2007年8月22日水曜日

検証、サブプライムの本質と詳細

世界を牽引した米国が、超長期の転換点を迎える中、実物経済から金融経済へ舵を切った。しかしその転換期におけるリスク管理で支障が生じ、またその問題が露呈したタイミングと政権のレームダックが重なるという不運もあり、現在金融経済(市場)の参加者が今混乱している。そこで政権は実体経済の堅調さという一旦は切り捨てた分野でこの局面の打開を図っているが、既にGDPの2割を切っている製造業の力不足と、一旦は捨てた分野に再び頼るという無理な論理を持ち出した事で、安易に利下げを求める市場とのコミュニケーションでも逆に齟齬が生まれている。

これらの負の連鎖が解決する前に仮にこの政権が時間切れ終了となれば、イラク問題でも最悪のシナリオであるCUT&RUNを米国内の構造改革にも残す事になる。そして最大の問題はサブプライムでも海外の投資家が傷ついた以上、M3の発表を止めた裏返しである真の病巣の「簿外の規模の把握」が出来ないという現状が、これまで米国を支えてきた海外からのFUNDINGの縮小という事態を行き起こす事である・・。

<詳細>
政治経済で100年間世界を牽引した米国が実体経済から、ゲーム性の高いステロイド性金融経済へ舵を切るという事は、結果的に中国やインドといった実体経済の新しい主役を演出しつつも他国にもそのゲーム経済への参加を促す事になった。そしてその過程で主役に躍り出たのがヘッジファンドとプライベートエクイテイーである。彼等は実体経済のグローバルな新陳代謝とその組み換え(M&A)に貢献、一時的に転換を促進する為の超低金利政策の受け皿になった。しかし生み出された過剰流動性はそのプールを満杯にしても収まりきれなかった。其処が満杯になると国債のイールドカーブと様々なリスクに対するプレミアムを押し潰し、やがて桃源郷と揶揄された本来特殊な人々の為の特殊な市場であるクレジット市場にまで流れ込んだ。そんな桃源郷の中の商品がサブプライムである。だがこの桃源郷にはサブプライム商品以外にも難解な英熟語が飛び交う様々な金融商品が存在する。そしてそれらの商品は構造がそもそも複雑である上に、主な参加者であるヘッジファンドやPEがレギュレーションと情報開示の縛りが少ないという特徴があった。またその同時期に時代に呼応し、グラスステイーガル法が廃止された影響も見逃せない。なぜならその縛りが撤廃された事で金融機関は構造転換のチャンスを100%享受する事が可能になり、結果、WSの1年間のボーナスの総額が数兆円と言う常識外の規模に膨れ上がる現象が起きたのである。しかし一方で世界が過剰流動性を背景に過剰利益追及と金融機関の過剰競争の連鎖に突入してしまった事に格付け機関も含めて最早誰もブレーキを掛けないという異常状態に陥った。この時点で世界経済は流動性という栄養の取りすぎが機能障害を起こし、結果必要な栄養までも取れなくなる慢性糖尿病のリスクに直面した。欧州中央銀行はその早く危険性を警鐘したものの、実質米国が引締めに転換した後の流動性供給を一手に引き受けた日銀の対応は、国内景気を理由に遅れた。いずれにしてもこの後事態が悪化すれば、ヘッジファンド国家への構造転換を促進したブッシュ政権はイラク戦争と同様の失敗をした事になろう。そしてその失敗の原因を敢えてこの段階で探るなら、やはりこの政権の性格に矛先は戻る。世界が困惑したその強権的性格はSEC長官人事(短期間に3人が交代)や、また最も重要なグリーンスパンの後任選出において多大な影響を及ぼした。この事は殆ど市場の話題にならないが、本来FEDやSECという当局がその管理責任を果たす為には真の意味での独立が重要だった。しかし当局の独立性の尊厳はテーマにはなったもののブッシュ政権の影響力下ではその機能を十分に果したとはいえず、結果、当局が全体像を掴む前にリスクが制御不能のレベルまでに拡大してしまったもしれない不安が今の混乱の本質である。

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