株は本日の上昇で年初来の伸び率が再びプラス圏に入ってきた。これで株の強気派はまた騒ぐだろう。だが今日のダウ200ポイントの上昇にはある記録がオマケとしてついている。それは、株価指数が2%以上上昇した当日としては、現物株の出来高が史上最低を記録したというオマケである。
この乖離の意味するものは何か。それはずばり8月中に米国の株は戻り高値を更新する事もあり得れば、そこから1週間で今度は5000ドル割れも起こりえるという事である。つまり実体経済と株価指数の遊離はかつてない水準まで到達したと言う事。そしてその背景は、この国に残された景気回復の手段が株だけになったということでもある。
それを象徴したのが週末の討論番組に出演したグリーンスパンだ。そもそも彼は96年の議長時代、まだ6000ドル台にすぎなかったダウ平均の上昇を「根拠なき熱狂」と表現した。ところが、昨日の番組では、今の米国は株を上げる事が一番大切と言いきった。彼の変節は、住宅市場が危機的な状況である今、株価には実体経済の証拠は要らないと断言したに等しい。
そんな中、本日は先週のセントルイス連銀総裁の提言後としては初めてバーナンケ議長が景況感に関してスピーチをした。そして意外にも議長の発言には仲間の警告にこれといって動じた様子は見られなかった。基本はこれまでと同じ主張。ただこの状況でも動かないのは今は寧ろタカ派である。
まあ昨日まで恐怖はデフレだと思ったら、今日の値幅からは1週間で原油先物が100ドルを超え、失業者が溢れる巷ではガソリンの急騰、連鎖するインフレが突然襲うという逆のシナリオの可能性はゼロではない。そうなると株は上がっても実態経済は益々悪化するだろう。
実はここに来て一番タカ派になっているのはバーナンケ本人ではないか。終に彼も自分が金融危機の際にヘリコプターからまき散らした紙幣(流動性)という餌に、最後は「黒鳥」まで飛来するかもしれない事が怖くなったか・・。
ところで、個人的に最後に「黒鳥」に慄いたのはいつだったかを振り返った。なかなかイメージ浮かばない。そして思い出したのは9・11のテロだ。ただ米国が攻撃された事が「黒鳥」だったわけではない。また2機目の飛行機が突っ込んだ瞬間も驚いただけだ。「想定しなかった」のは、ビルの上層で起こった衝撃で、あのビル全部が崩壊した事である。あの瞬間は想定外だった。「黒鳥」とはそう意味だ。
旧約聖書のバベルの塔然り。ここから目先株や債券がどうなろうが恐らくはこの国の本質にとって大した話ではない。今の市場は実体経済から遊離した金融市場参加者の自己都合が反映されているにすぎない。そして世の中がこんなゲームを続けている限り、金融市場という塔にはワールドトレードセンターと同じ運命が待ち受けているだろう。
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