2015年5月4日月曜日

女王国家と大帝国家

         

イギリス王室に女の子が誕生した。イギリスは女王が似合うと勝手に思っているが、英国庶民も嬉しそう。ただ今の庶民の感情は、エリザベス(一世)やビクトリアといった大英帝国の象徴の時代からは少々離れている。

そんななか注目されるスコットランド党のスタージョン女史。マニフェストは、イエレンFED議長、ラガードIMF長官、メルケルドイツ首相をさらに大きく左に傾けたような存在。アメリカならエリザベス・ウオーレン上院議員のような存在か。

女性の時代を象徴するこの人たちに共通するのは、貧富の差の問題意識と母性的な嫌戦だろう。でもイエレンの政策は貧富の差を寧ろ拡大。ラガードは、金余りの副作用を心配しながら、FEDがタカ派になるのは間違いだなどと、その場その場で相反する発言を繰り返している・・。



前にも触れたが、今は3回目の中央銀行バブルの真っ只中だと考えている。一回目はマネーが金や銀のお宝そのもの(トレジャー)だった時代から(流通量に限界)、イギリスでビル・パターソン、フランスでジョン・ローなどのスコットランド人が、中央銀行が国の債務を引き受け、紙幣を発行する新しい概念を提案した頃。その後南海泡沫事件が起きた。

二度目は金融が社会を支配してまった欧州から、建国の父らがアメリカを独立に導き、130年程度たった頃。アメリカは中央銀行制度を廃止しながら(ジャクソン大統領)世界経済のトップに踊り出ていた。(その間10回以上の暴落を経験)そのダイナミズムに、ニッカボッカ暴落をきっかけにFEDができたのだから、空前のバブル発生は必然だったのだろう。(1920年代)

そして今回。規制緩和によるレバレッジで膨らんだポジションが崩壊したリーマンショック。その後米国では、それまでGDPの6%以内だったFEDのバランスシートは20%になった。今ではECBや日銀が金融システムのファーストリゾート(マネー供給)とラスト・リゾート(市場介入)を同時にやってる異常さ(元FEB理事ケビン・ウオルシュ)・・・。

では今回の中央銀行バブルの終わり方はどうなるか。必要のコストが贅沢のコストを上回らない限り、個人的にもう少し先だと考えているが、もし南海泡沫型なら、保守派の影響が上回るケースのアメリカの政治決断に平和ボケ市場がびっくり。アップセットして自滅するパターンだろう。南海泡沫事件当事きっかけになったバブルアクト法は、議会が敷いた自主規制法案だった。

南海会社は国債の引き受けで中央銀行のバンクオブイングランドとの競争。そして株式会社としてはその国債を自社株に転換、そこで虚構の利益を稼いでたので、真似をした株式会社が乱立するのが迷惑だった。そこで議会に働きかけて法案を通した。でも自分が転んでしまった。

ほぼ同時にフランスのミシシッピー会社も同じ運命に。しかしその後の対応が、イギリスとフランスの命運を別けたというのが、経済に詳しいの保守派政治家や、一部の経済学者の考え。イギリスは、国王から貴族、庶民までも巻き込んだこの失敗をきっかけにシステムを変えた。

イギリスでは中央銀行の役割、マネーの量などの議論が進歩。一方で貧富の差や格差の確定は悪いことではなく、むしろ共和制が終わった後の帝政ローマ(Augustus期)のような社会の安定をもたらした。それが資本主義の発展とともにイギリスの繁栄の原動力になったという考え方。

一方彼らはミシシッピー後のフランスは、国王と貴族は保身からシステムを変えず、問題を先送りしたまま貧富の差が限界を超え、結果的にフランス革命を起こしてしまったという考えを展開する。日本人が教わったの戦後の世界史も、アメリカが台頭するまで、イギリスの時代だったということになっている。

確かに、それまで勝ち負けを繰り返してきたイギリスとフランスの戦争は、この後フランスはイギリスに勝てなくなった(最後はナポレオンも敗北)でもアメリカの独立を助けた戦争で、フランスはイギリスに煮え湯を飲ませた。結果、イギリスはアメリカに覇権を渡したなら、いまもフランスはイギリスに負けたなどとは考えていないだろう・・。



西ローマ帝国が滅んだ後の欧州を統一したカール大帝。この人をフランス中興の祖と観るべきか、ドイツ繁栄の根幹と考えるべきか、いまだによく判らない。でも彼から産業革命までの1000年は大陸欧州が世界の中心だった。例外が中国だ。

これが大陸欧州の考え方だと思う。だとすれば、大英帝国から今のアメリカの覇権の先の世界情勢を冷静に観ているのはどちらか。

ヘンリ8世以降、ローマ教皇を中心としたカソリック社会のピラミッドの呪縛を離れたイギリス。その国を、血筋のはっきりしないアングロサクソンが、異端のプロテスタントを受け入れ、傍若無人国家になったと考えてきた伝統の欧州。

その大陸欧州からすれば、総選挙後、イギリスで仲間が増えるのは歓迎だ(ケルト系でカソリックのスコットランドの影響の拡大)そして何度も言うが、アメリカでもアングロサクソンでプロテスタントは絶滅危惧。ミレニアルには保守的な考えは古臭い・・。

このような欧州情勢と、彼らが中国に擦り寄っていく世界の潮流をみて、アメリカの現オバマ政権と保守派共和党の思惑は一致した。それは世界最古の国家の一つを取り込んでしまうこと。

ガラパゴスのような地形的優位性の中で育まれた国民性は今も性善説。国民の識字率は高く、勤勉で組織的な行動は経済やスポーツで実証済み。もちろん科学の基礎もあり、いろんな新しい技術を生み出すが、欧米型資本主義では、生み出しても育てるのが苦手で儲け損なってきた。

今その国には復活の立役者のように思われている首相がいる。人気がある彼を取り込んでしまうことで、この先イギリスがどうなるかわからないアメリカも心強い。日頃ほとんどの案件で喧嘩をしている共和党とオバマ政権はその思惑では一致した。

幸いその国で教えられている世界史感は英米型。国民の大半はアメリカが何を考えているかを冷静に考える前に、アメリカが優しいことに嬉しくなっている・・。



そういえば昨年末の実行されたリチャード3世の遺骨のDNA鑑定で、現ウインザー王朝の英国王室としての正当性が疑われることとなった。(リチャード3世はゲームオブスローンズではスタニスパラシオン)

でもそんな清濁を併せ呑んで、システムの変革が、国家の安定になるという成功の原則をイギリスは失うことは無いだろう。それが自分も国王を殺しながら、貧乏な庶民の圧力で国王が殺されたフランス革命は失敗だと主張するずるさ。革命に名誉などない・・

そもそも「国家の条件」は人口 主権 領土。この300年間の英米覇権の前までは、世界のほとんどでこの3条件が入り乱れた。(中国は領土と人口は維持したが、外敵に対して主権を何度も失っている) 

そして、元をたどれば大帝と女王に繁栄の基礎を持つ大陸欧州と英国が今後どうなっていくか。ピュアで世界最古の王室を自慢できる国で生まれたものとして楽しみだ。でもこのような世界を相手に、ピュアでナイーブなその国の未来は、最古の歴史が齎したピュアとナイーブさでは保証されない。

この矛盾にどう立ち向かうか。次世代の日本のエリートはぜひ考えて欲しい。戦後、戦争で日本に圧勝したアメリカは、人口 主権 領土の基本を蹂躙しなかった。

一時的主権は奪ったが、天皇制は維持した。結果的に世界史の残酷さと老獪さの本質を日本人に教えなかったアメリカ。本当はまだまだ恐ろしい国だと思う・・








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