2013年2月27日水曜日

レーガン・中曽根 ブッシュ・小泉とオバマ・安倍の違い(マネー原理プロから)

今朝アメリカでは思ったほど黒田氏は話題ではない。ソレも含め、週末はオバマ・安倍会談をこの国がどう考えているかの記事を浚った。結論は、Wポスト NYTIMESは会談の経緯を淡々と取り上げたものの、日本で盛り上がっている安部さんとオバマの個人的な信頼関係、あるいはTPPに対する意気込みはまったくなかった。つまり、日本に対し「問題意識」がないのだ

これはアベノミクスを邪魔されないという観点からはグッドニュース。一方で米国は日本を独立した外国とは考えておらず、日本は丹羽前中国大使が主張した日米中のトライアングルの一辺になるつもりはないことを表明したと同じ。このこと事体がオバマ政権の対日政策と合致し「問題がおきていない」という事だろう。

農業貿易交渉において、オバマ政権は遺伝子製品の輸入緩和を発表した欧州とのTTIPを優先している。その点でハードルが高い日本の農産物市場をこじ開けることに無駄な時間を費やさないはずだ。そもそも民主党内で力を持つレビン下院議員(ミシガン)が日本のTPP参加に強硬に反対している現在、オバマ政権のTPP交渉とは、グラウンドデザインで圧力をかけておけば勝手に日本が手みあげを持ってくる状態だったと思う。

元来日本はTPPをアジア市場の成長を前提にしている。なら米国がTPPに日本を加えたい背景は、対日直接貿易がメインであろうはずがない。米国は日本にアジア市場で稼いでもらい、ソレを米国の利益に還元させればよい。今回もオバマ政権としては優先順位が低い農産物で圧力をかけておけば、選挙で頭が一杯?の安倍さんはリニア技術の供与のみあげを持ってきた

このように、米国はTPP協定がまとまる前からリターンを得ている。恐らく、軍が暴走をしないで中国が日本に適度に圧力をかけ続けることが米国にとって望ましい展開だろう。

それもこれも、日本人が米国の傘下にいる心地よさを国益だと信じ、そんな日本人を見切っている米国との関係が全て。このあたりを無感情に全方位で実践していくのがどんな時もドクトリン主義の民主党だ。

今日の日経に、安部・オバマ会談の成功を、嘗てバブルの前のレーガン・中曽根、郵政改革相場の前の小泉・ブッシュ会談にダブらせるものがあった。しかしそれはどうか。

冷戦は怖かったし、ブッシュ政権はこの時代において、アフガニスタンからのテロでイラクを攻めるというバカなことをした政権だ。だから日本はやりやすかったのだ。

はっきり言って、個の信頼関係を重視する共和党政権にはへつらっておけばよい。一方バランス重視のオバマ民主党政権はそうは行かない。このDNAは全く異なる・・。

2013年2月21日木曜日

株が終わる日 (マネー原理プロから)

元々かなりのあまのじゃくだが、日本ではこれから株が復活すというのに、今ほど「株が終わる日」について考えることはない。先週はその昔、株と実態経済の乖離を根拠なき熱狂といって警鐘したのグリーンスパンが、衰えた姿をCNBCに晒し「今の経済は株が全て」と認めていた。

その通り。だが皆がこの本末転倒に違和感を覚えなくなった瞬間からそのエンデイングは始まる。その原則は変らない。~~主義のどうでもいい議論でごまかし、一番重要な市場原理から逃げた現代へのペナルティー(調整)は必ず来るからだ。

ただそのクライマックスはいつか。相場ではそこがすべて。なら注意すべきは雰囲気。今世界がやっていることは、中央銀行を使ったポンジースキームと為替誘導。にもかかわらず誰も公式には認めようとしない。

つまり皆がいいことではないことを知ってごまかしている。現代人はここまで弱くなった。最大の理由はアメリカがそうしているからだ。そのアメリカはもう原理主義が復活する可能性はないのではないか。その最大要因はヒスパニック

オバマが再選されたのは、ヒスパニック戦略のおかげだった。昨日オバマ政権は、8年以上米国に住む1100万人の不法労働者にも永住権を与える可能性を示唆した。(勿論実現まではハードルが高い。だが共和党でさえも次はキューバ難民の英雄のマークルビオでいくご時勢・・)

これも民主党の選挙政策。それも仕方がない。2040年までには白人を抜いて最大の勢力になるヒスパニックの勢力は凄い。先日祖父母が米国に渡り、孫の世代が子供生むようになったら、その一族が200人の膨れ上がったメキシコ人が話題になっていた。

