2015年5月24日日曜日

ブレマーの法則? ユニコーンバブルとGPS





「アメリカは衰退などしていない。ドルは強い、米株は最高値だ。実体経済の雇用も堅調だし、エネルギーや食品での技術革新も凄い。そしてこれまでどおり、新しいテクノロジーが米国で生まれている。ただし、確かに米国の外交は軟弱になった。でも米国に匹敵する超大国など存在しない。だからこそ、米国が自分でどんな外交を展開するのかが重要なのだ・・」

The US is not in decline, he asserts in today’s Outside the Box, citing
 “the strength of the dollar, US equity markets, employment levels and the economic 
rebound, the energy and food revolutions, and generation after generation of technological innovation”;
but America’s foreign policy and international influence are most certainly in decline. 
Nevertheless, no other country can even come close to claiming superpower status, 
so the role the US chooses to play in the world remains of paramount importance.
                 
                  (昨日発売のイアンブレマー Super Power)

・・・まさにその通りだと感じるが、

but America’s foreign policy and international influence are most certainly in decline.・・・

でもローマが国力の比較で新興に負けたのではなく、自らのリベラル化の延長で自壊していったなら、世界史的にはソレを衰退というのだと思う。

初期のアメリカは欧州の帝国主義と距離を置いた。遅れて参入しながら(黒船の頃)、帝国主義に決着を着けたのはアメリカの軍事力。東で日本を打ち負かし、西ではヒトラーに引導を渡した。(ヒトラーの直接の敗因はソ連)そして、その後のイデオロギーの対立では、ついにソ連を崩壊させた。

この頃までのアメリカは矜持も強かったが、民主化も道半ばだった。国内には人種差別、権力が若者を圧し、敵対する外国要人はCIAが暗殺した。一方経済ではマネーの量には節度があり、
バブルが崩壊した際には、それなりの痛みを受け入れた。

しかし冷戦に勝ってしまった後は、宇宙開発や軍事的頭脳が、実体経済と金融に広がり、銀行と証券の壁がなくなり、皆が更に豊かになってくると、間違いに対するペナルティーも甘くなった。あのクリントンの不倫釈明会見は、こうすれば許されるという点で見事だった。


そして弟まで距離を置くようになったブッシュ政権とリーマンショック。ここでのイラク戦、リーマンショック、誰も昔のレベルでは処罰されていない。これがブーマー世代の特徴だ。

そしてブーマーの子供のミレニアルが台頭する今、時代の最先端に躍り出たのが今のサンフランシスコ。シリコンバレーがあるので当然だが、ハイテクをベースに既成概念を打ち破るP2Pはここが本場。

ではなぜP2P企業がここから生まれるのか。サンフランシスコについで同性愛が多いシカゴで最近彼らと交流が増えた。ほとんどがフレンドリーでオープンマインド。彼らを見ていると、殻を敗れない旧世代の自分も、既存のソーシャルオーダーを壊すのはすばらしいという感覚に陥る。

この明るさが今のサンフランシスコ。東海岸で有り余ったマネーは、ここでIPOを待つ会社に流れ込んでいる。それがいわゆるユニコーンバブルだ。

では皆がLENDINGCLUBで資金を調達し、AIRBNBで宿泊先を決め、UBERで移動したら、銀行・ホテル・タクシーの利益はどうなる。銀行やホテルなら責任をもつトラブル処理はどうなるのか。

UBERは、GPSが何かの理由でワークしなければ、その時点ですべて終わり。そこは運転手の経験にバリューがあるタクシーと違う。そしていまや我々の生活に欠かせないそのGPSは、アメリカにすべて頼っている。

現在アメリカのサテライト(人工衛星)は全部で500前後。そのうち50がGPSに使われている。そのうち5つだけが世界中の民間企業に開放され、残りは全て軍事目的だという。(軍事目的のGPSが誘導ミサイルや監視機能)

