考)


<倫理と知識の順番>

ニコニコしながら「株高にはいちいちコメントしない」とした安倍さん。なるほど、一度失敗すると、マスコミ対策も勉強の跡がうかがわれる。それにしても、今回の自民党の圧勝は、真面目な野田さんを自爆テロ解散に追い込んだタイミングが全てだった。ならばこの3年間、下野した自民党の代表として粘り強く民主党を追い詰めてきた谷垣さんが報われなかったのは日本人的には残念。そんな損得勘定が働いたのか、細野氏は民主党の代表戦に出ないという。野田さんが相場的駆け引きを持ち込まなかった結果がこうなら仕方が無いか・・。

さて、ナシーブニコラスタレブは本日「世界を安全で素晴らしい処にするためには、Knowledge(知識)をEthics(倫理) の前に置くなと」警鐘している。またJガンロックは、ポリシー(政策)がファンダメンタル(実体経済)を歪めるようになった今、次のダウンサイドはある意味で終局である覚悟が必要。そして、恐らくソレは起こると警鐘をしている。

今の市場でこの二人より客観的にリスクを語れる人は少ない。彼らの警鐘はシンプルで共通している。易しく言うと、株はコモデイテイー(商品相場)になったという感覚だろう。来年の株高説の根拠である10兆ドルの待機資金と12~15倍のPERは、歴史的な賃金格差と中央銀行によるマネー供給、更にこれまで許された海をまたいだ会計処理(減税)という、どちらかというと非オーガニックの側面からの要因である。

そんな中でオバマ政権は株価を維持しながらも賃金格差是正と税制の抜け道は閉じていく。また最近のゴールドの値動きは、金融緩和アナウンスは麻薬としての効果があまり効かなくなってきたことを示唆している。これはいずれ株のインデックストレードにも適応されるルールだ。

個人的に日本は時間を稼ぐためにも、今は哲学(倫理)よりも戦略を優先する時とした。少なくとも日本株の勢いと円安はまだまだ序盤と思える。だが先に倫理を無視して戦略に特化した米国がこれからどうなるかは別の話。そこを分けて考えるのが来年の相場観のカギだろう。

日本はやっと同じテーブルに着いたが、他のプレーヤーとは適度な距離を保つ事が鍵。具体的には、リスクオンの資金移動は相対評価でテキパキと、ただし全体では終局に巻き込まれない大局観。同じ人間がこの二つ情報を発信できないので、投資家は情報ソースのバランスを・・


2012年12月19日水曜日

SINビジネス(罪業投資) 真マネー原理プロから

犠牲になった子供たち
          母親と犯人の少年の幼い頃の写真(自宅)
 

コネチカットの惨劇の犯人の母親は、リーマンショックを機に悲観主義者に転じたという。離婚も影響したかもしれない。1.4ミリオンの豪邸に住みながら自衛のため拳銃5丁と自動小銃1丁を自宅に置いていた。ただ一人ではこれだけの武器は使えない。そこで犯人となった息子を射撃場に連れて行って練習させる姿が近隣の住人のなかでも話題になっていたという。

大きな意味では自分もこの母親と変らない。悲観主義者ではないが楽観もしていない。11年前、スミス&ウェッソンのマグナム375を買った。その頃同社株は2ドルぐらいで低迷していた。だが今は10ドルを越えている。そのマグナムは押入れの奥深くにしまったままこの10年で出したのは2回。そのときに射撃練習にも行ったが、暗く狭い地下室での練習はそれ事体が不気味であまり楽しいものではない。先週こちらのメデイアが日本では拳銃関連の事件が少ないわけを特集していた。このメデイアによるとハワイの射撃場が日本人でにぎわうのは健全な証拠らしい。

そもそも武器として鉄砲が登場したのは朱元璋が元王朝を倒した紅巾の乱が最初らしい。原型は筒を持つので命中率が低かったという。それが欧州で改良され、100年後には日本にも大量に入った。そして米国では南北戦争の前にサミュエルコルト(コルト社)がリボルバーを考え出して大革命を起こす。恐らく我々が知る米国銃文化の原点はここだろう。そして南北戦争が終り。南軍兵士と大量の武器がテキサスなどに移った。今回惨劇の武器となった自動小銃を作った会社の名前はフリーダムグループ。まさにこの歴史を象徴している。

そしてこのフリーダムグループの大株主はプライベートエクイテイーの雄のサーべラス。一方コルト社の現在の大株主はブラックストーンの関係会社である。サーベラスの出資者にはカリフォルニア教職員組合年金基金がいる。エリオットスパイザーはプライベートエクィティーに運用をませる大口投資家は、彼らがどんな会社に投資をしているかも含め、世の中に責任を持つべきだという。だが8%の運用が必須の年金にとってSINビジネス(罪業投資)への投資を厭わないプライベートエクイテイーは重要な投資先だ。