中絶どころか避妊さえあまりしないカソリック系ヒスパニックの人口増殖率は脅威。これが続けば、共和党とTEA PARTYは死滅し、この国はカソリック的救済国家になり、その昔マックスウエーバーが評価した、倹約と勤労を重視したカルバニスト(プロテスタント)による資本主義の繁栄は化石の話になる。つまりギリシャ イタリア スペインの南欧と同じ。(ソレが悪いとは言わないが)

一方でテクニカルな話をすると、今日はヘッジファンドのアイホーンとアップルが裁判所で優先株をめぐって証言する日だ。アイホーンは460ビリオンの時価総額のアップルに、既存の株主に対し、総額500ビリオン、4%の配当の優先株発行を求めている。

NYTIMESによれば、アイホーンは社債は会社の価値を減損するが、4%配当の優先株500ビリオンの発行は、20ビリオンの棄損にすぎず、むしろ会社の価値を増やすと主張しているらしい。彼の試算ではその場合の会社の価値は800ビリオンに増加するというのだ。

アイホーンの主張はこうだ。アップルは無借金の上に135ビリオンのCASHを持つ。しかしCASHの大半は海外にあり、米国に戻すと巨額な税金が発生する。それなら優先株を使い、投資家の期待値をEQUITY増加につなげるほうがいいと言うこと。

WORKするかどうかやってみなければわからないが、会計の専門家は疑問を呈している。ただアイホーンに抵抗するアップルCEOクック氏でさえ、先々週のゴールドマンサックス主催のハイテクサミットで「アップルは最早物づくりの会社ではない」という主張した。このような人々の集まるダボスに稲盛さんが行ってもがっかりするのは当然だろう。

そして税金でもアメリカは踏み出そうとしている。抜け道が多い所得への課税ではなくアセットの上昇に税金をかける方向に動き出している。カナダは既にそうなっているが、米国内の州では既にその動きは始まっている。

格付けが最低のイリノイ州では、自宅があるCOOK COUNTYは2012年末に家の価値が10%上がったと通知をよこした。冗談ではない。実勢価格は上昇していない。そんな値段で売れないのに固定資産税を増収をしたいのだ。

こんなことをすれば皆が町を出ていく。これが国家レベルで始まればどうなるか。(その前にテキサスなどは合衆国を離脱するだろう。)

このように、株をめぐる国家の環境は激変している。しかし指数インデックスだけは淡々と上がる。それは過去の救済で生み出してしまったマネーが行き場を求めているからだ。

VIXを使えばヘッジができていると錯覚しながらインデックスETFやETPに入り続けるマネー。ただ何かをきっかけに一斉にUNWINDしたらどうなるのか。

次に何か起こるときは1929年の大恐慌でも2008年の金融危機でもない。「株の終わり」である。その時は日本は独自の道を行けばよい。それが日本の本当の復活に繋がる・・。

2013年2月16日土曜日

犬を喰らう覚悟


NHKクローズアップ現代で興味深い特集があった。あの日本で、あえて動物を殺す狩猟家を目指す動きが出始めたという。これは減りすぎた狩猟家の反動らしい。

自殺、いじめ、体罰、テロ・・、忌々しき事態だが、そもそも命が話題になると思考停止になる今の日本。コレでリスク管理や危機対応、更に国防までを論じている。だが命で思考停止になる国民が、全滅に最も近い国民ではないか。

相場も同じ。磐石の態勢が整うとどこかで崩壊の予兆が始まる。偉大な自然の摂理が働いているのだろう。そんな中、以前ここでも紹介した春山満氏がビデオで犬肉の話をしていた。赤犬の肉は旨いという・・。

ちょうどいま、アムンゼンとスコットの資料を集めている。彼らにとっても犬が鍵だったのは有名。英文資料を集めて驚いたのは、アメリカではアムンゼンの考察資料が膨大だったこと。アメリカらしく目的を達成した偉大な人物として、ハーバード大をはじめ様々な機関や学者が彼の成功の考察をしている。

日本ではある程度皆が知っている一方で、資料としては本多勝一氏の著書ぐらい。そこでここでは改めてアムンゼンとスコットの違いの重要な部分を触れておく。

そもそも失敗したスコットは準備不足だったわけではない。むしろ北極点到達でアメリカ隊に先を越されたことを知り、出向したあとで行き先を真逆の南極に変えたアムンゼンのほうが場当たり的であった。(アムンゼンは目的地を変えたことを殆どの乗組員に黙っていただけなので、準備不足ではない)

