2009年12月29日火曜日

年末雑感、 小作人政策の限界

テレビ東京の「ガイアの夜明け」は来年から案内役が役所広司から江口洋介に代わるという。引き続き人気俳優を用いる事でこの番組への意気込みが感じられるが、その年末特番では以前番組で紹介した人々のその後を取り上げていた。

そして2002年に取り上げた中国内陸部の貧困と沿岸部の富裕層との格差問題で登場した少女の近況は衝撃的だった。

当時一家の年収が2万円という極貧の内陸から都会へ出稼ぎに出た少女は今は20代半ば。結婚出産を経て500万円で購入したマンションで幸せに暮らしていた。この間に工場の月給は15000円から50000円になり、夫と二人、両親を呼び寄せるまでになった。

この様に、宝くじに当たったわけではない普通の中国人が極貧から中間層へと変貌する一方、NHK特集では給食代が払えず、心配した教師に呼び出された児童が空腹から教師が出した残りモノのキャンデイーと牛乳を貪る姿を追っていた。

このスピードでこれ程の変化が日本と中国で起きるとは思わなかった。これが2009年末の雑感である。

こんな社会になぜなったのか。日本人は日本人の幸せを取り戻す時が来ている。だが何が日本人の幸せなのか。日本は米国の傘下で一流の消費大国となった。だが一旦そのバブルが崩壊すると、その後は永らく本質を見失ったままだ。

GDPは一つの数値に過ぎず、これが唯一の幸せの尺度なら、米国とて中国には勝てない日が近づいている。その前に、米国は実体経済でGDPの成長を維持できない体になってしまった。

そして日本以上の格差の中、政治は安定を欠き、オバマ自身約束したはずのチェンジのグリップを握ってはいない。それどころか小康状態を維持するための流動性は危機以前を上回る。

こんな中で危惧されるのは日本人が日本人の幸せを見いだせないまま米国の傘下のモラトリアムに引きこもる事。何もしない周回遅れの幸運はいつまでも続かないだろう。

さてそんなのヒント。この話題は昨年も触れたが、スポーツへの趣向から国民が本来求めている価値感が何かを探る事が出来る。まず日本人にとって冬のスポーツの代名詞は駅伝だ。個人競技としてのマラソンではなく、駅伝である事がポイント。

そして言うまでもなく米国はアメフト。アメフトはラグビーと比べる事でより米国の本質が見える。そこで日本人の駅伝と米国のアメフトの違いを説明する上で太平洋戦争における分岐点だったミッドウェイとマリアナ沖の海戦での日米の戦い方の話をしたい。ただその前に事実を整理する。

1939年9月ににドイツがポーランドへ侵攻して第二次世界大戦が始まったが、真珠湾攻撃の1941年12月までの2年間に欧州の大半がヒトラーに支配されていた。残すは英国のみ。チャーチルはルーズベルトに助けを求めた。

だが米国国民は参戦に否定的で、その先頭にはイギリス大使だったケネディシニア(大統領の父)や国民的ヒーローから国会議員になっていたあのリンドバーグがいた。そんな中で真珠湾攻撃の前年ルーズベルトは公約違反の徴兵を断行。理由はドイツが隣接する南米を視野に入れたとの情報だった。

ただここで重要なのは当時の米国陸軍は世界で17番目という小規模だった事。モンロー主義の結果、それまでの米国の対外戦争といえば米西戦争。即ちそれは海兵隊(マリーンズ)の仕事であり、大規模な陸軍はいらなかったのである。

そして徴兵されたリーゼント頭の若者の6割は、狩猟用の鉄砲さえ触った事が無かったという。(ヒストリーチャンネル、WWⅡから)これは正規非正規を合わせて国内だけで2億丁の銃が出回る今の米国から想像できない姿である。

この時点では、陸軍を中国に展開、海軍も開戦に準備していた日本が優位だったかもしれない。そしてWWⅡのドキュメンタリーはここからの日米の人材に対する価値感の違いを浮き彫りにする。

米国は徴兵したリーゼント頭の若者に、軍人としての精神教育を程した様子はない。事実生き残った米兵の証言で勇猛を自慢する話は皆無だ。つまりこの時点で米国は現在の米国型マネジメントの本質を実行している。即ちそれはエリートとそれ以外の区別だ。

