2007年8月31日金曜日

世界を席捲する二つの毒(不良品)

NY TIMESによれば、米国の サブプライム商品で傷ついた外国の投資家を代表して、ドイツ政府の経済諮問アドバイザー兼大学教授のボフィンジャー氏は、米国と米国の金融商品を統括するSECやFEDといった管轄当局に意見の申し入れをしているとの事である。

確かに米国当局の職務能力の信頼性へ疑問は、其の商品構成もさることながら、格付け機関の無能を放置した事実から反論の余地はない。そんな中でボフィンジャー氏が改めて主張する様に、自身のFUNDINGを外国に頼っている米国としては、今後この圧力にどう反論するのか。国内の組成商品への海外投資家によるスクリーニングといった屈辱は、本当に実現すればこれまで一方的に米国から圧力が流れてきた歴史の大転換である。

しかしCNBCを見ている限り、この様な面白いNEWSは全く流さず、相変わらず米国が強気を維持する為に必要な材料だけを探すだけの偏った構成。だが外国からの干渉など全く予想しなかったはずの米国はどう反応するのか。恐らく市場の題材にはならないが中央銀行マンが集まるジャクソンホールの水面下でこの様な話題が出るに違いない。

いずれにしても、興味深いのは中国の動向だ。ご存知の通り今世界はアンチMADE IN CHINAの大合唱。そして、成長優先、利益優先で中国当局の管理機能が全く働かなかった責任を追及する急先鋒が米国議会と恐らくは次期政権の民主党である。

しかし、成長優先、利益優先で全く管轄当局が機能せずにサブプライムという毒(不良品)を世界に撒き散らした点で米国は中国と何が違うのか。中国はいずれこのレトリックを必ず切ってくるはず。いずれにしても中国製品を買うか。米国の金融商品を買うかどうかは最終的に世界の消費者と投資家の自己責任。

結局、世界はこの二つの毒(不良品)がなければ既に回っていかないレベルにあるのではないか。この現実の妥協点を巡る駆け引きが、大統領選挙を睨みながら世界のパワーゲームとしてこれから繰り広げられるのは面白そうだ。

ただ米国の優位性は続くもののあまりにも反省がないと危ない。逆に反省が過ぎて急に鬱になられても困る。そして一番困るのは朝青龍のように開き直られる事かもしれないが・・

2007年8月23日木曜日

オズの魔法使い

先週の雑誌エコノミストによれば、1977年、それまで民間エコノミストだったグリーンスパン前議長は、同誌に「絶対にやってはならない五項目」と題した論文を発表。その中で次のような項目を述べた「Don’t allow money-supply growth to spiral out of hands」(エコノミスト)。

皮肉にも、米国の住宅市場は同誌がその危うさと限界について特集を組んだ2006年7月初旬から目に見えて変調をきたし、直後バーナンケFEDは利上げを止めたものの、住宅市場は明確な回復のサインを見せることなくここに至った。そしてMOODYS ECONOMIST.COMのMARK ZANDI氏によれば今年から来年にかけて1.7Mの米国住宅がFORECLOSUREに掛けられる可能性があると指摘されている・・(NYTIMES)

さて個人的に動物生態学に注目している話はしたが、経済がこうなってしまうと誰かに責任を負わせなければ収まりが付かなくなるのは集団心理学としても当然。そして矛先はまずグリーンスパンに向かった様子。だが今後はバーネンケに向かう可能性もある。そして市場は最後に自分自身を省みる事になろうが、大概その時は手遅れである。そんな中この生態学から集団心理学までを縦横無尽に駆使してこの米国の運命を変えたのがカールローブだった。そもそも彼はブッシュ個人とは30年の付き合い。94年のテキサス州知事選挙を勝利してからその再選、更には2000年はゴアに総得票での優位を奪われながらの逆転。またイラク戦争という爆弾を抱えながらもケリー候補の優柔不断さと、本質とは全く関係ない宗教的結束力という裏技で米国民を取り込んだ彼の魔法は、実質この8年の米国はブッシュというより彼の魔法の結果に支配されたといってもいいのではないか。そして彼が去った今、魔法から覚めた米国はどうなるか。皮肉だが、今こそ米国経済にはローブ氏の様な魔法使いが必要だ。