スコットは前に南極に上陸している。そして実地検証もしている。その経験もあり、彼は当時の覇権国家英国の威信をかけたプロジェクトでコンセンサスで選ばれた隊長だった。この選ばれ方は、どこかの国の国家プロジェクトに似ている。(実地検証には応募。)

彼は軍人らしく、まじめで責任感が強かった。情にも厚く、部下の人選でもバランスを重視した。結果、直前になって人員を4人から5人に増やしてしまう。(軍上層部には精神的に脆いとの評価があり、その払拭にこの挑戦を使った)

だが彼は本能で探検家ではなかった。また当時の軍人がリスクテイカーだったとはいえない。既にナポレオン戦争から100年、そのため軍人として給料を上げるためにスコットはこの国家プロジェクトでの実績を狙った。

二人のロジスティクスの違いは省く。ただ事前検証で犬ぞりに限界を感じたスコットは、英国が誇る最新鋭の大型雪上車を2台も持ち込みながら技術者を連れて行かなかった(上陸後故障し、役に立たなかった)。

また犬の代わりに馬力のあるポニーを連れて行ったはいいが、ポニーは残飯を食わないので、馬の餌まで自分で運んだ。そしてそのポニーが死ぬと、犬をつかうより、自分の足で荷物運ぶのが英国人の誇りだと周りを鼓舞した・・。

一方アムンゼンは事前にイヌイットから生きた知恵を学んでいた。水分はじく毛皮。(スコットは伝統のバーバリーの牛皮の防寒具)ビタミンEを補う酵母ビスケット(スコットは脚気になりやすい小麦のビスケット)。途中で獲ったペンギンは生で食べることでビタミンCを補った。(スコットはペンギンも、死んだポニーの肉も焼いた)そして究極は犬だ。

アムンゼンは55頭の犬を連れて基地を出発。帰ってきたのは11頭だけだった。途中で弱った犬、言う事を効かなくなった犬をつぶし、仲間の犬に食わせ、帰りの食料として貯蔵した。

一方スコットは最後まで犬に対して特別な感情を持っていた。犬肉の歴史を見ると、アジアは勿論、欧州でも今もスイスやドイツの一部では犬肉を食べる風習はある。そんな中、英国では紳士のたしなみの一つに狩りがあり、昔から犬は仲間だったという。

アムンゼンは最初から犬を食料にする計画を立てていた。犬に重いそりを引かせ、弱ったらその犬を容赦なく喰らう。アムンゼンも普段は愛犬家だった。しかしつらく厳しい決断の力厳しい環境で生き抜くイヌイットから学んでいた。それがスコットとの違いだろう。

小学生でスコットの隊の悲劇が国語の教科書にあった。彼は英雄として紹介されていた。英国はこのスコット隊の精神のままに、第一次世界大戦に突入し、オックスブリッジなどの優秀な人が前線で倒れた。英国人の魂だった。その後アメリカに覇権が移り、アメリカではアムンゼンが英雄として様々な角度で検証されていた。

日本はスコットとして死ぬか。アムンゼンとして生きるか。まずは日銀総裁の人選で判断しよう・・。

2013年2月11日月曜日

未来の解析シリーズ1 始まったヘッジファンドの喧騒

エイクマン氏
アイカーン氏 


これまで未来は予想するものだと考えてきた。しかしこれからは予想はするのではなく、解析することにした。未来を解析?言葉では意味不明だが、それは今でこそ世界最大のヘッジファンドになったブリッジウオーターのレイダリオのオリジナルの考え方に共感したからだ。

全天候型といわれる彼のファンドマネジメントは他のヘッジファンドとくらべても異質。他のファンドは手法は様々だが、膨大な調査を経て、何かを予想し、それに賭ける。当たれば大きいが外れることもある。一方でレイダリオのアプローチはまさに全天候型。それゆえ彼のファンドが爆発的な成績を上げた実績はない。にもかかわらず、1987年にわずか5ミリオンだった彼の運用資産は今は135ビリオンになった。(27000倍)。一体どういうことだろう。その世界をのぞく前に今の雰囲気を確認したい。

まず、先々週CNBCで著名なヘッジファンド同士が、番組の中で罵り合いをするという前代未聞の事件がおきた。そのヘッジファンドとは、ビルエイクマンとカールアイカーンである。

エイクマンはハーバード出身で非常に紳士的な雰囲気を持った投資家である。フィランソロフィーにも積極的であり、実態はともかく、これまでマネーに対する品の悪さ(無意味な表現であるは承知)が話題になることはなかった。

