2013年2月16日土曜日

犬を喰らう覚悟


NHKクローズアップ現代で興味深い特集があった。あの日本で、あえて動物を殺す狩猟家を目指す動きが出始めたという。これは減りすぎた狩猟家の反動らしい。

自殺、いじめ、体罰、テロ・・、忌々しき事態だが、そもそも命が話題になると思考停止になる今の日本。コレでリスク管理や危機対応、更に国防までを論じている。だが命で思考停止になる国民が、全滅に最も近い国民ではないか。

相場も同じ。磐石の態勢が整うとどこかで崩壊の予兆が始まる。偉大な自然の摂理が働いているのだろう。そんな中、以前ここでも紹介した春山満氏がビデオで犬肉の話をしていた。赤犬の肉は旨いという・・。

ちょうどいま、アムンゼンとスコットの資料を集めている。彼らにとっても犬が鍵だったのは有名。英文資料を集めて驚いたのは、アメリカではアムンゼンの考察資料が膨大だったこと。アメリカらしく目的を達成した偉大な人物として、ハーバード大をはじめ様々な機関や学者が彼の成功の考察をしている。

日本ではある程度皆が知っている一方で、資料としては本多勝一氏の著書ぐらい。そこでここでは改めてアムンゼンとスコットの違いの重要な部分を触れておく。

そもそも失敗したスコットは準備不足だったわけではない。むしろ北極点到達でアメリカ隊に先を越されたことを知り、出向したあとで行き先を真逆の南極に変えたアムンゼンのほうが場当たり的であった。(アムンゼンは目的地を変えたことを殆どの乗組員に黙っていただけなので、準備不足ではない)

スコットは前に南極に上陸している。そして実地検証もしている。その経験もあり、彼は当時の覇権国家英国の威信をかけたプロジェクトでコンセンサスで選ばれた隊長だった。この選ばれ方は、どこかの国の国家プロジェクトに似ている。(実地検証には応募。)

彼は軍人らしく、まじめで責任感が強かった。情にも厚く、部下の人選でもバランスを重視した。結果、直前になって人員を4人から5人に増やしてしまう。(軍上層部には精神的に脆いとの評価があり、その払拭にこの挑戦を使った)

だが彼は本能で探検家ではなかった。また当時の軍人がリスクテイカーだったとはいえない。既にナポレオン戦争から100年、そのため軍人として給料を上げるためにスコットはこの国家プロジェクトでの実績を狙った。

二人のロジスティクスの違いは省く。ただ事前検証で犬ぞりに限界を感じたスコットは、英国が誇る最新鋭の大型雪上車を2台も持ち込みながら技術者を連れて行かなかった(上陸後故障し、役に立たなかった)。

また犬の代わりに馬力のあるポニーを連れて行ったはいいが、ポニーは残飯を食わないので、馬の餌まで自分で運んだ。そしてそのポニーが死ぬと、犬をつかうより、自分の足で荷物運ぶのが英国人の誇りだと周りを鼓舞した・・。

一方アムンゼンは事前にイヌイットから生きた知恵を学んでいた。水分はじく毛皮。(スコットは伝統のバーバリーの牛皮の防寒具)ビタミンEを補う酵母ビスケット(スコットは脚気になりやすい小麦のビスケット)。途中で獲ったペンギンは生で食べることでビタミンCを補った。(スコットはペンギンも、死んだポニーの肉も焼いた)そして究極は犬だ。

アムンゼンは55頭の犬を連れて基地を出発。帰ってきたのは11頭だけだった。途中で弱った犬、言う事を効かなくなった犬をつぶし、仲間の犬に食わせ、帰りの食料として貯蔵した。

一方スコットは最後まで犬に対して特別な感情を持っていた。犬肉の歴史を見ると、アジアは勿論、欧州でも今もスイスやドイツの一部では犬肉を食べる風習はある。そんな中、英国では紳士のたしなみの一つに狩りがあり、昔から犬は仲間だったという。

アムンゼンは最初から犬を食料にする計画を立てていた。犬に重いそりを引かせ、弱ったらその犬を容赦なく喰らう。アムンゼンも普段は愛犬家だった。しかしつらく厳しい決断の力厳しい環境で生き抜くイヌイットから学んでいた。それがスコットとの違いだろう。

小学生でスコットの隊の悲劇が国語の教科書にあった。彼は英雄として紹介されていた。英国はこのスコット隊の精神のままに、第一次世界大戦に突入し、オックスブリッジなどの優秀な人が前線で倒れた。英国人の魂だった。その後アメリカに覇権が移り、アメリカではアムンゼンが英雄として様々な角度で検証されていた。

日本はスコットとして死ぬか。アムンゼンとして生きるか。まずは日銀総裁の人選で判断しよう・・。

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