個人的には、このGPSがブレマーの世界情勢の縮図と考える。軍事だけでなく、経済でも根幹になりつつあるGPSはアメリカの一局支配。この現状に安心しているのは日本ぐらいだろう。

世界は独自にGPSの開発を目指している。だがそれも道半ば。ここが今のアメリカ一極と同じ。ただ欧州が開発中のガリレオに中国が参加しているのを見れば、AIIBがこうなるのは自明だったと思う。

当然ながら、中国はアメリカにサテライトで監視されている間は、永遠にアメリカと対等にはなれないことは判っている。だから2008年にサテライトを打ち壊すロケットの打ち上げを成功させた。

ただ今は、アメリカのサテライトを壊すのにロケットを命中させる必要はない。そんな敵対行動をしなくとも、サテライトの軌道に向けて自爆ロケットを発射しデブリを撒き散らせばよい。

近未来の人為的攻撃やデブリから人工衛星をどう守るか。この戦いが、少し前にマネー原理プロで紹介したCBSの60ミニッツのBattle Above


そういえば、日米の新協力ガイドラインに宇宙が入っていた。アメリカはデブリの除去など、日本の技術に期待するところは多い。これをみると、アメリカにとって中ソとの本当の戦いの場は、南シナ海でも、ウクライナでもなく空の上。そしてここで起こることは、知らされなければ一般は知らないままだ。

そもそも独立した人や国は、隠したい部分があるのが普通。プライバシーがない状態は独立ではない。なら秘密の部分、恥ずかしい部分を全部さらけ出す関係は、完全なる主従関係、或いは完全なる平和が達成されなければ難しい。そんなことが人間の世界に起こるのだろうか。

帝国主義と冷戦に勝利し、自分だけが帝国主義が可能になっても、脅威が消えた単独超大国のアメリカリがリベラル化するのは自然。でもその結果として、外交の緩みから自ら瓦解のリスクを抱え始めた。それが結局ブレマーの抱える悩みだと思う。(本人には無断で、ここではこの矛盾をブレマーの法則と呼びたい)

さらに、リベラル化した国内を統率するため、そのリベラル層が生み出したオバマ政権は、スノーデンを起訴し、メディアに内情をリークした元政府関係者を次々に取り締まっているが、あのビンラデイン捕り物劇でも嘘をついてたことが暴露される悪循環に落ちている。


   本当は日本人も 必見のcitizenfour。でも傑作のwhy we fightと同じ扱いだろう

ではアメリカの外交は再び保守的で強行な流れに戻るのか。(敵がいないならまた強引に作る?)その場合、冒頭のブレマーの主張には矛盾がある。今のアメリカの株高は、リベラル化の延長にあるハト派的金融政策の結果だ。

独善的正義を掲げて突き進んだたブッシュ外交。その裏の行き過ぎた金融の規制緩和。その顛末のリーマンショックから回復を演出したオバマ政権の金融ハト派政策。

その中で社会に躍り出てきた新リベラル層のミレニアルは、アメリカが強行外交に転じた場合のインフレと金利高など全く準備している様子はない。そしてなにより新しいビジネスモデルのP2Pは、基本的にアメリカの一極支配が生んだ平和的楽観モードが前提だ。

ローマは、オクタビアンが初代皇帝のアウグスツスになったあとの帝政(オーガスト期)後に頂点を迎えたるとされる。でもその安定と平和が齎した?貴族層のクッキングブームを見たLIVYが、いずれやってくるローマの衰退を予見したことは何度か紹介した。(オリジナルはエコノミスト誌)

今のところ、個人的にはローマとアメリカは同じ軌道に診える・・






 


2015年5月18日月曜日

プライドと民主主義

「政府は、アメリカのケリー国務長官がロシアを訪れプーチン大統領らと会談したことを受けて日ロ間の外相の往来の障害はなくなったとして、今後、プーチン大統領の日本訪問に先立つ岸田外務大臣のロシア訪問に向けた調整を本格化させたい考えです。・・・・」NHKニュース

