2007年10月25日木曜日

ギリシャ哲学と儒学

そもそもイソップは古代ギリシャ人であった。彼は著名な哲学者にも影響を残したらしいが、誰でも知っている彼の寓話の一つがアリとキリギリスである。最近偶然にもこの寓話の究極的な役割を発見した。

その前に、今日発表された中古住宅の指標は悲惨だった。だがもう誰も驚かない。このままでは、自他ともにキリギリスである事を認めている米国人が「冬」を迎えるのは必定である。

米国住宅市場の権威であるシラー博士が数年前に開発したインデックスでは、2000年以降の住宅価格の上昇率は、米国は120%の上昇、英国が180%の上昇になっている。英国の方が米国より上昇した訳だが、認識してる限り英国では末端の住宅ローンで米国のサブプライムの様な欠陥品の話を聞かない。

これは、ロシアの復興やOIL資金の流入が自然と巡ってきた英国に対し、大戦後の世界経済を牽引した米国は、本来のピークの2000年前後を特殊な薬と栄養で伸ばしたためだろう。その薬の象徴がいわばサブプライムである。

面白いのは、歪みは米国では住宅と言う末端消費の牽引役がまず疲弊し、今それが金融機関のバランスシートには波及し始めたの対し、どうやら欧州(英国)は米国サブプライムという輸入商品で金融機関がおかしくなり、結果、嘗ての栄光に近づくチャンスだったはずの英国の末端も影響が出だし始めた印象がある。この顛末を欧州からみるとどうなるか。

それは、中国産のTOYも米国産のサブプライムも、似たような欠陥商品だっただけという後悔だろう。中国産単純商品と米国産開発金融商品は世界を席巻していた。言ってしまえばこれまではこの二つは世界にとって必需品だったただ共に中毒を起こした。ならば問題はこれからである。そこで冒頭のイソップの話に戻る・・。

実はこのアリとキリギリスの寓話は古代ギリシャから2000年をかけて世界に引き継がれた結末が世界と日本では違う。日本以外の結末は、夏に遊びすぎて冬の準備を怠ったキリギリスは、冬にアリに助けを求めたがむなしく断られる。よって死滅するのである。

これは米国人自身に確認したところ全員がこの認識だった。ところが、日本ではこの話の結末はアリは自らの貯えをキリギリスに分け与えキリギリスを助ける。そしてキリギリスにアリの心得を説いて聞かせ、キリギリスは考え方と生活習慣を改める決意をする・・。

確か「ウィキペデイア」では日本だけなぜこの様な結末になったかは儒教の影響だとの解説になっていた。需教の影響?日本人はこれを言われると弱い。だが儒教の発祥地中国では、もはや「性善説」では社会が動いているようには見えない。

市場原理主義が牛耳る米国スタンダードに日本の「性善説」が通用するだろうか。そもそもキリギリスはアリには絶対になれない。道徳と金融市場での勝敗の矛盾。日本はその事実さえも気付いていないのではないか・・。

2007年10月11日木曜日

脱臼社会

日本でタモリの「笑っていいとも」がまだ続いているかしらないが、同じような番組として、米国にはNBCのナイトショーとCBSのレイトショーがある。NBCはジェイレノ、CBSはデービットレターマンを擁して同じ時間帯に同じ様なショー番組で競っている。

この番組のゲストには、芸能人に混じり時よりビジネスマンや政治家も登場する。最近では有力な共和党の大統領候補者に躍り出たトンプソン氏が実質の立候補宣言をこのナイトショーでした事が話題だった。そんな中、昨晩のレイトショーに登場したのはグリーンスパン前FED議長だった。一瞬ウッディーアレンが突然老けたのかと錯覚したが、やはりグリーンスパンだった。

市場に関する話ではなかった。FED議長職を茶化した突っ込みをするレターマンに対し、その昔、議長職を「ピーナッツを食べる様なモノだ」と表現した彼が、今ではその茶化しに便乗して視聴者の笑いを誘っていたいた事には驚いた・・。

どうしてだろうか。いつの頃からかこの米国でこれはシリアスだと感じるような局面に出会わなくなった。同時多発テロ直後は緊張感があったが、その時は重苦さより、困難を乗り切ろうとする躍動感の方が今では印象に残っている。

そんな中、サブプライムに端を発した今回の住宅市場下落の話は久しぶりに重苦しい話題になるかと思われた。しかしMEDIAの扱いは、意図してか、或いはこれが自然体なのか判らないが、警告を発しているはずの前FED議長でさえエンターテイメント番組楽しんでいは違和感だ・・。

これは歓迎すべきかそうではないのか。毎日が自問自答である。だからと言って昔の様にダウをショートする元気は最早ない。一方で中間層からは悲鳴が聞こえるのに、株のインデックスが上がる表面的現象を眺めると、全体がラスベガス化したような雰囲気の中、いつか社会全体がDISLOCATIONの状態になる恐れを抱かざるをえない。