エリートは簡単に死なせない。また経験が価値となる熟練パイロットに消耗戦は絶対にさせない。一方でノルマンデイ上陸などの危険な作戦では全員を鼓舞する演説が必要となる。それがヒーローイズムだ。そしてそのリーダーシップを発揮できる人材が大統領の資質と重なる((アイゼンハワー) 。

ところが、日本はエリートになればなるほど精神教育が重要だった。それも自己犠牲の美徳を説く事。天皇崇拝以外にも極楽浄土に行くためには現世での戒律を重んじた仏教の影響もあったかもしれない。

いずれにしても日本は開戦後程なくしてエリートや熟練パイロット程あっという間にその美徳で死んでしまった。まるで襷を後人に託す駅伝競技の様に・・。

その結果が前述の海戦で日本の致命的敗戦と考えるが、駅伝とアメフトはこの歴史を踏まえて楽しむべきだ。ただ元々ラグビーが好きだった自分自身、米国に来て最初の7年間はアメフトを見なかった。

だが米系で働き、自分の足でこの国の風や波を受けるうちに米国を理解する上でアメフトの魅力を理解するのは必須である事を悟った。アメフトは精神を競うゲームではない。作戦立案者と実行者に明確なスプレッドがある。

その点で前線に自ら立った英国の貴族階級の軍事訓練の象徴だったラグビーとも似ても似つかない。その結果第一次世界大戦でオックス・ブリッジのエリートが前線で大勢死んでしまった事を英国が嘆いた話は有名だ。

だがその一方で、今の英国ではボーナス返還を約束したはずのAIG社員がその約束を守らない実態が報道された(NYTIMES)。これを聞くとこの国のエリートの変質を感じざるを得ない。

AIGは約束の履行を社員に強制できないという。その理由は会社を立て直すためには彼らが必須だから。この点は今も変わらない考え方だ・・。

そして米国社会も終に変化を始めた。マイケルムーアの最新作「キャピタリズム」では、一般社員をPEASANTS(小作人、或いは発展途上国の貧民の意味)としてその社員に生命保険をかけ、社員が死んだ場合の受取人を会社にしている大手企業の実態が取り上げられた。

保険会社ではその商品名をPEASANT POLICYとして用意しているというが、これらの反動がついに健康保険制度に起きた。ただ米国では国益上エリートとそれ以外のスプレッドは必要だろう。
但しこの国のエリート層がここまで金融関係者で占められた歴史はない。この事実を踏まえ、米国がこの先どこへ流れ着くか。それを見極める努力をしながら日本人は自身の幸せの基準を再構築する時が来たのではないか・・。




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2009年12月25日金曜日

今年の本質、タイム、エコノミスト とフジテレビ

http://www.time.com/time/interactive/0,31813,1681791,00.html

まず上に先週「今年の顔」を選んだタイム誌のウェブサイトを紹介する。ここには1927年からの2009年までの「今年の顔」と、その時代背景の解説、また選考理由が書いてある。1938年にはあのヒトラーも選ばれているが、これを全部読破するれば素晴らしい近代史の知識となる事は間違いない。そして米国がタイムに対して英国のエコノミストも年末特集を組んだ。タイムもエコノミストも客観性は高い。だが米国が世界の中心であった時代とそうでない時代(そうではなくなる)、この二つの雑誌を読み比べると価値は更に高まる。

http://www.economist.com/printedition/displayStory.cfm?Story_ID=15108593

さて、そんな中で昨日SMAPの香取と草薙が道徳問題をテーマに問答をする特集番組を見た。流石転んでもただではお起きないTV業界だ。フジテレビは今年泥酔で世間を騒がせた草薙を使いその効果を狙っていた。そして半分憤慨しながら観てしまったのだが、漠然と手にしていたエコノミスト誌の年末特集のテーマと番組の本質が同じである事に気付いた。その「今年の本質」とは、今年流行り言葉に「草食男子」があった様に、豊かで便利になった社会における人間(この場合は男性)の弱体化である。一方エコノミスト誌は草薙の代わりに旧約聖書のアダムとイブを表紙の中心に据え、19世紀中頃、旧約聖書のアダムを題材にハンガリー人小説家が描いた「近代化の中で衰える男性の本質」が、現在の「テクノロジーとGDPの進歩の中で退廃したモラル」に引き続き代用できる事を特集で紹介していた。