アメリカとロシアの両方と仲良くするのは大賛成。でも独立国なら、自分の意思で外交をするものだ。独立国の政権が、「~の国の外相が会ったので、私達も会えるようになった・・と、自分から報道する先進国が他にあるだろうか。

 http://www.japantimes.co.jp/news/2015/05/16/national/politics-diplomacy/ldp-crafts-document-for-public-to-better-understand-national-security-bills/#.VVgEBI6qpBc

                                                              Japan Times から引用
                        
一方で外部環境が変化している以上、独裁が悪いとはいえない。問題は結果として何をするか。だからこそ、国際情勢の判断や経済の舵取りで間違えないようにしてもらいたい。そのためには、独裁であっても、反対意見や批判をメディアが止めてはならない。ところが海外からすれば、今の日本のメディアでは
                  エコノミスト誌から引用  

記事の中で、外国メディアの報道まで曲げて伝える・・という不満が外国メディアから出ている点は、要注意・・



似たような独裁必要発言をしていた橋下さんは、「民主主義はすばらしい」といって、政治家を引退するという。欧米のそれなりの政治家で、本音で民主主義はすばらしいと思っている人はどれくらいいるだろう。
                  
ハーバードの大学院で、法律と経済の両方を同時に学ぶ超エリートスペシャルコースの出身で、(オバマは法科)ビジネスも成功、(プライベートエクイティ)、政治家としてしてもそれなりに成功した(マサチューセッツ州知事)ロムニーが、チャリティとはいえ、なぜこんなパフォーマンスが必要なのか。
                   AP通信から

リベラル化が進んだあとの民主主義が(一人一票)、衆愚政治になるのはしかたない。ロムニーも存在感を維持するすためには何でもやる・・。

ところで、橋下氏には特殊な才能を感じていた。縁がない大阪のことは判らないが、個人的にいろんな理由で、東京一極集中は日本国にとって自殺行為、大阪が東京と拮抗する力を持つのは大賛成だった。ではこの結果は大阪の活力を生むのか、それとも現状維持で良しとしているのか。ニュースを見る限り、現状維持派が反対したようだ。

狭い日本で大阪の未来を考えるなら、それは日本の未来を考えるということ。なら橋下氏が民主主義のすばらしさを、少し前のイギリスの政治家の言葉を用いたのはやや残念(政争に負けても、今の政治家は死ななくてよくなった)。政党名に維新という言葉を用いた以上、橋本さんにはもっと壮大な目標を期待していた。・・

そもそも民主主義の原点に平和という臭いはしない。もっと猛々しいものだったと思う。ペルシャが攻めて来たとき、降伏し命を助けて貰うか、死ぬかもしれないが、断固闘うか。白黒の石を持って投票。
そして戦うと決った以上は反対票の黒を投じた人も武器をもって闘った義務。これが白人社会が原点とするギリシャの民主主義。

逆に権利がない奴隷に戦いを強いるのはおかしい。だから米国の建国の父は一人一票の民主主義は敷かなかった。(独立戦争では黒人奴隷も闘ったが、南北戦争では南軍は黒人兵を用いず、北軍も一部で導入したのみ・・(映画、グローリーは参考になる)この伝統は、太平洋戦争まで、海兵隊と海軍では黒人兵が極端に少ないことからも判る)

税金を払っても払わなくても一人に一票がある現代社会。民主主義からプライドと義務が消え、平和と権利だけが当たり前になった・・



2015年5月11日月曜日

がんばれ井上真央

              
                井上真央WIKIから引用

今年も大河の視聴率が悪いらしい。批評に主人公の井上真央の影が薄いという意見があった。

登場人物のほとんどが畳の上で死んでいない。キャラクターの激しさでは、端役が主役でもいい今年の大河。彼女の役どころは、いかにそんな強烈な個性の周りを引き立たせるか。この難しい役に彼女は挑戦している。頑張れ井上真央・・

