2012年5月24日木曜日

民主主義の子宮


よく考えてみると、この国は国民に最も人気があったリンカーンとケネデイーの二人の大統領を死なせた国だ。リンカーン暗殺は今となってはその真相究明は難しい。しかしケネディー暗殺では、真実はともかく、国家機関のFBIのフーバーやさらには大統領になったジョンソンの関与説まで、普通にそれなりの数の米国民が疑っていない。にもかかわらず、いまだ世界の多くの人は、米国を理想の民主国家と考え、中には正義の国としていまだに崇めている・・。

その代表がどこかは言うまでもないが、オバマ政権は経済で中国を非難する一方、実際は中国に米国債の裏口入札の権利を与え、金融市場では、実績は最も正しく、更に厳正な格付けをしていたイーガンジョーンズを選挙戦が佳境になるといちゃもんをつけて威嚇した。ならばその米国で、インチキで腰ぬけ格付けの実績は十分であるムーディーズが、この状況のモルガンスタンレーを格下げするだろうか。その勇気があるかどうかまさに見ものだ。

この全てが国策として仕方がない事は知っている。しかしここまで来ると、さすがに個人的にもオバマ政権を応援する気は失せた。その最たるものが中国の盲目の活動家の陳光誠氏に対しての一連の行動。政権のアジア担当のキャンベル氏が、陳光誠氏の手を仰々しく引いている写真は最近観たもっとも下品な写真として目に焼き付いている。

本来なら米国にとって陳光誠氏は重要人物ではない。ところが選挙が近づき、中国に対する毅然とした態度と民主主義の大義を演出する必要があるオバマ政権は、この盲目の活動家に対し過剰な対応を余儀なくされた。では本日パキスタンから届いたニュースにオバマ政権はどう反応するのだろうか。日本人はよく見ておくべきだ。本日パキスタンは政府は、米軍特殊部隊によるビンラディン急襲後、米国の要請でビンラディンのDNAの確認を行ったパキスタン医師を国家反逆罪で投獄した。何と禁固36年だという。

オバマ政権は自国の為に尽くしたこのパキスタン医師をどうするのか。今米国人のパキスタンに対する関心は薄れている。むしろビンラディンをかくまっていたのではないかという不信感の方が強い。ならばオバマ政権にとってこの医師にかかわるのは時間の無駄かもしれない。もし見捨てるなら、それがオバマ政権の人権主義の限界であり、今の米国ということになる。

嘗てチャーチルは、米国の民主主義を、「紆余曲折いろいろあるが、それでも最後はあるべき姿に戻ってくる・・」と評した。だが当時の米国には、今よりも確かなHuman Decencyと、原理原則を重視する価値観が存在した。そして何よりも、中間層が拡大していく豊かさがあった。個人的にはこの豊かさこそこの国の民主主義の子宮だったと考えている。ところが今の米国は、中間層が空洞化し、1%の金持ちと99%の自称貧民層が多数決でしのぎを削っている。それでは選挙戦はますますアグリーになるだろう・・。

そんな中、あのオバマでさえも埋没した今の姿を観ると。逆に言えばリンカーンとケネデイーは埋没を拒んだ可能性を感じる。彼らには国民の人気という最大の武器があった。ただそれは民主主義の構造だけを自分のために利用する勢力には厄介である。いずれにしても、今のこの米国の構造でも、チャーチルが考えた民主主義の本質は存在するのだろうか・・。

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