そしてフジテレビでは、道徳とは「正しい行い」を指すのか、或いは「助ける行い」を指すのか最初のうち区別がつかない草薙に対し意外にも香取の正解率が高かった。また会場を埋めた参加者の大半は草薙に近いものだった。恐らくこれが今の日本なのだろう。あの程度の酒で泥酔した草薙はどこから見ても好青年だ。またその弱さが共感を呼び許される。そして草食男子はパワフルに進化する女性からすれば絶好の相性でもある。ただ日本社会がこの様な判りやすいトレンドを出す一方で米国はやや異なる。エコノミスト誌が指摘する様に、米国も「助ける」が「正しい」を上回り、結果助ける事が正しくなった。だから金融機関を助け、市場を助けたとされバーナンケ(FED議長)が「今年の人」になったのだ。だがそれを受け入れない人々がこの国はまだ存在する。

ところで、タイムの表紙に金融関係者が選ばれたのは今回のバーナンケが初めてだ。意外だがあの神様だったグリーンスパンでさえも選ばれていない。そう、これまでは金融はその程度の存在だったのだ。そしてそれが人間社会としては正しく健康的だったのだ。だがそれが世界的金融危機が怒り世界が協調して救済に走った。
だからその中心だったバーナンケは選ばれた。

言い換えれば29年の株の大暴落からあの大恐慌の時代にタイムが金融関係者を選ばなかったのは、彼らが大恐慌に対し無力だった事からすれば当然かもしれない。だが一方で38年にヒトラーを選んだ解説にはその後ヨーロッパで起きた戦慄への予想は乏しい。(ヒトラーのポーランド侵攻は39年9月)即ち、タイムはいつも「正し選択」をしてるわけではないのだ。では米国が今年の顔にバーナンケを選んだ事が何を意味するのか。現実として先進国が草食男子化する中で台頭するアラブとアジア社会。その状況を踏まえ、豊かさの中での人間の弱体化を前向きにとらえた英国のエコノミスト誌。それと比較し、金融救済者のバーナンケをヒーローとした米国の違いが来年の本質となろう・・。


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2009年12月23日水曜日

女性誌の時代

米国の3大ネットワークの6時からのニュースで終に二人の女性がアンカーを務める時代が来た。その事を当前として考える米国ではそれ自身がニュースになる事はない。だが日本は別だ。昨日NHKはそれ自身を態々ニュースとして報道した。そしてその一方で日本のテレビは米国大使がヒラリーに呼び出された事であたかも鳩山政権が米国の逆鱗に触れてしまったのごとく大騒ぎだ。だが鳩山政権誕後「日米関係に変化の可能性あり」との分析がでたのは事実だが、他の事で手いっぱいの米国が普天間で大騒ぎするなどありえない。ましてやこちらの一般のニュースで普天間が取り上げらる事はない。もしどうしても米軍に絡んだ話を探すなら、一部で懸念されているのはパキスタン軍と米軍の不和である。言うまでもなくこの両軍はアフガニスタンで同盟軍として戦闘中。よってその両軍がぎくしゃくしているとなれば本来は重大事だ。だが国内に健康保険法案と金融改革法案。そして温暖化に取り組む新しい米国の姿勢を世界に示すオバマの命題が佳境を迎える中その緊急事態も本来は表ざたにはしたくないのが実情だろう。

ところでなぜパキスタン軍と米軍はぎくしゃくしたのか。それはオバマのアフガン戦略の声明に起因する。そこでオバマは3万人の増派を発表した。NYTIMESによれば実はその前に米軍はパキスタン軍との間でタリバーンに対して新しい作戦を準備していたという。そして増派軍の到着前にパキスタン軍によるその作戦の開始を要請。本来はその作戦が先週予定されていた。ところがパキスタン軍は動かなかった。この事態に米国国防省は怒り心頭になったというが、パキスタン軍上層部は国内向けTVでその理由を説明している。それによると、オバマは声明で3万人の増派を発表すると同時に2011年には米軍を撤退させると言ってしまった。実はその非現実的な理想にパキスタンは米国のアフガンへのコミットを疑問視し、結果的に軍事行動を見合わせたという。実はあの声明は平和的理想主義者のオバマの弱点が出た瞬間でもあったのだ。

