ちょうど日本で公開中の映画「タイタンの戦い」を観たなら、次はレンタルビデオでブラッドピット主演の「トロイ」を観ると良い。共に主神ゼウスが関わる。そしてここまでは神話の世界。そのあとは史料として公認されているヘロドトスの「歴史」から「300」がある。これは紀元前400年代、国王レオ二ダスに率いられた勇猛な300人のスパルタ人(スパルタ教育などの語源)が、20万のペルシャ兵を迎え撃った逸話の劇画化だ。そして最後はオリバーストーン監督がコリンファレルを主演に据えて撮った「アレキサンダー」で極まる。紀元前300年代、ついにアレキサンダー大王が宿敵ペルシャを打ち破った事でローマ帝国へと続く西欧の白人文化が世界を統治する正当性が開花した様が実感できる。
そして今、ギリシャでは40代でリタイアしそのままエーゲ海での釣りざんまいが庶民の権利になった。だがそのギリシャでの暴動をみると、民主主義が行き詰まる瞬間とは、政府に問題があるわけではなく、劣化した国民を政府が制御できなく瞬間だという事がよくわかる。暴動を取材した米国人リポーターに怒りをあらわにした民衆が叫ぶ。「オレたちは絶対に国の緊縮法案には従わない。そんなものは絶対に阻止してみせる・・」続いてリポーターがたずねる。「ならどうやって国の借金を返済するのか・・」それを聞いた民衆は怒鳴り返した。「そんなもん知るか、俺たちには関係ない・・」
数々の英雄銀河伝説の果てに、今我々が観ているのはギリシャという国家物語のエピローグ(終局)だろう。ただそれはアジアより先に発展した西洋文明社会が抱える共通の未来図かもしれない。そんな中で欧州共同体の存続はドイツの健全性だけが頼りになった。嘗てヒトラーはゲルマン民族(ジャーマンの語源)の優秀さを前提にしていたの有名だが、2度の敗戦とその賠償金の苦難を乗り切った今のドイツ人の健全性をみる限り、彼(ヒトラー)は正しかったと言わざるを得ない。
ところで、この様な欧州の状況を見て世界の株式市場が再び揺らぎ始めた。米国の金融関係者は当初この問題を軽視していた。なぜなら米国のギリシャへの投資は限定的で、何よりもギリシャのGDP(国民総生産)はコネチカット州と同じレベルだからだ。だが先週の金融市場はそんな米国さえも揺さぶった。ダウが瞬間1000ドルも下がったのだ。1000ドルという値幅に関してはいろいろ言われている。だがその本質は米国はあまりの衝撃にその背景を人為的ミスやコンピュータによるシステム事故として逃げようとしているだけだ。
そしてこの米国の誤算は今後の世界の混乱の予兆のように感じられる。まず今問われているのは一昨年の金融危機の原因としての民間の負債(金融機関のサブプライム)の問題ではなく、国家財政の問題である事。そしてそれはギリシャの様な過度な福祉と怠け者の国民性という合併でなくとも、様々な原因で先進国全体に拡大している。
そもそも米国には健康保険制度がなかった様に、これまで過剰な福祉制度はなかった。だがオバマ政権では大きな政府が肯定され、何よりも金融危機脱却のために民間の膨大な負債を政府が肩代わりした事実が課題として残されたままだ。この点についてこれまで回収した救済資金で利益が出たと政府は言うがこれはまやかし。確かにウォール街の金融金融機関は救済資金を金利をつけて返したものの、その数倍の救済資金がAIGとファニー・フレディーの(巨大住宅公庫)に投入されたまま回収の見込みが全く立っていない。そして何よりも米国は単独超大国の強みで中央銀行に紙幣をばらまかせた。結果FEDの総資産(通貨量)は肥大化したままである。
本来ならこの処置でその国の通貨は暴落する。だが米国は単独超大国の実績と先進国全体が弱体化する中での相対的強さでドルの暴落を免れている。この間FEDは口先では元の姿に戻すと言いながら全く実行する気配はない。当然だ。今元に戻したら再び奈落の底に落ちるからだ。つまり米国の最大の問題は、再び成長するための手段を結局は「借金と消費」の組み合わせという金融危機を引き起こした体質に頼らざるを得ない事であり、またそれを支えているのは嘗ての様な住宅の値上がり益を使った民間の活力ではなく、今は国家(中央銀行の政策)による直接のサポートである。
今のところ米国がその体質を維持するために発行する米国債を世界は買っている。特にギリシャ危機などがあると、行き場のなくなった過剰資金が一気に相対的に安全な国の債券に流れる。だがいつまでの相対的な有利だけに頼る事は出来ない。金価格(ゴールド)が高止まりしているのは、いつか米国の紙幣や国債の信頼も揺らぐと思われているからだ。これも当然。なぜならギリシャも米国も種が違うだけで共にキリギリス国家だからだ。いずれにしても、ギリシャ問題は、近未来のこのクライマックスに向けて時計の針が動き出した瞬間と考えている。
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