民主党は今の経済のMESSを乗り切る為にマクロでは数年前に野放図にリスクを拡大し過ぎたと散々批判こき下ろしたGSE(政府系の住宅ローン引き受け公社)に、凍る民間に変わって住宅市場の引き受け機能を再び負わせようとしている。だがそれでは所詮弱者(敗者)の心情にエネルギーを頼るだけで政策は行き当たりばったりのポピュリズムが民主党の特徴となってしまう。そんな米国に世界はこれまでと同じレートでFUNDINGを続け、またドルの価値も認めるのか。また一旦魔法が覚めた群集をコントロールするのは困難である(ソレは次の選挙で明確になる)。いずれにしても今米国が抱える本当のリスクは、レバレッジや流動性という経済の分野のシステム(機能)というより、良い意味でも悪い意味でも機能していた強権的縛り(魔法)が解ける事からの混乱と、結果としてそれが国際情勢におけるイラクに続く国内経済のCUT&RUNになる事である。イラクにしても、米国の経済の仕組みの転換(ヘッジファンド国家へ)にしても、そのCUT&RUNの責任は誰が取るのか。ソレは究極的に事態を招いた米国大統領とその政権の雇用主で在る米国民だ。だから米国は試練(責任を取る事)なしにこの苦境を脱する事はないし、またあってはいけない。たとえソレがカールローブというOZのような魔法使いが残していった運命だとしても・・。

(注)オズの魔法使い:その物語が作られた当時の米国(経済)の風刺の関係から、カールローブとOZ、またチェイニーをダースベイダーと評する風潮はこの政権の初期からあった・・。

2007年8月22日水曜日

検証、サブプライムの本質と詳細

世界を牽引した米国が、超長期の転換点を迎える中、実物経済から金融経済へ舵を切った。しかしその転換期におけるリスク管理で支障が生じ、またその問題が露呈したタイミングと政権のレームダックが重なるという不運もあり、現在金融経済(市場)の参加者が今混乱している。そこで政権は実体経済の堅調さという一旦は切り捨てた分野でこの局面の打開を図っているが、既にGDPの2割を切っている製造業の力不足と、一旦は捨てた分野に再び頼るという無理な論理を持ち出した事で、安易に利下げを求める市場とのコミュニケーションでも逆に齟齬が生まれている。

これらの負の連鎖が解決する前に仮にこの政権が時間切れ終了となれば、イラク問題でも最悪のシナリオであるCUT&RUNを米国内の構造改革にも残す事になる。そして最大の問題はサブプライムでも海外の投資家が傷ついた以上、M3の発表を止めた裏返しである真の病巣の「簿外の規模の把握」が出来ないという現状が、これまで米国を支えてきた海外からのFUNDINGの縮小という事態を行き起こす事である・・。

<詳細>
政治経済で100年間世界を牽引した米国が実体経済から、ゲーム性の高いステロイド性金融経済へ舵を切るという事は、結果的に中国やインドといった実体経済の新しい主役を演出しつつも他国にもそのゲーム経済への参加を促す事になった。そしてその過程で主役に躍り出たのがヘッジファンドとプライベートエクイテイーである。彼等は実体経済のグローバルな新陳代謝とその組み換え(M&A)に貢献、一時的に転換を促進する為の超低金利政策の受け皿になった。しかし生み出された過剰流動性はそのプールを満杯にしても収まりきれなかった。其処が満杯になると国債のイールドカーブと様々なリスクに対するプレミアムを押し潰し、やがて桃源郷と揶揄された本来特殊な人々の為の特殊な市場であるクレジット市場にまで流れ込んだ。そんな桃源郷の中の商品がサブプライムである。だがこの桃源郷にはサブプライム商品以外にも難解な英熟語が飛び交う様々な金融商品が存在する。そしてそれらの商品は構造がそもそも複雑である上に、主な参加者であるヘッジファンドやPEがレギュレーションと情報開示の縛りが少ないという特徴があった。またその同時期に時代に呼応し、グラスステイーガル法が廃止された影響も見逃せない。なぜならその縛りが撤廃された事で金融機関は構造転換のチャンスを100%享受する事が可能になり、結果、WSの1年間のボーナスの総額が数兆円と言う常識外の規模に膨れ上がる現象が起きたのである。しかし一方で世界が過剰流動性を背景に過剰利益追及と金融機関の過剰競争の連鎖に突入してしまった事に格付け機関も含めて最早誰もブレーキを掛けないという異常状態に陥った。この時点で世界経済は流動性という栄養の取りすぎが機能障害を起こし、結果必要な栄養までも取れなくなる慢性糖尿病のリスクに直面した。欧州中央銀行はその早く危険性を警鐘したものの、実質米国が引締めに転換した後の流動性供給を一手に引き受けた日銀の対応は、国内景気を理由に遅れた。いずれにしてもこの後事態が悪化すれば、ヘッジファンド国家への構造転換を促進したブッシュ政権はイラク戦争と同様の失敗をした事になろう。そしてその失敗の原因を敢えてこの段階で探るなら、やはりこの政権の性格に矛先は戻る。世界が困惑したその強権的性格はSEC長官人事(短期間に3人が交代)や、また最も重要なグリーンスパンの後任選出において多大な影響を及ぼした。この事は殆ど市場の話題にならないが、本来FEDやSECという当局がその管理責任を果たす為には真の意味での独立が重要だった。しかし当局の独立性の尊厳はテーマにはなったもののブッシュ政権の影響力下ではその機能を十分に果したとはいえず、結果、当局が全体像を掴む前にリスクが制御不能のレベルまでに拡大してしまったもしれない不安が今の混乱の本質である。

