2010年8月19日木曜日

脅され、騙され、

海外で発生した災害ではまず死者の数でその程度を推測するのが普通だ。だが本日CNNを観てこの尺度が間違っていた事を知った。報道からはパキスタンの水害被害は死者の数は2000人ながら、現在の生存者と国家全体に与える被害は、超大国中国での四川大地震を上回り、国家に致命的打撃を与えたハイチに匹敵する事を知った。世界情勢は注視しているつもりだったが、うかつにも全くこの事実は知らなかった。そしてパキスタンの災害が米国に与える影響は中国やハイチなど比較にならない。理由は言うまでもなくアフガン。ここで消耗戦を展開する米国にとって、パキスタンは最重要国家だ。CNNは被災者に援助が行き届かず、政権に対する不満が蔓延している現状を伝えているが、仮にパキスタンがこれ以上の政情不安になれば、米国のアフガン戦争は事実上アウト。これはオバマ政権にとって非常事態である。

そしてMSNBCではパキスタンの現状の後で今度は中間選挙でのカリフォルニアの「女の戦い」が紹介されていた。上院選で現職の民主党バーバラボクサー女史に挑むカーリーフィオリーナ女史だ。彼女はHPの社長から華麗な転身を目論み、ネガテイブキャンペーンでボクサー女史を攻撃している。そして最新のコマーシャルで「米国がテロの危機に瀕している最中にバーバラは天候の心配をしている・・。(温暖化問題)」とボクサー女史と民主党のアジェンダを徹底攻撃した。だが皮肉にも、直前のパキスタンのニュースは、フィオリーナ女史が完全に間違っている事を証明していた。

温暖化でも氷河期でもどちらでもよい。米国はその天災に苦しむをパキスタンを助ける事が出来なければ自分が対テロで窮地に陥る事になる。その意味でフィオリーナ女史は完全に間違っている。しかし共和党の戦略は常に複合要因を無視し、単純な人々に単純な理論で訴える戦法だ。また今日は復活してきたギイグリッチ氏が日本を持ち出した。なんと彼は現在共和党支持者の中で2012年の大統領候補として支持率で先頭を走っているという。ギングリッチを知らない人の為に言うと、彼はクリントン時代に今のナンシぺローシの立場だった人。そしてあまりにもタカ派で保守的な彼の言動には共和党内でも不満が高まり、ブッシュ時代が始まると彼は下院から退いた。その彼が昨日はモスク容認発言でオバマを罵った上に、「あんなところにモスクを立てるのは、ナチの旗をホロコースト記念館に立てるのと同じだ」と言ってしまった。これにはまた批判が起こり、大統領戦を意識してか否か、ギングリッチは本日比喩の題材を変えた。彼は題材をパールハーバーと日本に変えたのだ。馬鹿にされたわけではないが、彼の発言は、米国(人)は日本(日本人)を完全になめている事が良く判る(そのリアクションにおいて)。

この様に、日本人の立場でクリトン政権発足からオバマ政権の誕生まで、この国の政権の性質を観てきたが、レーガン政権以後の日米関係の本質を振り返ると、冷戦が終わり、日本をそれまでの様な戦力的パートナーとして考える必要がなくなった米国にとっては、日本は「脅すか、騙すか」のどちらかで米国の国益の為に使えばよっかたという事。言うまでもなく「脅した」のは共和党で「騙した」のは民主党。ただ「騙した」といってもそれは駆け引きの意味だ。そして日本は国民の性質上、脅されても逆らわなければ守ってくれるブッシュ政権が実は心地よかったはず。だがクリントンやオバマ政権の複合的なアプローチ、駆け引きの前には全く太刀打ちできない印象だ。ならば次の中間選挙では、敢えて狂人的共和党の躍進を望みたい。その方が早く米国の限界が露呈され、日本人も米国債に対する幻想から早く目覚めるだろう。そして最後に言いたいのは「脅されるのも、騙されるのも」米国の責任ではない事。ソレは日本人自身の責任である・・。





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