これがどういう事を意味するか、平和ボケの日本人にもわかるだろう。パキスタンが関が原での小早川軍になる事はないと思うが一方で頼りだったムシャラフはもういない。そして仇敵インドにも媚びる米国をみて心情的には反米感情が渦巻くあの地帯にこれから向かう米兵はイラクの時以上に気の毒だ。そんな中で普天間をを通して日本が「離米」する印象を世界に与える事を米国は最も恐れている。仮にそんな事が起これば米国の孤立化が露呈し、アジア戦略は深刻になる。その意図を理解した上で冷静に日本政府は対応すべきであり、観たところその印象はある。だがヒラリーが怒っているなどとの報道を耳にすると先が思いやられる。それではまるでオバマの弱点をヒラリーが女性週刊誌を使って制御しているような日米関係ではないか。

最後に外資企業をかじった程度の女性が注目される中、NHKクローズアップ現代の国谷キャスターは秀逸だ。個人的には米国でも通用する一流の日本人女性の金融マンは知らない。だが日本の価値観と欧米の価値観の対比の中で視聴者に判断を仰ぐ国谷キャスターのジャーナリストとしてのレベルは高い。彼女の存在が既にありながら、一方で女性キャスターの時代を今更注目するのもおかしいが、昨今民放のニュースは女性セブン型、ドラマは漫画のパクリは自分で考える機会は益々遠のくであろう・・。



2009年12月18日金曜日

赤いダイヤとグリンピース

昔「赤いダイヤ」といえば小豆の事を言った。それは山種証券の創設者、山崎種二をモチーフにした同名の小説があったから。だが私の中での山崎種二氏は城山三郎の「百戦百勝」。理由は社会人一年目、三重県桑名市で株屋として飛び込み営業をしていた時に何度も彼に纏わる話しを聞き、同小説を読んだからだ。そして米相場でも株でも「売りの山崎」と謳われた彼のカッコよさに憧れ、90年代の泥沼で大阪の先物オプションに手を出した。そもそもそれが20年後の今ここでこのコメントを書いている遠因である。

桑名の話を続けると桑名は元々米相場の街だ。そのDNAは林業の諸戸や戦後伊藤忠に立ち向い納税額日本一なった板先喜内人を生んだ。そして桑名とのもう一つの因縁は桑名の米相場の特徴が夜間取引だった事。夜の桑名は先行指標だった。これは夜間に日本株を売り崩したシカゴ。またNYの現物に対するシカゴと同じ役割である。

ところで現代の「赤いダイヤ」は何か。赤くて希少価値があるものか。ならば個人的に思い浮かぶのは本鮪の中トロとナガス鯨の尾肉。共にグリーンピースの標的である。以前鯨はその殺し方に問題アリとした。株屋時代に客先で松坂牛の屠殺を見たが、畳一畳のゲートに誘導されると直に鉄銃で眉間を撃たれ、倒れるまま間髪いれず解体されていった。同じ「赤いダイヤ」でも松坂牛は痛みを感じる事なく処理されたがあの鯨の殺し方は惨い。薬で殺すならまだしも、銛で殺す限り捕鯨はやはり続かないと予想する。

いずれにしてもグリーンピースの標的になった事で今やそれぞれ最高級品はグラム10000円か。本鮪の味は言うまでもないが、小魚ではなくオキアミを食べる髭鯨の肉は絶品だ。中でもナガス鯨は年に数頭しか取れない。そしてその尾肉はまさに宝。

それでもその味を知る日本人はその「赤いダイヤ」を買う。ここは日本をただのデフレ国家と馬鹿にする欧米人は理解できないだろう。だからこのビジネスでば欧米からの脅威は低いはず。寧ろ敵はアジアのマネーだ。中国人が本気でトロを食べ始めたら日本に海外の天然物は入ってくるのか。まあその前にビジネスとして数年前に鮪の完全養殖に成功した近畿大学が中国に買収されてしまうのではないかと心配になる。私学が乱立する中で日本は近畿大学を早急に保護した方がよいではないか・・。


2009年12月16日水曜日

環太平洋の攻防

中国の大学生が反日プラカードを持って行進した頃、日本ではまだ見られなかった中国内部の映像をふんだんに入れて中国を紹介した米国DISCOVERY CHANNELのCHINA RISESシリーズが世に出たのは2006年。それから僅か3年、中国は「勃興」などと言う時期はとっくに終わり、今は圧倒的パワーで世界を席巻し始めた。そしてその状況を先週NHKが特集で放映した。題名はCHINA POWER。それを観てまず驚くのは秘密重視のM&Aの分野で巨大な中国マネーが世界中の資産を買い漁る状況を中国はNHKに堂々と見せつけた事。番組は中国は日本など最早眼中にない事実をつきつける。そしてこれは半分は友好、半分は脅しだろう。