2007年8月16日木曜日

動物生態学から学ぶ。8・14の市況から

株は秋までに高値更新のチャンスはある・・。だがそのための絶対条件が経済の本質とはかけ離れたこの政府の力技である事は何度も主張してきた。その立場を取る人間にとって今回のカールローブの辞任はどう映るか。いずれにしても自分が考えているよりこの政権の末路は酷いものになる可能性ある。その場合はこの政権によってここまで来た株式市場も一蓮托生を覚悟するのが道理かもしれない・・。

ところでこのカールローブ氏 の事を数年前に「米国のラスプーチン」としてコメントした事がある。そんな中、日本でラスプーチンと言われた佐藤優氏の作品を最近立て続きに読み崩した。びっくりしたのはまずその数の多さ。この2年間に12冊も書いている。まだ半数だが、ソ連とその関連の専門家としての知識に驚嘆する一方で、時より発見する米国に対する記述のインパクトの弱さとのアンバランスには困惑する。この出版ペースの多さは、裁判では敗訴が続く氏の苦悩に、彼の知識と筆力に驚いた出版社が挙って便乗している感は否めない。だが出版社に限らず多くの著名人が田中真紀子/鈴木宗男騒動で悪役にされた彼を掌を返した様に支援している現状は、まるで動物生態学の本質そのものである。いずれにしても氏の本は今後も普通の日本人にはかなりインパクトが予想される。ただ願わくは氏には爆発的に拡大する可能性があるその影響力を上手く日本の国益の為に使って貰いたい。なぜならそもそも米国が専門でない佐藤氏が世界全体の事にコメントするのは自ずと限界があるはず。だが氏の宗教と至宝の「マルクス経済学」への古典知識に、普通の人からすれば目から鱗のようなインテリジェンスの裏話を融合すれば、世界全体の話においても素人をも翻弄する事は可能。でもそれでは彼はカールローブどころか本当にラスプーチンになってしまう。

そういえば、動物生態学の古典「ソロモンの指輪」では食物連鎖の頂点に立つ猛獣と、ハトやシカの様な食べられる側の行動パターンの違いが興味深い。狼は戦いに一旦決着が付くと、負けた狼は態と急所の首を勝者に晒す。そして勝者はそのシグナルを確認すると攻撃を止める。逆にそんなコントロールがないのが愛らしいハトやシカといった弱者。この種の動物は一旦けんかになると相手が死んでも、死体がバラバラになってもまだ攻撃を止めないとの事。これは、本来「殺される事を前提」に世の中に存在している生き物は、食物連鎖の頂点である殺す側、肉食獣に備わっている殺す事の意味とやり過ぎのリスク感覚が無い事を意味する。相場の世界でも最後に勝ち残る人はどこかにこの肉食獣の様なリスク感覚があるが、佐藤氏はその著書の中でKGBなどの特殊機関の策謀も「動物生態学」を基本にする事が多いと紹介していた。

そしてカールローブ氏などの軍師が去るタイミングは、庶民に対して機能したはずの戦略の歪が露見する時と大体は同じ。通常はその策謀が暴露される前に軍師やKGB等の特殊な人は歴史では抹殺される事が多い。なぜなら恐らくその隠された事実はハトやシカの様な庶民には制御不能だからだろう。相場も然り。SPOILされた参加者のDNAは時に事実に対して想像以上に暴力的になる。よって、明日と明後日株式市場がパニックになれば、TYUは10925を試すだろう。だが、ダウが200日が割れ、指摘している様に其処でFEDが利下げでもすれば極端な反動が来る。其れも動物生態学の話である。

