2015年5月11日月曜日

がんばれ井上真央

              
                井上真央WIKIから引用

今年も大河の視聴率が悪いらしい。批評に主人公の井上真央の影が薄いという意見があった。

登場人物のほとんどが畳の上で死んでいない。キャラクターの激しさでは、端役が主役でもいい今年の大河。彼女の役どころは、いかにそんな強烈な個性の周りを引き立たせるか。この難しい役に彼女は挑戦している。頑張れ井上真央・・

視聴率が悪い理由はもう一つあると思う。吉田松陰ならテーマは「志」。しかし「志」という響は、現代社会からあまりにもかけ離れている。

幕藩体制の維持に最適だった儒学。長崎での多少の洋学。安泰だった江戸末期、欧州列強のアジア侵食で国学が復活した。これらが衝突した化学反応がこの時代。殺す側も、殺される側にも、志があった・・。脚本はそこは意識しているようだ。

さて、個人的にこの時代を振り返るとき、維新のきっかけは黒船なのに、なぜ新政府は、米国ではなく、欧州から近代化のための多くを導入したのかに注目している。今米国一辺倒を鮮明している安倍政権とのこのコントラストは興味深い。

岩倉使節団は米国に一番長く滞在した(8ヶ月)。米国で時間をとられ過ぎ、西郷などの動きも含め、あわただしく欧州を回ったというのが一般論。

欧米には優秀な若い人材が留学したが、個人的には渋沢栄一が欧州だった影響は見逃せないと思う。(日銀設立はFEDよりも早い)

一方世界史の観点では、この頃の欧州は、米英が協調したモンロー主義で中南米の植民地を失った後(スペイン・ポルトガルから独立)、アジアに関心が向かった頃。

アメリカも中国との貿易の重要性は感じ始めていたが、ジョージ・ワシントン以来の「米国は国内に集中すべき」の伝統で動きは鈍かった。

そんな中でのペリーの来航目的は、大きな意味では中国戦略の一環。しかしアジア外交に腰を上げた頃、南北戦争が勃発。岩倉使節団がアメリカに渡ったのは、南北戦争終結からまだ5年の頃だ。

使節団が米国がいずれ世界をリードする超大国になることは感じたとしても、内乱を終えたばかりの米国からすぐ導入できるものは少なかったのは自然。

その意味では、不平等とされた日米通商条約は、当事の国力の差がすれば十分平等であり、黒船は、日本が老獪な欧州の手に落ちる前に、共和党らしい直球で叩き起こしてくれたと考えることができる。

安倍政権は、この伝統的日米関係を前提にしていると思う。でも米国の次の主役のミレニアルは、ラーメンやSUSHIの日本に魅了される一方、共和党の価値観との間に共通点は少ない。

ところで、日本の人口減少を逆手に取る意見がある。江戸時代などにも人口減少期があったこと例にしているが、問題は人口ではなく、ピラミッドの形。過去日本で高齢者と若者の比がここまで逆さになったことはない。

これは未来の年金負担などのちんけな話ではなく、若者が社会の変革を生むかどうかのダイナミズムの問題。
政治家やメディアが人気のとりでマジョリティの高齢者を向いていたら、未来を担う若者に化学反応など生まれるだろうか。

終戦記念日には情緒的反戦番組をやってきたメディア。このブログでは、いざとなればほとんど意味はないと断言してきたが、ナチの独裁体制のプロセスに触れた麻生さんを叩いたメディアは今何処に行ったのだろう。

アベノミクスで株価が上がり、大手企業を中心とした経済に活気が戻ると選挙で自民党は強い。なら60年安保で反戦を唱え、冷戦を知り、バブルを謳歌し、その後のデフレを頑張った中高年は今どうしているのだろう。

目標やアサインメントはあっても、社会が平和で恵まれた戦後に生まれた我々には、死んでも貫き通す「志」など無縁だった。だから死は恐い。だから反戦をしてきた。

だが結果人口の塊ができ、民主主義のルールのなかでマジョリティーになると、この塊が未来の日本を考えるか、自分の老後だけを考えるか大きな分かれ目だ。

この課題に立ち向かうシステムが今の日本の人口動態にあるのだろうか。ないならば、その欠陥を補うのが、偶然恵まれた時代を生きた世代の使命だと思う。

NBCの看板アナウンサーだったトム・ブロコーは、ブーマー世代を代表して、自己反省を促すコメントをしている。そんな知性がなくとも、米国のミレニアルは、今の政治経済の中心層のベービーブーマーより数は多い。

ならシステムは日本より健全だ。逆に言えば、彼らの生み出すトレンドを意識せず、米国の近未来を決め込むと、恐らく戦前と同じ過ちを犯すことになる。

いずれにしても、国の未来を決めるは、黄昏の中高年ではなく、若者であって欲しい・・。




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