政治では民主党大統領候補者として独走態勢?との評価もあるヒラリーも、候補者として最初に打って出たメディア戦略は振り返るとやや異常だった。彼女の選挙戦は、直前に番組が終了したあの「SOPRANOS」のラストの場面を茶化したモノ。そのシーンを夫のクリントンと演じる事から始まった。自分がその番組のファンだったとは言え、次期米国大統領の候補が、マフィア番組を題材に自分を売り込む手法は、それはリベラルな民主党とはいえどこかおかしい。

カルト的な共和党ブッシュ政権も異常なら、弱者の味方を装いながら、一方で世の中を茶化しすぎる感もあるこの民主党の雰囲気はなんだ。

いずれにしても、社会の振り子が大きく振れると其処にはどうしてもDISLOCATION(脱臼)のリスクが生まれる。そう言えば、最近金融市場でもこの脱臼を使って状況解説をする人がいる。便利な言葉だ。ズバリ、今の米国の最大のリスクを端的に現わしている・。

2007年10月6日土曜日

急げ、自立

今日のWSJの一面記事はショッキングな内容である。願わくば自民党の首脳、或いは中央官庁の役人が読んでいて来たるべき「新時代」への対応策を真剣に考えてもらいたい。細部はともかくポイントは共和党員を対象としたアンケートで、10人中6人が最早自由貿易は国益にならないと考えている事が判明したのである。

この様なアンケートは嘗なら民主党の庭の話であり、共和党の庭ではアンケートの対象にさえならなかったはず。しかしやはり時代は変化してきている。変わってきているというより歴史てのサイクルが繰り返されると言った方がよいのかもしれない。いずれにしても日本は来る大統領で再び共和党の大統領が再選される願望やポジショントークに浸っている暇はない。仮に共和党が勝っても、少数の圧倒的勝ち組が大多数の負け組を生んだ事から、米国民の感情の変化は最早一時的な現象でない。

ならばいつまでも米国の寛容に頼るのは止め、直ぐに自立の為の軸を持つべきだ。そしてその際に日本最大の武器になる技術力や個人の資金力を国益の為に友好に活用する策を考えるべき。以前も触れたが米国はヘッジとしての日本の役割を手放さない。だから日本を完全に米国文化に同化させる事はせず、日本(日本人)にしかできない得意分野(例えばアリの様な貯蓄力は消費力しか持たないキリギリスは絶対に手放さない)はそのままに、自国に冬が到来したら利用するのである。

今回その現象面の一つに日興のCITI化も挙げられる。いずれにしても世界の中で自立するという戦後から先延ばしになってテーマの緊急性を改めて感じている・・。

2007年10月5日金曜日

WHO YOU WANT TO BE(ワォナビー)

先週フォーブスは世界で最も価値のあるスポーツ選手トップ10を発表した。「最も価値のある」という定義は年俸や賞金、またはCM出演料等の金銭面に社会的な影響力という付加価値まで加味して弾きだした数値らしい。

上位を紹介すると、まずドル換算で圧倒的トップは予想通りタイガーウッズの68M。そしてずっと離れた2位は18Mでべッカム。3位以下は議論の余地がありだがミケルソン、ロナウジーニョ、フェデラーと続く。注目はステロイドで汚れたイメージの野球からは誰も選ばれていない事。またバスケットでは9位にレブロンジェームズ。最後に女性では最近太り気味?で不調のシャラポアが入っていた。いずれにしても彼らの価値は庶民が彼らから感じられる夢の価値と同等ともいえるのかもしれない・・。

ところで、こちらの子供達は憧れた夢の対象としてWANT TO BEを単語として使う。内の子供が所属するサッカーチームでは大半はべッカムワォナビーである。そんな中で我々金融市場に携わる大人達はどうか。少し前に証券会社の決算が出そろった時、どんな時でも好決算を出すGSに対してCNBCのある皮肉屋ゲストが、YOU WANT TO BE GOLDMAN?(あなたはゴールドマンサックスの社員になりたいですか) OR(それとも) GOLDMAN’S CUSTOMER・・?(ゴールドマンサックスの顧客になりたいですか)というコメントをしていたのを思い出した・・。

確かにダウは新高値を更新した。しかし今の証券市場は多少の曲折はあれ、嘗ての様に、証券会社が仲介者とし存在し適度なスプレッドの中で皆がそれなりに共存した世界とは違う。一番儲かる胴元ビジネスに変貌した電子取引所にはそのWSの触手が様々な形で食い入ろうとしている。

