アメリカ新素描 (日産センチュリー証券コラムから引用)
2月5 日作成
<アラブの春再び?>
今日はスーパーボールSUNDAYです。テレビのスポーツ番組は、「お祭り」に向け、昼間は普段やらない番組を流していました。例えばアメフト専門のFOXスポーツは、チェルシーとマンチェスターユナイテッドの試合を流していました。アメフトの音楽でプレミアリーグを観るのは違和感でしたが、3対0からマンUが3対3に追いついて米国人も満足したでしょう。
一方個人的に残念だったのは、その前のサッカー日本対シリア戦でした。決勝ゴールは日本のキーパーでは取れないでしょう。というよりあの場面であのシュートが決まるは奇跡に近い確率。米国相手に沢が決めた同点ゴールの様な神の意志を感じました。
やはりスポーツに神はいます。今のシリアは本当に悲惨な状態。今回は神は日本よりシリアを応援したのでしょう。そして来週はそのシリアに加えて不安定になってきたのがエジプトからイスラエルかけてです。
先週エジプトではサッカーの試合で70人が死ぬ大惨事がありました。最初はフーリガンによる暴動かと思ったのですが、先週のニューヨークタイムスには違うリポートがありました。
無くなった若者70人は、現在エジプトの軍事政権に対しデモを行っている人たちと同じグループ。混乱が予想されたその試合でも、武器を持った観客をそのまま通すなど、当局の管理はおかしかったというのです。そして70人が無くなった今、市民の怒りは益々軍事政権に向かっているようです。
一方そのエジプトを背面に抱えるイスラエルは、いよいよイランに対して何かを起こしそうです。先週オバマ政権のパネッタ防衛長官は、イスラエルがイランに対して軍事行動を起こす確率が高まっていると警告を出しました。
同じような話は昨年から燻っているのですが、政権切っての凄腕のパネッタ氏の警告は本物です。ただこれはイランに対してではなくイスラエルに対してです。イスラエルがどうするか。実はカギを握るは、イランよりもエジプトとシリアでしょう。
<スーパーボールSUNDAYとは>
特にチキンウイングはスーパーボールには欠かせません。そこでスーパーボールの頃にあちこちで行われるのがチキンウイングの早食い競争です。今年はその大きな大会で、あの伝説の日本人、小林尊君が圧勝しました。
小林君は、日本に住む日本人の方が考えるより米国で圧倒的な知名度を誇っています。もしかしたら、イチローなどの在米スポーツ選手を除き、この国で一番有名な日本人かもしれません。(おそらくダルビッシュと同じかそれ以上)
彼を有名にしたのはホットドックの早食いで何年も優勝したことですが、その後彼はこちらのCMにも出るようになりました。そして筆者が驚いたのは、彼は数年前には、スペシャルCMの主役に抜擢された事でした。
ご存じのように、スパーボールでのCM枠は一本で何億円もします。このスーパーボールのCMに次ぐ高額になるが、アカデミー賞と野球のワールドシリーズだといわれています。これらの番組のCMはどれも特別に作られます。小林君はそこでビールのスペシャルCMの主役になったことがありました。
シーンはスポーツバーが舞台。皆がビールを飲みながら興奮していると、そこに伝説の男が入ってきます。酒場にはおつまみのチキンウィングはフリーの看板がありました。あの“コバヤシ”が来たぞとの声で、オーナーは慌てて看板を隠すという笑いでした。
<一芸のお祭り>
実は小林君を話題にしたのはスーパーボールと無関係ではありません。それは小林君とスーパーボールの主役たちは、少なくとも、一芸に秀でた者たちであることです。
スーパーボールの直前には、市場専門チャンネルのCNBCでスーパーボールクイズなるものが毎回行われます。日頃は経済を追うポーターが、決戦を前にリラックスする選手を訪ねて簡単な経済クイズを出すのですが、これがまた面白いのです。
例えば今年は「ユーロはどこの大陸で使われている通貨か?」という質問に、南アフリカと答える選手がいました。また米国の国債残高の3択問題では、殆どの選手が16ビリオンと答えました。(三択は16million 16billion 16tllion)。
そして一番面白かったのは「ダブルディップとは何?」の答えがアスクリーム、格付け機関の「フィッツィー」は、「ビキニ姿の女性」という回答でした。
<アメフトはアメリカの縮図>
筆者がこのやりとりで思い出すのが、25年前、社会人一年目の時の研修です。入社した証券会社の新人研修では、当時京大アメフト部を率いて日本一になっていた水野監督がゲストで呼ばれました。そこで水野氏は「学生には頭を使ってプレーする事を禁止している」と、衝撃的な話をしていました。
京大生に頭を使うなと指導して日本一なったのです 当時はアメフトに興味はなく、正直何を言っているのか解りませんでした。でも今はこの意味がよくわかります。
アメフトではひたすら押し倒すオフェンスライン。ひたすら守るディフェンスライン。その後ろで決められたフォーメーションを実行するクオーターバック。この様に作戦を立てる人と実行する人、そしてそれを補佐する人達は別です。その区別がここまで徹底されたスポーツは他にありません。
そして頭脳役にとって必要なのは、一芸に秀でた個を動かす力。つまりマネジメントです。
アメフトの面白さを知ると、アメリカ社会の構造が見えてきます。これまでアメフトに興味がなかった読者の皆様も、ぜひアメフトに興味を持っていただきたいと思います。
以上