人間はやはり愚かだ。なぜなら、ユーロ通貨発足に関しては、一つの中央銀行に対し、16の財務省と、全く違う税制が乱立する形態がそもそも無理であったと今になっての悲観論が出ている。ただこの愚かさが人間の証拠である。
ところで右肩下がりの時代の欧州の纏まりの無さは、米国発の金融危機と比べても異質性が浮き彫りになる。今日のNYTIMESには日曜夜のドキュメントが紹介されている。結論からすれば欧州はこの段に及んでも自分達では団結する力を持ち得ていなかった。記事ではガイトナー財務長官とオバマの強制的な力で何とか救済案をあの形に持って行った事が鮮明になった。(オバマのメルケルへの電話はかなりの内容だったとの事)。
そしてこの事は救済案発表後もユーロ通貨売りを継続する欧州系ヘッジファンドには自明の理であり、彼等を金融危機で米国のダウが6000台に突っ込む中、自国の株式市場で空売りを仕掛けながらもどこかでの米国の復活を疑わなかった米国人ヘッジファンドと比較すると、、国ではない、つまり愛国心を前提しない形態を背景とする通貨の脆さが際立つ。
恐らく今オバマとガイトナー財務長官が一番恐れているのは、この欧州という形態の無責任さが連鎖として米国を襲う事。米国政権は米国は仕切れる。実績としてここまでの回復は見事だ。だが国家でもなく、そもそも当事者の欧州人自信が最後までコミットするかどうか判らない形態の崩壊による余波をどうするか。まだソノ策はこの二人も持ち得ていない様子である。
そしてこの新しい危険を察知し、先週シカゴの先物市場を使ってすばやく逃げたのが「米国の黒鳥」である。黒鳥は英語でブラックスワン。WSJ紙によると、逃げたのは「黒鳥理論」で有名なナシームニコラス氏をアドバイザーに持つヘッジファンドのUNIVERSAだった。そして彼らのオプション注文を切欠に、自己のポジションを守るためにバークレイズ銀行が続いて大量売りを出したという。1000ドルの急落はこの直後に起こった。
実はナシームと彼の著書ブラックスワンの事は以前ここで触れている。(6/12/2009の「10年に一冊の本」参照)そして究極的な問題は、今の米国には彼らの様な株を下げる切欠をつくる存在を、その本質的な原因とは無関係に否定しかねない雰囲気がある事だ。
嘗ての米国では考えられないが、事実としてこの国は2008年の金融危機で空売りを規制、そして今は金融改革法案の審議で様々な金融取引に規制がかかろうとしている。その上で株を下げる要因ならなどれも規制してもよい風潮は議員からは十分感じられる。本質的な問題に解決策が見いだせない時、人間社会は誰かに責任を負わせるのは常だ。ナシーム氏がリーマンの元社員から脅迫された事実があるように、自己中心になった国民はなにも欧州だけの問題ではない・・。
(参考)
http://online.wsj.com/article/SB10001424052748704879704575236771699461084.html?mod=WSJ_hp_mostpop_read
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