2008年10月14日火曜日

<今日の視点>初めての冬

最近までのフリードマン(サッチャーやレーガンの経済政策を導いたノーベル経済学賞受賞者)全盛時代に異端児扱いされたクルーグマン氏がノーベル経済学賞を取った事と、金融救済案が当初ポールソンが主張した不良債権買い取りから一気に180度転換して公的資金投入へと突き進んだ背景には関連があるのか個人的には分からない。ただ、救済案が議会で可決されてから更に下げ足を速めた株を見てブッシュ政権が遂にギブアップした姿は、米国が初めて何かに敗北した象徴であった事に間違いない。よって、今の株高は未来への光ではなく、昭和20年の8月、東京大空襲から沖縄戦、更に広島、長崎に落ちた原爆を見て日本国民が味わった震撼が敗戦の事実を受け入れた事でとりあえず緩和されたあの局面である・・。

さて、そのクルーグマン氏と久しぶりにCNBCで元気な姿を見たジュリアンロバートソン(90年代にソロスと並び称されたヘッジファンドの重鎮)が同じ事を言っている。それは「問題はこれから」という事だ。そしてジュリアンロバートソンは90年代の日本の苦境を引き合いに出す愚かな米国人アナリストがこれまで誰も言わなかった事を言った。それは、当時日本には巨大なSAVING(普通預金)があったという事。よって彼は明確な表現は避けたものの、日本の90年代に比べ、米国の今後の方が厳しいとの見方をしていた。私の記憶では彼は90年代に日本の巨大円債市場に売り向かい、そして敗れた。だから彼はこの本質に最初に気づいたのかもしれない。そして巨大なSAVINGではなく、巨大なレバレッジを築いてしまった米国人は大半がその事にまだ気づいていない・・。

まだ住宅バブル真っただ中の2004年から米国の貯蓄率はマイナスとなった。これは大恐慌結果として貯蓄率がマイナスとなった30年代の当時の米国と比較しても、今の米国人の抱える根本的問題を代弁する。それは何年も異常気象が続き、生まれてから全く冬を知らないまま大人になったキリギリスが初めて冬に直面する様なものだ・・。

いずれにしても敗戦後の占領政策は苦い。今ポールソンが発表している公的資本注入に伴う銀行管理への大筋は日本の模倣。これは太平洋戦争の敗北と、そして90年代の金融自由化戦争では負け組みと言われた日本と立場が入れ替わった瞬間に今我々は直面しているという事だ。ただその事実をどう使うか。残念ながら日本でその使い方を知っている政治家や経済人の存在を私自身は知らない。むしろイソップ童話の蟻とキリギリスが日本だけ最後の終わり方が違うという現実がここで不気味な予感を呼び起こす・・。

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