2012年11月3日土曜日

特別号 大統領選の真実 (真マネー原理プロから)

 
 
               オバマ6.25


               
ロムニー 3.25



上のチャートはオバマとロムニーのどちらが勝つかにお金をかけたINTRADE市場のプレミアムである。途中オバマが優勢だ、ロムニーが逆転した、ハリケーンでオバマがよかった・・などなど、マスコミは勝手に盛り上がっていた。
しかしメディアが主観的であるのに対し、お金は嘘をつかない。INTRADEではずっとオバマが優勢だった。そこで、日本の読者にも、知っているようで実は知らない米国の大統領選の真実をマネー原理プロから抜粋した・・。

< 269対269の考察 >

ところで大統領選が共和党の言う通りの接戦なら、オバマ・ロムニーの獲得代議員が269対269で並ぶ可能性もある。その場合にどうなるかのか。そこは米国を勉強するにちょうどいい材料。そこで大統領選の基本をお浚いする。

まず各州の代議員の数。これはその州の国会議員と同数。(下院435、上院100)しかし国会で議席を持たないワシントンDCに3票が与えられる。(DCは議員を出すが法案への投票権を持たない)よってトータル538。過半数の270を取れば勝ちだが、組み合わせによっては269対269の可能性があり、NBCの予想では今回その可能性が十分あるという。(過去下院が大統領を決めたのは1800年代に2回ある)そして各州の代議員数は州を勝った候補者が総取りするが。勝者を決める州法はどこもバラバラ。(例外はメインとネブラスカ、この二州は総取り方式ではない)

では同点になった場合はどうなる。まず憲法で大統領を決めるのは下院に権限がある。一方副大統領を決めるのは上院。共に投票である。ならば大統領と副大統領が別の党から出ることもありうる。下院の現勢力は共和党が優勢、だだし下院も改選される。だがそれでも同点の場合はロムニーが有利だ。なぜなら、大統領を決める下院投票では各州が1票。つまり下院議員が55人いるカリフォルニアと、下院議員が一人しかいないワイオミング、ノースダコダ サウスダコダ アラスカの一票は同じである。いうまでもなくこの4州の下院議員は全員が共和党。地域性からいっても民主党に負ける可能性は殆ど無い。

こうみると米国の民主主義のシステム、つまり選挙がいかに歪で不平等かがよくわかる。前述の4州では人口対比の下院定数は一人だが、合衆国を構成する州として上院の定数は二人。つまり下院議員が55人いるカリフォルニアと上院定数二人は同じである。上院議員は上級公務員の任命。条約の批准等の下院にない権限に加え、なんといってもフィルバスター(牛歩)で法案をつぶすことが可能だ。上院では人口50万人のサウスダコダと5000万人のカリフォルニアの上院の一票の格差など話にならない。これは当初東海岸の13州で始まったこの国の歴史の産物だが、何度も改正の動きを経ながら、そんな不完全を受け入れて米国の民主主義は成熟してきた

ここが几帳面で単一国家、単一民族の日本が勘違いしやすいところだろう。それよりも、そもそも人口のGDPも米国の1/3がちょうどいいと考えている日本がなぜ国会議員の数だけは米国より多いのか。(米国の535に対して日本は722人、ちなみに給料は日本は米国の3倍)そこが一番不思議なところ・・。。






< フィスカルクリフは民主主義の産物 >

雇用統計は予想通りいい数字だった。だが今失業している人にとっては失業率の改善はGOODニュースではない。オバマ政権もそんなことは判っている。それでもいい経済指標の数字が欲しいのは、まだ決められない人にイメージを植え付けるためだ。

ただ日頃アメリカ人の多くはワシントンと無関係な生活をしている。日常では州で違う交通規則やバラバラの消費税の方が重要であり。これから家を買う人は、ノンリコースの州ならローンが払えなくなっても安心だ。そして万が一人を殺すようなことがあっても、テキサスで一人殺せば十分死刑だが、マサチューセッツなら30人殺しても死刑にならない(被害者に連邦職関係者がいない場合)。(注、イリノイはノンリコースでないので住宅ローン債務は他の資産とリンクされる)

つまり米国の大統領選とは、不平等で不完全な州ごとの決まりを容認しながら、ボトムアップで合衆国のリーダーという国家公務員を選出するプロセスだ。まさにこれこそ大同小異という民主主義の本質。だが逆に本来スムーズにいかないのが当然である。事実、建国当初から二大政党制が固まる頃の大統領選はスムーズではなかった。

選挙で代議員数が同点になるケースが大統領と副大統領で3回あった。1800年はトマス ジェファーソン(2ドル札)とアーロン バーが同点になり、議会を牛耳ったアレキサンダー ハミルトン(10ドル札)がジェファーソンに決めたことが、後にアロンバーが決闘でハミルトンを殺す遠因にもなっている。

その後徐々に制度も整うものの、テレビの無かった時代までの大統領選は事実上ミシガン湖より東のエリアの内輪の争い。1920年代、8年間もリベラル進歩主義者のウイルソンに牛耳られた共和党では、業を煮やした資本家やギャングが結託してハーデイングを選出した。

その際のマネーの暗躍はすざましいものがあった。知りたい人はケーブルTVのブロードウォークエンパイアを参考になるだろう。しかしそんなことは西部の牧歌的有権者は知る由も無かったはずだ。

同じように、金融危機後急速に社会主義化したこの国が、歴史上初めて黒人の大統領を迎えたこの4年間に対する様々な思いが米国人の心の底にある。それは単一民族で潔癖が当たり前の日本人の想像を超えたもの。

個人的にはハリケーンや経済指標を織り込んだ今もイメージは同じ。不正が少なくスムーズに選挙が進めば、INTRADEが示唆してきたオバマ優勢のイメージ。しかし重要州が接戦になった場合に共和党が簡単に諦めるとは思えない。ロムニーが潔くても周りは諦めないだろう。

また万が一同点なら、紹介したようにロムニーが圧倒的有利である。州よって選挙のルールは違う。最重要州のオハイオでは郵送による投票の受付は選挙が終わっても2週間有効。リカウントするかしないのか。最後は連邦裁判所にまで持ち込めば、泥仕合はどこまでも続く・・。

その場合の「フィスカルクリフ」が相場には一番恐ろしい展開だろう・・。

 

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