2007年8月11日土曜日

慢性糖尿病国家

米国での日本語放送JAPANTVでは、シカゴ時間の朝5時半からNHKBSの株式ニュースを流す。びっくりしたのは昨日の朝の内容。こちらからすればローカルニュースでしかないその番組の中でさえ来週の「15日」の事を重要日としてREMAINDしていた・・。ただこれではっきりしたのはこの局面での米株売りピークは恐らく15日前か、(月曜が危ない)或はそれが過ぎ去って油断したところを襲ってくるだろうと言う事・・。

さて、今回のFEDの流動性供給を「緊急輸血」に例える人がいるが、個人的にはそのイメージはない。「緊急輸血から金利の緊急緩和へ・・」これがパニック時の常套手段である事に変わりはないが、そもそも今回は健康な人が突然の事故で出血しているのではない。寧ろ、長すぎた甘い環境にスポイルされた市場PLAYERが大騒ぎする一方で、その本質は米国人の体型が象徴する「糖尿病」が経済に波及した様なものと考えた方が好い。そもそも米国では遺伝も含めた糖尿病は国家的大問題である。医学的臨床説明は専門家に譲るとしても、その多くは「飽食の飢餓」の別名が示す通り、栄養の取り過ぎによって本来の機能が麻痺し、逆に栄養がとれなくなる状態と認識している。そして今回の混乱の根本も流動性過多が原因のサブプライムが結果的に流動性の枯渇を呼び込んでいるのであり、そもそも金利水準の問題ではないのである。

そんな訳で昨日からの中央銀行による処置は、緊急出血に対応した輸血というより、糖尿病の患者が持ち歩いている飴玉かインスリン注射の様なイメージである。従って今後の展開はFEDと言う医者が糖尿病患者の市場にどういう治療をするか次第である。ただ9月のFF先物が織り込んでいる様に、今のPLAYERがそこまでスポイルされているなら、FEDは一旦ソレを実行するのも一考。だが利下げが糖尿病の解決にはならない事はFEDが一番認識しているはず。従ってここからのトレードの妙味はスポイルされた患者の悲鳴と医者の処方箋のズレを狙う事である。即ちFF先物かEDのPUTを買う事が個人的には最も有効とみる。また今の株式市場は大騒ぎするか、或は鬱病になっても一旦落ち着くとコロッと元気になる特徴がある。従って仮に緊急利下げがあった場合の大はしゃぎにそなえてTBONDのPUTでも仕込むべきだろう。いずれにしてもダウはまだ200日さえ試していない。次の処方箋はそこでの攻防の後にはっきりするだろう・・。

2007年8月9日木曜日

ボンズと朝青龍

ボンズが終にホームラン記録を更新した。人種差別的とも感じた誹謗中傷の後、今の米国は静かに彼を称えている。ただスポーツ番組も特集を組まず、話題としても其の日だけだったのは物悲しい。しかしこれも今の状況からはしかたがない。ブッシュがコメントした様に、全ては歴史が後から評価すると言う事だろう。一方でそんな悠長な事を言っていられないもう一つのステロイドが存在する。 ここからはその話である。

個人的にここで米国経済をステロイド経済と名づけてから5年程が経つ。そしてここ数年のいわゆる過剰流動性経済になってからは、その流動性を皿回しの皿に例える事にしてきた。ではそれだけの巨大な大皿を回してきた軸棒の動力は何だったのか。当たり前だが動力は欲望から生まれた。そもそも皿が安定的に回り続ける為には皿の大きさと動力エネルギーに絶妙なバランスが必要だ。ただ止めどなく拡大する一方と思われた皿の大きさと動力エネルギーの増幅は、投資家にリスクの再認識が起こった段階から皿の大きさはそのままに動力に問題が生じている。

結果、巨大な皿はバランスを崩して彎曲を始めているが、どうしたら元の安定的な巡航回転に戻せるのか。米国はその難局の入り口に立っている。そもそもFEDや政府関係者が現状を90年代の危機と比べてPLAY DOWNしているのは、関係者が批判するような彼等が現状認識を怠っているからではない。寧ろ逆。其のリスクを十分に警戒してきた中で、一旦バランスが崩れた以上次の利下げがどういう結果を齎すのか確信がないだけではないか。

そんな中でCNBCで利下げを高々叫んでいる人には共通の危うさを感じる。彼等は世界の中で米国がどう見られているか。イラク問題などの所業の後これからどう見られていくかと言う客観的視野には全く興味がないようだ。