視聴率が悪い理由はもう一つあると思う。吉田松陰ならテーマは「志」。しかし「志」という響は、現代社会からあまりにもかけ離れている。

幕藩体制の維持に最適だった儒学。長崎での多少の洋学。安泰だった江戸末期、欧州列強のアジア侵食で国学が復活した。これらが衝突した化学反応がこの時代。殺す側も、殺される側にも、志があった・・。脚本はそこは意識しているようだ。

さて、個人的にこの時代を振り返るとき、維新のきっかけは黒船なのに、なぜ新政府は、米国ではなく、欧州から近代化のための多くを導入したのかに注目している。今米国一辺倒を鮮明している安倍政権とのこのコントラストは興味深い。

岩倉使節団は米国に一番長く滞在した(8ヶ月)。米国で時間をとられ過ぎ、西郷などの動きも含め、あわただしく欧州を回ったというのが一般論。

欧米には優秀な若い人材が留学したが、個人的には渋沢栄一が欧州だった影響は見逃せないと思う。(日銀設立はFEDよりも早い)

一方世界史の観点では、この頃の欧州は、米英が協調したモンロー主義で中南米の植民地を失った後(スペイン・ポルトガルから独立)、アジアに関心が向かった頃。

アメリカも中国との貿易の重要性は感じ始めていたが、ジョージ・ワシントン以来の「米国は国内に集中すべき」の伝統で動きは鈍かった。

そんな中でのペリーの来航目的は、大きな意味では中国戦略の一環。しかしアジア外交に腰を上げた頃、南北戦争が勃発。岩倉使節団がアメリカに渡ったのは、南北戦争終結からまだ5年の頃だ。

使節団が米国がいずれ世界をリードする超大国になることは感じたとしても、内乱を終えたばかりの米国からすぐ導入できるものは少なかったのは自然。

その意味では、不平等とされた日米通商条約は、当事の国力の差がすれば十分平等であり、黒船は、日本が老獪な欧州の手に落ちる前に、共和党らしい直球で叩き起こしてくれたと考えることができる。

安倍政権は、この伝統的日米関係を前提にしていると思う。でも米国の次の主役のミレニアルは、ラーメンやSUSHIの日本に魅了される一方、共和党の価値観との間に共通点は少ない。

ところで、日本の人口減少を逆手に取る意見がある。江戸時代などにも人口減少期があったこと例にしているが、問題は人口ではなく、ピラミッドの形。過去日本で高齢者と若者の比がここまで逆さになったことはない。

これは未来の年金負担などのちんけな話ではなく、若者が社会の変革を生むかどうかのダイナミズムの問題。
政治家やメディアが人気のとりでマジョリティの高齢者を向いていたら、未来を担う若者に化学反応など生まれるだろうか。

終戦記念日には情緒的反戦番組をやってきたメディア。このブログでは、いざとなればほとんど意味はないと断言してきたが、ナチの独裁体制のプロセスに触れた麻生さんを叩いたメディアは今何処に行ったのだろう。

アベノミクスで株価が上がり、大手企業を中心とした経済に活気が戻ると選挙で自民党は強い。なら60年安保で反戦を唱え、冷戦を知り、バブルを謳歌し、その後のデフレを頑張った中高年は今どうしているのだろう。

目標やアサインメントはあっても、社会が平和で恵まれた戦後に生まれた我々には、死んでも貫き通す「志」など無縁だった。だから死は恐い。だから反戦をしてきた。

だが結果人口の塊ができ、民主主義のルールのなかでマジョリティーになると、この塊が未来の日本を考えるか、自分の老後だけを考えるか大きな分かれ目だ。

この課題に立ち向かうシステムが今の日本の人口動態にあるのだろうか。ないならば、その欠陥を補うのが、偶然恵まれた時代を生きた世代の使命だと思う。

NBCの看板アナウンサーだったトム・ブロコーは、ブーマー世代を代表して、自己反省を促すコメントをしている。そんな知性がなくとも、米国のミレニアルは、今の政治経済の中心層のベービーブーマーより数は多い。

