2011年11月19日土曜日

米国のTPP (真マネー原理プロから)

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今日のNHK特集で、冒頭、榊原英資氏に、「慌ててTPPに参加したのは大間違い、民主党の命取りになる」とまで言われてしまった政権。一方(TPP賛成派)田中均氏もそれなりの経験者のはずだが、市場を通した外交が相場とおなじ勝負だと考える榊原氏と、外交は性善説を前提にした制度づくりだと考える田中氏の差がでていて面白かった。

ここ数日注目してみたが、ニューヨークタイムス、ワシントンポスト、はオバマのアジア訪問の記事の中でTPPを殊更とり上げなかった。一方エコノミスト誌は「米国では誰も知らない」と注釈を付けた上で、日本がここまでTPPに振り回されている事を触れ、一方で日本人の唖然とする話も示唆。同誌は、今TPPを米国議会にかけた場合、民主党議員の反対で、TPPは米国で成立するかどうかは分からない話だと言っている・・。(個人的にはそれは神の助けと考えるが)

まあ古川議員の理想「日本が米中の間に入ってリーダーシップをとる」いうことが実現可能かどうか。財務相出身の榊原氏は、市場を通してその可能性がゼロに近いと感じ、外務省出身の田中均氏は、過去の「日米交渉」で、日本は言われている程損をしたのかと反論。個人的な答えとしては、野田政権が、オバマ政権がTPPで本当に狙っているのが何かを知って対処することを願うだけだ。


そこで、許可をもらって今日は11月13日の日産センチュリー証券のコメントを一部抜粋した 。日頃ここでは書かない重要な相場へのヒントは、同社に口座を開けば読めます。

「抜粋」

  ここで、日本でここまで白熱したTPPについて、米国の反応を紹介します。まず今の米国でTPPという言葉を聞くことは殆どありません。先週は国際ニュースに精通する金融市場関係者にも聞いてみました。20人以上に「TPPという言葉を聞いた事があるか?」と尋ねました。全員がNOでした。これが米国におけるTPPの実態です。

 次に、TPPに関する日本での議論の矛盾点を触れます。まず米国のGDPの大きさを理由に交渉参加の議論をするの正しいとは思えません。理由は、米国のGDPの内訳をみると76.6%はサービス産業であり、22.2%が第二次産業、そして日本が恐れる農産物は1.2%です。(CIA)
 
 つまり、米国は輸出入ではGDPの8割を占める消費が輸入を促進する立場にあります。では1.2%の農産物の輸出を拡大するために更に貿易赤字が膨らむ可能性があるTPPに米国が固執する必要があるのでしょうか。答えはオバマ政権は最初はその気はなかった。だが中国の勢いと日本での議論の沸騰をみて、ここにきて方針を変えたというのが筆者の感想です。

ではもう一度に基本を確認しましょう。そもそもTPPを言いだしたのは、オバマ政権ではなくブッシュ政権です。米国には自由貿易協定の前例としてNAFTA(北米自由協定)がありますが、このNAFTAも成立したのはクリントン政権ですが、始まりは共和党のレーガン政権でした。

 このように、米国で自由貿易を主張するのはいつも共和党です。一方、労働組合を支持団体に抱える民主党は、安い労働力によって仕事を奪われることを嫌います。したがって保護主義政策が基本です。その証拠に経済が好調だったクリントン政権は今も国民に人気がありますが、NAFTAへの参加は今もって不評です。

 日本では反対派議員がNAFTAでメキシコ農業は壊滅的なを打撃を受けたと言っていました。でも物品によってはNAFTAで米国が被害を受けた物もあります。(馬牧場など)そして一番のデメリットは工場が安い労働力のメキシコに移ってしまったことです。このツケは、2000年の大統領選挙でゴアがブッシュに敗北した理由の一つとして後から民主党を襲いました。
 
 こんなこともあり、オバマと予備選を争っていたヒラリーは、討論会でNAFUTAについて聞かれ際に、「夫はサインしたが、私(ヒラリー)はNAFTAに反対だった」と言っています。

 これでお分かりいただけたでしょう。米国でTPPが注目されない理由は二つあります。まず困窮する国民の関心は他にあること。そして自由貿易協定は再選を控えるオバマ政権にとって両刃の剣になることです。だとすると、農家VS輸出企業の構図の日本のTPP議論はどこか的外れだと思いませんか。もし米国が今の段階でTPPに本気なら、余程のメリット(相手にとって不平等)が潜むと観るべきです。それよりも、今は中国へ輸出が米国を上回っている状態の輸出企業は、中国を怒らせて大丈夫でしょうか。

 一方米政権はシカゴ大学のラジャン博士の提唱する輸出回帰策を念頭に置いています。ただ雇用にそれほど貢献せず、何よりもインフレや食糧危機が叫ばれる中、GDPの1.2%の農産物の輸出を増やすより、(共和党支持者の農家を喜ばすだけ)米国内の雇用が守れる自動車などの輸出を念頭にしているのは常識です。

 ただここまで白熱した日本のTPP議論をみて、米政権は新たな警戒感を持ったと思います。どうやら議論はトンチンカンなのですが、途中から議論が親米と反米の様相になり、予想以上に「米国の言いなり」という表現が出てきたことには危惧しているでしょう。

<米国の関心は日本>

 こんな時米国は安易に日本に歩み寄る事はしません。寧ろ日本に対して威圧的になり、恐れた日本が折れてしまう事を狙うはずです。ここは筆者がいつも引き合いに出すポーカーをする国(欧米)としない国(日本)の悲しさ。日本人は博打好きですが、ポーカーの経験は圧倒的に不足しています。こんな時はぜひケネデイーの言葉を思い出してください。

 ところで、オリンパス事件に端を発した日本市場でも、実はこの様な揺さぶりが始まろうとしている気配を感じます。 先に結論をいうと、日本が自虐的な株安に陥り、その結果アリのように資金を債券(米国債)に向ける事を米国は歓迎するでしょう。もしかしたら安くなった日本企業も米国は狙っているかもしれません。ただこの円高の中なら、敢えてそんな事はせずともTPPを使えば日本の知的財産は米国にもアクセスが可能です。寧ろ日本の株安を狙っているのは中国でしょう。TPPに関係なく、今の中国には日本(日本の水資源や企業)を買収する力があります。

 来週以降はこの辺りを相場と絡めてお話したいと思います。ただその前に、今日本が置かれている世界情勢を個人投資家の皆様も自分で考えてみてください。政府やマスコミ主導の議論を眺めるだけではダメです。その昔、ポーランドが敵対する超大国の独ソの間でどんな運命になったか。不幸にも、万が一日本が同じ運命になるとしても、米中の狭間でTPPに臨む日本をどう見るかは、投資家にとっての戒めになると同時に生き残りのヒントにもなるでしょう。         抜粋終わり




       
                                       

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