ところでご存じの様に私の専門は米国の金融市場。だがこの一年の米国の経過と前述の番組からの中国の力を考慮すると、この潮流の中、戦後65年引きずる沖縄の負の遺産と中国がこれ程軟化した時節の利を政治家小沢に対する好き嫌いと混同するのは日本の不幸だと感じる。日本は戦略担当を官僚から政治家の手に移す試みを始めたばかり。この点は米国の真似だろうが、米国では演出力がある政治家とそれをサポートする野心的執事が戦略を練るの対し、日本は偏差値は高いが戦略の必要性を日常生活に感じていない国民と、それを取り巻くマスコミが民主主義の受け皿である。そもそもこの様な構造では変動期の舵取りは難しい。これまで何も決断出来ない間に周回遅れの利に遭遇する事もあったが、米中が市場を通して補完を強める中で日本は何を基準に戦略を打ち出すのか。国民に全て話す必要はない。だがいざという時の決断の筋道は示すべきだろう。

ただ結びつきを強める米中も将来は微妙。元々ともに性悪説、だから市場主義は都合がよい。そして何といっても今はその市場を通して金の無い国とある国が奇妙な補完関係だ。だが結局は金の結びつき。そしてそれを証明するかの如くCNBCではあのジムチャノスが中国は過大評価されているとの持論を展開していた。だが市場原理主義者のジムチャノスは一見正しいがリスクがある。このリスクが現実化すると米中関係は新局面になるだろう。ではここではジムチャノスの見方のリスクを触れる。

そもそも彼は空売り専門ヘッジファンドの権化。だが以前も紹介したように彼は市場の上澄を狙うチンケなヘッジファンドではない。その本質は基本的にバフェットに近く、米国の成長には市場原理が不可欠であるとの姿勢を崩さない。そしてバフェットが成長のベクトルの中で夜明けの6時から昼の12時までをじっと待つのに対し、チャノス氏は成長過程でも市場原理が働くと必ず起こる新陳代謝、即ち昼の12時から夕方過ぎの6時以降を狙ってその会社を空売りする。だから彼は昨年から救済主義を糾弾している。なぜなら新陳代謝を止めると本当の夜明けが来ないと確信しているからだ。そして彼は過大評価の中国に対しチャンスがあれば将来空売りの対象にしたい意向を示した。だがアジア人の私には中国が嘗ての米国の様な民間の新陳代謝を国家が傍観するとは思えない・・。


2009年12月11日金曜日

100ドル札からの眼差し

http://www.reuters.com/article/idUSTRE5B83PL20091209?feedType=RSS&feedName=businessNews&rpc=23&sp=true

上のロイター記事をクリックすると、GEのイメルト会長が昨日WEST POINTの精鋭に述べた自己批判のスピーチが現れる。簡単に言うと過度の欲望が国家を滅ぼしかけたと反省し、GEの経営者として新たな価値感を探る段階に入った事を認めている。さすがはGEである。そういえばイメルト会長もJPのダイモン会長もハーバードのMBA出身。そしてこの二人はそこで習った事が全てではない事を逸早く表明した。この辺りがこの二社と他との違い。そしてこの様な自己否定(変革)ができる人材を輩出し続ける事で400年の歴史を持つハーバードもいずれは11世紀から続くオックスブリッジに並んで行くのだろう・・。

さて、そこで触れたいのはサイトを開くと100ドル札からこちらをじっと見つめるベンジャミンフランクリン。下に彼が残した有名な13徳をもう一度紹介する。ついでに金融危機前夜に彼を題材にした「今日の視点」を参考までに添付する。ところでイメルト会長が危機後に行った最初の経営判断がCNBCを抱えるNBCをCOMECASTに売った事をどう見るべきか。単にキャッシュフローの判断なのか、或いは次を見つめているのかが興味深い。同時にジャーナリストとしても尊敬された昼担当のビルグリフィン氏がCNBCを去った(名目は長期休暇)。これで場中のCNBCは茶坊主的なリースマンやソプラノスと間違える女性が主役だ。いまだに周りの米国人でこの13条を覚えている人は殆ど会う事は無いが今度リックサンテリと話す機会があれば彼にも聞いてみたい。債券担当でシカゴ人の彼ならきっと知っているだろう・・。

