2011年12月7日水曜日

特別号 アメリカの愛国記念日(日産センチュリー証券筆者コラムから引用)

アメリカ新素描から            
 
<中央銀行による救済>
 
 先週予想したように、FEDを中心に各国中央銀行が協調して、欧州の救済に動き出しました。今回は金融機関が取った相変わらずの過剰リスクの補てんをスワップで供給するという代物でした。この話は少し複雑です。9月19日号の「余るドルが足りない」を参考にしてください。
 
 そんな中邦銀は、欧州の銀行にリスクをもつケースは少ないのですが、それでもシカゴ市場のユーロダラー先物では大量のポジションを持っていました。そこではスワップの金利が想定を超えて上がり始めていました。(その場合、邦銀も予定外の損失を被る危険性が高い)よって今回の救済では邦銀も救われたと言えるでしょう。(日本経済にもプラス)
 
 しかし、日銀総裁が認めたように、今回の処置は時間を買ったにすぎません。次は中央銀行が直接欧州の国債を買う事も想定できます。その前に少しルールの話をすると、ECBは定款でプライマリー市場で傘下の国の国債を買う事はできません。そこで考えられるのがIMFにECBが融資をし、そのIMFが国債を買い支える方法です。しかしこれにも難題があります。
 
 IMFの最大拠出国家は米国ですが、米国はIMFが欧州救済に資金を出すなら、米国の資金は使わせないという法案を準備しています。その急先鋒に立っているのが共和党。中でもTEA PARTYの人々です。つまり、いつもの米国の政治的対立が、欧州の救済にも影を落とし始めているという事です。(ただしこの法案にオバマは拒否権を出す可能性が高い)
 
(追加、そこで本日7日には、ガイトナーがFEDによるIMFへの融資の話を持って欧州にいったとの噂)
   
 <歴史は繰り返す>
  
 ところで、今週は米国在住の日本人にとって嫌な記念日がやってきます。それは12月8日のパールハーバーです。そういえば、強国ドイツがそれ以外の弱い欧州連合と対峙し、その弱い欧州を米国が救済に乗り出す構図は、別の次元でパールハーバーの頃にもありました。そこで1941年の12月8日前後の米国内の雰囲気を思い出してみましょう。
 
 この頃ナチスドイツは破竹の勢いで欧州を制圧。39年にポーランドに侵攻してからあっという間に欧州の大部分を領土にしてしまいました。(同盟のイタリアと遠いスペインを別として、残った敵はイギリスだけ)。このイギリス救済に対し米国内が真っ二つに割れていたのです。
 
 ルーズベルト大統領は、イギリスチャーチルの要請に応え、参戦の意向があったようです。ただそれまで米国の軍隊は海兵隊が中心。陸軍の規模は世界で30番目の規模でした。そこで、ドイツのUボートが南米沖に現れた事件を切欠にルーズベルトは徴兵制を断行したのです。
 
 しかし当時の米国内は反戦モード。この世論に加え、共和党の有力議員だったあのリンドバーグの父(飛行機での大西洋横断)や、ケネデイー兄弟の父親で、英国大使を務めたケネデイーシニアが、米国の欧州戦線参戦に強硬に反対する運動を繰り広げていました。
 
 ところが、そこに予期せぬ事態が起こったのです。この様に、戦争の可能性に関し、米国民の関心は欧州だったにもかかわらず、米国は突然日本から攻撃を受けてしまったのです。それが真珠湾攻撃でした。
 
 これで米国の世論は一変しました。恐慌から10年が過ぎても景気が回復しない中、徴兵までされてルーズベルト大統領の支持率は落ち込んでいました。しかしパールハーバーで米国人の日本への怒りが爆発。米国は愛国心の塊になりました。そして日本への宣戦布告から数カ月、米国は欧州戦線への参戦を表明しました。

<強国ドイツ包囲網>
 
 さて、前述した様に今の欧州も強国ドイツと弱者連合の構図です。(戦争でないのが救い)先週のメルケル首相の財政規律優先のスピーチは、救済を優先したい弱者連合と、それをサポートする米国政権の思惑に対立するものです。ならば、ドイツの主張(緊縮)が優勢になると株は下がり、逆に救済が優先されると株は上がるパターンが予想されます。では株が上がるのは善で、下がるのは悪なら、またしてもドイツは悪者にされてしまうのでしょうか。
 
 実は世界の多くの人はドイツの主張が正しいと感じています。でもこれ以上景気が悪くなるのは困る。つまり、この矛盾に対し、先進国が答えを持っていないのが今回の危機の本質です。ただそれでも歴史は繰り返される。筆者にはその因果が相場を考える上で重要なヒントです。

<主役は無国籍ヘッジファンド>
 
 一方金融市場はヘッジファンド優勢の時代に入りました。先日NHKはタイムリーに欧州危機で暗躍するヘッジファンドを取り上げていました。そこで見えたのは、彼らは実質無国籍であることです。これは重要なポイントです。
 
 もちろん法人としてロンドンあたりに登記はしているでしょう。でも運用担当者をみると、名前はフランス系で顔はユダヤ系。またチームにはアジア系など様々でした。NHK特集では、「我々はイタリアを潰したいのではない、上がるものを買いたいだけだ。」と言っていました。
 
 このような欧州系に比べ、米国のヘッジファンドは(空売り専門もいますが)米国の国益に便乗するのが基本です。よって米国という国を本気で潰すことに賭ける人はいないでしょう。
 
 この様に、今の金融市場は主役が大手金融機関からヘッジファンドに交代しつつあります。ただそのヘッジファンドもコンセプトが異なります。個人的には無国籍欧州系ヘッジファンドは非常に危険な存在に見えます。

 いずれにしても日本の個人投資家も、このような相場の変質を理解するにはプレイヤーの属性や歴史を含めた国際情勢の分析が非常に大切になると思います。そこで来週はいよいよ米国とイランの関係を、これまでの経緯を踏まえ分析したいと思います。
                                      以上




0 件のコメント: