2015年7月26日日曜日

次の最後通牒までのユートピア

           


…「最後通牒」で思い出すのはハルノート。当時の状況からして、日本は到底受け入れられない内容だったといわれている。まあこれは日本人好みの刹那主義の分析。

本当にそうだったかは、ルーズベルトが何を考えているか、パールハーバー後、嫌戦と思われた陽気なアメリカ人がどう豹変するか。「想像的分析力」が日本側にあったかどうかの検証が先。

時代は変わり、今アメリカは日本の親分。そこからくる甘えと安心感からだろうか、こちらから眺める限り、日本のアメリカに対する「想像的分析力」は、アメリカを敵として考えた太平洋戦争前よりも更に衰えている様に思える・・。

強大な好戦国が意図的に弱者を追い込む最後通牒。近代史で欧米の知識人がまず思いつくのは、約100年前、皇太子夫妻を殺されたオーストリー・ハンガリーが、セルビアに突きつけた最後通牒だろう。

このときセルビアは最後通牒の90%を受け入れた。セルビアは皇太子夫妻を暗殺した自国のテロリストとその組織の撲滅を言明した。ところがドイツの意向を強く受けたオーストリー・ハンガリーは、自国軍をセルビアに入れて犯人を捜すことを強要。セルビアは反発し、第一次世界大戦が勃発した・・。


そして今、なんとか一旦イランとの核開発条約を纏めたオバマ大統領は、今週米国民にアメリカは、イラクと同じことをイランにしてはいけないと訴えた。(あくまでも一旦)

イラクと同じこと?

ブッシュ政権が、存在しないイラクの大量破壊兵器を前提にイラク戦争を起こしたことは既に皆が知っている。その少し前、世界では国連加盟国を中心に化学兵器を禁止するために1997年にOPCWが発足していた。

初代長官はブラジル人のホセ・ブスタニ氏。2001年の9.11の後、ブッシュ大統領がイラク攻撃への足ががりを掴んだことで、彼はイラクにOPCWへの加盟を促した。危機を感じたイラクも加盟に傾いた。しかしソレ察知したアメリカはボルトン氏(GS出身の当事の補佐官)を中心にブスタニ氏排除へ動く。

2002年、ブスタニ氏は排除された。2013年にOPCWがノーベル平和賞を受賞した際、彼は強大なアメリカの力で、国際機関が本来の役割を発揮できなかったと世界に訴えた。メジャーな国際機関のトップが、任期途中で排除されたのは今のところこのケースのみ・・


そんな中、議会はイラク核開発条約の審議に入った。60日以内に上院の2/3(67票)が反対にまわらなければ、このまま批准される。当初は覆すことはことは無理と思われたが、ほとんどの共和党議員が反対する中、下院の28人ユダヤ系議員を中心に、予断を許さない状況になった。

もしひっくり返れば、まず商品市況が動くだろう。そして同じ頃に成立するはずの日本の安保関連法案との整合性も取れる。ただここまでの自民党は、オバマ政権の目指すアメリカとは別に、レーガン・中曾根、ブッシュ・小泉時代の延長のようなアメリカを想定している。

実現の可能性はある。その場合、いずれイランに向けて「次の最後通牒」が届くだろう。
ただこちらから観て、外務省は十分に情報を取り、政権はリスクをとって、これからのアメリカの姿と方向性を、独立国家として自分で考えた上での戦略には見えない。

今のアメリカは、新リベラルといわれるシンクタンクが支配している。昔はニュートラルだったブルッキングスも今はかなりリベラル・ハト。仮に次の政権が共和党でも、レーガンからブッシュまでの強引な国民誘導は不可能だ。

にもかかわらず、こちらでは全く影響力のない、リチャード・アーミテージ氏やマイケル・グリーン氏などが日本のメデイアでは活躍中。ということは・・・

ただし、矛盾を抱えながらも安保関連法案が成立するのは、結果的に日本のためになるだろう。なぜなら、世界史では逡巡は短い。なら今の自衛隊に必要なのはずばり「実戦経験」

世界でもほとんど人が戦争には反対。ただし必要悪であることを認めている国が、平和機関の国連の常任理事国。そんな中、日本の法案反対派は、自分と自分の子供の命が惜しいだけ。

国益を守る立場のエリートは、世界史が持つ必然的なグローバル社会のボラを、日本がどう生き抜くかという観点で国民を説得しなければならない。その意味で自民党と安倍政権は、憲法改正が難しいからとって先を急ぎすぎた。もしその背景がアーミテージ氏やマイケルグリーン氏などのレベルだとしたら残念だ。

本当に未来の日本を思うなら、もう少し世界史の流れを意識し、特に支配国家アメリカの未来がどうなるかの想像的分析が必要。アメリカに甘えるだけの惰性では、日本の命運は神頼みということになる・・。















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