参考:2008年4/3のブログから

http://marukano-gb.blogspot.com/2008/04/joinordie.html



「フランクリンの十三徳」

1、「節制」 飽くほど食うなかれ。酔うまで飲むなかれ。
2、「沈黙」 自他に益なきことを語るなかれ。駄弁を弄するなかれ。
3、「規律」 物はすべて所を定めて置くべし。仕事はすべて時を定めてなすべし。
4、「決断」 なすべきをなさんと決心すべし。決心したることは必ず実行すべし。
5、「節約」 自他に益なきことに金銭を費やすなかれ。すなわち、浪費するなかれ。
6、「勤勉」 時間を空費するなかれ。つねに何か益あることに従うべし。
無用の行いはすべて断つべし。
7、「誠実」 詐りを用いて人を害するなかれ。心事は無邪気に公正に保つべし。
口に出ですこともまた然るべし。
8、「正義」 他人の利益を傷つけ、あるいは与うべきを与えずして
人に損害を及ぼすべからず。
9、「中庸」 極端を避くべし。たとえ不法を受け、憤りに値すと思うとも、激怒を慎むべし。
10、「清潔」 身体、衣服、住居に不潔を黙認すべからず。
11、「平静」 小事、日常茶飯事、または避けがたき出来事に平静を失うなかれ。
12、「純潔」 性交はもっぱら健康ないし子孫のためにのみ行い、
これに耽(ふけ)りて頭脳を鈍らせ、身体を弱め、
または自他の平安ないし信用を傷つけるがごときことあるべからず。
13、「謙譲」 イエスおよびソクラテスに見習うべし。

(出典:ウィキペディア)








2009年12月10日木曜日

流動性の犠牲者

ホワイトソックスが松井に触手という話を聞いて複雑な心境。なぜなら日の当たる道を歩いてきた彼にホワイトソックスの暗いイメージは合わないからだ。シカゴに立ち寄るならまだカブスの方が合う。いずれにしても松井とヤンキースの関係は、今は米国にとって必要な日本が最後はどうなるか、米国一辺倒のリスクを日本人に知らしめるは丁度いいかもしれない・・。

ところでタイガーは大丈夫だろうか。サポートを表明していたスポーツ飲料のGATARADEがサポートからの離脱を表明したが、信憑性はともかく噂になった8人の女性の質は彼のブランドを傷つけたの事実だ。そしてこの国の金儲けに対する欲はすさまじく、騒動で話題になった商品はタイガーを餌食に新しいプロモーションに出ている。その一例はバンドエイド(登録商標ではない)。タイガーは事故後に顔にバンドエイドを貼っていたらしいが、そのメーカーはその商品を「タイガーバンド」として売りだしたという。

この様に金の力は実に恐ろしい側面を持つ。ならば万が一このままタイガーがコースに立てなくなるとスポンサー企業やPGAの放映権などの商業的価値の損害はどのくらいになるのだろう。噂は全てが本当ではないだろう。だが展開がここまで酷くなるのはその恐ろしさの一面である。そしてそれは高く上がれば上がるほど落ちる時は恐ろしい相場と同じ。タイガーも流動性に翻弄されている・・。



2009年12月9日水曜日

眠れる森の出口

普天間を議論すると日米安保に行きつく。日米安保を議論すると憲法改正が焦点になる。憲法改正が焦点になると、9条だけではなく今の憲法には国家元首の規定すら無い異常性を日本人はどうするのか。

この異常性と引き換えに経済のみに集中した戦後の日本。そしてソレを支えた護送船団のどこかに居場所を見つける事がサバイバルだった個々の日本人。このモラトリアムは心地が良かった。なぜなら努力が報われ、そして摩擦があっても最後は金が解決した。だがその金はモラトリアムを許す自分のモノだと米国が考える中で日本の最後の砦の資金力にも限界が見える。

米国の傘から出るのは苦痛。だが今苦痛を我慢しなければ手遅れになるだろう。理由は三つ。一つは世界の潮流の変化。二つ目は米国自身の衰退。そして三つ目は金のない日本に米国は同じ態度をとらないという事。特に三つめのリスクには関し日本は無防備だ。いずれにしても日本が再び眠れる森に逃げ込むともう二度と起きる事はないかもしれない・・。


