2008年4月19日土曜日

破壊者待望論

経済雑誌の新聞広告から日本で再び信長がブームになる前兆を発見した。でもなぜ今また信長なのだ。知る限り、彼がブームの時日本は沈滞ムードにある事が多い。今の日本は再びこの天才にあやからなければならないほど追い込まれしまったのだろうか。

そんな日の午後、米国ワシントンにはローマ教皇が降り立った。そして空港ではブッシュ大統領が出向えた。米国人でも殆ど気づいていないが、米国の大統領が外国の要人を空港に出迎える事は異例である。国賓待遇の要人はタラップに赤い絨毯で十分。米国ではそれ以上の待遇はない。寧ろ、覇権国家米国の大統領が誰かを出迎えるなどという事は本来あってはならない事の一つかもしれない。従ってブッシュは大統領として行ったのではなく、敬虔なカトリック信者の一人として法王に臣下の意をささげたともとれる・・。

ところで参考までにデータを紹介すると、米国の宗教割合はプロテスタント51.3% カソリック23.9% モルモン教1.7% 他キリスト宗派1.6% ユダヤ教1.7% 仏教0.7% イスラム0.6% 他宗教全般2.5%。また宗教を否定はしないが明確な意識を持たない人が12.1%、そしていかなる宗教も信じない人が4%である。

大統領選に関しての統計では、有権者の7割が大統領は何らかの宗教(キリスト教)の信者であるべきで、無宗教信者は大統領になる資格がないと考えている事が判明している。では信長とローマ法王はどう関連するのか・・。(数値はCIA調べ)

その前にこちらで話題のドラマ「TUDER」に触れたい。これは英国チューダー王朝を代表するヘンリー八世の物語である。先に結論をいうと、個人的歴史観ではヘンリー八世と信長は非常に似ており、この両雄以降の両国は歴史的大発展を迎えたと考えている。そこで簡単にヘンリー八世を紹介する。

彼は数ヶ国語に堪能でスポーツ万能。また趣味も広範囲で、基本的には優れた資質の持ち主だったらしい。しかし英雄色を好むではないが、急死した兄から引き継いだ強国スペインの王女との政略結婚が行きづまると、まず王女の侍女に手を出した。そしてカソリックで禁止されている離婚を画策し、侍女が懐妊すると彼女を新女王に据える。それがアン王女である。

しかしそのアンに飽きると今度は彼女の侍女に手を出し、次々に新しい女王を据えていった。そして彼が特異だったのはその残虐性。アンを始め妻にした6人女王の内3人を断頭台に送り、また友人でもあったあの「ユートピア」の作者、トマスモアも自分の宗教改革に同意しないとみると断頭台に送ってしまった。

残虐な点も信長にそっくりだが、彼のその異常な性格は、それまで中世ヨーロッパの一国過ぎなかった英国に画期的な大変革をもたらした。それはローマンカトリック支配からの独立である。「TUDER」でも当時のヨーロッパで最大の権威は教皇クレメンス7世であり、ヘンリー八世を始めとするスペインやフランス国王はそれぞれ国王でありながらローマ法王の配下にある姿で描かれる。そしてたとえその背景が好色からの離婚だったとはいえ、その状態をヨーロッパで最初に破壊したのがヘンリー八世である。

そして彼は自分を正当化する為に新宗教として英国国教会を立ち上げる。またそれに反対した盟友のトマスモアの頸を切り、最後はその大変革の実務を仕切ったクロムウェルまでも死に追いやる代償を払う。だがこれで英国はローマによる支配から脱却。その結果反カソリック勢力が英国に流入した事で、後に米国誕生にも影響する清教徒の誕生や、何よりもユダヤ人などの活用で金融面の発展につながった。

それが植民地で先行したスペイン ポルトガルに決定的な差をつけた要因となったとみる歴史観がドラマでも展開されている。

国家支配において宗教の関与を完全に否定した信長が描いたビジョンが、秀吉、家康に引き継がれたように、ヘンリーとアンの遺児エリザベス一世は、英国史上最も著名な女王として無敵艦隊(スペイン)を打ち破り、英国を覇権国家へと押し上げていった。

歴史は時にこうした狂人たちが運命的役割を担ってきた。英国がヘンリー八世を自慢するなら、沈滞ムードが再び漂い始めた日本では信長の破壊力に再び寄りすがるのも仕方がない。そしてこの米国ではブッシュ大統領がこの二人とは全く逆に、覇権国家の首長が宗教の権威に自分の頭を垂れている。やはり彼は破壊者ではなかったのだ。イラクを破壊してしまった彼は軍産複合体に担がれただけだ。そして今彼は疲れた。疲れた彼はべネデイクト教皇にすがりたいのだろう。真に米国の凋落を語りにふさわしい光景だった・・。

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