2008年4月3日木曜日

JOIN OR DIE(結集せよ、さもなくば死だ。ベンジャミン フランクリン)

春は新しいテレビ番組が始まる。それは米国も同じ。HBOでは看板番組だったソプラノスが終了してしまったが、新しく建国の父の一人、「ジョンアダムス」の伝記が始まった。

そもそも相場をやる以上はTV番組をバカにしてはいけない。なぜなら制作側は世情や流行りに合わせて次のテーマを探す。その道のプロたちが選んだテーマや趣向には、次の潮流を予見するに必要な要素が多分に含まれている。その意味ではブルーンバーグよりも先見性に優れている。

その「ジョンアダムス」だが、番組には米国建国の父が沢山登場する。アダムスは第2代大統領。初第のジョージワシントン、第3代のトマスジェファーソン等、「建国の父」と呼ばれる人達がいかに苦労して米国の独立を勝ち取ったかが興味深く描かれている。中でも最も異彩を放っているのがベンジャミンフランクリンだ。

建国の父といってもワシントンは軍人、そして彼以外は、今のIVリーグに連なる大学を卒業した法律家や学者である。多くは英国から移民した裕福な実業家の子孫でどこかに英国の矜持である「権威」「厳格」「節制」「勤勉」といった基本概念を持っていた。

しかし本国のジョージ3世が植民地の13州に重税を課し、その事が結果的に独立を促したとはいえ、初期の段階では英国への帰属維持を主張する派と独立強行派とで13州の足並みは乱れた。そしてそれを纏め上げていく上で重要な役割を演じたのが主人公のアダムスと、ベンジャミン フランクリンである。

そのベンジャミンフランクリンは独立戦争に先立つ仏/インデイアン連合軍との戦いから、本国英国との戦争において、後世の米国人に多大な影響を与えたといわれるJOIN OR DIEという有名な言葉を残した。また彼は興味深い以下の13の訓戒も残した。

①節制
②沈黙
③規律
④決断
⑤節約
⑥勤勉
⑦誠実
⑧正義
⑨中庸
⑩清潔
⑪平静
⑫純潔
⑬謙譲。

ベンジャミンフランクリンは米国の金融市場関係者が最も愛する100ドル紙幣の顔だ。しかし今の米国とその市場には⑦~⑬の後半の訓戒は存在しない。そんな中、今日はポールソン財務長官は再びバンドエイドでしかない金融市場改革案を発表した。

だがいつまでもこんな表面的な修正案しか出てこないようではこの国は危うい。その意味で、ドラマJOHN ADAMSを沢山の米国人が見て、建国の父達の矜持へ立ち返る事を願うばかりである。

そういえば、日本では、来年から3年に渡り放送予定のスペシャル大河「坂の上の雲」の背景を、NHKは先週わざわざ「NHK特集」として紹介していた。

そもそもNHKがこの名作のTV化を計画したのは5年前。だが脚本を担当していた野沢尚氏が突然自殺。当時NHKの「プロジェクトX」が日本経済の復活に果たした役割に注目していた自分としては、その時に「坂の上の雲」が果たすであろう影響を想定しながら売れっ子の野沢氏の突然の自殺の不自然さを指摘した。

そんな紆余曲折を経ていよいよ撮影が始まった「坂の上の雲」は、不祥事に揺れるNHKとしては異常な力の入れようだ。ロシアの宮殿を借り切ってのロケを含め、何もかもがTV番組としては前例がない試みである。そして、この小説を読んだ人なら誰でも納得するはずだが、映像化されたこの小説が今の日本人に与える影響は恐らく大きい。

NHKの意図しているところが、日本人の自信回復である事は言うまでもないが、米国人がジョンアダムをみるべきように、司馬氏が示唆したように、日本人は日露戦争という大成功の体験からわずか40年で太平洋戦争の大失敗へ突き進んでしまった原因の分析も示唆することを期待したい。

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