ならシステムは日本より健全だ。逆に言えば、彼らの生み出すトレンドを意識せず、米国の近未来を決め込むと、恐らく戦前と同じ過ちを犯すことになる。

いずれにしても、国の未来を決めるは、黄昏の中高年ではなく、若者であって欲しい・・。




2015年5月4日月曜日

女王国家と大帝国家

         

イギリス王室に女の子が誕生した。イギリスは女王が似合うと勝手に思っているが、英国庶民も嬉しそう。ただ今の庶民の感情は、エリザベス(一世)やビクトリアといった大英帝国の象徴の時代からは少々離れている。

そんななか注目されるスコットランド党のスタージョン女史。マニフェストは、イエレンFED議長、ラガードIMF長官、メルケルドイツ首相をさらに大きく左に傾けたような存在。アメリカならエリザベス・ウオーレン上院議員のような存在か。

女性の時代を象徴するこの人たちに共通するのは、貧富の差の問題意識と母性的な嫌戦だろう。でもイエレンの政策は貧富の差を寧ろ拡大。ラガードは、金余りの副作用を心配しながら、FEDがタカ派になるのは間違いだなどと、その場その場で相反する発言を繰り返している・・。



前にも触れたが、今は3回目の中央銀行バブルの真っ只中だと考えている。一回目はマネーが金や銀のお宝そのもの(トレジャー)だった時代から(流通量に限界)、イギリスでビル・パターソン、フランスでジョン・ローなどのスコットランド人が、中央銀行が国の債務を引き受け、紙幣を発行する新しい概念を提案した頃。その後南海泡沫事件が起きた。

二度目は金融が社会を支配してまった欧州から、建国の父らがアメリカを独立に導き、130年程度たった頃。アメリカは中央銀行制度を廃止しながら(ジャクソン大統領)世界経済のトップに踊り出ていた。(その間10回以上の暴落を経験)そのダイナミズムに、ニッカボッカ暴落をきっかけにFEDができたのだから、空前のバブル発生は必然だったのだろう。(1920年代)

そして今回。規制緩和によるレバレッジで膨らんだポジションが崩壊したリーマンショック。その後米国では、それまでGDPの6%以内だったFEDのバランスシートは20%になった。今ではECBや日銀が金融システムのファーストリゾート(マネー供給)とラスト・リゾート(市場介入)を同時にやってる異常さ(元FEB理事ケビン・ウオルシュ)・・・。

では今回の中央銀行バブルの終わり方はどうなるか。必要のコストが贅沢のコストを上回らない限り、個人的にもう少し先だと考えているが、もし南海泡沫型なら、保守派の影響が上回るケースのアメリカの政治決断に平和ボケ市場がびっくり。アップセットして自滅するパターンだろう。南海泡沫事件当事きっかけになったバブルアクト法は、議会が敷いた自主規制法案だった。

南海会社は国債の引き受けで中央銀行のバンクオブイングランドとの競争。そして株式会社としてはその国債を自社株に転換、そこで虚構の利益を稼いでたので、真似をした株式会社が乱立するのが迷惑だった。そこで議会に働きかけて法案を通した。でも自分が転んでしまった。

ほぼ同時にフランスのミシシッピー会社も同じ運命に。しかしその後の対応が、イギリスとフランスの命運を別けたというのが、経済に詳しいの保守派政治家や、一部の経済学者の考え。イギリスは、国王から貴族、庶民までも巻き込んだこの失敗をきっかけにシステムを変えた。

イギリスでは中央銀行の役割、マネーの量などの議論が進歩。一方で貧富の差や格差の確定は悪いことではなく、むしろ共和制が終わった後の帝政ローマ(Augustus期)のような社会の安定をもたらした。それが資本主義の発展とともにイギリスの繁栄の原動力になったという考え方。

一方彼らはミシシッピー後のフランスは、国王と貴族は保身からシステムを変えず、問題を先送りしたまま貧富の差が限界を超え、結果的にフランス革命を起こしてしまったという考えを展開する。日本人が教わったの戦後の世界史も、アメリカが台頭するまで、イギリスの時代だったということになっている。

