中国の大学生が反日プラカードを持って行進した頃、日本ではまだ見られなかった中国内部の映像をふんだんに入れて中国を紹介した米国DISCOVERY CHANNELのCHINA RISESシリーズが世に出たのは2006年。それから僅か3年、中国は「勃興」などと言う時期はとっくに終わり、今は圧倒的パワーで世界を席巻し始めた。そしてその状況を先週NHKが特集で放映した。題名はCHINA POWER。それを観てまず驚くのは秘密重視のM&Aの分野で巨大な中国マネーが世界中の資産を買い漁る状況を中国はNHKに堂々と見せつけた事。番組は中国は日本など最早眼中にない事実をつきつける。そしてこれは半分は友好、半分は脅しだろう。
ところでご存じの様に私の専門は米国の金融市場。だがこの一年の米国の経過と前述の番組からの中国の力を考慮すると、この潮流の中、戦後65年引きずる沖縄の負の遺産と中国がこれ程軟化した時節の利を政治家小沢に対する好き嫌いと混同するのは日本の不幸だと感じる。日本は戦略担当を官僚から政治家の手に移す試みを始めたばかり。この点は米国の真似だろうが、米国では演出力がある政治家とそれをサポートする野心的執事が戦略を練るの対し、日本は偏差値は高いが戦略の必要性を日常生活に感じていない国民と、それを取り巻くマスコミが民主主義の受け皿である。そもそもこの様な構造では変動期の舵取りは難しい。これまで何も決断出来ない間に周回遅れの利に遭遇する事もあったが、米中が市場を通して補完を強める中で日本は何を基準に戦略を打ち出すのか。国民に全て話す必要はない。だがいざという時の決断の筋道は示すべきだろう。
ただ結びつきを強める米中も将来は微妙。元々ともに性悪説、だから市場主義は都合がよい。そして何といっても今はその市場を通して金の無い国とある国が奇妙な補完関係だ。だが結局は金の結びつき。そしてそれを証明するかの如くCNBCではあのジムチャノスが中国は過大評価されているとの持論を展開していた。だが市場原理主義者のジムチャノスは一見正しいがリスクがある。このリスクが現実化すると米中関係は新局面になるだろう。ではここではジムチャノスの見方のリスクを触れる。
そもそも彼は空売り専門ヘッジファンドの権化。だが以前も紹介したように彼は市場の上澄を狙うチンケなヘッジファンドではない。その本質は基本的にバフェットに近く、米国の成長には市場原理が不可欠であるとの姿勢を崩さない。そしてバフェットが成長のベクトルの中で夜明けの6時から昼の12時までをじっと待つのに対し、チャノス氏は成長過程でも市場原理が働くと必ず起こる新陳代謝、即ち昼の12時から夕方過ぎの6時以降を狙ってその会社を空売りする。だから彼は昨年から救済主義を糾弾している。なぜなら新陳代謝を止めると本当の夜明けが来ないと確信しているからだ。そして彼は過大評価の中国に対しチャンスがあれば将来空売りの対象にしたい意向を示した。だがアジア人の私には中国が嘗ての米国の様な民間の新陳代謝を国家が傍観するとは思えない・・。
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