2010年5月14日金曜日

虚業人の市場原理

三大ネットワークのNBCチャンネルとウォールストリートジャーナル紙が共同で行った調査で非常に面白い結果が出た。それは現在の米国人の大手企業に対するイメージ評価だ。悪い代表は証券会社のゴールドマンサックス。GS(ゴールドマンサックス)は僅か4%の支持しか得られなかった。銀行のCITIも低い。未だに政府の厄介になっているCITIは10%の評価だ。また原油流出事故を起こしたBPは11%。そして注目の日本企業、トヨタは38%だった。ここでは詳細は書かないが、BPの評価がGSより高いのはBPの本性をまだ普通の米国人は知らない証拠。そんな中で一般の米国人からのトヨタの評価は鳩山政権の国民評価よりも高いのは注目である。

さて、自業自得とはいえ証券会社や銀行といった金融機関はここまで憎まれている。これは、ここで昨秋公開された映画に因んで金融機関をPUBLIC ENEMY NO1とした事が違っていなかった事を示している。(11/13/2009、PUBLIC ENEMY NO1参照)そして金融関係者はこの状況を甘く考えるべきではない。

ではなぜここまで嫌われるのか、まずは税金で救済されながら高給を貪ったという大衆心理だ。ただ大衆心理は変化する。彼等の怒りは自分が同じ様に救済されたと感じれば終わる。だが本質は別だ。それは神の意志であり、簡単に言うと市場原理である。

そもそも金融関係者は自分では市場原理に詳しいと思っている。だが金融はその原理から実は一番かけ離れた位置にいる。別の言い方をするとそれがTOO BIG TO FAILだ。具体的には大手金融機関に勤めるトレーダーは最悪がクビ、一方で最高は青天井の報酬である。これを専門用語ではただ貰ったコールオプションと言う。そして彼らが投資に失敗して会社が傾けばその会社(銀行・証券)は税金で救済しなければならない。

それに比べ、世の中には真面目に働いても一回の天候不順で作物が全滅する農家や、報われない新商品の開発に命を掛ける技術者が大勢いる。彼等の方がよほどリスクを取っている。だがそのリスク・リターンは割に合わない。ならばだれもが虚業である金融で働いた方が安全だと考えるだろう。

ただ農家や技術者の様な実業でリスクを取る人々があまりにも報われないと何が起こるか。当然ながらその分野を支える人が減る。するといずれは技術が廃れ、もしかしたら食べモノがなくなる。一方でリーマンショックで一旦は流動化した金融の人材は今は結局どこかに納まっている。要するに減っていないのだ。ここが市場原理とかけ離れているというい所以。だが金融は本当にそこまで必要か。個人的にはそうは思わない。市場原理を宇宙物理の範囲と信じるならば、この矛盾はいずれ必ず調整されるだろう。

そしてその過程に入った今、誰がなんと言おうと先進国と言われた国々は次々に社会主義化している。この米国とて同じだ。その昔マルクスの欠陥は、彼は資本主義の仕組みをそのままに、経営を国家に引き継がせた事という意見があった。個人的にはそのマルクス論には同意しない。だが今起こっている現象はまぎれもないソレだ。つまり失敗した民間に変わり、市場やビジネスに国家が関わった。結果、不公平感や矛盾が生まれた。中国の園児殺害もギリシャの暴動も自己中心的被害者意識は同じである。そしてその感情はこの構造の中で生まれた。

この本質的な問題が世界の金融市場に牙をむくのはもう少し先か。だが必ずそれはやってくるだろう・・。











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