2009年12月8日火曜日

真珠湾と日米関係

どううやら普天間は鳩山首相に一任された模様だが、奇しくもパールハーバー記念日の本日、日米関係は戦後最も重要な局面を迎えた。どんな結論になるにせよなぜ今自分がこのタイミングで首相なのか。鳩山氏はそれだけを考えて結論を出すべき。それがこの政権が誕生した歴史上の意義であり、結果がどうあろうとそれが日本の宿命だ。

ところで米国にとってこのパールハーバーはこれまで一体どんな意味を持ってきたのか。日本人は知っている様であまり知らない。そこでHISTORY CHANNELが2年を掛けて再編集した渾身のドキュメント「WWⅡ」を参考に数回に分けてその本質に迫りたい。

そこでまず第100大隊442歩兵師団(100Battalion442Infantry)の話をする。そもそも真珠湾攻撃が米国に重大なインパクトを与えたのはその戦果があまりにも一方的だった事。これまではその要因として日本では山本長官の戦略が美談として語られ、一方米国では日本のルール違反が強調されてきた。この構図は今も共通するが、いずれにせよマスコミや政治の影響が強い。だがHISTORY CHANNELでは米国の慢心がテーマだ。そういえばハワイ駐留部隊を題材にしたハリウッド映画にはフランクシナトラなどが主演している。だがどれもハワイのエキゾチックな文化を堪能する陽気な米国兵の話だ。これは当時の米国の世論が戦争を繰り返す欧州に関わる事を嫌う一方、同じ兵役でもハワイならばそこは楽園と言った風潮があった事の裏返しでもある。そしてハワイ駐留部隊がその緩んだ風紀の中、本土の情報網は日本が臨戦態勢に入った事を掴んでいた。そして何度も駐留司令官に緊急事態への対応を要求する。だが長官自身がその気にならず、半端な対応でハワイ全土に拡散しておいたはずの戦闘機を態々1か所に集めるという愚かな命令を出す。結果的にこの判断が致命傷となりセロ戦の奇襲でその戦闘機群が壊滅すると停泊中の戦艦は丸裸になった。

これがHISTORY CHANNNELのパールハーバーの考察。ただこれで本来は欧州を対象に米国市民に蔓延していた参戦への嫌悪感がいきなり「日本憎し」の感情に変わった。そしてここからが本題だが、第100大隊はそのハワイ出身の日系人部隊である。この大隊にパールハーバー後に強制収容所の日系人などから新たに徴兵した442歩兵師団が加わりこの伝説の勇猛部隊が編成される。そして日本人への嫌悪感が極端に高まる中、この日系部隊は欧州戦線に投入された。そこではローマ入城直前の激闘やユダヤ人収容所の開放、またドイツ国内に孤立した部隊救出という特命の任務を遂行。結果米軍史上で現在でも最も高い死亡率(4割)の部隊となった一方で最高勲章を21人が受賞する金字塔を打ち立てた。この受章率は朝鮮/ベトナム戦争を経ても未だに米軍史上最高である。

そして此処で注目したいのはパールハーバーがルーズベルトの陰謀かどうかではなく、第100大隊442歩兵師団の作戦における奇異だ。ドキュメンタリーでは米軍がローマ市内と瓦礫の山となったドイツ国内を行進する際に窓から白いシーツを掲げて歓喜するイタリアとドイツの市民の姿を捉えている。この事実と米軍を目前に自決した沖縄県民の悲劇を比べると言葉が無いが、奇異とは本来なら歓喜の的となるべくローマ市内を行進するはずの第100大隊442歩兵師団はなぜかそこから次の激戦地に移された事。また強制収容所の開放の名誉の戦いについても解放したその部隊が日系人部隊だった事を米軍は近年まで公にしなかったのである。ここにも現在に繋がる日米関係の本質がある。そしてそれはサイパンや沖縄市民の自殺を見ながら「ショックドクトリン」に簡単に陥る日本の国民性を理解した上で「バンザイ突撃」と「カミカゼ特攻」また何よりも戦後を通して米軍史上最高の勇猛部隊が日本人部隊である事実がキッシンジャーの言う「日本を起こすな」に繋がっていく・・。(次回へ)



2009年12月5日土曜日

小泉元首相の失態

残念がらあの小泉元首相にも焼きが回った様だ。なぜなら彼は普天間と献金疑惑を理由に「このままでは鳩山政権は参議院戦まで持たない」などと発言した事が本日朝日新聞で報道されている。これは次の二つの理由で彼の失点になる。

