2009年10月23日金曜日

大統領令の乱発

本日遂にオバマ政権は「大統領令」(EXECUTIVE ORDER)として、政府からの救済資金が入っている金融機関に対し、役員のサラリーカットを要求した。ただしこの大統領令の強制力は曖昧だ。他の法律との関連を含め、時間が立たないと結果は見えない。そんな中で判明したのはオバマは過去の大統領とは比較にならないペースでこの大統領令を発令をしている事。WIKIで調べると、ニクソンから親父ブッシュまでの大統領が任期中に発令した大統領令の数は概ね5以下。それがクリントンで10に増え、イラク戦争に突入したブッシュになって60と急増した。ところがオバマは政権は既に17の大統領令を発令していた。

恐らくこの事が語るのは米国社会の変化だろう。そもそも法律は完全ではない。そんな中で皆が何かを我慢した戦時中ならともかく、冷戦後の米国社会ではグレーをいかに突くかという感覚で多くの民事裁判が争わた事は言うまでもない。またその時代に生まれたおびただしい弁護士の数。近年は誰の為の裁判なのかが判らない時代になっていた。そして社会がここまで変化した後、民主主義のもとで大統領も法律に従う以上は簡単には社会は動かない。その結果、近年この様な大統領令が乱発されていると考えるのが自然ではないか。だがどんな命令も乱発すると権威が薄れる。このペースだと大統領の権威そのものに疑問符が付く可能性を感じる。

そしてそんな社会を反映しているのが今の政権構成である。丁度沖縄問題で来日中のゲーツ国防長官は例外として良いサンプルである。ブッシュ政権からの唯一閣僚として再指名された彼は良くも悪くも前政権の特徴を引きつぎ表情や言葉に裏を感じさせない人だ。その結果「日本が約束を守らないなら沖縄を返さない・・」と、国際法上は意味不明、ただ心情的には米国の本音である事を素直に表現していた。

米国に「沖縄を返さない」などと言われて騒ぎにならない今の日本に対して言葉もない。まあそれはさておき日米会議で長官の隣に座ったルース新大使は真にオバマ政権が送った大使らしい特徴を備えている。彼は着任早々に広島の原爆跡地を訪問した。そしてそれに同行したNHKの番組の中で原爆の悲惨さを語るシーンで涙を流していた。だがシリコンバレーという激戦区で弁護士として辣腕を振るった人としては個人的には違和感を感じる。

ところで、過去の大統領令で今の米国が最も卑下している命令はフランクリンルーズベルトが日系と独系の米国人を強制収容所に移動させた命令との記述を偶然発見した。この背景は人権もさることながら、現在の米国と日独との関係も考慮しての事だろう。そして今、オバマ政権が日独に派遣した大使は共に人間の感情や法律を巧みに操るビジネスで百戦錬磨の経歴を持つ人々だ。ルース氏については前述したが、独大使のマフィー氏はゴールドマンで世界中のインベストバンキングの案件に携わった経歴を持つ。そしてルース氏が歴代の民主党大統領候補に深く関わる一方、フィリップ氏はGSを退職し、先の大統領選では民主党の選挙資金対策総室長を務めている。

要するに大統領令が強欲な金融機関にこの様な命令を出したとしてもこの政権はそのウォール街の金融関係者や弁護士等のデイールメーカーで成り立っていると言っても過言ではない。そしてこの命令を出したオバマ本人は近々ニューヨークへ出向き、そこで中間選挙に向けた民主党の資金集めのデイナーパーティーに出席するとの予定が発表された。そして一人2500ドルというそのパーティーの出席者は殆どが金融機関の関係者になるらしい・・。





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