2008年10月16日木曜日

<今日の視点>不思議の国アンクルサム

ヘッジファンドからの資金引き出しが話題だ。ただそれはピークに近い。一方ミューチャルファンド(投資信託)では先週の1週間だけで前代未聞の65B(6兆円)が流出した。CNBCに登場する多くのゲストはこれらの現象を受けて、「巨額の資金がサイドラインにあるという・・。」しかしこれは真っ赤なウソだ。サイドラインには金はなく、現金化した資金は次から次へと消えていく。これが金融資産6000兆円、デリバテイブの総額が5京3000兆円という新次元の世界で起きているマネーの収縮現象の現実である。

そもそもこの現実は大恐慌どころか、おそらく300年の近代経済史上で初めて起こっている大バブルの崩壊である。ひとつのヒントは1930年の大恐慌は米国民の一人一人にまだ健全性が残存していた頃の話。それはSAVINGレート(普通預金残高)で判る。SAVINGレートが大暴落の結果マイナスになった大恐慌当時と、2004年の頂点の手前でSAVINGレートがマイナスになった事を全く気にしなかった「不思議の国のアンクルサム」では全く同じ米国人でも異質な人々である。

そして、世界もまだ未来の超大国への位置づけだった1930年代の米国と、世界全体が米国化してしまった後の今の米国の挫折を同じ次元でみる事はできない。その一例は日本株。日本株はレバレッジが30倍以上だった米国と同じ比率で下落している。日本企業の低レベレッジからすれば、最初に買い直されなければならないのは日本株だ。しかし日本人が米国化してしまった事で、同じレベルで震撼しているとそのチャンスをすくってくるのは米国のプライベートEという事になろう。

日本の金融機関はサブプライムで傷が少なかった。だがその政策的持ち株は金融機関としては世界で突出している。そしてヘッジとしての巨大債券ポートフォリオ・・。これは経済が困難な時期には債券ポートが利益を出す事で効果があったかもしれない。だがキャッシュクランチに落ちた世界の狼たちがこれから円債に眠る巨大資金をめぐり動き出す。すると、どんな形にせよ円債市場から資金が流出、円金利の上昇は避けられないだろう。

その際金融当局からまだ銀行勘定では「債券先物の買い」が出来ないなどという世界的にも信じられない足かせを嵌められた日本の金融機関は実は一番苦しい事になってしまうのではないか。そして、それが日本国民の不幸として襲いかかる・・。

いずれにしても一人一人が相対評価で慣らされてしまった時代はサバイバルの時代の意味がそもそも理解されているかどうか疑問。個々の健闘をお祈りします・・。

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