2007年8月23日木曜日

オズの魔法使い

先週の雑誌エコノミストによれば、1977年、それまで民間エコノミストだったグリーンスパン前議長は、同誌に「絶対にやってはならない五項目」と題した論文を発表。その中で次のような項目を述べた「Don’t allow money-supply growth to spiral out of hands」(エコノミスト)。

皮肉にも、米国の住宅市場は同誌がその危うさと限界について特集を組んだ2006年7月初旬から目に見えて変調をきたし、直後バーナンケFEDは利上げを止めたものの、住宅市場は明確な回復のサインを見せることなくここに至った。そしてMOODYS ECONOMIST.COMのMARK ZANDI氏によれば今年から来年にかけて1.7Mの米国住宅がFORECLOSUREに掛けられる可能性があると指摘されている・・(NYTIMES)

さて個人的に動物生態学に注目している話はしたが、経済がこうなってしまうと誰かに責任を負わせなければ収まりが付かなくなるのは集団心理学としても当然。そして矛先はまずグリーンスパンに向かった様子。だが今後はバーネンケに向かう可能性もある。そして市場は最後に自分自身を省みる事になろうが、大概その時は手遅れである。そんな中この生態学から集団心理学までを縦横無尽に駆使してこの米国の運命を変えたのがカールローブだった。そもそも彼はブッシュ個人とは30年の付き合い。94年のテキサス州知事選挙を勝利してからその再選、更には2000年はゴアに総得票での優位を奪われながらの逆転。またイラク戦争という爆弾を抱えながらもケリー候補の優柔不断さと、本質とは全く関係ない宗教的結束力という裏技で米国民を取り込んだ彼の魔法は、実質この8年の米国はブッシュというより彼の魔法の結果に支配されたといってもいいのではないか。そして彼が去った今、魔法から覚めた米国はどうなるか。皮肉だが、今こそ米国経済にはローブ氏の様な魔法使いが必要だ。

民主党は今の経済のMESSを乗り切る為にマクロでは数年前に野放図にリスクを拡大し過ぎたと散々批判こき下ろしたGSE(政府系の住宅ローン引き受け公社)に、凍る民間に変わって住宅市場の引き受け機能を再び負わせようとしている。だがそれでは所詮弱者(敗者)の心情にエネルギーを頼るだけで政策は行き当たりばったりのポピュリズムが民主党の特徴となってしまう。そんな米国に世界はこれまでと同じレートでFUNDINGを続け、またドルの価値も認めるのか。また一旦魔法が覚めた群集をコントロールするのは困難である(ソレは次の選挙で明確になる)。いずれにしても今米国が抱える本当のリスクは、レバレッジや流動性という経済の分野のシステム(機能)というより、良い意味でも悪い意味でも機能していた強権的縛り(魔法)が解ける事からの混乱と、結果としてそれが国際情勢におけるイラクに続く国内経済のCUT&RUNになる事である。イラクにしても、米国の経済の仕組みの転換(ヘッジファンド国家へ)にしても、そのCUT&RUNの責任は誰が取るのか。ソレは究極的に事態を招いた米国大統領とその政権の雇用主で在る米国民だ。だから米国は試練(責任を取る事)なしにこの苦境を脱する事はないし、またあってはいけない。たとえソレがカールローブというOZのような魔法使いが残していった運命だとしても・・。

(注)オズの魔法使い:その物語が作られた当時の米国(経済)の風刺の関係から、カールローブとOZ、またチェイニーをダースベイダーと評する風潮はこの政権の初期からあった・・。

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