2011年11月16日水曜日

国益の正体、(マネー原理プロから)


リーマンショックのころ、米国の財務長官だったのはゴールドマンサックス会長から抜擢されたポールソン。彼はブッシュ政権が残り2年になったところで財務長官になった。

クリントン政権の財務長官でゴールドマンでは先輩だったルービンのようになる?。でも残りの任期は2年。わざわざGSの会長を辞める価値があるのかと思った。その時ささやかれたのが民間から公務員になった人の特例。立場上彼はGS株を売る事になったが、数百億円になった売却益には税金がかからなかった。

そして財務長官になったポールソンがやっていたのはサーベイ&オックスレイと言われた法案を廃止するようにあっちこっちで働きかけることだった。理由は、その法案(規制)のせいで、米国の競争力が殺がれているということだった。彼の熱心な活動はベアスターンが崩壊する少し前まで続いた。

こうみるとポールソンは運がいい人だ。ゴールドマンが上場する前に会長だったルービンやコーザインは彼ほどの自社株利益を手にしていない。ただポールソンの運がよかったのは金の話ではない。彼の運は彼が財務長官だった時にリーマンショックが起こった事。ここで彼はヒーローになった。

だがもしリーマンショックがもう少し後で起こったとしよう。リーマンショック後、学者は銀行証券の垣根を分けたグラススチーガルを廃案したクリントンやグリーンスパンを非難した。ならば、もしポールソンが膨大な投資家の損害の上に成立した企業統治・規制強化の法案を僅か数年で廃止することに成功し、その後でリーマンショックが起きていたら、彼はヒーローではなく愚かな長官として歴史に刻まれたかもしれない。

今米国では同法案を廃案にする声はない。人の運命とは僅かの差で決まる。ポールソンとMFグローバルを潰してしまったコーザイン。運命の差は宇宙の支配者とまで言われたゴールドマンでも起こった。そして日本でもサーベイ&オックスレイ法の話が出た。NHKクローズアップ現代で、オリンパス事件の再発を防ぐためにはどうすべきかという問いに対し、エンロン事件を受けて米国では「立派な法案」ができたと、ゲストの弁護士が答えていた。だが、人間の変わらぬ性の前に、法案を過信するのは意味がない・・。

ところで、リーマンショック後に成立したドットフランク法、ボルカールールなどを具体的に決めていく役所のCFTCの予算が30%以上削られることになった。レーガン以降の規制緩和の中、金融資本市場の管轄当局のCFTCやSECの慢性的な予算不足と人員不足は明らかだった。そこにリーマンショック。議員は次々に規制強化の法案を決めたが、法案を具体化し執行していくのは彼らである。その役所の予算が3割も削られるのは冗談に等しい話だ。

つまり、今の米国は他国にはいろいろ口を出すが、実態はこういう国である。そして昨日話題になったバフェットのIBM株の購入に関しても、SECはバフェットに特別ルールを与えていた事が分かった。

SECの特別ルール(F13 条項)は、株主利益や国益を毀損する可能性があるとSECが判断した場合、投資家としての企業(この場合バフェット)は株買い占めの公表時期をずらしてもいいというルールである。SECはバフェットにこの特別ルールの適用を許した。(TOO BIG TO FAILのラスコーキンが今日のNYTで紹介)

一方今日は米国の国会議員のバランスシートが紹介された。リッチな議員の代表は大統領候補だったケリー(200億円)や、事業で成功したアイサ氏等(300億円)。そしてその国会議員の多くがインサイダー情報で株を買っている実態を60ミニッツ(報道番組)が報道した。(これは株の下げ要因になる可能性あり)

「インサイダー疑惑が判明した議員を全員を刑務所に送る」と公言しているペリー候補。彼の巻返しがあるか興味深いが、究極は現下院銀行委員長のバッカス氏が、リーマンショック前にS&PのウルトラショートのETFを70ドルで購入し、TARP法案の成立前に130ドル売り抜けていた事だろう。今日はウォール街に対する若者の抗議活動が一斉に排除されたが、これでは米国のメキシコ化の流れは誰も変えることはできない。だがそれがこの国益と決まったならそれはそれでよし。その時は添付のチャートが上に突き抜けているはずだ。

その昔日本では興銀と都銀連合更に野村と4大証券が大蔵省と組んで日本市場を管理していた。その後、クリントン政権に「株式市場を管理したりマニピュレートするのは悪い」と言われた。日本は慌てて米国流に合わせた。だがその後日本市場はどうなったか。そしてその間に米国自身は何をしていたか・・。TPPが始まったなら、日本はオリンパスだけで自虐的になっている場合ではない・・。


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