「アメリカは衰退などしていない。ドルは強い、米株は最高値だ。実体経済の雇用も堅調だし、エネルギーや食品での技術革新も凄い。そしてこれまでどおり、新しいテクノロジーが米国で生まれている。ただし、確かに米国の外交は軟弱になった。でも米国に匹敵する超大国など存在しない。だからこそ、米国が自分でどんな外交を展開するのかが重要なのだ・・」
The US is not in decline, he asserts in today’s Outside the Box, citing
“the strength of the dollar, US equity markets, employment levels and the economic
rebound, the energy and food revolutions, and generation after generation of technological innovation”;
but America’s foreign policy and international influence are most certainly in decline.
Nevertheless, no other country can even come close to claiming superpower status,
so the role the US chooses to play in the world remains of paramount importance.
(昨日発売のイアンブレマー Super Power)
・・・まさにその通りだと感じるが、
but America’s foreign policy and international influence are most certainly in decline.・・・
でもローマが国力の比較で新興に負けたのではなく、自らのリベラル化の延長で自壊していったなら、世界史的にはソレを衰退というのだと思う。
初期のアメリカは欧州の帝国主義と距離を置いた。遅れて参入しながら(黒船の頃)、帝国主義に決着を着けたのはアメリカの軍事力。東で日本を打ち負かし、西ではヒトラーに引導を渡した。(ヒトラーの直接の敗因はソ連)そして、その後のイデオロギーの対立では、ついにソ連を崩壊させた。
この頃までのアメリカは矜持も強かったが、民主化も道半ばだった。国内には人種差別、権力が若者を圧し、敵対する外国要人はCIAが暗殺した。一方経済ではマネーの量には節度があり、
バブルが崩壊した際には、それなりの痛みを受け入れた。
しかし冷戦に勝ってしまった後は、宇宙開発や軍事的頭脳が、実体経済と金融に広がり、銀行と証券の壁がなくなり、皆が更に豊かになってくると、間違いに対するペナルティーも甘くなった。あのクリントンの不倫釈明会見は、こうすれば許されるという点で見事だった。
そして弟まで距離を置くようになったブッシュ政権とリーマンショック。ここでのイラク戦、リーマンショック、誰も昔のレベルでは処罰されていない。これがブーマー世代の特徴だ。
そしてブーマーの子供のミレニアルが台頭する今、時代の最先端に躍り出たのが今のサンフランシスコ。シリコンバレーがあるので当然だが、ハイテクをベースに既成概念を打ち破るP2Pはここが本場。
ではなぜP2P企業がここから生まれるのか。サンフランシスコについで同性愛が多いシカゴで最近彼らと交流が増えた。ほとんどがフレンドリーでオープンマインド。彼らを見ていると、殻を敗れない旧世代の自分も、既存のソーシャルオーダーを壊すのはすばらしいという感覚に陥る。
この明るさが今のサンフランシスコ。東海岸で有り余ったマネーは、ここでIPOを待つ会社に流れ込んでいる。それがいわゆるユニコーンバブルだ。
では皆がLENDINGCLUBで資金を調達し、AIRBNBで宿泊先を決め、UBERで移動したら、銀行・ホテル・タクシーの利益はどうなる。銀行やホテルなら責任をもつトラブル処理はどうなるのか。
UBERは、GPSが何かの理由でワークしなければ、その時点ですべて終わり。そこは運転手の経験にバリューがあるタクシーと違う。そしていまや我々の生活に欠かせないそのGPSは、アメリカにすべて頼っている。
現在アメリカのサテライト(人工衛星)は全部で500前後。そのうち50がGPSに使われている。そのうち5つだけが世界中の民間企業に開放され、残りは全て軍事目的だという。(軍事目的のGPSが誘導ミサイルや監視機能)
個人的には、このGPSがブレマーの世界情勢の縮図と考える。軍事だけでなく、経済でも根幹になりつつあるGPSはアメリカの一局支配。この現状に安心しているのは日本ぐらいだろう。
世界は独自にGPSの開発を目指している。だがそれも道半ば。ここが今のアメリカ一極と同じ。ただ欧州が開発中のガリレオに中国が参加しているのを見れば、AIIBがこうなるのは自明だったと思う。
当然ながら、中国はアメリカにサテライトで監視されている間は、永遠にアメリカと対等にはなれないことは判っている。だから2008年にサテライトを打ち壊すロケットの打ち上げを成功させた。
ただ今は、アメリカのサテライトを壊すのにロケットを命中させる必要はない。そんな敵対行動をしなくとも、サテライトの軌道に向けて自爆ロケットを発射しデブリを撒き散らせばよい。
近未来の人為的攻撃やデブリから人工衛星をどう守るか。この戦いが、少し前にマネー原理プロで紹介したCBSの60ミニッツのBattle Above
そういえば、日米の新協力ガイドラインに宇宙が入っていた。アメリカはデブリの除去など、日本の技術に期待するところは多い。これをみると、アメリカにとって中ソとの本当の戦いの場は、南シナ海でも、ウクライナでもなく空の上。そしてここで起こることは、知らされなければ一般は知らないままだ。
そもそも独立した人や国は、隠したい部分があるのが普通。プライバシーがない状態は独立ではない。なら秘密の部分、恥ずかしい部分を全部さらけ出す関係は、完全なる主従関係、或いは完全なる平和が達成されなければ難しい。そんなことが人間の世界に起こるのだろうか。
帝国主義と冷戦に勝利し、自分だけが帝国主義が可能になっても、脅威が消えた単独超大国のアメリカリがリベラル化するのは自然。でもその結果として、外交の緩みから自ら瓦解のリスクを抱え始めた。それが結局ブレマーの抱える悩みだと思う。(本人には無断で、ここではこの矛盾をブレマーの法則と呼びたい)
さらに、リベラル化した国内を統率するため、そのリベラル層が生み出したオバマ政権は、スノーデンを起訴し、メディアに内情をリークした元政府関係者を次々に取り締まっているが、あのビンラデイン捕り物劇でも嘘をついてたことが暴露される悪循環に落ちている。
本当は日本人も 必見のcitizenfour。でも傑作のwhy we fightと同じ扱いだろう
ではアメリカの外交は再び保守的で強行な流れに戻るのか。(敵がいないならまた強引に作る?)その場合、冒頭のブレマーの主張には矛盾がある。今のアメリカの株高は、リベラル化の延長にあるハト派的金融政策の結果だ。
独善的正義を掲げて突き進んだたブッシュ外交。その裏の行き過ぎた金融の規制緩和。その顛末のリーマンショックから回復を演出したオバマ政権の金融ハト派政策。
その中で社会に躍り出てきた新リベラル層のミレニアルは、アメリカが強行外交に転じた場合のインフレと金利高など全く準備している様子はない。そしてなにより新しいビジネスモデルのP2Pは、基本的にアメリカの一極支配が生んだ平和的楽観モードが前提だ。
ローマは、オクタビアンが初代皇帝のアウグスツスになったあとの帝政(オーガスト期)後に頂点を迎えたるとされる。でもその安定と平和が齎した?貴族層のクッキングブームを見たLIVYが、いずれやってくるローマの衰退を予見したことは何度か紹介した。(オリジナルはエコノミスト誌)
今のところ、個人的にはローマとアメリカは同じ軌道に診える・・