2013年10月2日水曜日

ヘッジファンドの喧騒その3 鶏肉先物がない理由 マックのチキンナゲットはどうやって生まれたか

              新商品のマイティーチキン


CBOT/CMEのトレーディングフロアーの下にマクドナルドが入っている。時よりランチを買いに行く。決まって注文するのは昔からのチキンナゲット。最近は20個入りを5ドルで売っている。確かにまだここにインフレはない。



そこに最近新しいメニューが入った。マイティーチキン。まだ試したことはないが、見た目は「ケンタッキー」に似ている。新聞では「美味くない」「大失敗」と酷評されている。

個人的に、ケンタッキーフライドチキンは、唯一日本のソレより美味しいファストフードだと思う。日本のケンタッキーは身が小さく、フライドチキンの醍醐味にかける。だからマックでフライドチキンを食べる気はしない。やっぱりチキンナゲットでいい。

ところで、マクドナルドがチキンナゲットを開発したのは1980年ごろだという。先駆者としてバーガー類とドリンクで勝負してきた同社も、この頃にはライバルと熾烈な戦いが始まっていた。そこでハンバーガー以外で他社を引き離す画期的な新商品が必要だったのだ。

同社のヒストリーにはこんな記述がある。

The company introduced the 
McChicken in 1980. It proved to be a sales disappointment and was replaced with series of different chicken sandwiches a year later. Chicken McNuggets were invented by Rene Arend in 1979. They were so good that every franchise wanted them. However, there wasn't a system to supply enough chicken products. The supply problem was solved in 1983, when the McNuggets were made available nationwide. By the end of 1983, McDonald's was the second largest retailer of chicken in the world.


これを読むと、チキンナゲットは直ぐに人気商品になったが、材料としての鶏肉が十分には手に入らず、ナゲットが全米にいきわたるには3年もかかったようだ。

実はこの時に活躍したのが、チキンナゲットとは無縁のヘッジファンドの雄、レイダリオ氏である。レイダリオ氏は、9月24日にここで紹介した「半沢直樹からレイダリオへ」のビデオの作者だ。

今でこそ世界最大といわれるヘッジファンド・ブリッジウオーター(運用金額13兆円)を育てた彼も、1980年当時はお金を預かり運用するヘッジファンドではなかった。限られた自己資金を先物で運用する傍ら、企業の財務担当者に短期資金のマネジメントのアドバイスをしていたという。(アドバイスの総額は700億円程度)

その顧客の中にマクドナルド社があった。レイダリオ氏は、マクドナルドが新商品の為に安い値段で大量に鶏肉の仕入れたいのだが、単価を抑えるため、鶏肉の価格変動のリスクは養鶏業者に取らせる戦略だったことを知る。

当初この戦略はうまくいかなかった。いくらマクドナルドが大口顧客でも、価格変動のリスクを自分で引き受ける養鶏業者はいなかったのだ。そこで財務アドバイスの顧客であるマクドナルドのためにレイダリオは一肌脱いだ。(これが後に彼の運命を変えることになったという)

レイダリオ氏は養鶏業者にどうしたら鶏肉の価格変動をヘッジできるかレクチャーをした。彼は自己資金の運用で先物に精通していた。そして大豆粕とコーンの先物を合成した価格が鶏肉の流通価格と類似していることを知っていたのだ。

こうしてマクドナルドは大量に安い鶏肉を手当てする目処がたった。現在シカゴの先物市場には牛肉と豚肉の先物はある。しかしこれだけ消費量が増えた今も鶏肉先物はない。その背景にはレイダリオの活躍があったのかもしれない。


そしてヘッジファンドとしてのレイダリオ氏の出発は1987年。彼の評判を聞いた世銀が5億円をレイダリオに預けたのが最初だった。この頃の5億円はたいした額ではない。ソロスなどは何百億を動かしていたし、その後もレイダリオ氏のファンドは目立つ存在ではなかった。

ところが、リーマンショック後、 パフォーマンスの派手さはないが、どんな時も安定的に運用益を出す彼のファンドには爆発的にお金が集まった。そしていつの間に運用金額ではヘッジファンドの頂点になっていた。おそらく、リーマンショックの直後、バーナンキが最初に市場のアドバイスを請うために電話をかけた相手がレイダリオだったことも手伝ったのだろう。

こうしてみると、レイダリオは、血眼になって次の現象や次に儲かるトレンドを探すヘッジファンドとは少し異質である。彼は現象を解析し、本質を探ってからお金をアロケートしている。

ヘッジファンドとして高い手数料を取るだけのアルファが見つけられないファンドは、今何をしているか。それは過去ここで「喧騒」シリーズとして紹介した。

ざっと見てその中でインデックスファンドを上回る運用を維持しているのはデービッドテッパーやアイカーンなど僅かだ。インデックスを下回ると、あのソロスファンドまで仕手戦に参加している。(ジョージスソロス本人は既に日々の運用にはかかわっていないといわれて久しい)

相場で儲かるということは、次のヒット、次の現象を当てるということ。米国には政治にまで影響力を持ち、自分でグローバルな現象を作り出すことも可能なプライベートエクイテイーもいる。(ブラックストーンなど)あるいは、トレンドを生み出す秋元康のような才能を持つダンローブもいる。

ただ彼らの成功物語を学んでも、日本人の我々にはあまり参考にならない。国家の構造から流れている血の色まで何もかも違いすぎる。

一方で一般教養のレベルが高い日本人は、物事を解析する能力は本当は優れているのではないか。しかしなぜかアメリカの流行に振り回される。これはもったいないと思う。

次の現象の大当たりを狙うのではなく、今の現象を解析し、得られた本質から、可能性のある次の現象へ準備をしておく、まあレイダリオ氏のレベルになるのは無理だが、どうでもいいような情報に振り回され、スピードでマシーンに挑戦して負けるのももったいない・・。

今はFOMCの結果まで漏洩する時代だ(9月18日)。繰り返すが、ヘッドラインを見て行動しても、スピードで人間がシステムに勝つのは無理だ。それよりも、投資に限らず、現象面の反対の本質を知る努力は未来に向けて重要だと思う。ソレがレイダリオの示唆する解析の重要性である・・。(レイダリオの話はブリッジウオーターのレポート ALL WEATHERから)





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