2012年5月4日金曜日

富と雇用  (真マネー原理プロから)


今日の雇用統計で思い出したのは、ヘンリーフォードはやはり偉大だったということ。彼のおかげで庶民まで車が買えるようになり、組み立てラインの発明で、大勢の労働者が必要になった。

車社会が生まれたことで、アイゼンハワーは米国に高速道路網を創った。これらは戦後の米国の需要の根幹だ。そしてその影響はミシガン湖の周りの工業地帯(RUSTBELT)に向かい南部の黒人の大移動を喚起した。

その過程で生まれたのがジャズやブルース。つまりフォードを起点とする第二次産業革命は、我々がイメージする偉大なアメリカのスタートだった・・。


エコノミスト誌によると、今は第三次産業革命が始まったという。簡単にいうと、工業製品のデジタル化。ただこの革命では、雇用はその商品が生まれた場所では生まれない。その象徴はアップルのiPAD。

2年前に499ドルで売り出されたiPADのコストは何と33ドルだという(エコノミスト誌)。それも組み立て地の中国に落とした経費はわずか8ドル。アップルはこの利潤をiTAXで会社に戻す。

そこでは本社のあるカリフォルニア州に地方税が落ちることもなく、国内ではデジタル技能者以外の雇用を喚起することもない・・。

雇用も含め、英国の紡績(第一次産業革命)とフォードの車(第二次産業革命)は英国と米国に富をもたらした。では爆発的雇用を生まない第三次産業革命の恩恵を米国人はどうやって受けとるのか。

今のところイメージできるのは、アップルの株を買うことだ。ただ金融を救うために米国は流動性を増やした。その結果、アップル株は「買い」だが、600ドルが適正価格なのかの判断は誰にもできない・・。

オバマ政権は様々な功績にもかかわらず、雇用の数字に苦しんでいる。7%を超えた失業率で再選された現職はいないというが、それはヘンリーフォードから金融危機までの時代としては当然。だが今の第三次産業革命期にそのジンクスを当てはめる整合性は乏しい。

ただそんな事は選挙には関係ない。ならばオバマ政権もギリギリの手段を使うのが当然。添付のチャートは、今日発表の失業率を8.1%まで下げたからくりである52万人が失業率算出の基になる労働人口から減った。

この数字をいじくるのはクリントン政権からの特徴だが、88419(千人)の労働可能人口は、ヘンリーフォードの時代をひっくり返す印象である。(この数字を減らせば失業率は下がる。クリントン政権は96年にこの定義を変え、またオバマ政権をその定義を狭めた)
 

最後に、今が第三次産業革命の最中として、今の過剰流動性と、ヘッジファンド主体の市場において、一般にはその恩恵を受けるのが非常に難しいと言える。

デジタル革命では「昨日のヒーローが明日には廃業する」ことが普通に起こる。昔なら産業を守ることは国家の仕事だった。しかし今の革命では、国家は古いスターを守るのではなく、新しいスターを誕生させる事を優先するという(エコノミストから)。

これは、実感としてブラックベリーからiphoneへの変遷。さらにグーグルからフェイスブックにスターを変えようとする今の国の不思議なフォースとも合致する。

だがこのフォースが今の相場で体現された場合、一体どれだけの投資家がそのスピードについていけるのか。 今日の雇用統計は実に様々な近未来のテーマを突きつけている・・。


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