http://www.time.com/time/interactive/0,31813,1681791,00.html
まず上に先週「今年の顔」を選んだタイム誌のウェブサイトを紹介する。ここには1927年からの2009年までの「今年の顔」と、その時代背景の解説、また選考理由が書いてある。1938年にはあのヒトラーも選ばれているが、これを全部読破するれば素晴らしい近代史の知識となる事は間違いない。そして米国がタイムに対して英国のエコノミストも年末特集を組んだ。タイムもエコノミストも客観性は高い。だが米国が世界の中心であった時代とそうでない時代(そうではなくなる)、この二つの雑誌を読み比べると価値は更に高まる。
http://www.economist.com/printedition/displayStory.cfm?Story_ID=15108593
さて、そんな中で昨日SMAPの香取と草薙が道徳問題をテーマに問答をする特集番組を見た。流石転んでもただではお起きないTV業界だ。フジテレビは今年泥酔で世間を騒がせた草薙を使いその効果を狙っていた。そして半分憤慨しながら観てしまったのだが、漠然と手にしていたエコノミスト誌の年末特集のテーマと番組の本質が同じである事に気付いた。その「今年の本質」とは、今年流行り言葉に「草食男子」があった様に、豊かで便利になった社会における人間(この場合は男性)の弱体化である。一方エコノミスト誌は草薙の代わりに旧約聖書のアダムとイブを表紙の中心に据え、19世紀中頃、旧約聖書のアダムを題材にハンガリー人小説家が描いた「近代化の中で衰える男性の本質」が、現在の「テクノロジーとGDPの進歩の中で退廃したモラル」に引き続き代用できる事を特集で紹介していた。
そしてフジテレビでは、道徳とは「正しい行い」を指すのか、或いは「助ける行い」を指すのか最初のうち区別がつかない草薙に対し意外にも香取の正解率が高かった。また会場を埋めた参加者の大半は草薙に近いものだった。恐らくこれが今の日本なのだろう。あの程度の酒で泥酔した草薙はどこから見ても好青年だ。またその弱さが共感を呼び許される。そして草食男子はパワフルに進化する女性からすれば絶好の相性でもある。ただ日本社会がこの様な判りやすいトレンドを出す一方で米国はやや異なる。エコノミスト誌が指摘する様に、米国も「助ける」が「正しい」を上回り、結果助ける事が正しくなった。だから金融機関を助け、市場を助けたとされバーナンケ(FED議長)が「今年の人」になったのだ。だがそれを受け入れない人々がこの国はまだ存在する。
ところで、タイムの表紙に金融関係者が選ばれたのは今回のバーナンケが初めてだ。意外だがあの神様だったグリーンスパンでさえも選ばれていない。そう、これまでは金融はその程度の存在だったのだ。そしてそれが人間社会としては正しく健康的だったのだ。だがそれが世界的金融危機が怒り世界が協調して救済に走った。
だからその中心だったバーナンケは選ばれた。
言い換えれば29年の株の大暴落からあの大恐慌の時代にタイムが金融関係者を選ばなかったのは、彼らが大恐慌に対し無力だった事からすれば当然かもしれない。だが一方で38年にヒトラーを選んだ解説にはその後ヨーロッパで起きた戦慄への予想は乏しい。(ヒトラーのポーランド侵攻は39年9月)即ち、タイムはいつも「正し選択」をしてるわけではないのだ。では米国が今年の顔にバーナンケを選んだ事が何を意味するのか。現実として先進国が草食男子化する中で台頭するアラブとアジア社会。その状況を踏まえ、豊かさの中での人間の弱体化を前向きにとらえた英国のエコノミスト誌。それと比較し、金融救済者のバーナンケをヒーローとした米国の違いが来年の本質となろう・・。
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