確かに、それまで勝ち負けを繰り返してきたイギリスとフランスの戦争は、この後フランスはイギリスに勝てなくなった(最後はナポレオンも敗北)でもアメリカの独立を助けた戦争で、フランスはイギリスに煮え湯を飲ませた。結果、イギリスはアメリカに覇権を渡したなら、いまもフランスはイギリスに負けたなどとは考えていないだろう・・。



西ローマ帝国が滅んだ後の欧州を統一したカール大帝。この人をフランス中興の祖と観るべきか、ドイツ繁栄の根幹と考えるべきか、いまだによく判らない。でも彼から産業革命までの1000年は大陸欧州が世界の中心だった。例外が中国だ。

これが大陸欧州の考え方だと思う。だとすれば、大英帝国から今のアメリカの覇権の先の世界情勢を冷静に観ているのはどちらか。

ヘンリ8世以降、ローマ教皇を中心としたカソリック社会のピラミッドの呪縛を離れたイギリス。その国を、血筋のはっきりしないアングロサクソンが、異端のプロテスタントを受け入れ、傍若無人国家になったと考えてきた伝統の欧州。

その大陸欧州からすれば、総選挙後、イギリスで仲間が増えるのは歓迎だ(ケルト系でカソリックのスコットランドの影響の拡大)そして何度も言うが、アメリカでもアングロサクソンでプロテスタントは絶滅危惧。ミレニアルには保守的な考えは古臭い・・。

このような欧州情勢と、彼らが中国に擦り寄っていく世界の潮流をみて、アメリカの現オバマ政権と保守派共和党の思惑は一致した。それは世界最古の国家の一つを取り込んでしまうこと。

ガラパゴスのような地形的優位性の中で育まれた国民性は今も性善説。国民の識字率は高く、勤勉で組織的な行動は経済やスポーツで実証済み。もちろん科学の基礎もあり、いろんな新しい技術を生み出すが、欧米型資本主義では、生み出しても育てるのが苦手で儲け損なってきた。

今その国には復活の立役者のように思われている首相がいる。人気がある彼を取り込んでしまうことで、この先イギリスがどうなるかわからないアメリカも心強い。日頃ほとんどの案件で喧嘩をしている共和党とオバマ政権はその思惑では一致した。

幸いその国で教えられている世界史感は英米型。国民の大半はアメリカが何を考えているかを冷静に考える前に、アメリカが優しいことに嬉しくなっている・・。



そういえば昨年末の実行されたリチャード3世の遺骨のDNA鑑定で、現ウインザー王朝の英国王室としての正当性が疑われることとなった。(リチャード3世はゲームオブスローンズではスタニスパラシオン)

でもそんな清濁を併せ呑んで、システムの変革が、国家の安定になるという成功の原則をイギリスは失うことは無いだろう。それが自分も国王を殺しながら、貧乏な庶民の圧力で国王が殺されたフランス革命は失敗だと主張するずるさ。革命に名誉などない・・

そもそも「国家の条件」は人口 主権 領土。この300年間の英米覇権の前までは、世界のほとんどでこの3条件が入り乱れた。(中国は領土と人口は維持したが、外敵に対して主権を何度も失っている) 

そして、元をたどれば大帝と女王に繁栄の基礎を持つ大陸欧州と英国が今後どうなっていくか。ピュアで世界最古の王室を自慢できる国で生まれたものとして楽しみだ。でもこのような世界を相手に、ピュアでナイーブなその国の未来は、最古の歴史が齎したピュアとナイーブさでは保証されない。

この矛盾にどう立ち向かうか。次世代の日本のエリートはぜひ考えて欲しい。戦後、戦争で日本に圧勝したアメリカは、人口 主権 領土の基本を蹂躙しなかった。

一時的主権は奪ったが、天皇制は維持した。結果的に世界史の残酷さと老獪さの本質を日本人に教えなかったアメリカ。本当はまだまだ恐ろしい国だと思う・・