金が有り余る中、多くのヘッジファンドはアップルに投資した。だが700ドルで買ってしまうと今は200ドルも下落している。一方でプライベートエクイテイは、武器 酒 博打 タバコなどの産業を開拓してきた。彼らには平和は儲からない。ヘッジファンドのリターンが年金の要求に応えられないなら、年金はプライベートエクイテイーへの投資はやめない。金融支配によるマネーの過剰供給の結果、世の中は バブル形成、崩壊 社会不安 戦争を繰り返す。古今東西巨万の富を築いた人はこのサイクルの支配者が多い。そして現代ではこのサイクルのどこへでも投資できたのがプライベートエクイテイーだった。

アメリカに来た当初、ナイキのシューズを買いにいったスポーツマートで、シマノの釣具の横で普通にレミントンの散弾銃が売られていのは今から思えば懐かしい衝撃だった。だが今回の惨劇はアメリカ社会を動かす可能性を秘める。

尚、本日サーベラスはフリーダムの株を売却する意向であると発表した・・。
 

2012年12月12日水曜日

レッセフェール:なるようにしかならない


フィスカルクリフを念頭においているのだろう。CNBCのスティーブリースマンが、ツイッターで、「ウォール街は、経済をぶっ壊すのは欧州危機でも、国内の雇用でもなく、ワシントン・・。」と思っていることを紹介している。
今更何を言っているのだろう。もともとワシントンは民意を代表しているのであり、ソレは政治家の問題では無い。

リーマンショックは、今だに実体経済への打撃の度合いでしか語られない。だが、実は民主主義の政治システム維持しながら、資本主義経済を標榜すると、社会がどうなっていくかという実験の始まりが本質である。これは、リーマンショックの前から、米国の住宅市場が崩壊したらどうなるかの答えとしてずっと主張している)

答えは自明の理。車の両輪として民主主義と資本主義が機能するには中間層が不可欠だった。だが今は中間層が消えかかっている。一方進歩的民主主義は、建国当時のような「土地を持ち、責任を持って社会に参加する人だけが投票権を持つ」システムではない。
要はこの自明の理を説明しない無責任な政治家と、自分主義が当然になった現代人の宿命。この結果起こるであろうとことに気づいていたマルクスはさすがだと思う。

そもそも「フィスカルクリフ」という名前を誰が付けたのか。この本質は、昨年の8月に米国債の格下げと、利払い停止の事態を避けるために結論を先延ばしたこと。その時は相場関係者はこの政治妥協を好感していた。
アメリカですらこの様なので、これから自由主義経済を掲げる世界がどうなっていくか。恐らく成るようにしか成らない。ただこの「なるようにしかならない」が本来の「市場原理」の意味だ。(レッセフェール:アダムスミス・・、ケインズが登場するまでの経済はその流れだとおもうし、老荘思想にも通じる概念だと思う)

それが日本ではいつの間にか「市場原理」=「競争の原理」となった。個人的には、「市場原理」には逆らえないが、「競争の原理」は必ずしもフェアを意味するとは考えていない。
資本主義を主導したとされる米英の歴史をみても、完全なフェアな競争などが存在した過去は殆どない。つまり競争の原理が市場原理と思っているのは、バブル崩壊後、米国型のスタンダード化に巻き込まれた日本で広まった錯覚である。(意図的に広められたかもしれない。同じ感覚でTPPを考える人は危ない)

いずれにしても、ソーシャリズムなのにキャピタリズムであるかのように言ったり、フェアではない競争を「競争の原理」とする風潮を冷静に見たほうがいい。なぜなら、その錯覚は、両方を使い分けする人々(米国ではリスクの社会化と利益の独占化を達成した今の金融が代表)を利するだけである。

個人的にフラット社会や計画経済がいいとは思わないが、もう少し庶民が本質に気付かないと、いずれ必ず起こる反動が必要以上に大きくなる。それは避けたい。
金融市場に中央銀行が介入し、価格変動の市場機能を止める行為は、宇宙の持つ市場原理への反抗であり、最後は必ず鉄槌が下る、ただし、相手がいる世界において、考える時間を稼ぐ意味と、座死の無意味さから、ストラテジーとして円安政策を今は支持する。
そのためにも、選挙もたけなわなら、政治家はもう少し言葉の意味を大切にすべきだろう。

2012年12月6日木曜日

バナナ共和国ファンド




25年以上前、テレビで初めて中村勘九郎という人を観た。歌舞伎中継ではなく、一家の特集だったのだろう、初舞台を前にした長男と次男を厳しく指導しているシーンだった。

当時は体罰さえも今ほど悪だった時代ではなく、また体罰シーンがあったか覚えていないが、基本的に体罰容認派の自分でさえ衝撃を受けた厳しさだった。

変な言い訳だが、後に自分の息子に厳しくあたった時、どこかで「星一徹」とこの時の勘九郎を思い浮かべて正当化していたと思う。

その時の彼の言葉は今も心の中にある。「自分が受けた厳しさを子供に伝えるだけでは不十分。時代が変化する中、時に自分の経験よりも更に厳しく接してやっと歌舞伎の伝承がかなう」

確かそんな事を言っていたはずだ。これは自分が親になっていかに難しいこと実感した。まず妻が許さなかった。

一方歌舞伎の世界は厳しい。先代の市川猿之助が、数十年ぶりに訪ねて来た息子の香川照之(市川中車)に、「僕の人生はあんたを捨てた時から始まっている。だからもう訪ねてこないで」と言い放った話を、香川照之が松田優作の追悼番組で語っていた。