この50年がそうであった様に、例えばドルの水準も米国が他国に対してエッジを握った上で水準だけを自分の都合に合わせて変動させるという単独超大国の特権が永遠に続く事に警戒心はない。何度も言うが、米国で生理的老化が始まったと時に生まれたブッシュ政権の政策履行は好い意味でも悪い意味でも凄かった。しかし最後には万物の原理には勝てない。

其の反動が始まろうとしている今、前向きではあるものの他からすれば傍若無人とも言えたこの米国の姿勢、その強気がの維持が可能かどうかが最大の焦点である。

個人的にはその結論はまだ見えないが、傍若無人が牽引した自信ほど脆いモノはない例を最近感じた。それは若貴ブームが終った後大相撲を牽引した朝青龍のあの強さと脆さの対比に似ている。仮に米国の自信が朝青龍なら、大皿の落下を防ぐ事は困難、逆にボンズの様に、静かにステロイドの使用を認めた上で批判に耐えながらも目標を完遂できれば活路は開けるのではないか・・。

2007年8月8日水曜日

WAKE UP CALL

先週末のNYTIMESの特集は、現在中国のWEB社会で起こっているといわれる現象の解説だった。そしてその内容は、WEBでは当局が其の膨大な外貨準備基金の一部をBLACK STONE株に投資した結果、早々に損が出た事を国民が嘆き、「中国人の血と汗の結晶である外貨準備金をもっと有効に使え・・」との激文が飛び交っているという事。いずれにしても僅か3Bの投資が損した程度でこの激情になると言う事は、一部で噂されている中国がサブプライムを大量に買っているとの話が本当だとすると、今の情報開示が前提の時代につい中国の政情不安までの余計な心配をしてしまう・・。

さてこの仕事について20年が経つが、今日ほど日本が哀れだった日はない。理由は読売新聞のWebに掲載された自民党の中川幹事長の言葉とされる「選挙に負けたのは日銀のせい」と言うコメント。なぜならこの様な人が幹事長をやっている政党をいつまでも第一党にしておくのは国民自身の選択の結果だからである。

そもそも日本個人の金融資産は1500兆円とも言われて久しい。にも拘らず、この金融資産の有効活用の方策も全く考えず、いたずらに米国の言う事だけを聞いて市場の米国型化だけに専念、後は円安頼みの景気刺激策しか出せなかったのはあまりにもステロタイプすぎた。

そういえば最近何かの雑誌記事で堺屋太一氏が「この金融資産をベースに金利があと2%あればいったいどれだけの利子所得が生まれたか」と述べている。確かに想定される年間30兆円の新たなる富は、90年代に乱発した総合経済対策の数回分になる。ではなぜ堺屋氏は政府の要職にあった時にこんな単純な事が実行できなかったのか。答えは簡単で米国がソレを望んでいないからだ。たとえ堺屋氏といえども自民党の政権の中では実行できない。ここが哀れだという事である・・。

一方、日本と全く逆で、SAVINGレートが「負」というこの国では、いつでも必要な時に日本の資金が使える状況にしておかなければならない。米国民は資産インフレを謳歌する一方、其の政策に必要な流動性はせっせと日本が供給している。

米国が衰退の危機に直面した今こそ、結果として実は日本自身が大変な危機だと感じている人は中川幹事長の発言をどう感じているのだろう。そんな中で旧知の証券マンから面白い話を聞いた。今の収益の主力は為替ヘッジをしていない投信だという。この商品は、現地での成長がそのまま享受できる一方、一旦円高が始まる場合のヘッジやUNWINDのリスクは最早想像不可能のレベルだという・・。

2007年8月4日土曜日

嘘とVOLAの関係

NFLの有名選手から、志願してアフガニスタンの前線に散ったP.TILMANの死体には、額に正面から撃たれた3発の傷があったという・・。

この稀代のヒーローの不可思議な死をどう説明したらよいのか。その時のブッシュ政権は困ったはずである。そんな中一昨日、民主党が仕切る議会にてこの事件の意図的情報操作の可能性を追及されたのはあのラムズフェルド。彼は顔を赤らめながら、情報伝達のミスは認めたものの、あくまでも意図的な情報操作と事実隠蔽は認めなかっ・。

