2015年9月4日金曜日

チカゴの断髪








NHKの番組で、維新後、日本が西洋列強に馬鹿にされないためにどうやってちょんまげ文化をやめさせるか、木戸孝允が苦労した逸話を紹介していた。

木戸は、明治天皇がちょんまげをやめれば国民も止めると考えた。しかし天皇の周りは、伝統を重んじる貴族が固めている。中でも倒幕で力を借りた岩倉具視は急先鋒。彼はアメリカへちょんまげと袴で全権代表として渡った。

以前ここで岩倉使節団が、シカゴの先物取引所を訪れた最初の日本人であることを紹介した。(訪れたのはCBOT、岩倉使節団のころはCMEは存在していない)

当初岩倉は、自分の姿をみたアメリカ人が喜んでいるのをみて、日本の文化が評価されていると勘違いをした。しかしシカゴに留学していた息子から、アメリカ人は本当はバカにしていると聞かされた

戦後、日本にアメリカが浸透し、CHICAGOは「シカゴ」になった。しかしここでの発音では、シカゴではなく、「チカゴ」のほうがまだよい

その意味で、思い込みが浸透するまえ、明治になったばかりの日本人にはフレッシュな聴力があったようだ。以下は岩倉使節団に随行した佐々木高行氏の日誌

「 チカゴと云える所に著きたる頃、大使も何時となく断髪となり、衣服も是れ迄と違い、洋服となれり何分外国風に無くては外人に軽蔑さらるるとの事にて、公達方より其の旨申上ぐる事などより、断髪改服の運と聞けり」     土佐藩、佐々木高行日記より・明治5年1月14





ところで、本日のECBのドラギの「欧州統合は経済効果だけでなく、平和を前提にした政治の安定が目標」は、大陸欧州エリートの本音だろう。ならシステム危機がないこの時点で米英と感覚が違って当然

そしてWSJの記者から質問、「この時代2%のインフレ目標はそもそも目標として高すぎるのではないか。その(高すぎる)目標に向かって、何でもありの政策は、それ自身に無理はないか」を一蹴したドラギ

ここは、これまでどおり資本主義(かなり曖昧)を守るために戦争を厭わない英米と、もう戦争をしないために(今のところ)資本主義の終焉を厭わない大陸欧州の違いを感じる

17世紀以降世界をリードした西洋白人文明。しかしカソリックの本流と、プロテスタントへの違いは、経済政策では鮮明になってきたと思う

一方そもそもギリシャ(東ローマ)がローマに助けをもとめて十字軍を編成されながら、イスラム教VSキリスト教の対立の歴史で、ギリシャ正教はしぶとくロシアまで拡大した

そのまま現在に至り、伝統的な中東と大陸欧州の関係に絡むプーチン。それを眺める英国。覇権国家アメリカは、どの材料にどう対応するのか。とりあえずオバマ政権のイラン核協議妥結は本日信認が担保された

いずれにしても、これからの鍵はやはりセム・ハム・ヤペテを認めない中国。そんな中、NYタイムス東京のMartin Fuckler氏のツイートが興味深い。底流には岩倉具視のちょんまげと同じ、西洋人の日本人への皮肉を感じる

Japanese are least likely to discuss current events among adults polled in eight countries:

確かにFACEBOOKは食い物の話題が中心のようだ。まあこれは日本が平和な証拠。逆に言えば、そういう場で激論をしないのは日本の品格かもしれない。ただこれだけ世界情勢の変化している中、識字率と偏差値の高い日本人が、時事問題を論じないのは、、

いずれにしても、安倍ジャパンは、どちらかというと大陸欧州に近い国民を抱えながら、英米のシステムを追従中。5000円以上もするピケティの本が13万部も売れる国で、安保関連法案や、憲法改正は至難の業だ

もし可能なら、それは神の国の奇跡なのか。それともちょんまげマインドの結果なのか。個人的にはどちらでもいい。ただルビコンを引き返すなら、一度完全に川を渡ってからの方がよい
でもソレをやろうとした高橋是清は殺された

彼は、日露戦争ではGDP10倍の国債を売り、日中と太平洋戦争では、ブレーキをかけるほうに回り、軍の怒りをかって殺された

日本は単一民族で、民主主義のブレーキが効き難い。だからこそ時の指導者の相場観が重要。そこでは変節はかまわないはずだ。でも川を渡っている途中で止まると、その戦は負ける

高橋是清は、アメリカを肌で知り、スクールスマートではなくとも、西洋の白人が主導権を握る当事の国際情勢のなか、日本がその時々でどう変節すべきかの相場観を持っていたと思う。ただしあのときにはもう遅かった。死ぬことで変節の重要性のメッセージは残した


いろんな価値観があるアメリカは、二大政党制が順番に変節の役割を演じている。バフェットの言う「この国は、これまで、右OB 左にOBを繰り返しながら結果的にフェアウェイの延長のピン(国益)の目標に向かって来た・・」はその通りだと思う

では次は? なんとなくそのパターンも終わる予感。ヒラリーは、共和党の攻撃で、バイデンが出馬すれば危ない状況まで追い込まれた

二人の間で様子を見ていたオバマは、なにやらバイデンに傾きそうな雰囲気。バイデンはオバマが敷いた米国のリベラル化を引き継ぐはず。 

一方共和党では、本日トランプはたとえ大統領候補になれなくとも独立候補としては立候補しないことを宣言(文書に署名)。バイデンが民主党の代表になれば、共和党はフィオリーナにも可能性が出るが、まだ予想がつかない・・。





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