要するに、14000を超えて高値を更新したダウが意味するものは、ラスベガスの華やかなネオンと思えばよい。ラスベガスは悪ではない。個人的には大好だ。だがこの本質を解らずして安易に参入しても結果は見えている。先日も指摘したが今この世界では時価総額最高を記録しても、僅か数か月後に倒産の危機になる第二第三のカントリーワイドがゴロゴロしているはずだ・・。

そんな中ではWSが一丸となり、参加者を守るという理想は最早有名無実化すると思うべきである。例えば6月のサブプライムにおいてもそもそも異常だった本質は別として、直接の切欠はメリルリンチがベアスターンに迫った追証であったと考える事も出来る。他のWS群が、自分に火の粉が返るかもしれない桃源郷を焙りだす事に躊躇する中、メリルは譲らなかった。結果その後で起こるべき事が起きてしまったのである・・。

この様に市場が博打化すれば見た目には派手になる。しかし其処には素人が安心して勝てるスプレッドはない。疑心暗鬼の中で、瞬間の出し抜きが勝敗を決める世界が広がるだけである。

そう言えば一昨日ダウが14000台と新高値を更新した翌日、再びメリルがWALGREEN社などを格下げした事をCNBCの解説者が非難していた。実はこんなところに次の切欠が潜んでいるのかもしれない。いずれにしても、米国は、ヘッジファンド国家のモデル化失敗し、次はラスベガス国家を目指し始めたのかもしれない・・。

2007年10月3日水曜日

最近の市況模様から 10/1

10/02より

昨日も触れたFED発表の一般家庭の富について、今日もその核心について議論が出ている。議論の核心はシンプルだ。それは「売り禁止」か「市場封鎖」と言う超法規的な処置でもない限り恐らく避けられない住宅価格の下落を、株価の上昇でサポートできるかどうかである。ただ間違えてはならないのはこの国では上がるかどうかという議論はなく、どうやったら上がるかという方法論しかない事である・・。

既に米国の株を見る上のポイント、「健全な成長の結果としての株が存在するのではなく、成長の前提として株が存在する」というスタンスはの話はした。よって共和党でも民主党でもこのスタンスは変わらない。ただそのハンドリングに差があり、今の世の中が2極化し、弱者をベースにしている民主党ではこの局面を強引に乗り切るには不安である。(ここがビルクリントン時代とヒラリーの違い)今後はこの様な政治リスクも含め、徐々にこの命題に対しての途中点が株価として評価されるだろう・・。

個人的には今のところこの試みは失敗するとみている。ただもし共和党が次の選挙に勝てば、超法規でも何でも持ち出し株価を維持させる可能性は高まる。市場はすでにギャンブル化しているがFEDが永遠にチップを供給して何らかのテーマが其処にあればゲームを永遠に続ける事は理論的には可能。ただ最後にはその膨らんだチップで何が買えるかが問題であるが・・。

10/01
CITIの3QのPROFIT WARNINGは驚きではない。よって株先は戻り基調である。問題は4Qの見通しを通常に戻るとしている事。ただこれも驚きではない。なぜならトップのプリンス会長へ株主ヘッジファンドから執拗な攻撃が続く中下手に弱気な事など言えないからだ。寧ろ本当の驚きはサブプライム以降の米国の本質に対する米国自身の認識の甘さである。中には本質の根の深さを知った上で意図的に無視しているモノもある(恐らくCITIが一番分かっている)。ただこのような姿勢はFFなどの手前の金利VOLATILITYを不安定にし、最後には他からバカにされ信用されなくなくなるリスクをはらむ。クリスマス商戦を控え、中国製TOYの流入をけん制している暇があるなら、本当は米国議会は自国の金融商品の信頼性の心配をするべきだろう・・。


結局注目のCITIは結局大幅高だった。他に運用先がない中、二桁のリターンが当前の運用担当者にとって株が先に買われてしまう恐怖は本当に怖いという事。本日株はアルゴリズムがWORKする間もなく、そんな実需によるショートカバーに終始した。この様に株は再びFLY TO EQUITYの本領を発揮したが、この国の本質に変化ない。ただ雇用統計までに追加利下げを織り込み過ぎたFFの先物はある程度吐き出すだろう。そんな中でCNBCでは本日の株上昇の材料としてFEDが発表したFUNDフローから米国の一般家庭の富が最高を更新した話をしていた。ただその資料は6月30日迄の統計との事。それでは意味はない。そもそもあのカントリーワイドでさえ昨年末の分割権利落ちを考慮すれば、時価総額の最高値は今年の2月である。それから僅か半年で同社は事実上の行き詰まりに落ちた。いずれにしてもこの様なラスベガスのバカラテーブルような株式市場にFEDはチップを供給し何とかPLAYERにゲームを続けさせた。しかしサブプライム破綻で多くが家を失う現状、即ちアメリカンドリームの消滅の現実は変えられない。にもかかわらず古い資料で市場を鼓舞しているようでは株の急落は実は近いと言う事だろう・・。