2010年8月13日金曜日

ムーディーズの墓穴

しばらく前にG20と呼ばれる主要20国の経済会議があった。会議はギリシャに端を発したソブリン危機の最中だっただので、そこでの議題は財政の健全化と経済の成長の両立だった。ただ実際は両立など無理、そこで前者を優先する欧州に対し、後者に比重を置く米国の対立が鮮明になった会議だった。そして会議ではもう一つ重要な事が決められた。それは各国の国債に対し、発行額と経済成長のバランスで債務削減の目標額が定められたこと。ただその際に例外の優遇処置を受けた国があった。それは日本と日本の国債だった。

理由は日本の国債残高は900兆円にもなり、GDP対比では先進国で最悪。だがその国債の95%が日本人の預貯金で賄われれいるので対外債務ではないという要因だった。ところが、昨日米国の格付け機関のムーディーズはその日本国債を再び格下げするかもしれないと脅しをかけてきたのである。

ムーディーズが日本の国債を残高の膨張と人口の減少や低成長を理由に最高から数段階格下げしたのはご承知の通りだ。だが同社が最高格付けを乱発したサブプライムを含んだ仕組み債が暴落し、それが2008年の金融危機を引き起こしてからは格付け機関の信頼は失墜していた。

だが、本来なら金融危機の原因の一旦である責任をとり、廃業、あるいは社会から役立たずとして駆逐されてして不思議ではない格付け機関が、ずうずうしくも未だに存続し、時にやれスペインだ、やれポルトガルだのと格下げをちらつかせては株式市場を振り回すのには訳がある。恐らくソレは、彼らが米国債に対して最高の格付けを維持しているからだろう。

米国が主導した市場原理の時代のなごりとは言え、自分に都合がいいところだけを存続させるこのインチキぶりには驚く。そして今回もまた米国の国益のために?、ムーディーズが日本の政治を材料にG20で別格のお墨付きをもらった日本の国債を格下げするというなら、そのバカげた論理には反論材料は豊富。まずは本国米国の彼らの政治だ。

総理大臣が誰であれ、日本人の大半は借金を返済しない事は倫理上悪であると考える事には変化ない。ところが今の米国を見よ。金持ちでさえも住宅に関しての借金は返さない。税金は払いたくない。そして、政治と言えば、そんな国民に対して民主党は徳政令を計画し、共和党はこの期に及んで減税を叫んでいる。こんなデタラメを言っている国はほかにあるだろうか。

そしてその米国の国債の格付けを見直すなどは絶対に言わず、代わりに日本国債に関して勝手格付けをちらつかせる理由は一つしかない。それは未だにこの連中の馬鹿げた格付けをポートフォリオの最低条件にしている愚かな金融機関に米国債を更に買わせたいのだろう。

だがムーディーズは墓穴を掘った。そもそも彼らは自国の政治リスクに関してどうやら無関心だが、それは表面的な計量リスクだけで判断し、サブプライムが含有した本質のリスクに気付かなかった様に、人間の常識やモラルといった無形資産に対しての考慮が今だにない事を今回も露呈したのだ。個人的には米国債が持つそのリスクが日本国債よりも先に市場で揺さぶられると考えれるが、その意見に同調したのが実は中国だ。

中国はムーディーズが日本国債に関して揺さぶりをかけた昨日、逆に米債よりも日本国債の方が安全であるとの公式見解を発表した。中国も大量に米国債を持つ立場として、あからさまに米国債への不安を表現はしなかったが、その意図はムーディーズの勝手格付けに疑問を呈するには十分な効果があるだろう・・。

<参考:11日、日本国債は米債よりも安全という中国の公式見解を伝えたのロイターの記事>

http://www.reuters.com/article/ousivMolt/idUSTRE67A23920100811

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