2012年2月18日土曜日

ドッラクの結果




しばし神は不思議な事をする。なぜホイットニーヒューストンは亡くなり、彼は(下のリンク)は死ななかったのか。

当初出回った彼の写真は誰も本物とは思わなかったという。だが本物だと分かり、巷は驚いているらしい。

http://www.dailymail.co.uk/news/article-2102461/Man-half-head-Carlos-Halfy-Rodriguez-explains-got-bizarre-injury.html


              アメリカ新素描 (日産センチュリー証券コラムから)        

                              212 日作成

 <予期された突然死>

 今日はグラミー賞の発表があります。元々興味はなかったのですが、昨日会場となるホテルでホイットニーヒューストンが亡くなり、注目することにしました。

 一年程前でしょうか、テレビで彼女を見た時、いつかこんな事になる予感がしました。絶頂期を知る者として、その時の変わり果てた彼女の姿に衝撃を覚えました。

 正式な死因は発表されていません。芸能サイトでは、彼女はバスタブで溺れるように亡くなり、部屋には処方された合法ドラッグが残されていたとのことでした。

 この悲報にダイアナロスは「今彼女のレベルのボイスはいない」と嘆きました。最近の曲は、どこまでがボイスで、どこからがコンピュータ効果なのか判りません。ボイスの時代を代表するダイアナロスは、後輩の死を悼んでいるように思えました。

 ところで、ホイットニーは、絶頂期の頃に始めたドラッグが、結婚後、コントロールできなくなってしまったと告白していました。やはりドラッグの怖さは本来のピークを越えてからやってくるのでしょう。ただ最近は最悪期は脱したと言われていました。

 ところがこの突然死。もしドラッグの副作用なら、一度ドラッグに浸ると元に戻るのがいかに困難か、改めて感じられます。

< ハイベータ経済とは >

 そういえば、彼女の姿に衝撃を覚えた頃、同じ危険を感じたのがリーマンショックからFEDの政策で立ち直ろうとする米国経済でした。理由は、レーガンによる規制緩和の頃から米国は経済も人も野球もドラッグに寛容になり、その結果が金融危機でした。ところが、その痛みを和らげる処置がまたもQEという麻薬だったからでした。

 ただその麻薬を打たなければ、痛みで死んでしまうかもしれないところまで追い込まれたのは事実です。よって今はFEDによる救済は正しかったがこの国の認識でしょう。ただどこまでが適量なのか。ホイットニーの悲劇を見るまでもなく、その見極めに大きなリスクを含んでいます。

 そこで思い出したのが、2009315日の60ミニッツ(CBSの看板報道番組)に登場したバーナンキ議長が使った有名な比喩表現です。

「愚かな隣人が酒を飲んで寝タバコした。彼の家は火事になり、火は隣の家まで飲み込もうとしている。隣人のあなたはどうする。」これは、危機を引き起こした金融機関を救済をする事に対する大衆の不満を和らげる効果を狙ったものでした。賛否はともかく、株はここから回復しています。

 ただその後も夏場になると、欧州危機などを材料に株は大きく下がりました。そして下がる度にFEDは追加のQEを出し、今のところ株価は維持されています。米国はこのパターンに慣れてしまった感があります。これは危険な兆候ではないでしょうか。

 そしてこの様な救済前提の株式市場が続く中、顕著になったのが「ハイベータ経済」ともいうべき現象です。

 米国では高感度で値動きが激しい株をハイベータ株と呼びます。投資信託の運用手法におけるアルファ/ベータとは少し違う意味で使われている様ですが、ここでは高感度の意味で「ハイベータ経済」を使う事にします。

 ハイベータ経済は、ハイベータ化した株式市場よって影響を受けると考えて下さい。これは、元気になったかと思えば急に落ち込む、まさにドラックの影響を受けた不安定な人を思い出せばいいでしょう。消費が中心の米国は、アジアやヨーロッパと比べこの傾向が激しくなっています。

 ではずっと「ハイ」ではいけないのでしょうか。これはアメリカ人がこの国の状態をどう考えるかに直結します。実はここが定まっていないのです。これが隠れたアメリカのリスクです。(欧州は諦めているという意味で定まっている)

 アメリカのピークはまだ先にあり、金融危機は途中の躓きだと考える人は、FEDの救済処置は早くやめるべきと主張します。この意見は共和党の支持者に多いようです。

 一方で FED関係者や一部のマーケット関係者は、QEはこれからも必要だと考えています。中には資本主義が幸福をもたらす時代は終わったという人もいます。

 つまりアメリカは、アメリカという一つの体を共有しながら、自分の体についての自覚症状が違う人々が混在している。これがアメリカという国の特徴です。

 そんな中、オバマ政権は米国の成長は終わったとは言いません。ただノーマルが変化したことは認め、社会保障と税金の在り方、さら規制強化を総合的に推し進めようとしています。

 そして意見の対立が波打ってくると、金融市場も影響を受けます。そこに欧州危機が加わり、市場が自分で下げ幅を加速します。これがハイベータの特徴です。

 

 <金融市場はゲーム感覚>

 一方で今の金融市場で重要なのは、逆をいくゲーム感覚だという点です。先週はその特徴が出ていました。

 例えばピムコと並ぶ米国最大手ファンドのブラックロックのフィンク会長が、「今は資金を全て株に投資すべき時」とのコメントを出すと、翌日CNBCでは、常連のファンドマネージャーが、「彼は(フィンク会長)2008年の6月に、リーマンは良い会社だから潰れないと言った。これは株の売りシグナルだ・・」と切り捨てました。

 同じく著名アナリストのバイロンウィン氏は、こちらも著名エコノミストで、万年米国経済に弱気な発言するNY大学のルービ二教授が株に強気なったことを受け、「彼が株に強気なったならここは株の売り時かもしれない・・」とコメントしました。

 このような発言が飛び出すのは、市場が既に恒常的飽和状態にあると考えられます。そしてハイベータと過剰流動性は「鶏と卵の関係」であり、ボラティリティの起点となるヘッジファンドの仕掛けも、終わってみると、同じレベルで凪に戻るパターンが続いています。
 この様な市場を個人投資家が生き抜くには、大局を知る知恵とゲームのスキルの両方を磨く必要があります。難しいですが怖がっても仕方ありません。ここでは読者である個人投資家が少しでもその感覚を養える話をしたいと考えています。