まずはこの程度の事で日本国民が先の選挙で下した政権交代の判断を簡単に否定する可能性を自ら口にしてしまった事。先月の米国の知事選が然り。絶好調だった民主党が惨敗した様に、確かに中間層が消滅した先進国の民意は簡単に変わる。元首相はその辺りを意識しているだろう、また鳩山首相の献金問題はあまりにもお粗末なのは事実だ。だがそれを今の段階で小泉元首相が口走るのはどうか。日本人は米国人よりも我慢強いはず。ならば自民党が復活に値する価値を持ち始めたというならともかく、まだ時期尚早の今あれほど人気があった元首相がそんな発言をするのはあまりにも自民党を惨敗に追い込んだ民意を馬鹿にしている。

そして失点二点目は、元首相は「これでは米国との関係が持たない」と米国一辺倒の本音を漏らしてしまった事である。今の日本は米国との関係を冷静に考えるべき時。普天間はその覚悟が試される案件だ。だれも米国との喧嘩を望んではないが日本があまりにも米国一辺倒だった歴史に様々な角度から再考を促すトレンドが始まっているのも否めない。だとすれば首相はそのトレンドを無視した。この判断は冷静な分析というより元首相の本性が出たというべきだろう。

そこで改めて指摘したいのは10月23日にこのブログで書いた内容。タイトルは「大統領令の乱発」。そこでは米国の現政権のスタッフの過去を取り上げた。そして着任早々広島に直行しNHKでは原爆の被害者たちに涙を流したルース新駐日大使は本日「日本は普天間で約束を守らない」と顔を赤らめて激高したという。断っておくが在米15年の経験からこのレベルの優秀な米国人が我を忘れて激高するなどという事は絶対にありえないと断言できる。NHKでの涙は親近感を誘うため、そして激高は圧力をかけるためのパフォーマンスである。やはり彼は百戦錬磨の有能な弁護士だった。

いずれにしても国益を巡る攻防がいかなるものか、騙されやすい日本人もそろそろハリウッド文化の本質を知る時が来た。その意味で日本人離れしたパフォーマンス能力の持ち主だった小泉首相は己の技におぼれたのかもしれない。あのタイガーウッズでさえ完璧ではなかったように彼も出番を間違えた様に思える・・。


2009年12月3日木曜日

信じられないミス

人生が山あり谷ありなら、その人生に最も近いスポーツはゴルフと思われてきた。そしてその覇者であるタイガーはプライベートでも完璧と思われた。たが違った。彼は信じられないミスを犯した。ただここで言う完璧とは潔癖の意味ではない。彼も人間だ、道徳まで完全さを求めるつもりはない。

私が言う「信じられないミス」とは、不倫の動揺からか、エリン夫人に関係を悟られない為に相手の女性に証拠隠滅を依頼する電話をした事。ただまだこの時点なら得意の「リカバリーショット」の可能性が残されていた。しかしタイガーはここから信じられないミスを犯す。なんと架電の女性に直接話さず、彼女の携帯電話のボイスメールにメッセージを残した。そのメッセージはスーパーショット後のあのガッツポーズや自信あふれる勝利インタビューからはとても想像できないおどおどした懇願の声。それが全米に流れたのである。

本来ならここに至るれまでのタイガーの価値があまりにも高かったためこのミスは致命傷になりかねない代物。だがこれ以上彼を追い詰めると天才ゴルファーの運命にとどまらず、米国の国益にもならないという配慮があちこちで働いている様子が窺える。早々にNIKEはタイガーとの契約に変更はないと表明。またGATARADE(スポーツドリンク)は「我々はタイガーと共にある」と非常に寛容な反応を見せている。実はこの意図した救済が昨今の米国の特徴だ。そう、今のタイガーはAIG倒壊後のゴールドマンサックスに似ている。

そういえばマイケルジョーダンも90年代のキャリアー最盛期に同様のスキャンダルに見舞われた。だが彼は何とか乗り切った。その時は今ほど携帯が普及していなった事が幸いだったかもしれないが、いずれにしてもジョーダンの時代と比べてもタイガーの時代は全てがより華やかになっている。金融市場が然り、だが一方で一瞬でその全てをぶち壊す罠もあちこちに隠れている。そしてこの脆弱さと華やかさの管理は至難の業だ。最後に、ソレに失敗しても助けてもらえるのはタイガーやGSなど一握りである事を覚悟しなければならない・・。