2007年7月24日火曜日

ギルド時代とフィランソロフィー

目の前の相場への対応に疲れた時、事象から少し離れてもう少し先の時間のイメージを養う・・。その意味で日曜日のNYTIMESの記事は丁度好い気分転換になった。特集記事は米国における「ギルト時代」の主役たちと現代の「勝ち組」の比較。その代表として「ギルト時代」からは鉄鋼王のカーネギー、そして現代からはCITIグループを作ったSワイル前会長が比べられている。御存じの様にワイル会長は今はCITIグループ経営の第一線からは退き、カーネギーホールの名誉会長としてその運営に関わっている。記事の冒頭ではワイル会長の資産は$1Bを超えるが、それとは別にカーネギーホール関連とフィランソロフィー活動に既に$500Mの寄付をした事が紹介されている。

ところで今回の記事で目を引いたのは1850年から1900初頭までの「ギルト時代」に生まれた米国の資産家群を、現代の英雄のビルゲイツやバフェットの資産と特殊な計算を用いて比較している点。一部を紹介すると、圧倒的首位はやはりロックフェラーで、2位が鉄道王のバンダービルド。そしてビルゲイツが5位に入り、6位がカーネギーと続く。Hフォード等が10位前後に顔を出してバフェットは19位だった。そんな中でJPモルガンが30位前後と意外に低かったのは当時の金融業の位置付けが分かって面白い。

記事の内容は多岐に渡っている。まずはカーネギーとワイル氏の共通点として、ワイル氏が剛腕で鳴らした一方で社内のマネジメントでは非情なコストカッターだった事が、カーネギーが当時傘下の労働者の福利厚生を絞りあげた経営者として有名だった事が似ている点。一方でカーネギーは相続税に関しては政府が全額没収しても異を唱えないという稀有な立場を貫いた面に焦点を当てている。要するに、王監督の言葉である「元来ホームランは打てる人と打てない人がいる・・」ではないが、富は造れる人とそうでない人がいて、彼らの言葉を借りると「WRIGHT TIME、WRIGHT PLACE」で富を作る運命に生まれた人は、途中非道と言われても徹底的に稼ぎ切り、そして最後はそれを潔く世の中に返還するという哲学あったというのである。

その意味では記事は現代の「勝ち組」がどちらかと言うとSTOCK OPTIONなどの株とそれに付随したオマケ(時にデタラメの詐欺であっても)の効果で富を築いただけの小粒化を皮肉っている。また、剛腕のワイル氏がCITI帝国を造るために最後の懸案だったグラススチーガル法も、その廃案を審議した議会も、最後にサインしたクリントン大統領も廃案を前提にその剛腕でどんどん物事を進めたワイル氏に前には何の障害にもならなかった事実を運命的に表現している。(以上NY TIMES参考)

ところで、グラスステイーガル法は20年代のGILT時代の後に生まれた当時のバブル現象と、その背景の行き過ぎた金融規制緩和が大恐慌を呼んだ事を反省して1933年に制定された。しか法案がワイル氏の剛腕で消滅、WSは新たな時代に入った訳だが、ただその後に起こった事象は今回のサブプライムファンド話も含めて当時の再現の可能性がある。また、記事が指摘するように、僅な資産家が圧倒的な富を握る現在の超格差は丁度ギルト時代直後のバブル時代とも重なっている。

そんな中、ワイル氏以外にもビルゲイツやバフェット、そしてソロスなども取りあえずは過去のパトロンの事例に沿ったフィランソロフィーをしようとしている。だが今の勝ち組の中には、彼らとも違い、その昔に物を作って世の中を豊かにしたたギルト達とも違うゲーム時代の勝者がいる。そして中にはストックオプションのインチキ組もいる。個人的にはここに今のバブルの本質を感じる。

いずれにしても歴史が繰り返されるかどうかはわからないが、何かの衝撃を経てこの時代の後に労働者への回帰時代が始まれば、それは歴史は繰り返された事になろう・・。

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