今はその二人も歌舞伎では再び親子に戻ったらしいが、ジャブジャブマネーに溺れそうな米国人が興味本位にカブキダンスを語る時代、日本は歌舞伎の裏にはこのような世界が継承されていることを米国に紹介する必要がある。

さもないと、米国は日本よりも先にバナナリパブリックになるかも知れない。フィスカルクリフはその試金石だろう。ではその時米債をしこたま持っている日本はどうなるか。自民党が掲げ始めた「外債ファンド政策」を聞いて身を乗り出した。

20年近く、米国債市場の主戦場でもあるシカゴの先物市場で相場を見た立場でいうなら、緊急的ストラテジーとしての円安誘導はいいとしても、外債をファンドには絶対反対だ。

なぜなら、貯金のある日本とは違い、インフレでしか生きられず、だからインフレを起こそうとする米国や、さもなくばドイツ以外はいつでも「ごめんなさい」をしそうな欧州の外債を買うのは、よほど外交で見返りがない限りありえない選択だと確信するからだ。

今のグローバルマクロの状態で国益を考えるなら、日本は作り出した円で欧米の優良株か、資源など実物資産か、或は戦闘機などの武器を購入するが妥当。嫌なら外国が通貨を低く誘導するの止めるはずだ。

そんな中で日本が権限の低い外債を買うなど言い出したのは、日本が余程のお人良しか、外国の傀儡か、或は実学に乏しい官僚出身者に頼っているからだろう。今は国策の参謀にするなら商社マンの方がいい。

外債は必ず暴落する。それはよいインフレのケースもあれば(成長復活)悪いインフレのケースもある(デフォルト)。最初は円安で為替の差益も出よう。だが暴落のスピードは早い。その瞬間には円高に戻っているだろう。

そよりもなぜ国内に円をばら撒いてインフレを加速しないのか。この後の及んでモラルやインフレの悪性か良性かの議論をしたいのだろうか。

庶民は「ばら撒き=悪」と思わされている。勿論理想的ではない。だが現実では今の欧米の資本主義でモラルは優先されていない。

元々資本主義は格差ゲームだが、レーガン主義が崩壊したリーマンショックの後は、米国は誰が最初に救済されるのがマクロで一番効果があるかに観点に移った。

つまり結果優先。それゆえ金融を罰せず、FEDも株価を買い支えるといより、積極的に買いあがる仕組みを優先している。(自分で買っているのではなく、上手くウォールSTを使っている)

日銀は株にそこまでは踏み込んでいるようにみえないが、米国はストラテジーで金融などの1%のモラルに目をつぶった。今オバマ政権はソレを再び調整しようとしている。ただ全体の効果を損なうつもりはない。

一方で日本は元来欧米ほどの格差主義ではない。また日本の金融には欧米の強欲さはない。ただそれゆえ資金が死んでしまうことも考慮すべきだ。

庶民に平等に紙幣をばら撒くのと、金融に巨額なボーナスを稼がせる仕組みを残すのは、どちらが経済効果があるか。日本での効果は明確。いずれにしても、今は哲学ではなく、戦略の話をする時だと思う。

そういえば本日12月5日は、1996年にグリーンズパンがまだ6000ドル台だったダウ平均をみて「根拠なき熱狂」と戒めた記念日である。人も、国も、世界も変るものだ。今はバナナ共和国が心地よい。

(注、バナナリパブリックとは、気候に恵まれた中米ではバナナがいつも成っていることから、怠惰な生活が可能である例え・・)

もしこんな偽りの資本主義を止めて、まともな世界にに戻りたかったなら、米国は大統領にロンポールを選んだはず。でも選ばなかった。いずれ人類に神の裁断が下るとして、それまでは日本は日本のストレテジーが必要。

世界は遠慮なくストラテジー優先になっている(つまりモラルより結果)。そういう世界に覚悟なく中途半端に接するのは危ないし、バナナ共和国の外債よりも、他に買うべきものいっぱいある

2012年12月4日火曜日

マネー原理プロから


パパンドレア一族の財宝(ギリシャ)

これで国民は納得するんの?・・
2012-12-04 01:18:41 - 

スカイフォールに注意

ところでここに来てリスクのイメージが底割れからスカイフォールに変ってきた・・・


2012-12-03 21:23:09 -

中央銀行の当座預金の意味は

あらたに添付したのはFEDのexcess of required reserveのチャート。

2012-12-02 01:59:09 -

GDP16trillionにM2(マネーサプライ)10trillionの意味

今日もとつぜんベイナーが出てきた。そして株が下がる場面。
2012-12-01 02:55:26 -

ファットフィンガー

どうやらファットフィンガーが合った様子

2012-11-30 01:28:27 -

11月はいつもCHOPPY

幸か不幸か、相場は先週金曜日にWARNINGしたことが起こっている。(
2012-11-29 06:15:02 -

朝 昼 引け / 愚か 大馬鹿 スマート