有名な英語の表現に「you cannot handle the truth ]と言う表現がある。これはジャック二コルソンがトムクルーズと競演した海軍を題材にした映画で、清濁を併せ呑み、時には犯罪になる事実の隠匿を強行しても全体の統括を重んじた長官のジャック二コルソンが、自分を裁く裁判で聴衆をこの台詞で恫喝する場面が最も有名。恐らく、その時のラムズフェルドには同じ思いがあった。

それはそうと、今日の雇用統計の結果には少し驚いている。なぜなら現状の景気下振れリスクの中、今こそ国民をあのイラク戦争でさえ正当化に導いた政権の演出力が再び必要されるはずなのだが、にも拘らず、悪い数字をそのまま出してしまうあたりはこの政権らしくない。これは、政権が今後の展開に十分自信があるのか、或はこの政権さえもいよいよ機能不能なのかよくわからない。

ところで、先進民主義国家では国民は表面的にマスコミを通じて真実の大半を知っていると思っている。だがそんな事はありえない。前述の英語表現ではないが、感情的な一般大衆が真実などを知ったら混乱を招くだけ。そもそも法治国家の法律もただの文字である。その文字の意味するところ、即ち解釈をどうスタンダードとして構築されるかで法治国家も独裁的にもまた共産的にもなれるのである。

そしてその時に重要なのは弁護士の演出力とメディア。だがソロスが指摘するように、弁護士とメディアにとって重要なのは真実ではないのかもしれない。そんな現象を心配してか、少し前のWSJに共和党親派の大学教授の調査が掲載された。

この米国でも社会主義的発想の芽がある事に驚いたが、調査は普通の米国人に「貴方の年収が$30000で、8割の社員の年収が同等の会社と、貴方の年収は$35000だが8割の社員が$40000以上を稼ぐ会社とどちらで働きたいかという質問をすると、6割以上の人が前者と答えたという・・。」

教授はこの結果が語る将来のリスクを示唆、民主党が掲げる増税と金持パージの政策が大衆の感情面と相まって経済にどんな悪影響を齎すか警告している。クレジット市場然り、いずれにしても嘘が嘘としてバレ始める時、世の中のVOLAは上昇し、流動性は心地よいバッファーから災いへと変貌する。

ベアスターン株の謎

それにしても今回の下げ相場で最大の謎は、起点となったベアスターンの株の値動き。一言で言ってこれだけの騒ぎの基点の割にはなぜ未だに100ドル以上もしているか。中小のモーゲージ関連株は一日で半分以上の時価総額を消滅するところもある中、本日は先月話題となったファンドの顧客がまずベアとその役員に対して訴訟を起こした。そして同社としては3番目となる別のヘッジファンドの大損の話が出てもまだ株は100ドル台・・。ベアとGSをふくめたWSの証券4社のボーナスはここ数年数兆円と言う信じられない水準が続いたが、このWSの4社と、世界の他の産業の全ての会社の間にはその報酬差が正当化される実力差が本当にあるのか。今WSを中心とする市場関係者はヘッドラインリスクからのVOLATILITYのマネッジに追われている。だがこのベアの株の動きが示す不可思議な感応度が個人的には最大の謎である。この事実を曖昧に考え、そして仮にソレが間違っていた場合が最大のリスクであり、この相場の難しいところだろう・・。

2007年8月2日木曜日

ピッチャーバッター

日本のスポーツNEWSをみていたら、大阪桐蔭学園の中田君と言う超高校級のスラッガーの特集をやっていた。確かにレベルの高い大阪で4番でピッチャーと言うのは凄い。ただそれが裏目に出て甲子園を逃してしまったらしいが、彼にはカブスのピッチャーで球宴にもここ数年必ず選ばれているゾンブラーノ投手の試合を是非見てほしい。
彼は現在14勝でNリーグのトップを走る。速球は松坂程度だが、体格は松坂を上回る。そして彼の特徴はなんと言ってもそのバッテイング。ピッチャーでスイッチヒッターと言うのも凄いが、ピッチャーとして当番のない日でもシカゴでのゲームにはベンチに入る事があり、そんな日チャンスに監督は迷うことなく彼をピンチヒッターとして送り出す・・。(彼は、自分が打たれたヒットよりも、自分が打ったヒットの本数が上回る試合を何試合かしている・・)
ところで常識とは何だ。ピッチャーだからバッテイングをしてはいけないないというのは常識に縛られた考え方。そもそも日本は戦後米国から様々な常識を教え込まれた。だがその米国自身は一旦目標を定めると、その目標の為のプロセスの常識は時代と共に変える柔軟性を持っている・・。早く日本も其れに気が付くべきだろう・・。