事件は彼が空売りをしているハーバライフ社について、電話でCNBCのインタビューを受けている最中に起きた。突然アイカーンが同局に電話をかけ、エイクマンを罵りだしたのだ。それはテーマとは無関係の彼の生い立ちなど感情的なものから始まり、(二人ともNYのユダヤ系)過去の投資での手の内まで暴露してしまった。

アイカーンの永年の実績は40代のエイクマンなどお呼びではない。古くはなRJRナビスコなど、この40年に米国で起こった大型のM&Aには殆どかかわっていた。その意味ではトレーダーというより、どちらかというと、あの横井英樹を数倍の規模した人のイメージである。

これまで二人は共同で相場を仕掛けることもあれば、敵対することもあった。最近では百貨店のJCペニー株を買い支えるエイクマンに対し、同社をバラバラにしたいアイカーンが対立しているのは知れ渡っていた。そしてハーバライフに関しては、どうやら同社の不正を宣伝し、潰しにかかるアイクマンに、アイカーン氏は会社側にたって防戦していることが示唆された。

いずれにしても、過去この様な抗争はマフィアの抗争と同じく水面下で起こり、普通の人はどちらが勝ったか結果を後から知るのがほとんどだった。しかしその途中の抗争を、個人投資家も見るメディアで番組を乗っ取ってさらけ出すのは異常な光景だった。

そして先週は、アップルをめぐって、大株主のヘッジファンドの一人、デビットアイポーンが同社に優先株の発行をめぐり提訴をした。この動きはその直前にはマイケルデルがデルコンピューターの上場廃止を決めていたことに呼応するものだった。

マイケルデルは、ハワイの別荘の隣人であるハイテク専門のプライベートエクイテイーのシルバーレイク社のオーナーと共同で同社にLBO(レバレッジドバイアオウト)をかけた。世界の株が高騰している中で一体何が始まっているか。(敬称略、次回へ・・)






2013年2月5日火曜日

最もたちの悪い戦争

ブラックスワンの著者のナシーブ氏が、ハンムラビ法典には簡単に家が壊れたら、建てた建築士を死刑にするルールがあったとコメントしている。自分でその家を建てた建築家は見えない内部をよく知っている。上辺だけをよく見せて売ってしまうことも可能だ。彼はこれを投資家を騙してデタラメな商品を販売した金融に見立てて話している。バビロニアの「目には目を・・は」無責任な市場関係者を駆逐する上で健全だったらしい・・

たしかに相場で大損しても欧米銀行は救済され、トレーダーは無罪放免だった。それに対し、高額な報酬をもらうわけでなく、相場で負けた場合左遷されるかもしれない邦銀トレーダーは、昨今のアベノミクスへの対応でも違う。これが株が上がって盛り上がる欧米と、債券が下がって困る邦銀の違いだ。ただトルコの自国の大使館爆破に加え、イスラエルとシリア、またいつ起こるかわからないアジアの紛争より、ダウの14000に浮かれる米国市場もそろそろ調整だろう。

そういう日本も、マーケットが経済を支える本末転倒の競争の仲間入りをした。そうなると本当のリスクはも誰もわからない。報道でも「清い正論」財政とマネー規律をという人は殆ど黙ってしまった。昔はこうして反戦の声も消され、誰もが悪いと認識している戦争に世界は突入していったのがよくわかる。

ここでも長谷川平蔵を紹介し、今はフィロソフィーよりもストラレテジーに徹するべきとこの流れを煽った。なぜなら戦いは海の向こうから仕掛けられていたらだ。鎖国をしない以上、日本はいずれ死ぬ運命だったと思う。

そして人間の歴史は定期的に戦争をしてきた。日本人だけが浸っている人命至上主義から一旦頭を切り替えれば、戦争が科学技術の発達と経済の拡大に一定の歴史的役割を果たしたことは否定できない。それは一定の周期で繰り返される高揚(High)覚醒(Awakening)解放(Unraveling) 危機(Crisis )の中では避けられない運命なのだ。(ニコラスーハウの4thターニングより)

ただ今回は実弾は使わない通貨戦争。破壊も無ければ人も死なない。ではこの通貨戦争が人類史に対する役割はなんだろうか。簡単に言うとそれは先進国をスポイルすることだ。本来は淘汰されるべき失敗者や弱い人を大量に保存し、その付けを市場原理の終焉と、資本主義を信用主義へ変えることでそのつけを後世に残す。

その意味では、過去のどの戦争よりも世界史の健全性からは実はタチが悪いかもしれない。